2ch黒猫スレまとめwiki

◆cG05bRkUiC9t

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匿名ユーザー

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 今日は、俺が妹から人生相談を受けた話をしようと思う。




 おっと、妹とは言ったが、おそらく皆が思い浮かべたであろうヤツのことではないぞ?
「ねーねー、高坂くん! いいの? ホントにいいの?」
「ああ、どれ頼んでもいいぞ」
「やったー! よーし、あたしいっぱい頼んじゃうもんねっ」
 キラキラと表情を輝かせながらファミレスのメニューを覗き込んでいる、おさげ頭の女の子。
 それは黒猫の妹、五更日向だ。
 念のために言っておくが、「ファミレスで飯をおごること」が俺の受けた人生相談ってワケじゃないからな?
 その話は、もうちょっと後で出てくることになる。


 さて、俺がどうして黒猫ではなく、その妹である日向ちゃんとファミレスなんぞでメシを食おうとしているのか。
 疑問に思っている方もいるだろう。
 ぶっちゃけた話、それは俺の作戦だった。
 この時の俺には2つの狙いがあったのさ。
 ひとつは時間つぶし。
 そしてもうひとつは……。
「にゅふふ~、どうしようかなぁ~、迷っちゃうな~」
 まるでエロゲヒロインを誰から攻略するか悩んでいるどこぞのオタクっ娘のようだな。
 微妙にイラッとくるぜ。
 しかしこれでいい……これでいいのだ。
 まさに計画通りッ!
「じゃあじゃあ~、このチーズハンバーグをセットで。あと、ピザをマルゲリータとエビマヨの2つ。最後にケーキ3つね」
「どんだけ食う気だよこの欠食児童!」
 なに? 最近の女子小学生ってこんなに食うの?
「えぇ~、1人で全部食べるわけないじゃん」
 慄く俺に、日向ちゃんはその頬をぷっと膨らませた。
「ルリ姉と珠希にもお土産でどうかなってさ」
「あー、そうかよ。ピザとケーキがテイクアウトね。わかったわかった」
 ちったあ遠慮しろとも思ったが、そういうことなら納得できなくもない。
 疲れた仕草で緩慢に呼び鈴を押す俺を、ニヤリと日向ちゃんが見つめてくる。
 こうやって見ると、やっぱ姉妹だな。
 俺をからかって遊んでいる時の黒猫にそっくりだ。くそう。


 料理が運ばれてくるまでの間、飽きもせずメニューを眺めたり、ドリンクバーを何往復もしたりしていた日向ちゃんだが、鉄板に乗せられたチーズハンバーグが目の前にデンっと置かれると、すっかりその姿に魅了されてしまったようだ。
 陶然として、今にも口からヨダレがこぼれそうな顔をしている。
 そういや、五更家では魚好きでヘルシー料理の鉄人である黒猫姉さまが高頻度で食事の用意をするらしいし、でかいハンバーグなんて滅多に出てこないのかもな。
「ほれ、遠慮せず食えよ。熱いうちに食っちまった方がいいだろ」
「そうだね、ありがとう高坂くん! じゃあ、いっただっきまーす! はぐっ……もぎゅもぎゅ……お、おいしーwww」
 やれやれ。
 多少出費がかさんだが、ここまで喜んでくれるなら悪い気はしない。
 幸せそうに肉を頬張る姿を見ていると、素直にそう思うよ。
 それに……フフフフフ。
 俺の計画は、今この時、完全に達成されている。
 そう! 五更日向の口封じという、密かなる計画がな!
 あ、誤解の無い様に言っておくが、なにか後ろ暗い秘密を握られたから■すとか、そういったあやせ的な話ではない。
 メシ食っている間は黙っておとなしくしてるだろうってことだ(肩透かしだったらすまん)。
 知っての通り、俺はつい先日かわいい恋人ができたばかりなのだが。
 その恋人の妹である日向ちゃんは、姉が連れてきた恋人、つまり俺に興味シンシンなのである。
 こいつはこの手の話好きそうなマセガキだしな。
 黒猫と一緒の時はまだ多少の遠慮(というか姉の報復に対する警戒)があるようだが、黒猫がちょっとでも席を外すと、
「ねぇねぇ、ルリ姉とはいつケッコンすんの?」
「シンコン旅行は何年後とか決めてるの?」
「いつになったら高坂瑠璃とか五更京介って呼べるようになるの?」
 などとうるさく質問を浴びせかけてくる(ちなみに「全部同じコト聞いてますよねえ?」などと突っ込んではいけない。調子に乗って余計に話しかけてくるからだ)。
 そんなわけで、短時間ならともかく、長時間こいつと2人でいると非常に疲れるのだ。
 黒猫に伝わる可能性を考えると、あまりいい加減なことを言うわけにもいかず。
 かといってそう上手く話題を逸らすことも出来ない口下手な俺だ。
 窮余の一策としてこいつをファミレスに連れ込むことを思いついたわけさ。
 フッ。なかなか冴えてるだろ?
「ところでさー(もぎゅもぎゅ)高坂くんにさー(もぎゅもぎゅ)ルリ姉のことでー(もぎゅもぎゅ)聞きたいことがねー(もぎゅもぎゅ)あるんだけどー(もぎゅもぎゅ)」
「メシ食ってる時ぐらい黙ってろよ! 行儀悪すぎだぞおまえ!」
 かえせ! 俺の計画の犠牲となった一葉さんをかえせ!
「ちゃんと飲み込んでからしゃべってるよ?」
 そういうことじゃなくてだな……。
 しかし、よく考えてみると、食事中でも軽く会話ぐらいはするわなー。
 俺はなんで「食事を始めると静かになる」なんて思っちまったんだ?
 どうも追い詰められて正常な判断力を失っているような気がする。


「それよりさぁ、聞きたいことがあるんだってば」
「あんま答えたくねえ」
 こんな体たらくでは何を言ってしまうかわかったものではない。君子危うきに近寄らずだ。
「もーっ! えーとね、ワリとマジメな話だからさ、ちゃんと答えて欲しいかなって、思う」
「む……?」
 そう言う日向ちゃんの目は、確かにいつもよりちょっと真剣に見えた。
 さっきも思ったけど、時々似てるんだよな、あいつに。
 その表情は、真摯に何かへと取り組む黒猫の姿を思い出させる。
 だから「ここは避けてはいけない」と、そんな気になったんだよ。
「わかった。話してみろ」
「うん」
 神妙に頷く日向ちゃん。
 その右手には、ハンバーグの刺さったフォークが握られていたけどな!
 まあ、ここは見て見ぬふりをするのが大人の対応というものだろう。たぶん。


「高坂くんはさ、なんでルリ姉とつきあってるの?」
 すごい直球な質問だなオイ。
 いつものようにニヤニヤと質問してきてるのならはぐらかすのだが、真剣な眼差しを見るにそういうわけにもいかないだろう。
 しかし、こういうことを本気で話そうと思ったら……やたらと照れるな。
 さらに追い討ちをかけるように、さっき見た黒猫の……。
 いかんいかん! 顔が熱くなってきた。
「その、だな。お前の姉ちゃんから、こ、告白されたんだよ。で、OKして今に至る。い、以上だ」
「ちょ、照れすぎ……えーと、来年大学生だよね?」
「うるせーな! しかたねーだろ、女の子と付き合うどころか、告白されたことさえ生まれて初めてなんだぞ」
「高坂くんってさぁ、情けないことを平気で言うね」
「フッ……ホレんなよ?」
「ホレるわけないじゃん。マイナスポイントじゃん」
 女子小学生にすごい冷たい目で睨まれた! 死にたい。
「……お前の姉ちゃんは俺の情けないところも好きと言ってくれたんだがな」
「ルリ姉シュミ悪……知ってたけど」
「実姉に対して容赦ねえなおまえ!」
 あと、悪趣味の象徴にされた俺は結構傷ついたんですけどねえ。


「チッ、なんだよ、あれか? 俺と黒猫じゃつりあわないとか言いたいのか?」
「えっ?」
 日向ちゃんはちょっと驚いたような顔をした。
 これは図星だったか?
「まあ気持ちはわからんでもねーよ。黒猫は、言動とか行動とかにアレな所はあるが、美人だし、頑張り屋だし、すげーいい奴だしな。なんで俺みたいなのを選んだのかがわかんないんだろ?」
「えーと、高坂くん?」
「隠さなくてもいいんだぜ? なんつったって、俺にもわからん」
 黒猫に対して辛辣な言葉を吐く日向ちゃんだが、その言葉とは裏腹に、姉をたいそう慕っている……なんてことは、鈍い俺にも十分すぎるぐらい分かっている。似たようなのが身内にいるからな。
 その慕っている姉が、俺みたいなのを恋人として突然連れてきたら。
 そりゃ変だなと思うだろうよ。
 怒り狂ってもおかしくないね。「あたしの友達に手を出したら殺す」と脅してくる、どこかの誰かさんみたいにさ。
「けどな、その、好きだって言ってくれたからさ。すげー嬉しかったから。そしたらもう、付き合うしかねえじゃん? 情けなくても、自信がなくても、あいつの気持ちに応えてやりたいって、そう思ったからな。たとえ俺が、その場でOKの返事が出せないヘタレ男でもだ」
「へ? 告白されてその場でOK出せなかったの?」
「おおおおおうああああっ! ナシッ! 今のは忘れろ! というか忘れてお願い!」
 なんだって俺はこう、ますます自分の株を下げるようなことを暴露してるんだ!
 こんなことで日向ちゃんに愛想を尽かされて小姑化されたら……まぁ、あいつにはこれ以上ないほど醜態をさらしまくって来たから、いまさら恋人解消なんてことにはならないだろうが……今日みたいに気軽なお家訪問ができなくなる可能性がある。
 そいつはなんとか回避したいところだ。
 というわけで、俺はその場を取り繕おうと思い、日向ちゃんに声をかけようとしたのだが――
「にゅふっ……そっか」
 なぜか日向ちゃんは呆れてもなかったし怒ってもなかった。
 それどころか随分と上機嫌になって、にこにこ笑顔でハンバーグの攻略を再開していた。
 正直わけがわからん。
 その時の俺を傍から見ていたら、相当間抜けな顔が拝めただろうな。
「あのさ、高坂くん、ありがとね」
「んん? いや、だから遠慮せず食っていいって」
「ぶふぅっ。やめてよ、ハンバーグ吹くじゃん」
 日向ちゃんは可笑しくてたまらないと言った感じで、
「あ、でも……そっか、『情けないところも好き』か……そーいうことなのかなぁ」
 などと、なにやらふむふむと1人で納得し、
「ま、とにかく。今後ともよろしくね、お兄ちゃん!」
 と、終始笑顔でお願いしてきたのだった。




 相当混乱していた俺は、その時初めて日向ちゃんから「お兄ちゃん」と呼ばれたという事実に、かなり後になってから気付くことになる。
 さらに言うと、日向ちゃんの真意を「はー? まだ気付いてなかったの? さすがお兄ちゃん」などと呆れながら解説してもらうには、更なる月日を必要とした。
「あのね、奥手で、不器用で、初デートに『あの衣装』で出陣するようなルリ姉が、ちゃんと恋愛できてんのかなって心配してたの。高坂くんが引きまくってたり、イヤイヤ付き合ったりしてるんじゃないかってね。でも、ルリ姉のことわかってくれた上で、喜んで付き合ってくれてるみたいだったし、なにより」


「『あのルリ姉より奥手で、不器用で、情けない人』なんだってわかったから。ホッとして、よかったなって思ったんだー」


 その解説を聞いて、「ああ、黒猫はいい妹を持ったな」と思う前に、「実姉同様俺にも容赦ねえなこのクソガキ!」と叫んだ俺を誰も責められはしまい。
 そうだろう?




 さて、話をファミレスに戻そう。
 ここで終わっていれば、微笑ましい青春の1ページと言えなくもなかったんだがな。
 残念ながら、俺にはまだ、語るべきことがある。
 そう、妹からの人生相談だ。
「ところでさあ、高坂くん」
「んー、なんだー?」
 とっくに食事は終わり、現実逃避気味に……いや、誤魔化してもしょうがない。雑談でお茶を濁していた俺達だが、お互いそろそろ現実と戦わなければならないことには気付いていた。
 もう「あの不幸な事故」から1時間以上経過してるしな。いいかげん怒りも収まってきているだろう。
 おっかなくてメールもしてないし、これ以上時が経つと本気で心配させてしまいそうだ。そんなことになれば、ますます不興を買いかねない。
 けどなぁ……はぁ。どうしたものやら。
 あれこれと悩んでいると、日向ちゃんが何か思いついたようにぱんっと拍手を打った。
「あっ! そうそうあれがあるんだー、人生相談ってヤツ?」
「ほう、そう来たか」
 黒猫から聞いたんだろうな。「……っふ……あの雄はね、妹から人生相談を持ちかけられると何でもホイホイ聞いてしまう哀れな家畜なのよ」とでも言いやがったに違いない。
 OKだ。ならばその期待に応えてやろうじゃないか。
 相談してくる内容も予想付いてるしな。


「ルリ姉をからかいすぎて家を追い出されちゃったあたしは、どう謝ったら許してもらえると思う?」


 そろそろ、状況が知らされずイライラしてる人もいるだろう。
 現状を簡潔にまとめてみたい。


 今日の朝だ。黒猫との逢瀬を楽しみにしすぎていた俺は、予定時刻の1時間も前にルンルン気分で五更家を訪れた。
 たまたま玄関を掃除していた日向ちゃんに案内され、五更家の敷居をまたがせてもらった。
 そこで半裸の黒猫と遭遇した。
 バスタオル以外何も着てなかった。
 珠希ちゃんも半裸だった(と、思う。正直、黒猫に目が釘付けになってあまり見ていなかった)。
 湯上りでほんのり朱に染まる、黒猫の白い柔肌。バスタオルの隙間から覗くそれが、見る見るうちに真っ赤になった。
 「ひゃぁぁぁ~ん、くぁwせdrftgyふじこlp;(日向ちゃんが黒猫をからかっていたようだが、内容は全く覚えてない)」
 真っ赤だった黒猫の表情が、違う意味で真っ赤に燃え上がるのが見えた。
 その“堕天聖の獄焔(ノヴァ・メギッド)”は“無垢なる冤罪人(ノー・ギルティ)”である俺を“破廉恥な雄(メイル・オブ・エロス)”と“理不尽に罵倒(カオティック・シャウト)”させ……(中略)……日向ちゃんと2人揃って家から追い出された。
 説明終わり。


 てゆーか、ひどくね?
 早く黒猫に逢いたくていそいそと出向いてきたのにこの仕打ち。
 誰だ、早起きは三文の徳とか言い出したのは。とんでもねぇ大嘘だぜ。
「だいたいさぁ、高坂くんがいけないんだよ。『ルリ姉の裸見れてほんとは嬉しいんでしょ』って聞いたら、あんなにだらしなく『ま、まぁな。うへへ、黒猫おおおおん!』とか言っちゃうんだもん」
「『うへへ』からは言ってねえよ!? ホントに言ったっぽく捏造するな!」
「でも、あれで完全にキレたのはジジツだよねぇ?」
 いや、その、ね? マジやばかったんだって!
 風呂上りでしっとり濡れた黒髪とか、ほんのり湯気が立ち上る桃色の肌とかさあ!
 しかも、恥ずかしがってバスタオルで体を隠そうとするんだけど、強く握りすぎて余計に肌の露出が増えて、またそれが絶妙な感じでチラチラと……
 って、だからそんなことはどうでもよくて!
「おまえが姉ちゃんに許してもらえる方法か……俺が黒猫に許してもらう方法と同じぐらいの難題だなそりゃ」
 日向ちゃんと俺は、どちらともなく目を見合わせる。
 そして同時に漏れるため息。
 本当のところを言えば、その方法も道筋も見えてはいるのだ。「そのために」ピザとケーキを買ったんだしな。
 お土産として秀逸なチョイスとは言えないが、手ぶらで戻るよりはマシってもんだろう。
 つまり、あとはひたすら謝るだけ……なのだが。
 はてさて、それが何時間かかるやら。
「ま、ここでグズグズしててもしょーがねえ。戻って一緒に頭を下げようぜ。晩のおかずが闇に消えないぐらいには庇ってやるよ」
「イマイチ頼りないけど、もうそれでいいや。じゃあ矢面はまかせたからね、高坂くん!」
 ちぇ、調子の良いガキだな。
 けどまあ、いいさ。やってやるよ。
 なんたって俺は、妹の人生相談はホイホイ聞いてしまう男ですからねえ。


 それにさ。いままで受けた人生相談を、俺は一度も投げ出さなかった。
 まったく自慢にもならない、無様でみっともないやり方だったけど、ちゃんと最後までやり遂げてきた。それは俺にとって勲章みたいなもんなんだよ。ちっぽけなモンだけどな!
 だから今回も、無様にみっともなく黒猫に許しを請うさ。
 そしていざとなったらいつものように――


「いろいろスンマセン! 反省してます! 許して! この通り!」


 最近めっきり板についてきた、必殺の土下座を繰り出すだけさ。




     おわり

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