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『支えてくれる人』:(直接投稿)

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
(注)最終巻と同様な黒猫の慟哭描写があります。
    黒猫の悲しむ姿が苦手な方はご注意ください。

アニメの最終回放送にあわせて、あの辛い記憶を少しでも和らげるべく
黒猫が京介からの『告白』を受けた後に、如何に大切な人に支えられて
立ち直ったかを書いてみようと思ったのがコンセプトです。

しかし、最初に書き始めた日向だけでも結構な文章量になってしまったのと
辛い記憶は黒猫99スレまでにしたかったのでこの時点でアップしました。

たまちゃん、父母猫、沙織の話も大筋は考えてはあるので
またいずれの機会にまとめたいところです。

それでは相変わらず拙い作品ですが少しでも楽しんで頂ければ幸いです。

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「我が生涯に最大の呪いを……思い知りなさい!」

振り返って歩き出した途端、泣き腫らした瞳から
再び止め処なく涙が溢れ出してくる。

でも大丈夫。もう涙はあの人には見えないから。

ふらつきかけた両足を無理やりにでも動かして歩き続けた。
顔は涙と雨でぐしゃぐしゃでも、背中からなら毅然と見えるように。
あの人の出した決意を揺るがせることのないようにと。

街灯を5つばかり過ぎてから、無理やりに飲み込んでいた嗚咽が
ついに抑えきれなくなって口から漏れ出でた。

でも、ここまでくればもう平気よね。

すべては予言どおり。『運命の記述』通りの事。
この結末はすべては私の望みの通りなのだから。

だからこの胸を貫く痛みも。吹き荒ぶ哀しみも。深淵より出る絶望も。

私は向き合い、受け入れなければならないのだ。

全て仕組まれた罪。

その罪を仕組んだものが自分自身なのだから
その罰も償いも自分自身でなされなければならない。

審判が下された今日という日から、それはきっと長い年月をかけて。
私自身が私自身を赦せる様になるその日まで。
逃げることは決して許されない。

だけど今は、今だけは。

自分のためだけに、もう少しだけ……泣いても……いいよね?

その場に立ち尽くした私は、再び長い長い慟哭を繰り返した。


*  *  *


「お帰り、ルリ姉ぇ。ご飯どうするの~?」

玄関が開けられた音を聞いて、あたしは居間から声をかけた。
既に夕飯の時間は大きく過ぎているというのに、ルリ姉が珍しく外出していて
あたしもたまちゃんもお腹を空かせて途方に暮れていた。

幸いたまちゃんはさっき寝てしまったけど、そろそろお腹が限界のあたしは
なにか軽く用意しようかと思っていたところだったんだけど。

「ルリ姉?どしたの?」

しかし一向にルリ姉からの返事がないので廊下に出てみた。

まあルリ姉があたしに返事がないなんて日常茶飯事だしね。
また何か怪しい電波を受けてぶつぶつ独り言でもいってるんじゃないかと
そのときのあたしは思っていた。

でも実際に見たルリ姉はそれどころじゃなかった。

いつもの痛いけれど、自作しちゃうくらいのこだわりのゴスロリ服も
あたしが密かに憧れている艶やかな長い黒髪も
見る影もなく雨でずぶ濡れになって。

そして何より血の気の失せた真っ青な顔色と。
普段のカラコンより充血して真っ赤になった瞳で。

悄然とした姿であたしの大好きな姉は立ち尽くしていた。
それは以前も、4ヶ月前に見たあの夏の日と同じ姿だった。

「ル、ルリ姉……まさか……高坂君となにかあったの!?」

あの日と同じと言うのなら、思い当たる理由はこれしかない。

「……なんでもないわ。ごめんなさい、今夕飯を用意するわね」

でもルリ姉もあの日と同じように、なんでもないと応えるだけだった。
やはりあの日と同じ、感情のこもっていない、抜け殻のような声で。

でもだからといって、あたしまであの日と同じように
わけが判らず引き下がるわけにはいかなかった。

だって、このままじゃまたルリ姉は。
あの時と同じように絶望に囚われてしまう。
そんな確信が今のルリ姉からは易々と想像できてしまった。

「なんでも……なんでもないわけないじゃないか!!」

突然大声を張り上げたあたしを、驚いたように見つめるルリ姉。
俯いていたときにははっきりしなかったけど、雨とは明らかに違う
涙の流れた跡も見えた。

それを見た途端、あたしの中で湧き上る感情にさらに油が注がれた。

「だってルリ姉、あの時と同じじゃない!
  高坂君と別れたあの夏の花火の日の時と!!」
「……同じじゃないわ。だって私はあれから京介とは別れたままだもの」
「そんなことは関係ないよ!!
  それにそういうってことはつまりは高坂君絡みなんでしょう!
  どうして……どうして本当のことをいってくれないの!?」
  
なおも叫び続ける私に、逆にいつもの調子を取り戻したように
落ち着いた声でルリ姉が応えた。

「落ち着きなさい、日向。これは私の問題なのよ……
  だからあなたの気持は嬉しいけれど
  あなたに立ち入ってもらうわけにはいかないわ」

あたしを諭すように声をかけるルリ姉。

いつもあたしが無茶をやって、失敗したり、怪我をしそうになったとき
すごい勢いで怒った後、必ず掛けてくれる優しい言葉と
安らぐようなお姉ちゃんの表情と声音で。

あのルリ姉がこんなになるほど辛い気持ちになっているのに
そんなときでもあたしの姉をやろうとしているのだ、この人は。

「でも……でも!!」

ルリ姉の落ち着きはらった口調に
思わずいつものように静まりかけた心をあたしは再び奮い起こした。

ここで引き下がってしまったら。
あの夏のときのことが再び繰り返されてしまうから。
抜け殻のようになってしまったルリ姉をもう一度見るなんてこと
あたしには絶対に我慢できない。

ルリ姉がいつだってあたしの姉をしようとしているように。
あたしだってルリ姉の妹をしなければならないから。
泣いて帰ってきた姉を、妹として見過ごすなんてことはできない。

そしてこの期に及んでそんな無理をしているルリ姉を
なんとしてでも解放してあげたい一心だった。

再び沸き起こる感情に任せて、ルリ姉に私の気持ちを打ち付けた。

「ルリ姉だけの問題じゃないよ!だって!だって!!」
「……日向、あなた……」
「だってルリ姉がこんなんじゃあ……
  あたしだって悲しいよ!苦しいよ!!泣けてきちゃうよ!!!」

言葉通りに私の瞳からも涙が零れ落ちていた。
怒っていたと思っていたあたしがいきなり泣き出したの見て
さすがのルリ姉も目を見開いて驚いている。

「だから言ってよ、本当の事を!ルリ姉の気持ちを!!
  あたしじゃ頼りなくて不満かもしれないけれど……
  あたしだって『お姉ちゃん』のために何かしてあげたいよ!!」
  
そこまでまくし立てたところで、あたしは昂ぶった感情を
もてあます余りに、思わずルリ姉に抱きついていた。
こんなたまちゃんのような事、ここのところ随分していなかったけど。

ルリ姉の身体は冬の雨で湿った服が冷たかったけれど、
あたしが小さい頃よくした時と同じように
ふんわりと優しく受け止めてくれた。

すでに言いたいことをうまく声にもできずに、ルリ姉、ルリ姉と
繰り返すあたしを、ルリ姉はぎゅっと抱きしめてくれた。

「そう……そうね、日向。ごめんなさい」
「あやまら……ないでよ……ルリ姉は……なにも……悪くないよ……」
「じゃあ……本当のことを言うわね?聞いて頂戴、日向」
「……うん」

ルリ姉はそこで一度言葉を切って……そして打ち明けてくれた。
先ほどなにがあったのか。そしてルリ姉の本当の気持ちを。
いつものように飾らずに、まっさらな『瑠璃』の言葉として。

「私……私……京介に振られちゃった……」

「私とは付き合えないって……好きな人がいるんだって……」

「どうしよう……日向。私はもうあの人を京介なんて名前で呼べない……」

「京介のためにお弁当を作ってあげられない。
  京介のためにセーターを編んであげられない」
  
「京介のために笑ってあげられない。
  京介のためになにもしてあげられない」
  
「だって、私はもう彼女でもなんでもないんだもの。
  もう二度と結ばれることはないんだもの。
  今世でも……来世でも……永遠に……」

あたしを優しく抱きしめていた力が不意に強くなった。

「私は……私は……もう……二度と……」

「イヤ……イヤよ……こんな、こんな結末……」

「私から……京介を……取らないで……
  私に……京介を……諦めさせないで……」
  
「だって……こんなに好きなのに……大好きなのに!!」

あたしを抱きしめる力はもう痛いくらいだった。
そしてそれ以上にルリ姉の言葉が心に突き刺さるのが痛かった。
ルリ姉の気持ちを考えるだけで胸が張り裂けそうだった。

でも全部受け止めないと。あたしに今できることはそれだけだから。

「こんな運命を……変えたかったのに!
  こんな未来にならないように頑張ってきたのに!!」

「どうして……ねえ、どうして!?どうして私はいつも
  こんなに欲しいものを手に入れることができないの!!」

ルリ姉の声は、いつしか先のあたしと同じように叫び声になっていた。

「どうして……どうして……
  どうして私は……京介と……恋人になれないの……」

「どうして……私は……こんなにも矮小で……
  望みを果たすことすらできない……情けない存在なの……
  好きな人に届かせるだけの気持ちも想いも足りないの……」

そしてあたしと同じように最後には叫び声は泣き声に変わっていった。
ルリ姉の零す大粒の涙があたしの背中をぽつぽつと濡らしていく。

やっぱり思ったとおり、今まで保留になっていた高坂君との関係が
ルリ姉にとって最悪の形で決着がついたのが理由だったんだ。

どうして、高坂君……あんなにルリ姉のこと大好きだといっていたじゃない。
ルリ姉にべた褒めされてたって伝えた時あんなにも嬉しそうだったじゃない。

好きな人ってどういうこと?あれから4ヶ月しかたってないのに
別の好きな人ができちゃうの?あのシャワーを浴びていた人?
それとも相手はキリ姉のいってた幼馴染の人なの?

理不尽だと判っていても、高坂君への怒りの感情が込み上げて来る。
今すぐにでも高坂君のところにいって事の真偽を問いただしたかった。

ルリ姉をこんなに待たせたのにいいかげんなことを応えたら
絶対に許せないって言い放ってやりたかった。
あたしの大切なお姉ちゃんを泣かせるなんて一生許さないんだって。

でも、あたしの中にわずかに残っていた冷静な部分が
ぎりぎりのところでその怒りを押しとどめた。

だって、ルリ姉は。

こんなに辛い気持ちをあたしに吐き出してくれてるのに。

一言も高坂君を責めることをいってなかったから。

だからあたしがルリ姉にしてあげなければならないことは、
きっと高坂君に怒りをぶつけることじゃない。

「……ルリ姉のせいじゃないよ……ルリ姉のせいじゃないよ」

しゃくりあげながらもあたしは懸命の力で言葉を振り絞った。

「だって……ルリ姉はこんなに頑張ってたじゃない。
  おしゃれとかに全然興味がなかったのに一生懸命努力して。
  髪型や服装にだってことさら気を配るようになって」
  
「引っ越してからだって、朝早く起きて高坂君のためにお弁当を作って。
  勉強に疲れた高坂君を毎日メールで励ましたり。
  クリスマスプレゼントにって睡眠時間を削ってまで編み物をしたり」

自分でも理屈にもなっていないと判ってはいる。
頑張っただけで好きな人と結ばれるなら、きっと世の中
何の諍いもなく、今頃恋人たちの楽園になっていることだろう。

でもそんな幸せをルリ姉だけでなくあたしだって思い描いていたのだ。
初恋だってまだのあたしにもわかるほどのべたぼれのカップルだったから。
あのルリ姉が必死の思いで掴みとった恋人なのだから。

その後故あって別れてしまったけれど、絶対に最後には
ルリ姉の気持ちは報われて幸せになるんだって、信じていた。
信じていたかった。ルリ姉を。高坂君を。運命を。

だけどそれは幻だった。適わぬ夢になってしまった。

でもだからって今までルリ姉が頑張ってきたことが
全部全部無駄になってしまうなんてことを許せるわけがない。

だからあたしに今できることは
ただひたすらにルリ姉のことを肯定するのみだった。
誰に否定されたって、たとえ本人が許せなくたって
あたしは、あたしだけはルリ姉の頑張りを認めてあげるんだ。

「あたしはどれだけルリ姉が高坂君を好きだったのか知ってるよ。
  一晩中、高坂君とのことを考えてノート1冊書きあげちゃうくらい」

「どれだけ高坂君のことを想っていたか知ってるよ。
  付き合ってた時はまだしも、別れてからだって高坂君のことを
  四六時中考えてぼーっとして、危なっかしくて仕方がないくらい」

「どんだけ高坂君のことが好きなんだって
  あたしたちが呆れ返る位に、ルリ姉はひたすらに想い続けていたよね」
  
「そんなルリ姉は、本当にきらきら輝いていたよ。
  恋する女の子は綺麗になるって本当だってわかった。
  そんなルリ姉を見ているだけでこっちまで嬉しかったんだから」
  
「だから、だから……ルリ姉……」

あたしはルリ姉の身体を力いっぱいに抱きしめ返した。

「だからお願いだから、自分をそんなに責めないで。
  そんなに泣かないで。一人だけで苦しんだりしないで。
  あたしの大切なお姉ちゃんを否定しないであげて」
  
「ルリ姉が辛いときにはずっと傍にいるから。
  ルリ姉が悲しいならあたしも一緒に泣いてあげるから」

言葉通り、あたしはさらに腕の力を強めた。ルリ姉だけを悲しませないように。
溢れ出す涙はさらに勢いを増していく。ルリ姉の分まで流せとばかりに。

そんなあたしをルリ姉もずっと受け止めてくれていた。
お互いもう何も言葉にもできずに抱き合ったままでひたすらに泣き続けた。

たまちゃんが寝ていて本当によかった。姉の二人が揃って泣いていたら
きっとあの子まで泣かせてしまったことだろう。

そんなことになったらたまちゃん大好きなルリ姉のこと。
こんなに素直に気持ちを吐き出して、泣いてくれはしなかっただろうから。

結局あたしは、ルリ姉から本当のことを聞いたところで
ルリ姉のために何もしてあげられなかったし
これからルリ姉のためにどうしたらいいのかすら見当もつかないけど。

でもせめて、今度こそ最後まであたしはルリ姉の味方でいたい。

一度はルリ姉の気持ちを軽んじてしまったこともあった。
高坂君と別れたときだってきっとルリ姉の妄想の
自業自得じゃないかと考えていた。

でもいつだってルリ姉は、大切な人に対して全力で頑張ってしまうんだ。
自分の身をこれっぽっちも顧みることなく。だからあの時も高坂君と
キリ姉のために捨て身の選択をしていたんだと後から解って
あたしは心の中でルリ姉に思いっきり謝った。

そんな事、11年間もずっとそばで見ていたあたしが
一番わかっていたはずなのに。いつだってルリ姉はあたしやたまちゃん、
家族のことを優先して自分の幸せを二の次にしていたのに。

だからそんなルリ姉が初めて自分のために抱いた恋心を
あたしは今度こそ応援しなくちゃいけないんだって
あのときそう決めていた。

電波で妄想癖で、痛い発言ばかりで傲岸不遜な姉だけど。
でも本当は気弱で自信がないのに強がって自爆する恋する乙女なんだから。
よくできた妹のあたしくらいは味方してあげなくちゃね。

そんなことを泣いている間に決意していたあたしだったけど
いつのまにか頭に感じる優しくて柔らかい暖かさに包まれて
次第に意識が薄れていった。


*  *  *


次の日の朝、自分の布団で目が覚めたあたしは
わけがわからないまま慌てて飛び起きた。

あれ、どうしてあたしは布団で寝ているの?ルリ姉は?

あたしの布団の横には、たまちゃんがいまだ天使の表情で眠っている。
時計をみるとまだ6時半を回ったばかりだ。

ともかくルリ姉に確認しないと。いつもならもうルリ姉は起きているはずだし。
あたしはすぐに居間にいってみたんだけど。

「あら、おはよう、日向」
「……お、おはよう、ルリ姉」
「今日は早いわね。朝ごはんはもう少し待っていて頂戴」

そこにはうちのいつもの朝の日常風景があった。
ルリ姉も普段通りジャージ姿に割烹着で朝ごはんの用意をしている。

あれ、まさか昨日のことはあたしだけの夢?なんて虫のいい考えが浮かぶ。

「ねぇ、ルリ姉」
「なにかしら日向。今は手が離せないから長くなるようなら後にして頂戴」
「あ、うん。えーと、昨日あたしを布団まで運んでくれたのはルリ姉?」

事の真偽を確認したいけど、いきなり本題に入るのはいろいろと怖い。
それにあの時のことを思い返すと、その場の勢いもあったとはいえ
あまりにも恥ずかしいことが多すぎるしね。

なので、ひとまずあたりさわりのないところから訪ねてみたんだけど。

「そうよ、まったく……あなたが完全に
  眠ってしまったものだから、抱えて運ぶのも一苦労だったのよ。
  本当、いつの間にこんなに大きくなっていたのかしらね」
「あ、ごめん……ありがとね、ルリ姉」
「なにを言っているの、日向」

せわしなく台所と居間を行ったり来たりして朝ごはんを用意していたルリ姉は
そこではたと足を止めてあたしのほうに向きなおった。

「謝るのも、お礼をいうのも私のほうでしょう?」

今まであたしはそんなことをされた覚えがなかったから
一瞬目を疑ってしまったくらいだけど。いつも傲岸不遜なルリ姉が
神妙な顔つきであたしをしっかりと見つめて。

わたしに頭を下げていた。

それはきっと、昨夜のように素の『瑠璃お姉ちゃん』として。

「私の話を聞いてくれてありがとう、日向。
  それに妹に泣きついた情けない『お姉ちゃん』でごめんなさいね」

顔を上げたルリ姉の瞳はまだ腫れぼったさが残ってはいたけど、
昨日の姿がそれこそ夢のように綺麗で優しい笑顔を浮かべていた。

まるで、高坂君と付き合っていたあの夏の日と同じように。

「本当、妹の胸の中で泣いてしまうだなんて……
  私も神魔の戦いを重ねすぎて随分歳をとってしまったものね?
  あなたがこんなにも大きくなるわけだわ」

でもすぐにいつもの『黒猫』の芝居がかった調子に戻るルリ姉。
そんなのは照れ隠しだってわかっているんだけどね。
それならあたしもいつもの調子に合わせないといけないよね。

「へへーん。JKなんてもうおばさんだからねー。
  これからはこの成長した日向ちゃんがルリ姉のことを
  いつでも守ってあげるからなにも心配いらないよ!」
「そんな大口はセロリが満足に食べられるようになってから言いなさい。
  ちょうどいいから今朝の日向のおかずはセロリの炒めものと
  セロリのサラダにしましょうか」
「やめてよ!昨日だって夕ご飯食べてなくてお腹ぺこぺこなんだから!?」

慌てて抗議の声をあげるあたしに、ルリ姉はいつものように意地悪くほほ笑む。

そんないつもどおりの日常の風景がやけに眩しくて。

素直なルリ姉も見た目通りの深窓の令嬢のようで素敵だとは思うけど。
やっぱりルリ姉はこのくらいでちょうどいいよね。

とはいえ、いつものようにふるまってはいるけれど
きっとルリ姉のことだから、今回もすぐには立ち直れないんじゃないかと思う。
これまたいつものように、これが自分の罪だから、とかいって
不必要なくらいに自分を追い込む様が目に浮かぶようだよ。

やれやれ、まったく面倒な性格だよね。
少しは心配するまわりの人のことも考えてほしいもんだよ。

今回ばかりは高坂君に助けを求めるわけにはいかないだろうし。
そもそも高坂君には後できっちり仕返ししなくちゃいけないんだった。

大切な姉を振った不埒な輩に妹が復讐する権利は
きっと日本では江戸時代から名誉な仇討として認められている。
たぶんキリ姉ならそういって賛同してくれるはずだよね。

まあ話がそれたけど、そういうことだから
やっぱりあたしがルリ姉をフォローしてあげないとね。

ルリ姉が辛いときにはあたしが元気づけてあげよう。
ルリ姉が寂しいときには精いっぱい馬鹿やって笑わせてあげよう。
ルリ姉が泣きたくなったら恥ずかしいけどまた一緒に泣いてあげよう。

またルリ姉が安心して素敵な恋ができるようになる日まで。

だって……そんな恋する天使なお姉ちゃんが。

妹のあたしはやっぱり大好きなんだから。

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