2ch黒猫スレまとめwiki

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俺妹SS 「黒猫、風邪をひく」 by PLOT

センター試験も間近に迫った一月ある日の放課後、俺は一年生の教室へと向かった。
それは当然といえば当然なんだけど黒猫の教室なわけで、一緒に久しぶりにゲー研に顔を出そうと思ったからだ。

ここ最近の俺はというと流石に受験生という立場上あまり大っぴらに遊ぶこともできず、もともと幽霊部員に
近かったゲー研にも秋以降はほとんど顔を出せていなかった。そんなんだったから、年も明けたことだし久しぶり
に挨拶も兼ねて黒猫と一緒に顔を出そうと思い立ったわけだ。

当の黒猫はというと、この年末年始もヲタク活動で忙しかったみたいだ。…みたいってのはどういうことかと
いうと、俺は当然、受験生の身なので冬コミとかのヲタクイベントにも参加するわけにいかず、この年末年始も
ずっと家で受験勉強という名の苦行に勤しんでいたため、時折携帯に送られてくる黒猫の激励とも脅迫ともつか
ないメールでしかその活動内容を知ることが出来なかったからだ。

「黒猫よ 私は今、冬コミでマスケラ本の回収という崇高な使命を全うしているところだけど、貴方は自分の使命を
果たすために一分一秒も時を惜しまず勉学に励みなさい。もし浪人なんて辱めを受けるようなことにでもなったら、
一生呪うから覚悟なさい」

黒猫からのメールは始終こんな感じだ。・・・本当にたまにはもうちょっと心癒されるメッセージが欲しいもんだぜ、
恋人からのメールとしては。まあ黒猫なりに気を遣ってくれているんだとは思うけどな。
ちなみにゲー研の三浦部長はまた留年が決まったらしい。あの人、本当にこれからの人生どうする気なんだろうな。

さて、教室に着いて見渡してみたんだが・・・ 黒猫の姿が見えない。あれー? まさか先に行ったとか・・・ 
いやそんなはずは・・・ と、思っていたところに後ろからバン!と背中を叩かれた。

「わあっ!」
「久しぶりじゃないですか、先輩」

後ろに立っていたのは瀬奈だった。そう、黒猫と同じクラスで同じゲー研部員だけど、その中身は超がつくほどの
腐女子でなにかとアレな女だ。

「・・・やあ、久しぶり」俺はひとまず取り繕った笑顔で答えた。
「いったい誰を捜しているんですかー?」続けて瀬奈が意味深な笑みを浮かべながら聞いてくる。
分かっているくせにわざと聞いてくるんだよな、こいつは。いい性格してるぜ、まったく。

「いや、久しぶりにゲー研に顔を出そうかと思ってな」
「五更さんなら、さっき帰りましたよ」

分かってるんだったら聞くなっつーの、まったく。って、え? 帰った?

「ええ、なんか妹さん達の世話があるからとかで。先輩にもそう伝えておくようにとのことです」

それを先に言えよ、お前は。しかし妹の世話か・・・。まあ急な事情でも出来たんだろう、そういうことなら仕方がないな。

「あれー、なんか凄く残念そうな顔になってますけど、先輩」・・・うるせーばか。

顔を出すと言った手前、そのまま帰るわけにもいかなかったのでとりあえずゲー研には行くことにした。
でも、ここのところ黒猫と満足に顔を合わすことすら出来ていないんだよなあ・・・ 本当に受験という制度を考えた奴を
呪うぜ。

家に帰った俺は黒猫の携帯にかけてみた。・・・が、
「・・・おかけになった電話は只今電波の届かない場所にあるか電源が入っていないためかかりません」

電源切ってやがる。チェッ、声だけでも聞こうと思ったんだがな。はいはい、分かりました、受験生という肩書きの使命を
全うするために勉学に励みますよ。・・・あー切ねえ。

次の日の放課後、俺はもう一度、黒猫に会いに教室へ行ってみた。・・・が、またしても目的を達成することは出来なかった。

「五更さんなら今日は休みですよ」

瀬奈が淡々とした口調で答えた。おいおい、それはどういうことなんだよ。こっちは必死なんだぞ。受験のストレスと会え
ない欲求不満のせいか、俺は瀬奈の何気ないそんな答えにもかなりイラついていた。

「担任の先生によると風邪をひいたので欠席するとの連絡があったそうです」

あっそう。瀬奈の答えに俺は無愛想に返事をすると教室を後にした。・・・しかし今にして思えば、瀬奈は俺がまた来ることを
見越して、ちゃんと欠席理由を先生に聞いておいてくれていたんだよな。でも、その時の俺はそんなことに考えが及ぶ余裕は
なかった。二日連続で肩すかしをくらった上に、さらに黒猫が風邪で欠席という事態に半ば気が動転していたんだろうな。

家に帰ってまた黒猫の携帯に連絡してみたが、昨日と同じく電源を入れていないしメールを送っても返事がくる気配もない。
ここにきて俺のイライラは頂点に達していた。当然、受験勉強にも身が入るわけがない。俺はどうやったら連絡が取れるか、
そればかりを考えていた。センター試験も近いってのに、どうしようもねえな。

次に俺がとった行動は沙織に連絡するということだった。沙織なら何か聞いているかもしれない。沙織の携帯にかけてみた。

「おや京介氏。久しぶりでござるなー、いかがですかな、受験勉強の方は?」
「いやまあなんとかやってるよ。ところで沙織、最近、黒猫と話とかした?」
「黒猫氏とは冬コミでお会いした後は連絡してないでござるよ。拙者も年始はちと忙しかったもので・・・」

そうだった、こいつお嬢だったんだよな。立場上、年始はいろいろと忙しかったんだろうな。俺は正直に黒猫と最近連絡が
とれていないことや、今日、黒猫が風邪をひいて学校を休んだことなどを話した。

「ははあ、なるほどー。それは京介氏も心配でしょうなあ。しかし黒猫氏も京介氏に心配をかけないようにとの思ってのこと
かと」

いや、余計に心配するっつーの。しかし沙織とも最近は連絡とっていなかったのか、あいつ。その後はいろいろとお互いの
近況などの話をし、そしておもむろに俺は沙織に聞いてみた。

「・・・なあ沙織。お前さ、黒猫の住所って知ってる?」
「いや黒猫氏の住所は存じ上げておりませぬなあ。京介氏の住所は以前に同人誌をお送りする際に伺っておりますが」

俺は電話をかけた本来の目的をようやく聞いてみたが、残念ながら沙織も知らないとのことだった。そう、俺は沙織から
黒猫の住所を聞いて直接会いにいこうと思ったわけだ。だって電話も繋がらないメールも返事がこないとなれば直接会いに
いくしかしょうがないだろ?しかし、ここにきて自分の恋人の住所すら知らない事実には凹んだね。まあ出会いの形がアレ
だけにしょうがないともいえるが・・・

「ふむう、きりりん氏ならあるいはご存じかと・・・」

やはりきたか、その名前が。俺もその可能性は高いと思ったが、敢えてそのルートは一番後回しにしたいと思って沙織に
連絡したんだけど、やっぱりそっちしかないですか。俺は沙織との電話を切ると、一大決心をして妹の部屋に向かった。

コンコン。…俺は妹の部屋の扉をノックした。前にもこんなことがあったけど、いい思い出はないな。しかし背に腹は
代えられない。

ガチャ。前と同じく少しだけ扉を開けて桐乃がこちらを睨んだ。

「何?」
「いや、あの教えてもらいたいことがあってさ・・・」
「何よ?」
「お前さ、黒猫の住所って知ってるか?」
「はあ? アンタ何言ってんの? そんなの本人に直接聞けばいいじゃん!」
バタン!

ほら、こうなるだろ。だから嫌だったんだよ、桐乃に聞くのは。でも今はこいつに懸けるしかないんだよな。
俺はもう一度、扉をノックした。

「いい加減にしてよアンタ、チョーうざいんだけど」
「いやだから今、黒猫と連絡がとれないんだよ。頼むから知ってたら教えてくれ」

俺の真剣な懇願に少し驚かされたように桐乃が聞いてきた。

「・・・何よ、アンタ達。喧嘩でもしたの?」
「いや、そういうわけじゃないんだが・・・」

下手に隠し立てしても返って災いを招きそうな気がした俺は、沙織に対してと同じく正直に事の次第を桐乃に話した。

「・・・ふーん」

桐乃は俺の話を聞き終わった後、その時にはもう全開になっていた扉の出口に腕組みをして、もたれながらつぶやいた。
俺の方はというと、どういう答えが返ってくるかと固唾を呑んで待っている状態なわけだが・・・

「知ってるよ、アイツの住所」

しばらくして桐乃が答えた。マジ? やった! ナイス妹! さすがデキる子! 頼れるものはやっぱり肉親だぜ。
しかし俺がほっと胸を撫で下ろしたのもつかの間、桐乃が悪魔のような笑みを浮かべてつぶやいた。

「でも、教えてやんない」

はああ!? なんでだよ! お前が最後の望みなんだぞ! 俺は半ば逆上しかけた気持ちを抑えて理由を聞いた。

「だってさー他人の住所を勝手に教えるのなんてヒジョーシキだしー」

お前の趣味の方が、よっぽど非常識だろうが。この野郎、ここにきて足下見やがって。しかしここで逆上して問い詰めて
ヘソを曲げられても困る。なんとかして聞き出す方法を考えないと・・・。と、思っているところへ桐乃が言った。

「フフン!まあアンタがアタシに対して誠意をみせるんだったら教えてあげないこともないケドー」

悪魔かお前は。しかしここまできたら条件を呑むしかない。なんだ言ってみろ、今の俺なら地の果てまでもエロゲー買いに
行ってやるぜ。

「アンタが一度、あたしのいうこと何でもきくって約束するなら教えてあげてもいいよ」

「何でも」ってところが引っかかるが俺はその条件に対してOKした。そして結局その後、メールでなんとか黒猫の住所を
教えてもらうことに成功した。まあその「何でも」という条件で、その後、俺が大変な目にあうのはまた別の話になるわけ
だが・・・

桐乃からのメールには、出来れば会いに行かない方がいいといったことも書かれていたが、その時の俺にはそんなことは
眼中に入らなかった。

次の日から連休だったので、俺は受験勉強もひとまず休止して桐乃から聞いた住所を頼りに黒猫に直接会いに行くことにした。
当然、その時点でも黒猫からの返事は一切無かった。大丈夫なのかな、あいつ。住所を見るとウチから電車で一駅くらいの
距離だった。

昼をだいぶ過ぎてから家を出たので、黒猫の家に着いたのは昼の2時を回ったぐらいだった。

「ここで、いいんだよな・・・?」

住所の場所にあったのは四方を塀で囲まれた純和風の一軒家だった。確かに玄関の表札には「五更」と書かれている。
・・・なんか緊張するな。いきなり尋ねたらびっくりするだろうな。不安や期待などいろんな気持ちが胸の中に渦巻いたが
ここまできたら行くしかない。俺は玄関の呼び鈴を押した。

「ピンポーン」

・・・返事がない。もしかして留守とか? いやここまできてそれは勘弁してくれよ。俺はもう一度、呼び鈴を押した。
しばらくして家の奥から誰かが出てくる音がして、やがて玄関の引き戸の向こうに人が現れた。磨りガラスの向こうに
映った姿を見ただけで俺は黒猫だと確信した。

「・・・どちら様でしょうか」 カラカラと少し引き戸を開けて伏し目がちに言う黒猫の姿がそこにあった。

俺は久しぶりに会うことができた嬉しさを胸に感じながら答えた。

「よっ! もう大丈夫なのか?」

その俺の声を聞いて顔を上げた黒猫は、俺の顔を見るなり目を大きく見開いて驚きの表情を見せたのもつかの間、
ピシャッ! ・・・と、玄関の戸を閉めた。・・・さすがにそれはちょっと悲しいぜ。

「な、な、な、なぜ貴方がここにいるの? か、帰って頂戴!!」
「・・・ちょっと待ってくれ。いきなり来たことは謝る。けど、俺だって心配したんだぜ? 具合がまだよくないんなら
仕方ないけど、少し話ぐらいはさせてくれよ」

「も、もう大丈夫だから!! と、とにかく帰って頂戴!」
「・・・分かったよ。あ、でもお見舞いも持ってきたからさ、これだけでも受け取ってくれないか?」

俺の突然の訪問に相当驚いた黒猫は、声を聞く限りではそれほど悪くもなさそうだ。俺としては久しぶりに顔が
見られたことと、思ったより元気そうなのを確認できたから、それで十分だ。

少し間をおいて再び玄関の戸を開ける黒猫。さっきと同じく伏し目がちで恥ずかしそうに俯いている。

「・・・本当に突然来て悪かったな。じゃあこれ」と俺は微笑みながら来る途中買ってきたケーキの箱を手渡した。
「・・・あ、ありがとう」玄関越しにお見舞いを受け取る黒猫。
「思ったより元気そうでよかったよ。・・・じゃあな。あ、でも、できればメールぐらいは返事くれよ、心配性だからオレ ハハハ」

そういって俺は帰ろうとしたが黒猫の声に呼び止められた。

「・・・待って ・・・せっかく来てくれたのだから・・・ よければ上がっていって頂戴・・・」


つづく・・・

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