― ゴスロリ? ―
今日は土曜日なのだが、学校で模試があり、たった今(昼過ぎ)に帰宅したところだ。
そして今日、俺の家で「オタクっ娘あつまれー」のオフ会があったりする。
俺は「ただいま」と言って、玄関から階段を上がっていくと……
「だぁ~か~ら~、そんなんじゃないって言ってるっしょ!」
「フフ、それはどうかしらねぇ? もうネタは上がっているのよ。いい加減に観念なさい」
「まぁまぁ、お二人とも……」
相変わらずの声が聞こえてきた。
ホントに飽きずに喧嘩ばかりしているなぁ、お前らは……
などと思いながらも顔がにやけてきやがる。
俺も同じ穴の狢っていうわけか。
とりあえず自分の部屋に入って鞄を置き、そのまま桐乃の部屋の前に来た。
コンコン―― 「桐乃、いいか?」
そう言って部屋の扉をノックすると、勢いよく扉が開いた。
「遅い! もう、いつまでかかってんのよ」
「まったく、相変わらずノロマね。もっと早く来ることはできなかったのかしら?」
「ぐぐぐ……」
はぁ、こいつらは普段喧嘩ばかりの癖に、俺を弄るときはいつも共同戦線張りやがって……
「まぁまぁ、京介氏もテストで大変だったのでござるから……」
沙織はそう二人に言うと、俺のほうに振り返って
「京介氏は……わかっているのでしょう。
この二人はこんなことを言ってはおりますが、翻訳すれば
『お帰り兄貴、大変だったね』
『急いで来てくれたようね。ありがとう。待っていたわ』と言っているのでござるよ」
ああ、言われなくてもわかっているさ。
こいつらとの付き合いもいい加減長いから、きりりんガルも黒猫語もマスターしてるぜ。
「ところで、今日は何をする予定なんだ?」
「特に予定は決めていないわね。久しぶりだし、みんなで長話でもいいんじゃないかしら?」
「拙者もそのつもりでござった。なにより、三人のその後はどうなったのか、詳しく聞かねば……」
「「「な、なにを言っているんだ(のよ)!」」」
俺たち三人は一瞬固まりかけたが、
「と、とりあえずその話は置いといて、今日はあんたらに見せたいものがあんのよ」
いいぞ、桐乃。うまく話をそらしてくれた。
桐乃は何やら机の引き出しから取り出すと、黒猫、沙織の二人と俺の間に立った。
「じゃじゃ~ん。今日はみんなでこれを見るの」
そう言って桐乃は得意気にDVDのパッケージを片手に立てて持ち、
黒猫と沙織の二人に向けて中身をパカッと開いて見せた。
俺は桐乃の後ろから、肩越しにDVDのパッケージの表裏が見えたのだが……
そう、それは新作『メルル』のDVDのパッケージだった。
いや、何を隠そう、俺、そのDVDを5回も見せられたよ。
実はついこの前まで桐乃のパソコンが調子悪くって、DVDが見れなかったらしい。
それで俺の部屋にやってきて、「あんたのパソコンでメルル見るから」と強引にな……
俺は呆れ顔でその様子を見ていたのだが……
なにやら様子がおかしい。
沙織は唖然とした、それでいて「どうすんだこれ?」って顔で頬を掻いてるし、
黒猫にいたっては目を大きく見開いて、口をパクパクして固まっている。
そしてやっとの思いで黒猫が言葉を発した。
「あ、ああな、あなた、こここ、これを、どうしようって言うの?」
「えっ? みんなで見るに決まってんじゃん」
「み、みみみみんなで見るですって?」
「そうだけど」
「ちちちちょっと待って頂戴。き、きき京介? あ、あなたも見るの?」
訝しげな顔で俺のほうを見て黒猫が尋ねてきた。
「おう、実はもう何度も見ちまってるんだけどな、俺」
「な、なななな何度もですって?」
「っていうか、最近まで桐乃のパソコンが壊れちまっててさ。
仕方がないから俺のパソコンで桐乃と一緒にな」
「なななな、なんですって?
あなたたち二人でやったというの? これを?」
もう黒猫は信じられないと言う顔で俺たち二人を見ている。
混乱のあまりDVDを指差す手も震え、顔に冷や汗をびっしりとかいて、
瞬きをしきりにしながらDVDと俺たちを交互に見比べている。
沙織は沙織で、どん引きって感じで「ははは……」などと力ない笑いを漏らしている。
「??」
さすがに桐乃もおかしいと気がつき、開いたDVDのパッケージをくるりとこちらに向けると……
「「なっ!!」」
なんと、そこにはメルルのDVDは入っていなかった。
代わりに入っていたものはと言うと……
「『ゴス妹』-おかえりなさい、おにぃちゃん-」なんていうエロゲーじゃねーか!
しかも丁寧にレーベル面には18禁マークとともに、黒髪ロングのゴスロリ少女の絵が……
これじゃ黒猫のあの様子にも納得がいくってもんだ。
まるで自分を攻略する18禁ゲームをみんなでやろうなんて提案された日にゃぁ……
――やべぇ、しかも俺、何回もやっちゃったみたいなこと言わなかたっけ?
こりゃ、相当誤解されてるぞ、きっと。
桐乃は桐乃で、恥ずかしさで混乱しているのか、「あわわわ……」なんて言いながら、
自分がしでかしたことを理解できていないようだ。
「く、黒猫? ちょっと俺の話を聞いてくれ」
「い、いいえ、聞きたくないわ。まさかあなたの嗜好が、こっ、これだったとは……」
「違~う! いいから俺の話を聞け!」
そう言って黒猫に近付き、両肩に手を置いて説得しようとするが……
「ひぃっ! ちょ、ちょっとまって! い、い、いくらなんでもみんなの前だし、心の準備が……」
「そうじゃねぇ~!」
黒猫は涙目で真っ赤になって、今にも卒倒しそうだ。
それを見た桐乃はまだ混乱しているのか、
「あ、あんた、黒いのに何やってんの!」
「だから、ちょっとお前ら落ち着けよ!!」
数分後、やっと落ち着きを取り戻した俺たちだったが……
「だ・か・ら~、間違ったって言ってんじゃん」
「フ…… どうかしら? 案外二人で楽しくやっていたのではなくって?」
「いやいや、いくらなんでも妹とこんなゲームをやる勇気はねーよ」
「おや? 確か京介氏は『しすしす』をきりりん氏と一緒にやったことがあると仰っていたかと?」
「ぐぁ! そ、そこで俺の黒歴史が掘り返されるのかよ」
「クククク…… しかもあなたの嗜好がまたひとつ明白になったわ。
なんなら、この『服』で言い寄ってあげましょうか? ねぇ『兄さん』」
「いや、だから……」
――ドカッ 「いて~よ」
後ろからクッションが投げつけられる。
「あんたにそんな趣味があったなんて、キモっ!!」
「ねーよ!! っつうか、お前んだろ、このゲーム」
「本当かしらねぇ? ククク…… もしかしたらあなた、わたしの『儀式』の遂行の効果で、
闇の眷属の風習(ファッション)というものがわかるようになってきたのかしら?」
「はぁ? あんた、このエロ猫に誘惑されて、そこまで逝っちゃってるワケ?」
「まぁまぁ、お二人とも抑えて……
そもそも、京介氏は元より拙者のような『眼鏡』と『ふくよかな胸』が……」
「ちょ、なに言ってやがる!!」
「――こうなったら、きちんと確認するほかはなさそうね、この雄の嗜好を。」
「か、確認?」 俺はゴクリと唾を飲み込んだ。
「あー、ベッドの下のあれを見ればわかるカモ……」
「桐乃、お前は何を言っている?
っていうか、二人とも無言で部屋を出て行こうとするな。
お、おい、待って! やめろ! いや、やめてください。お願いします……」
今日は土曜日なのだが、学校で模試があり、たった今(昼過ぎ)に帰宅したところだ。
そして今日、俺の家で「オタクっ娘あつまれー」のオフ会があったりする。
俺は「ただいま」と言って、玄関から階段を上がっていくと……
「だぁ~か~ら~、そんなんじゃないって言ってるっしょ!」
「フフ、それはどうかしらねぇ? もうネタは上がっているのよ。いい加減に観念なさい」
「まぁまぁ、お二人とも……」
相変わらずの声が聞こえてきた。
ホントに飽きずに喧嘩ばかりしているなぁ、お前らは……
などと思いながらも顔がにやけてきやがる。
俺も同じ穴の狢っていうわけか。
とりあえず自分の部屋に入って鞄を置き、そのまま桐乃の部屋の前に来た。
コンコン―― 「桐乃、いいか?」
そう言って部屋の扉をノックすると、勢いよく扉が開いた。
「遅い! もう、いつまでかかってんのよ」
「まったく、相変わらずノロマね。もっと早く来ることはできなかったのかしら?」
「ぐぐぐ……」
はぁ、こいつらは普段喧嘩ばかりの癖に、俺を弄るときはいつも共同戦線張りやがって……
「まぁまぁ、京介氏もテストで大変だったのでござるから……」
沙織はそう二人に言うと、俺のほうに振り返って
「京介氏は……わかっているのでしょう。
この二人はこんなことを言ってはおりますが、翻訳すれば
『お帰り兄貴、大変だったね』
『急いで来てくれたようね。ありがとう。待っていたわ』と言っているのでござるよ」
ああ、言われなくてもわかっているさ。
こいつらとの付き合いもいい加減長いから、きりりんガルも黒猫語もマスターしてるぜ。
「ところで、今日は何をする予定なんだ?」
「特に予定は決めていないわね。久しぶりだし、みんなで長話でもいいんじゃないかしら?」
「拙者もそのつもりでござった。なにより、三人のその後はどうなったのか、詳しく聞かねば……」
「「「な、なにを言っているんだ(のよ)!」」」
俺たち三人は一瞬固まりかけたが、
「と、とりあえずその話は置いといて、今日はあんたらに見せたいものがあんのよ」
いいぞ、桐乃。うまく話をそらしてくれた。
桐乃は何やら机の引き出しから取り出すと、黒猫、沙織の二人と俺の間に立った。
「じゃじゃ~ん。今日はみんなでこれを見るの」
そう言って桐乃は得意気にDVDのパッケージを片手に立てて持ち、
黒猫と沙織の二人に向けて中身をパカッと開いて見せた。
俺は桐乃の後ろから、肩越しにDVDのパッケージの表裏が見えたのだが……
そう、それは新作『メルル』のDVDのパッケージだった。
いや、何を隠そう、俺、そのDVDを5回も見せられたよ。
実はついこの前まで桐乃のパソコンが調子悪くって、DVDが見れなかったらしい。
それで俺の部屋にやってきて、「あんたのパソコンでメルル見るから」と強引にな……
俺は呆れ顔でその様子を見ていたのだが……
なにやら様子がおかしい。
沙織は唖然とした、それでいて「どうすんだこれ?」って顔で頬を掻いてるし、
黒猫にいたっては目を大きく見開いて、口をパクパクして固まっている。
そしてやっとの思いで黒猫が言葉を発した。
「あ、ああな、あなた、こここ、これを、どうしようって言うの?」
「えっ? みんなで見るに決まってんじゃん」
「み、みみみみんなで見るですって?」
「そうだけど」
「ちちちちょっと待って頂戴。き、きき京介? あ、あなたも見るの?」
訝しげな顔で俺のほうを見て黒猫が尋ねてきた。
「おう、実はもう何度も見ちまってるんだけどな、俺」
「な、なななな何度もですって?」
「っていうか、最近まで桐乃のパソコンが壊れちまっててさ。
仕方がないから俺のパソコンで桐乃と一緒にな」
「なななな、なんですって?
あなたたち二人でやったというの? これを?」
もう黒猫は信じられないと言う顔で俺たち二人を見ている。
混乱のあまりDVDを指差す手も震え、顔に冷や汗をびっしりとかいて、
瞬きをしきりにしながらDVDと俺たちを交互に見比べている。
沙織は沙織で、どん引きって感じで「ははは……」などと力ない笑いを漏らしている。
「??」
さすがに桐乃もおかしいと気がつき、開いたDVDのパッケージをくるりとこちらに向けると……
「「なっ!!」」
なんと、そこにはメルルのDVDは入っていなかった。
代わりに入っていたものはと言うと……
「『ゴス妹』-おかえりなさい、おにぃちゃん-」なんていうエロゲーじゃねーか!
しかも丁寧にレーベル面には18禁マークとともに、黒髪ロングのゴスロリ少女の絵が……
これじゃ黒猫のあの様子にも納得がいくってもんだ。
まるで自分を攻略する18禁ゲームをみんなでやろうなんて提案された日にゃぁ……
――やべぇ、しかも俺、何回もやっちゃったみたいなこと言わなかたっけ?
こりゃ、相当誤解されてるぞ、きっと。
桐乃は桐乃で、恥ずかしさで混乱しているのか、「あわわわ……」なんて言いながら、
自分がしでかしたことを理解できていないようだ。
「く、黒猫? ちょっと俺の話を聞いてくれ」
「い、いいえ、聞きたくないわ。まさかあなたの嗜好が、こっ、これだったとは……」
「違~う! いいから俺の話を聞け!」
そう言って黒猫に近付き、両肩に手を置いて説得しようとするが……
「ひぃっ! ちょ、ちょっとまって! い、い、いくらなんでもみんなの前だし、心の準備が……」
「そうじゃねぇ~!」
黒猫は涙目で真っ赤になって、今にも卒倒しそうだ。
それを見た桐乃はまだ混乱しているのか、
「あ、あんた、黒いのに何やってんの!」
「だから、ちょっとお前ら落ち着けよ!!」
数分後、やっと落ち着きを取り戻した俺たちだったが……
「だ・か・ら~、間違ったって言ってんじゃん」
「フ…… どうかしら? 案外二人で楽しくやっていたのではなくって?」
「いやいや、いくらなんでも妹とこんなゲームをやる勇気はねーよ」
「おや? 確か京介氏は『しすしす』をきりりん氏と一緒にやったことがあると仰っていたかと?」
「ぐぁ! そ、そこで俺の黒歴史が掘り返されるのかよ」
「クククク…… しかもあなたの嗜好がまたひとつ明白になったわ。
なんなら、この『服』で言い寄ってあげましょうか? ねぇ『兄さん』」
「いや、だから……」
――ドカッ 「いて~よ」
後ろからクッションが投げつけられる。
「あんたにそんな趣味があったなんて、キモっ!!」
「ねーよ!! っつうか、お前んだろ、このゲーム」
「本当かしらねぇ? ククク…… もしかしたらあなた、わたしの『儀式』の遂行の効果で、
闇の眷属の風習(ファッション)というものがわかるようになってきたのかしら?」
「はぁ? あんた、このエロ猫に誘惑されて、そこまで逝っちゃってるワケ?」
「まぁまぁ、お二人とも抑えて……
そもそも、京介氏は元より拙者のような『眼鏡』と『ふくよかな胸』が……」
「ちょ、なに言ってやがる!!」
「――こうなったら、きちんと確認するほかはなさそうね、この雄の嗜好を。」
「か、確認?」 俺はゴクリと唾を飲み込んだ。
「あー、ベッドの下のあれを見ればわかるカモ……」
「桐乃、お前は何を言っている?
っていうか、二人とも無言で部屋を出て行こうとするな。
お、おい、待って! やめろ! いや、やめてください。お願いします……」