エイプリル・フール。
そんな俗世の真似事をしてみようと思ったのは、後々思い返せば、全く気の迷いとしか言いようがないわね……。
そんな俗世の真似事をしてみようと思ったのは、後々思い返せば、全く気の迷いとしか言いようがないわね……。
――此処は先輩の部屋。
既に“我が領域”と成ったベッドの上に悠然と腰を下ろした私は、妖艶な仕草で足を組み、悪戯っぽく囁く。
既に“我が領域”と成ったベッドの上に悠然と腰を下ろした私は、妖艶な仕草で足を組み、悪戯っぽく囁く。
「フフッ――今日は私があなたの使い魔となってもいいわ」
「よし、それじゃ契約の儀式をするか!」
「即答っ? ……って、きゃっ」
「よし、それじゃ契約の儀式をするか!」
「即答っ? ……って、きゃっ」
ガバッ!
椅子に座っていた筈の先輩は、瞬時に私の隣に移動したかと思うと、そのままの勢いで私の身体をベッドへと押し倒した。
こ、この私の一瞬の隙を突くなんて……先輩も、なかなかやるようになったわね――なんて感心している場合じゃないわっ。
こ、この私の一瞬の隙を突くなんて……先輩も、なかなかやるようになったわね――なんて感心している場合じゃないわっ。
「ちょっ、こら……っ、やめなさい……っ」
手足をばたつかせて抵抗を試みるものの、現世の私の非力な体躯では児戯に等しい。
現に余裕綽々、といった表情の先輩は、嘲るように言う。
現に余裕綽々、といった表情の先輩は、嘲るように言う。
「あれ、使い魔って主の命には絶対服従、なんだろ?」
「そっ、それはっ、契約を終えてからのことよっ。私は『なってもいい』と言っただけで、まだ『なった』わけではないわっ」
「そっ、それはっ、契約を終えてからのことよっ。私は『なってもいい』と言っただけで、まだ『なった』わけではないわっ」
つい反射的に言い訳をしてしまったけれど、そもそも前提から間違っている気がするわ。
――そうよ、これは単なる冗談。ちょっとした戯言なのよ。お、落ち着いて頂戴、お願いだからっ。
――そうよ、これは単なる冗談。ちょっとした戯言なのよ。お、落ち着いて頂戴、お願いだからっ。
しかし、私が口を開くより早く、先輩のどや顔が目前に迫る。
「ふっ。だから、その契約をこれからするんじゃないか――」
あぁ……先輩がこの顔をした時は、絶対にろくなことを考えていないのよね……。久々に思い知ったわ、先輩の二つ名を。
というか、へたれのセクハラ先輩にしてこの余裕――、クッ、さては初めから虚言と見抜いていたわね……っ。
というか、へたれのセクハラ先輩にしてこの余裕――、クッ、さては初めから虚言と見抜いていたわね……っ。
「わ、分かったわ……降参よ。今のは冗談……“エイプリル・フール”とかいう世間の不文律を少し真似てみただけよ」
「なんだ、冗談だったのか。んじゃ、やめるか」
「なんだ、冗談だったのか。んじゃ、やめるか」
ほっ。助かったわ……。やはり慣れない事はするものではないわね。所詮は人間風情の俗習、この私に相応しいものではないわ。
安堵の溜息を漏らし、体を起こそうとすると。
早鐘を打つ私の心臓の辺りに、ふにふに、というような感触がする。……ふにふに?
安堵の溜息を漏らし、体を起こそうとすると。
早鐘を打つ私の心臓の辺りに、ふにふに、というような感触がする。……ふにふに?
「……というか先輩――どうしてこの体勢のままなのかしら? そして、い、一体、どど何処に手を置いているのかしら……っ?」
先程の台詞と裏腹に、先輩は私の上に覆い被さったまま動こうとしない。
そればかりか、その手は私のむ、むむ、胸の上に……っ。
そればかりか、その手は私のむ、むむ、胸の上に……っ。
「ん? まぁ細かい事は気にするなって」
「こっ、細かくないわよっ。……はぅっ……だ、大体、あなたさっき『やめる』って言ったばかりじゃないの……あっ」
「うむ、『やめる』と言ったな。あれは嘘だ」
「――っな……」
「だって今日はエイプリル・フール、だろ?」
「こっ、細かくないわよっ。……はぅっ……だ、大体、あなたさっき『やめる』って言ったばかりじゃないの……あっ」
「うむ、『やめる』と言ったな。あれは嘘だ」
「――っな……」
「だって今日はエイプリル・フール、だろ?」
至極爽やかな笑顔でそう言い切った目の前の変態からは、最早その暴走を止める気配は微塵も感じられない。
片腕で私を抱えたまま、もう片方の手で私の制服の“封印”を解いていく――
片腕で私を抱えたまま、もう片方の手で私の制服の“封印”を解いていく――
「や……っ、ま、待って……まだ……こ、心の準備が……っ」
-続かない-