2ch黒猫スレまとめwiki

◆h5i0cgwQHI

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匿名ユーザー

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『黒の宿敵』

京介と黒猫が復縁した後の話です。(一応40スレ目の『黒の結末』と設定は繋がってます。)
あやせと黒にゃんの遭遇エピソードをどうしても書きたくて。
少しでも楽しんで頂けたらなぁと思います。

「今日からあたしは、正式にお姉ちゃんだからね!」


クリスマスの朝、キリ姉がなんか言い始めた。
とりあえず放っておくことにしよっと。

昨日は、ルリ姉の友達がいっぱい集まって、クリスマスパーティをやったんだ。
場所は高坂くんち。


で、夜も遅くなっちゃったし、珠希も寝ちゃったし。
昨日はそのまま泊まらせてもらうことになってさ。


「だから遠慮なく頼って! 欲しいものなんでも買ってあげる!!」
「ほ、ほんと!?」
「ホントホント。 ほら、なんでも言ってごらん」
「じゃ、じゃーさぁ……」


んふふー、前からお願いしたかったんだけど――


「えと、キリ姉にあたしの服選んで欲しいんだよね」
「フォォォォォォォォーーーーー!」
「き、キリ姉?」
「可愛いよぉ、ひなちゃん可愛いよぉ」


な……なんだかなぁ。
クッションを抱きしめて床をゴロゴロ転がってるキリ姉。
あたしと一緒にいる時ってずっとこうだよねぇ……

でも、キリ姉はモデルやってるし、センス抜群だからさぁ。
ルリ姉に頼んだら酷いことになりそうだし。


「あたしにまかせなさい! バッチリかわいくしてあげる♪」
「やったー!」
「じゃー今日行こう!」
「今日!?」


急すぎっ!!!
……でも、ふふ、これでもう高坂くんに地味とは言わせないっ!



ピンポーン



あ、誰かお客さんが来たみたい。
キリ姉が玄関に向かう。


「ごめんくださーい」
「あ、あやせ!? どうしたの突然……」


キリ姉の友達かなぁ?
ちょっと気になるから、あたしも玄関に行こうっと。


「今日、クリスマスでしょ? 桐乃にプレゼント持ってきたんだ」
「あ、ありがとう。 あ……あたし何にも用意してないんだけど」
「いいのいいの。 それより、桐乃今日暇?」
「うぅ……ご、ごめん。 先約があるんだ」
「……先約? お兄さんとデート?」


うぅ……あやせさんの声が急に怖くなったんだけど……
悪魔のような声に聞こえた……。


「キリ姉、友達?」
「あぁひなちゃん、紹介するね。 あたしの友達のあやせ」
「こんにちは、新垣あやせって言います。小学生?」


うわぁ。
綺麗なお姉さんだなぁ。

悪魔みたいな声だなんて思ってごめんなさい。
たぶん、天使を人間にしたらこんな感じになるんじゃないかなぁ。


「うん。 五更日向です。 5年生です」
「そっかぁ。 桐乃の親戚の子?」
「違うんだけど……えぇっと、なんて言ったらいいのかなぁ」
「あたしの未来の妹よ」
「ふぇっ!?」


あやせさんは心底ビックリした声を上げた。
てか、未来の妹って……あたしも初耳だけど……

キリ姉は何を言っているんだろう。


するとそこに、二階からルリ姉が降りてきた。
キリ姉のパジャマを着て、眠そうに目を擦りながら――

なんだろう、あやせさんの雰囲気がまた少し変わった気がする。


「あぁ、桐乃、日向、おふぁ……よ……」
「あ、固まった」


ルリ姉は目を丸くしてこちらを見ている。
あやせさんの目が怖い。

やっぱり悪魔だ。
天使だと思ったけど、やっぱり悪魔だ。


「桐乃……紹介してくれるよね?」
「あ、あやせ……」
「……誰?」


怖っ! あやせさん怖っ!


「あんた、こっち来なさいよ」


キリ姉が手招きすると、ルリ姉はこっちに歩いてくる。
妹のあたしには分かる。
ルリ姉、内心めっちゃビクビクしてる。


「あやせ、紹介するね。 あたしの友達の黒猫」
「ご、五更瑠璃です。 桐乃とは――」
「オタク友達なんですよね?」
「!?」


あやせさん、ルリ姉のこと知ってるのかなぁ?


「お姉――麻奈実さんから聞いています。 桐乃の裏の友達って」
「そ、そう……」
「あとお兄さんの……まぁそれは置いておきましょう」
「……」
「初めまして黒猫さん。 私は桐乃の"大親友"の新垣あやせです」
「よ……よろしく」


怖いよぉ、あやせさん、怖いよぉ……
よく見たらルリ姉も涙目になってるし。


と、そこで後ろから声がかかった。


「おお、あやせじゃないか!」
「お、お兄さん!!」


振り返ると、高坂くんがそこにいた。
高坂くんもあやせさんと知り合いだったんだ。


「あやせがうちに来るの、ずいぶん久しぶりなんじゃないか?」
「あぁ、あたし最近黒猫とばっか遊んでたからなぁ」
「!!?」


あやせさんが固まる。
ルリ姉はその様子を見てビクビクしてるけど、キリ姉は全然気付いてないみたい。

あやせさんはルリ姉の方をくっと睨んだ。
ルリ姉は変な汗をかきながら体を小さくしてる……分かる、分かるよルリ姉。


「黒猫さんって厚かましいんですね」
「な、なな何かしら……」
「私知ってるんですよ。
 黒猫さん、お兄さんをこっ酷く振ったそうじゃありませんか」
「!? そ、それがどうしたというの?」
「それなのに、まぁ桐乃の友達とはいえ……
 お兄さんのいる家に遊びに来たり泊まったり。
 少し無神経なんじゃないんですか?」
「あ、あの……その……」
「そんなだから学校で孤立したりするんですよ」
「う……うぅ……」
「とんだビッチですね」


や、やめてあげて!
ルリ姉のライフは0よ!!!


「あ、あやせ……」
「何? 桐乃」
「あんたコイツと初対面だよね」
「? うん、そうだけど」
「な、なんで好感度マイナスからスタートしてるわけ?」
「そんなことないってー、もう桐乃ったら♪」


いやいやそんなことあるし。
ただでさえ人見知りのルリ姉にコレはちょっと……


「私はただ、黒猫さんとは今後も仲良くしたいなぁって思ってるだけで」
「ど、どこがよ……超険悪じゃない」
「ほら、腹を割って話し合ったほうが仲良くなれるって言うでしょ♪」


なんだかなぁ……あやせさんが言うと、"物理的に"腹を割られそうで怖い。
そんなことを考えていると、見かねた高坂くんが前に出てきた。


「まぁまぁあやせ、俺の恋人をいじめるのはその辺にしといてくれよ」
「……えっ?」


あやせさんは、きょとんとした顔で高坂くんを見つめる。
って――こ、恋人?


「恋人って……だって別れたって……」
「昨日、また付き合い始めたんだ」
「――っ!?」
「なんだほら、俺に恋人ができるってことはさ。
 黒猫がいれば、俺の毒牙から桐乃を護れるってことだろ?
 ここは一つ穏便に――」
「――お、お兄さんは!!」


あやせさんは高坂くんをまっすぐ見つめる。
頑張れあやせさん!

いや、あたしもあやせさんは怖いんだけどね。
でも気になる。
恋人って何?
昨日、あたしが寝た後に何があったの?


「お兄さんは、黒猫さんのことを、好きなんですか?」
「あぁ、好きだ」
「桐乃よりも?」
「そ……それは……やっぱり比べられねぇ。
 ただ、どっちも、捨てらんねぇくらい好きだ」
「そうですか……」


あやせさんは、さっきまでの悪魔のような表情から一転。
寂しそうな顔になった。

ルリ姉は真っ赤な顔をして俯いているし、
キリ姉はキリ姉でちょっと満足げな顔をしている。


「じゃあ私、失礼しますね」
「あや……せ?」
「桐乃、また後で連絡する。 初詣、一緒に行きたいな」
「う、うん……そだね」


振り返るとき、あやせさんの目にちょっと涙が溜まってたのを、
あたしは見てしまった。

分かっちゃった。
あやせさん、キリ姉の事が大好きで、高坂くんの事も――


「それじゃあ」


あやせさんは走って帰っていった。
その後姿を見つめるルリ姉はちょっと寂しそうに見えて――

あたしはなんとなく、このままじゃいけないような気がした。



◇ ◇ ◇



昼過ぎ。
約束通り、キリ姉と渋谷にやってきた。


「ひなちゃんのコーディネートかぁ……ふひひ」


キリ姉はやっぱりちょっと気持ち悪いけど、仕方ない。
んふふ、もう地味キャラは卒業しちゃうもんね~!


「き、桐乃!?」
「あやせ……」


えぇ?
朝に引き続き、ここでも遭遇するの!?


「何あやせ、すごい偶然!!」
「う、うん」


やっぱり、あやせさんは少し元気がない。


「それより、桐乃今日は先約があるって」
「うん、ひなちゃんのコーディネートする約束だったんだ~」


ウキウキと話すキリ姉。
あたしはなんだか怖くて、あやせさんの方を見れないでいた。

いやたぶん、見なくて正解だったんじゃないかと思う。


「そーだあやせ、暇だったら一緒に行かない?」
「えぇっ!?」
「ほら、コーディネートするんならあやせの意見も聞きたいしさぁ」
「い……いいの?」
「何? あやせがあたしに遠慮なんかする必要ないっしょ?」
「そ……そうかな」
「ぷっ。 朝っぱらから"大親友"って豪語してたのはあんたじゃん」


ケラケラと笑うキリ姉の横で、ほんの少し、あやせさんの元気が戻った気がした。



◇ ◇ ◇



「ひなちゃん、右と左ならどっちが好み?」
「……うーん、どっちかと言えば左かなぁ」
「なるほどぉ。だってさ、あやせ」
「うん、日向ちゃんはそっち路線で探してみようか」
「うん!」


何件も店を回り、可愛い服をいっぱい見せてもらった。
着せ替え人形みたいにされたけど……
へへへ、自分が変身してくみたいで、けっこー楽しかったんだよね。


「家帰ったら、私の古着からもかわいいのあげるね!」

ルリ姉のお下がりとは違って、キリ姉のお下がりは期待できそう。


「日向ちゃんの好みの服を選ぶポイント、教えてあげるね」

あやせさんは、いろいろと丁寧に教えてくれた。
あたしの評価は再び「あやせさんマジ天使」みたいな感じになったよ。
実はけっこー優しい人なんだよね。



「じゃあ買ってくるから、あやせと二人で待ってて」


キリ姉がレジに向かった時だった。
あやせさんはあたしの目を真っ直ぐ見つめて言った。


「あのね……お姉さん、瑠璃さんといるときの桐乃って、どんな感じ?」
「どんなって……」


どんなって言われてもなぁ。
正直、今と全然変わらないと思うんだけど。

だから、正直にそう言うことにした。


「今と全く同じ」
「ほ、ホントに? 瑠璃さんといる方が楽しそうとか、そういうのって」
「ないない。 全然同じだって」
「そ、そう……」


なるほどねー、あやせさん、そーゆーの気にしてたんだ。


「だいたいさ、ルリ姉はオタク話はできてもファッションの話とかできないし。
 あやせさんはファッションの話はできても、オタク話にはついてけないでしょ?
 キリ姉は別に、どっちが上とか何も考えてないと思うけど」
「そう……だよね。ふふ、ごめんね、変なこと聞いて」


あやせさんの表情が、また少し柔らかくなった気がした。



◇ ◇ ◇



たくさんお店を見て回りながら、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまった。

空も結構暗くなってきちゃったなぁ。


「そろそろ帰ろっか、ひなちゃん」
「そーだね、キリ姉」
「日向ちゃん、ちょっといいかな」


あやせさんは私を呼び止めると、私に手紙を手渡してきた。


「これ、瑠璃さんに渡しておいてもらえるかな?」


天使のような微笑。

きっとルリ姉も、あやせさんと仲良くなれるんじゃないかって。
そんな気がしたんだ。

時間はかかるかもしれないけどさ。


「また服選ぶの手伝ってもらえますか?」
「うん、その時にはいつでも呼んでね」


いい人だなぁ。
ルリ姉とはまた違うけど、こういうお姉ちゃんがいても楽しいかもしれない。

ふと、そう思った。



◇ ◇ ◇



家に帰ると、あたしはさっそくルリ姉に手紙を渡した。


「今日、渋谷であやせさんにあったんだ~」
「そ、そう……仲良くなったの?」
「うん! ルリ姉もきっと、友達になれるよ」
「そう……」


ふっと、優しい表情をするルリ姉。
あたしはルリ姉の、この表情が好きなんだ。


「ルリ姉は、今日は動物園に行ってきたんでしょ?」
「えぇ、京介と珠希と一緒にね」
「どーだった?」


ボンッ


ルリ姉の顔が爆発したように赤くなる。


「お、親子連れに間違われたわ……何度も」
「そっかぁ……ふーん……ぷぷっ」
「な、なんて顔をしているの」


きっと『違うのよ』なんて言ってアタフタしてたんだろなぁ。
反応が想像できすぎて、あたしはニヤニヤを抑えられないでいた。


と、突然。


真っ赤になっていたルリ姉の顔が、真っ青に変わる。
何があったんだろう。

ルリ姉の手には、あやせさんからの手紙が握られていて。

顔はどんどん青ざめ、体は小刻みに震えている。
光彩は消えうせ、額には変な汗が浮かんでいる。


「ル……ルリ姉? ど、どーしたの?」
「ふ、ふん。 なんでもないわ」


なんでもなくない!
い、いったい何が、手紙には何が書かれてたの!?

くーーーーっ、気になる!
渡す前に読んでおけば……いや、ルリ姉の様子を見ると、読まない方が……


「認めましょう……」
「?」
「くくく、いいわ、あの女をライバルと認めてあげましょう……」


そう言うと、ルリ姉は自分の部屋にこもってしまった。
うーん、仲良くなるにはまだまだ時間がかかるのかなぁ。


ルリ姉が何かを書き綴る音は、その後夜通し続いたのだった。



おわり

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