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『夢』:(直接投稿)

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
12巻に関するネタバレあり

あの結末をみて、絶望して、しばらく呆然自失に陥りました。
全ての希望に蓋をされ、もう二次創作やらなんやらは無理だと思っていました。
そんな中でふと思い出した、ゲー研での黒猫のプレゼン。
二次創作のなんたるか。あるべき姿など知ったことか、超凄い○○○○をするだけ。
思いついたことを詰め込みすぎて、まとまりのなさがありますが、
原作で叶わないなら、少しでも黒猫に幸せをプレゼントしていきたいです。

※作中京介が当方の初投稿作品「23時59分59秒を過ぎるまで」の一こまを思い出します。

本作、過去作ともに少しでも楽しんでいただけるとと幸いです。
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クリスマスを4日後に控えたある日

夜の街灯の下
ふたりの男女が会話している。
この人たちをとても良く知っている。
大切な人と、大切な人の大切な人
ふたりはお互いがお互いのことを心の底から想っていて、
これ以上ないほどに愛し合っている。
世界中でふたりだけが居ればいいんじゃないかってくらいに。

そんなふたりを見るのが好きだった、
そんなふたりのそばにいることが好きだった。
今までずっとひとりだった人が、
ふたりになったことがすごく嬉しかった。
これからもずっと変わることなく幸せでいて欲しかった。
これもいつも通りの幸せの延長線上の出来事だと思っていた。

だからそんなふたりが交わす言葉は、想像すらしたこともなかった。




今までのありとあらゆる出来事全てを





『俺は、お前と付き合えない!好きなやつが、いるんだ!』



否定しつくす



別れの告白



長い




長い





告白の末




女性がある1冊のノートを取り出す。
『!だ、だめだよ、それは』

取り出してこの世から跡形もなく消し去るように、
いや跡形も消すために破り捨てていく。

びりびりと細切れにされて、書かれていた内容なんて読めないくらいになっているのに、
こっそり覗き見して思わずひいてしまった内容が手に取るようにわかる。

破り捨て終えると、堪えきれなくなったのか、女性は涙を流す。
にもかかわらず男性は慰めようとも近づこうともしない。
1冊目に記述されていたあの慟哭に変わろうとも、ただそこに立っているだけ。


『どうして・・・なんで・・・・あんなに・・・あんなに仲が良かったのにどうして!?
こんな・・・・こんな結末ってないよ・・誰も望んでなんかいない・・・
あたしはこんな結末が見たかったんじゃない!!』



ねぇどうして?





高坂くん






ルリ姉












「・・・・・・・夢・・・・だよね」
妙に生々しく、こうして起きた今もあれが本当に夢だったのか自信が持てない。
もしかしてあれは実際に起きたことで、あたしは耐えることができず気を失って、
部屋に運び込まれただけなのではないのか。
「違う・・・よね・・・大丈夫だよね」
ここでじっとしていれば現実を見なくて済む。
「日向いつまで寝ているの、珠希はとっくに起きているわよ」
だけどそうすることを許してくれなくて、現実と相対することになるのだった。



部屋を出るといつものジャージにエプロンをしたルリ姉が、
「男が喜ぶ家庭料理」という本を読んでる。
いつもみたく変な本ではないんだけど、
割烹着じゃなくてエプロンなのはどうしてなのだろう?
気のせいかもしれないけど、エプロンって透けちゃうくらい薄いものだったっけ?
割烹着のほうが見慣れているからそう見えるのかな。
汚れが裏にしみちゃうだろうから、薄いエプロンなんて意味ないしね。
格好となんだか大がかりな料理の支度がしてあるくらいで、
後はいつもとなんら変わりのない、五更家休日の朝だった。
あの夢のような悲壮感はない。


「・・・・ねぇルリ姉」
「何かしら、今忙しいのだけれど、それに朝はおはようでしょう」
ここもいつもと変わらないやり取り。
可愛い妹のあたしが声をかけてるというのに無視をする。
いつもは構わずに続けるところなのだけど・・

『別れたりしないよね』

思わずそんな言葉が顔を出したのを引っ込める。
たかだか夢の話でいたずらに不安を煽っちゃいけない。
過去でも夢の中でも、ルリ姉はもう悲しい思いをしたんだから、
今のルリ姉にはただひらすらに幸せになってもらいたい。
だから夢は胸にしまい、ルリ姉をからかう為に、
いつものように振る舞うとしよう。
「そ・・で」
「えっ?」
「それで?何か聞きたいことがあるのでしょう」
「でも・・・忙しいんじゃ」
「今にも死んでしまいそうな顔をした、妹を放っておくほど薄情ではないわ」
「ルリ姉・・」
たまちゃんばかりであたしは妹として見てもらえていないじゃないかって、
不安に駆られたこともあったけど、妹を心配する姉がそこにいた。
思い返すになんだか初めて呼びかけに答えてくれた気がするよ。



「夢をみたの、すごく嫌な夢を・・・」
「夢を?どんな?」
「あ・・えと、内容はよく覚えていないんだけど・・・
ルリ姉がすごく悲しい目にあってた・・・ような・・・気がする・・」
嘘、そんなことはない。
夢ってのは起きた時こそ鮮明に覚えているけど、時間が経つににつれて薄れていき、
1日が終わるころには、本当に見たのかすら曖昧なものになる。
そのはずなのに、今朝見た夢は今まで生きてきた中で、最も鮮明に覚えている夢で、
最も恐ろしい夢だった。
呼びかけに答えてくれた勢いで、つい話しちゃいそうになってしまったけれど、
さっきも言った通り、たかだか夢の話でいたずらに不安を煽る必要はない。
高坂くんとルリ姉が別れることなんてあるはずがない。
あんな夢のようなことが起きるわけがない。
「・・・・そう、ついに・・・」
えっ?つい・・に?
なんだろう?も、もしかして何か思い当たることがあるの?
現実に起こった、こと?
あたしは馬鹿だ、自ら地雷を踏みに行くなんて。





「・・・姉として嬉しく思うわ日向。ついに自身に宿る力を覚醒する時が来たのね、
そう、あなたは予知能力を秘めて・・・」
「ちがうよ!!!」
あたしの感動返して!不安に思って損した!
「能力名はそうね・・・予知眼(ヴィジョンアイ)でいいかしら?」
「良くないよ!」
違うって言ってるし、それって黒猫違いだから!
自分がどんな目にあったのかよりも、妹が怪しげな能力に目覚めることの方が、
気になるだなんて・・・人の気持ちも知らないで・・・
あっ、でもこんな風に返してくるってことは、いつも通りってことで喜ぶところなのか。
ルリ姉あんなことがあったら、夏の比じゃないくらい変貌するに違いない。
自身を復讐の天使『闇猫』とか称して、
やさぐれて、世界中を呪いに呪いまくるんだろうなぁ。
中二的な意味だけではない痛々しさが目に浮かぶ。
・・・こう考えると、実の姉とうまくコミュニケーションをとれないことが、
いつも通りの証というのも変な話だ。


ルリ姉の中二に付き合うと長そうだし、あんまりツッコミをいれていると、
ボロが出るかもしれないので、夢の話はやめたほうが良いかもしれない。
「ところでさっきから気になっているんだけど、あれ、何しているの?」
料理をしているらしいのはわかるけど、
こんなに朝早くからやるようなこと何かあったっけ?
・・・・・・・もし
『・・・私を振ったあの男を、呪い殺すため、禁書に記された毒を生成中よ』とか、
『喜びなさい、今日は珍しいお肉が手に入ったから、晩御飯は期待していいわよ、
そうねハンバーグでも作りましょうかフフフ』
って答えが返ってきたら。
何て言うんだっけ愛するあまりにやっちゃうの、ヤンデル?
ヤンデルルリ姉・・・普段の中二発言が、恐ろしい意味をものとして生きてきそうだ・・・
あれ?あんまり変わらない?
「あら?言わなかったかしら、我が運命の記述に記された通り、
京介たちを家に招待しているって」
・・・うん、よかった、ちょっと神経質に考えすぎていたよ。
ていうか、ルリ姉、遊びに誘うだけなんだから、わざわざ記す必要なんてないんじゃ・・・
『京介、私寂しいの、今すぐ会いに来て』
とか言えばすぐきてくれると思うよ。
今度、高坂くんに電話して実験してみようか、
ルリ姉の声真似には自信があるから、騙されてくれるに違いない。
ただやってみようにも、晩御飯のおかずが増えるのか減るのか、
判断つけられないのが困りものだね。


「そういえばあの痛々しい運命の記述は何冊すすんだの?」
話題に挙がったことだし、ついでに聞いてみよ。
「口には気をつけなさい、あれは数多のピースが運命の糸に導かれ噛み合い形成された、
恐ろしい魔力が秘められた本なのよ、軽々しくけなそうものならその身に・・・」
「で?何冊進んだの」
「・・・・95冊よ」
「95冊!!?」
いったいどういうペースで自分の妄想を書き連ねているんだこの人は。
えっなに?ルリ姉ってもしかして煩悩の数が人より多いの?多いよね?
知ってたよ知っていたけど、いざ聞いてみるとびっくりするよ、侮っていたよ。
とある掲示板も確か94だった気がするけど、あっちは複数に対して。
こっちは単独で成し遂げているんだから、ほんと尊敬しちゃいけないのに尊敬するよ!
「100冊までいけば究極召喚によって願望の神器たる聖杯が出現し、
未来永劫の幸せを運んでくれるわ」
一体何冊まで書き続けるのかは知らないけど、
一歩間違えれば呪いのノートにしかならないものをルリ姉は誇らしげに語る。
のだが・・・
書かれている内容を思い出したのか、
ルリ姉・・・にやけているのを隠しきれていないよ。
悶えて転がらないで、気持ち悪いから
一体どんな幸せ書いたの?

脳内お花畑のルリ姉を見るに、
夢は夢だったみたいだ、高坂くんとルリ姉は現在進行形で愛を育んでいる。
夢が現実になる心配はなさそうだ。あと、変な能力に目覚める心配もね。
安心したところで、あたしはまだ言っていなかったことを思い出す。
「ねぇルリ姉」
「何?」
「おはよう」
「?・・えぇ、おはよう日向」

今日はいい天気、沈んでいた気持ちも晴れ渡る。
変わることのない幸せの延長線上にいるようだ。





「あら?」
「どうかしたのか?」
「どうしたのルリ姉?」
「どうかしましたか姉さま?」
3人でメルルを見ている
(ルリ姉は例によってマスケラを持ち出してきたけど、
たまちゃんのメルルが見たいという鶴の一声によって決定)
とルリ姉の困った声が聞こえてきた。
「あると思っていた物が、無かったみたいなの。
・・・仕方がないから買ってくるわ。ごめんなさい、ご飯が少し遅くなってしまいそう・・・」
いそいそとエプロンを脱ぎ
(ちなみにジャージじゃないよ高坂くんが来る前に、メイド服に着替えた)
出かける準備を始めるルリ姉をみて、
「だったら俺が行って来ようか」 
「そんな悪いわ、京介はお客様なのだし、道もわからないでしょう?」
「気にすんなって、待ってるだけってのも悪いし、散策ついでに行ってくるわ。
よく考えたら俺、瑠璃が住んでる街がどんなところなのかよく知らないし」
「京介・・・」

『京介に悪いから自分で行きたいでもせっかく
京介が私のことを知ってくれようとしているのだから
断るのもただ道がわからないでしょうしあぁだったら私も一緒に行けばいいんじゃ
困ったわ聖天使の衣は神の祝福を受けている最中だし
それだと料理が遅くなってしまうやっぱり私が・・・』
素直に『行ってきて』って甘えればいいものを、
堂々巡りの百面相を繰り広げる、ルリ姉を見るのは楽しいんだけど、 
このままじゃ埒が明かなさそうなので、
できた妹であるあたしが助け船をだしてあげるとしよう。
ていうか、ちょっと買い物に行くだけなのに神猫様になって、
どこまで行くつもりなんだこの姉は・・・
そうそう神の祝福ってクリーニングのことだから。
「だったらあたしが一緒にいくよ。高坂くんが道に迷って帰ってこれなくなったら、
ルリ姉失踪届とか出しかねないしね」
「そ、そんな真似するわけないでしょう!」
「うわー冷たい、心配じゃないんだ」
「えぇ心配していないし、たとえ京介が道に迷ったとしても失踪届なんて必要ないわ」
あれ?思ったリアクションと違う。もっとこう
『も、もちろん心配よ、だから私が一緒について行くわ、2人でどこまでも』
なんてのを期待していたのに・・・あっほらそんなこと言うから高坂くん、
ちょっと落ち込んでるじゃん。
「だって私と京介は・・・////」
・・・・・・・・・・・・・
あーはいはい、『だって私と京介は『盟約の儀』を得て、
肉体よりも魂よりも深い深い位相で結ばれているから、
京介がどこで何をしていても私にはわかる。
だから京介が道に迷ってもすぐに見つけだすことができるわ。
だって私たちは星の記録によって定められた、
約束の二人(エンゲージ・リンク)なのだから///』ね。
そんな変な妄想オーラ出されると、たまちゃんの教育に悪いから、
そーいうのは2人っきりになった時に好きなだけしてね。
全くルリ姉の中二妄想には困ったも・・・っ!?ね、ねぇ高坂くん、
なんで恥ずかしそうに、そっぽ向いて頬を指で掻いていたりするの?ルリ姉しゃべってないよ!?

『俺もだよ瑠璃』
『愛しているわ京介』

って空気が体に悪いんだけど!なんで伝わってんの!?
恋人同士になると、もれなくGPSどころではない、すごい機能が付与されるの?
連絡し合わなくても、会いたいと思えば『どこかでばったり』みたいなことができるの!?
やばい・・・このままじゃあたし、2人の空間に飲み込まれちゃ・・

くいくい

「おねぇちゃん、わたしもおにぃちゃんといっしょにいきたいです」
あぁ、ありがとうたまちゃん、おかげで2人が織り成す固有結界から抜け出すことができたよ。
けどごめんね。
「たまちゃんはルリ姉のお手伝いをしてくれるかな?
たまちゃんならルリ姉を止めることができると思うから、ていうかたまちゃんにしかできない」
「・・・わかりました、姉さまのおてつだいをしますです」
しゅんと残念そうにしたものの、すぐに満面の笑みで了承してくれる天使なたまちゃん。
あたしたち二人は、綺麗なままで大きくなっていこうね。
ルリ姉の妄想結界が広がらないように任せたよ。



「えーと、これで頼まれたものは以上だよな、日向ちゃん」
「・・・・・」
「日向ちゃん?」
「・・・っえ、あ、うん、そうだよ」
「なんか家を出てから元気ないけど、どこかで休もうか?」
「ううん・・・大丈夫だから」
2人の固有結界に充てられて、
あまあまムードで気分が悪くなった・・・というのもあるけど、
ラブラブっぷりを見せつけられて、何の心配を持つ必要はないのに、
朝の夢を思い出してしまった。

あの夢の高坂くんとルリ姉も、間違いなく、愛し合っていた、
想い合っていた、通じ合っていた・・・それなのに。

『俺は、お前と付き合えない!好きなやつが、いるんだ!』

!!!

夢だ
あれは夢なんだ
朝、ルリ姉と話して夢だとわかっていても、
どうしても不安になってしまう。

・・・そうか

あの夢では、ルリ姉から高坂君を振ったんじゃない。、
あの夢では、高坂くんからルリ姉を振っていた。

運命の記述に記された、『儀式』によるものではなく、
『儀式』を打ち砕く、高坂くん自身の『意思』によって。

花火大会から続いた『痛々しい』ルリ姉は、もう見たくない。
今度は立ち直ることができなくなるかもしれない。
なら確かめなくっちゃ、ルリ姉のために、
高坂くんの今の『意思』を、
「あのさ高坂くん」
「ん?やっぱりどこかで休もう・・・」





「人生相談があるんだけど」





「・・・まさか日向ちゃんからまで、人生相談を受けることになるとは思わなかった」
「ルリ姉から聞いていたからね、高坂くんに相談したいときはこう言えばいいって」
ホントに言えばいいと教えられたのではなくて、
聞いてもいないのに京介自慢をされて解ったことだけど。
「それで人生相談の内容は?」
「あのさ高坂くん・・・ルリ姉と別れたりしないよね」
「瑠璃と!?も、もしかして・・・また?・・・」
「あ、えとルリ姉に何かあったわけじゃないんだけど」
「そ、そっか、良かったぁ」
安堵の溜息をもらす高坂くん。
またってどういうことだろう?ルリ姉何かしたのかな?
・・・もしかして運命の記述に書いてあったことだと、思わせちゃった?

「日向ちゃん、どうして、俺と瑠璃が別れるなんて思ったんだ?」
「夢をみたの」
「夢?」
「高坂くんがね・・・ルリ姉のことを振っちゃう夢」
「なっ・・・・・・」
「夢だとわかっているのに、なぜか安心できなくて」
「・・・・・・・・・・・」
「そんなこと起きるはずがない、2人はずっと愛し合うんだって、
心配する必要がないはずなのに・・・あたし嫌だよもうルリ姉が悲しむ姿をみるなんて・・・」
ルリ姉はずっとひとりだった。
それが今や友達ができて、
親友と呼べる人がいて、
一度は別れちゃったけど、
もう一度、将来を近いあうことができる、
恋人ができて幸せのはず。
ずっと続いて欲しい。
手放すことがないで欲しい。
五更瑠璃という邪気眼中二電波女でどうしようもないし、
人付き合いは苦手どこらか欠陥ありまくりだけど、
友達を大切にして、 
時折ものすごく理不尽で怖いけど、
妹のことを大切にしてくれる姉を持つ五更日向の願いだ。

何の確証もない単なる夢だと一笑されちゃうだろうか。
さっきみたいに中二電波を発しながら、愛を語りだすのだろうか。 
・・・もしかしたら夢の通りなのだろうか。

そのどれでもなく

「安心してくれ、そんなことにはならないから」


旅館までルリ姉を背負ってきた、かっこいい高坂くんがいた。
なんだけど
「だったら・・・証拠をだしてよ証拠!」
 なんて子供じみたことを言っているんだろうあたしは。
 証拠なんて出せるわけないのに、こんなのあたしのキャラじゃないなぁ。
「・・・・・・・わかった」
「・・・・・・えっ?」
子供のわがままと、怒るでも窘めるでもなく、
高坂くんは見せてくれるという証拠を。
「誰にも言っていない特別な秘密があるんだけど、絶対に秘密にできる?
「う、うん」
なんだろ?も、もしかして、婚約指輪とか?
けど、高坂くんがそんなお金持っているとは思えないし。

高坂くんがポケットから取り出したもの。

えーっとテレビとかでちょっと見ただけで、
実物がどういうものかなんて知らないんだけど、
これってあれだよね。




『婚姻届』

「・・・なんで持っているのそれ?」
「・・・うち、部屋に鍵がかからないんだ、万が一見られたらと思うと・・・」
顔を手で覆って崩れる高坂くん。
今日はどうやら、かっこいいとか思った途端に、裏切られる日らしい。
あーうん確かにルリ姉もぼやいていたよ、
『京介の部屋は鍵がかからないから、その・・・』
どう考えても小学生5年生の妹に話す内容じゃなかったのを覚えている。
ルリ姉はあたしのことを、なんだと思っているんだ。
あたしは物言わず話を聞く闇の住人じゃないんだけど。
たまちゃんの教育だけで、あたしはもう諦められたのだろうか。
あれ、あたし誰のために、何しているんだっけ。

「どうして婚姻届なんて書いて持っているの?」
「・・・ゲー研の部長がふざけて送りつけてきて、
試しに書いてみたら、捨てれなくなっちゃって・・・」
・・・これって自分の好きな子と、相合傘の落書きするのと同じなんじゃ、
今時小学生でもしないよ高坂くん・・・
「いつか俺の名前の横に瑠璃の名前が書かれて、
結婚して家庭を持って、一緒に暮らす・・・ってのは無理かもしれないけど、
桐乃もいて、今と変わらず、いや今以上に幸せに、なんて//・・・日向ちゃん?」
  
キリネエ?
ナン、ダッケ?
ナニカ、ナカッタケ?


『俺は! 妹が好きだあああああああああ! だから! 
お前とは付き合えなあああああああああああい!』

『誰よりも好きなんだ! 手放したくないんだ! そばにいて欲しいんだ!』

『その気持ちを、伝えに行くと決めた! だからおまえの気持ちには応えられない!』

『好きで好きでしょうがねえんだよ! 俺は妹を愛しちゃってる変態なんだよ!』


「駄目! 絶対にダメ、キリ姉と!!桐乃さんと一緒なんてっ!!!!」
「日向ちゃん?」 
困惑する高坂くん、でも止められないキャラとか関係ない!
だって、だってきっとキリ姉と一緒にいたら、きっとあの夢みたいに・・・
「なんでルリ姉だけじゃだめなの、兄妹なんだよ、妹なんだよ!」
小学生の私でもわかる、それはきっと『駄目』なことだ。
いや、良くても駄目でも関係ない、
結果としてルリ姉があんなことになるかもしれないことが耐えられない。
どうしたら、どうしたら高坂くんがルリ姉だけを見てくれて、
ルリ姉ただ1人を愛してくれるんだろう

--『・・・私を振ったあの男を、呪い殺すため、禁書に記された毒を生成中よ』
--『喜びなさい、今日は珍しいお肉が手に入ったから、晩御飯は期待していいわよ、
--そうねハンバーグでも作りましょうかフフフ』

不吉な考えがよぎる。
あたしは何を考えているんだ、そんなことしたって何も・・・


「けど・・・瑠璃も願っていることなんだよ?」
「ルリ姉、が?」
「日向ちゃんは運命の記述が、今何冊目か知ってる?」
「う、うん」
朝聞いたばかりだし。
「どれだけ冊数を重ねてもさ、最後には絶対に『かいて』いるんだ」、
「何を?」
「『理想の世界』を」
「りそうの、せかい?」
「そう、最初は俺と桐乃、次がそれに黒猫、沙織が加わって、
あやせがいて、加奈子がいて、麻奈美がいて、瀬菜がいて、
部長に真壁君、御鏡がいて、俺たちの両親がいて、
最近だと、俺たちの子供なんて出てきたかな、
それを桐乃と日向ちゃと珠希ちゃんが遊んであげているんだ。
瑠璃と儀式をこなして、最後のページを見る度にに思うんだ、
この理想の世界を絶対に叶えないといけないなって。
・・・桐乃のことはもう片付いている。
日向ちゃんの心配する『一緒になる』ってのはないから安心してほしい。
瑠璃だけを愛するって約束する、この紙が俺の覚悟の証だ」

なんて


なんて言う高坂くんは超かっけぇ


超カッコイイ


あれは起きるはずのない夢なのだと、


ようやく信じることができた。


高坂くんとルリ姉の未来は幸せなものなのだと。

「これで安心してくれた?」



ただ高坂くんはもてもてらしいので、
一応保険をかけておこうかと思う。
他の女の人にふらついたりしないようにする。

「高坂くん」
「ん?」




ちゅ

「なっ!!」
「ルリ姉を幸せにすると約束してくれたお礼だよ。
 もし、『約束を破ったら、全身から血を噴き出してのたうち回りながら死ぬわ』」

とびきりの呪いを

「る、瑠璃!?あ、いや、ひ、日向ちゃん、今の」
「どうしたの高坂くん、あたし何の事だかわからないなー、それより早く帰ろ」

ねっ言ったでしょ、自信があるって。
さて心配事もなくなったし、後は早く帰ってルリ姉の美味しいごはんを食べたいなぁ。

ガクガクガクガク



おかしいな足が動かな・・・・ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!


「・・・・フ、フフフクククク、何を、しているの、かしら、あなたたちは。
 いつまでたっても帰ってこないから、様子を見にきてみれば、
 自分の妹だけじゃ飽き足らず、人様の妹にまで手を出すなんて・・・」

ほ、本人登場!な、なんでルリ姉がここに!?
高坂くんが連絡を?

ブンブンブンブン

アイコンタクトを送ってみると、全力で首を横に振られた。
・・・ほ、ほんとにGPSいらずなんだ、すごいなー愛って・・・・
・・・感心してる場合じゃない!
なんで学校の制服、それも弁展高校の制服を着ているのかは後だ。
ここで選択肢を間違ってしまったら、デッドエンド直行になっちゃう。


「ち、違うぞ瑠璃、これには深い訳があって」
「そ、そうだよルリ姉、まままずは話を、
 ただ高坂くんの愛を確かめていただけで」
「って!何言ってんだ!違うぞ瑠璃、落ち着こう、な?」

「2人とも」

一言で世界が荒廃した大地へと変貌する。
あ、あたしこの風景、格ゲーやとあるOPで見たことある。

「「はい」」

変貌した大地に降り立つルリ姉は、


とても

とても

綺麗な笑顔をして。


「そこに正座なさい!!!!」


闇のオーラ全開で死を宣告をされ、
世界が闇に包まれました。

・・・
・・・・
・・・・・


わかったことがある。

闇猫様怖い闇猫様怖い闇猫様超怖い
あやせとも麻奈美とも違うまた別の恐怖。
どんなかって?
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・ガクガクガクガク
・・・・・・・・頼む聞かないでくれ。

たっぷりお説教をくらった後の帰り道。
どれくらいの時間が経ったかわからないが、陽が傾きつつある。
ちなみに日向ちゃんは気を失ってしまい、現在俺が背負っている。
・・・無理もない。

正直、人生相談には驚いた、けど単なる夢だとは思わなかった。
瑠璃ではなく、桐乃を選んでいたなら、日向ちゃんの心配は現実になっていたから。 
だからこそ俺は、大切な姉を心配する、妹を安心させるために、全力で答えた。
「・・・その代償に姉を怒らせるという結果になっちまったけど・・」
瑠璃は少し前を歩いているせいで顔を見ることができず、
今、どんな顔をしているのかわからない。
幸せにすると言ったその日に、別れ話になんてなったら・・・
歩幅はあわせてくれているので、救済の余地はあるのだと思いたい。

桐乃がアメリカに行っちまって、怒らせて、『黒猫』をどんな目で見ていたかを、
謝って、御節介は焼き続けると伝えて、許してもらって、あの時もこんな夕焼けだった。
弁展高校制服姿の瑠璃と歩いていると、先輩後輩だったころの懐かしさを覚える。
昨日のことのような、ずっとずっと昔のような、心地の良い奇妙な懐かしさ。

恋人同士として、帰りにそのままデートに行ったりして、
もっともっと歩いてみたかった寂しさ。
以前、黒セーラ服姿(瑠璃先輩)を初めて見たとき、弁展高校制服を、
『先輩が望むのなら、着てあげてもいいわよ』という誘いに対して、
制服フェチみたいに扱うな、と返したものだけど、お願いしてみてもいいかもしれない。

前にこの状況を何とかしないといけないわけだが・・・
許してくれるなら、土下座中に踏まれようが、
御御足を舐めることだろうがなんだってしてもいい。
なんて考えていると、瑠璃が隣に並んでいた。
「・・・何を、話していたの?」
「・・・人生相談を受けていたんだ」
「日向が?」
ようやくこっちを向いてくれる。
とはいえ内容が内容だし言わない方が良いんだろうな・・・
わかった、話すので、そんな顔しないでください瑠璃さん。
「日向ちゃんがさ、夢を見たっていうんだ」
「夢?」
「そ、俺たちが別れる夢だって」
「えっ!?」
「俺が桐乃を選ぶために、みんなを振りまくるんだってさ」
「そ、そう、それで朝・・・」
「ん?」
「なんでもないわ・・・」
「そうか?」
もしかして日向ちゃんは、瑠璃に確認しようとしたんだろうか。
俺も、桐乃がそんな目に会うかも知れないなんてなったら、
いてもたってもいられないだろうし・・・俺が認めた奴じゃねぇと、
彼氏にはさせないから大丈夫だろうけど。

「・・・・・・」
「・・・・・・」
「そ、それで」
「ん?」
「どう、したの?」
「だから安心させてあげた、瑠璃を必ず幸せにするって」
「・・・それがあの誓いのキス?」
照れるか喜んでくれるかと思ったら、ジト目で睨んできてくれました。
そもそも誓いのキスは将来瑠璃とだな・・・
とは言え鈍感鈍感と罵られた俺だけど、あれは・・・
「・・・あれはお礼だってさ」
まさか姉妹揃って同じ呪いを、同じ個所にしてくるなんて思わなかったぜ。


「時々・・・・」
「ん?」
瑠璃が立ち止まるのに合わせ、俺も歩みを止める。
夕日が瑠璃を照らして可愛くて、綺麗なのに、愁いの色を含んでいる。
「時々不安になるの、あなたが私よりも桐乃を選ぶんじゃないかって」
「・・・・・」
「たとえあなたが桐乃を選んだとしても、近親相姦であろうと、
私が2番でも、そばにいることができれば、それでもいい、
理想の世界へと近づいているのなら、あの夏もその為に行動したのだし」
「・・・・・」
「けれどそれすらも叶わなくて、理想の世界をも打ち砕き、
全てを捨ててでも桐乃だけを選んでしまうのではないかって・・・
不安を掻き消したくて、運命の記述を書き連ねるのだけれど、一向に消えないの」
「・・・・・・・・・」
「信じて・・・いいのよね?」
俺は・・・・馬鹿だ。
鈍感さもましにはなったかなんて思っていたけど、自惚れもいいところだ。
日向ちゃんを安心させるだけで、一番安心させてあげないといけない人を、
不安にさせてしまうなんて、馬鹿もいいところだ。

桐乃とのことは、2人の前で、『黒猫』に告白した時に、決着をつけた。
瑠璃以外の人を愛することなんてないのに。

俺の大切な彼女は、神猫様との初デートの日から変わらず、
自身満々で、不遜で、自己評価が低くて、いつでも不安なままなのだ。
だから、理想を目指すために運命の記述を記す。
だから、理想を確定させていたくて運命の記述を記す。
そんな風に、考えていることに腹がたつ
そんな風に、考えさせてしまう自分に腹が立つ。
・・・『ポケットに入れている、俺が瑠璃のことを一生愛す誓いを出す』、
選択肢が浮かび上がる。
今これを出せば、確かに瑠璃は安心してくれるかもしれない。

ただ

今、ここで瑠璃を幸せにするという『覚悟』を示すことはできる。
けど一時しのぎに過ぎない。
俺はまだ、瑠璃を幸せにするという『責任』を持つことはできない。
きっと、今度はこの約束が本当に守られるのかを不安に持つだろう。
まだ伝えられない。
--------------------------------------------------------------
「お義父様に怒られるから?」

「茶化すなよ、その、だな、俺は「ちゃんと」したいんだ、
高校を卒業して大学に行って就職して黒猫の事、
「責任」持てるようになってからにするって決めてるんだ。」
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なんて昔、『黒猫』に伝えたことを思い出した
・・・・・ただなんつーか俺も男だから、揺らぎそうにはなるんだけど・・・

まだ、ただの学生でしかない俺ができるのは、
今の俺ができるいつも通りの全力をやるしかできない。
「なんだったらこのまま瑠璃への気持ちを、ご近所さんに叫びまくってこようか?」
「や、やめなさい///せっかく引っ越しをしたというのに住めなくなってしまうわ」
「冗談だって、いくら俺でもそんなことしねーよ」
「・・・どうかしら、あなたならやりかねないわね」
さすが俺の彼女はわかっている。
過去そうしてきたように、それが必要なことだというなら、
俺はなんだってやるのだろう、現に今、冗談と言いつつも本気だった。
日向ちゃんを背負っていなければ、実行に移していただろう。
街中だろうと人里離れた場所であろうと、俺の声を想いを全てを瑠璃へと届けるために。
「困った雄ね」
「ははは」

気が付くと俺たちはどちらかがともなく手を繋いでいた。
あの時できなかったことが、今じゃ恋人繋ぎにまでなっているんだ。
今日言えなかったことも、近いうちに言えるようになる。
つか言う。


「瑠璃」
「なあに? 京介」


少し屈んで、
少し背伸びして



キス


ただそれだけで、
伝えることができた気がする。
今の俺の気持ちを。
(瑠璃の事を一番愛している、だから安心してほしい、
もう少し時間が経てば、ちゃんと言葉にするから)



こくん





顔を赤らめながら



瑠璃が頷く



『ずっと離れないで恋心消さないで、ふたりもう一度手をつなげるように』


繋いだ手を放すつもりなんてない。
またいつか不安に感じさせてしまうこともあるかもしれない。
そしたら、安心してもらえるまでこうして手を繋ごう。
だめなら、安心してもらえるまでぎゅっと抱きしめてあげよう。
それでもだめなら、今までと同じように、痛かった中坊の時以上に、
俺にできることを全力でやるまでだ。




『俺に任せろ』つってな




じゃあ手を繋いでいない、空いている方の手は?
決まっている理想の世界のために、
俺たちと関わる人たちへと伸ばして、幸せを繋いでいくだけだ。


「・・・・まずは1人目・・・だな」
「・・・そうね」



「おっそい!どこほっつき歩いてんのよ!手なんか繋いじゃってこのバカップル」








いつもだったら邪魔しちゃうところだけど、
今日は黙っておこう。
背中あったかいし。


また、あたしは夢を見た。
今度はとてもとても幸せな夢を、現実のものになるという確信ある夢を。
ふたりに縁ある人たちみんなが幸せな表情を浮かべて、
中心には今生だけではなく来世も、未来永劫の愛を誓い合ったふたりがいる夢を。









「お幸せに、キョウ義兄、ルリ姉」

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