2ch黒猫スレまとめwiki

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匿名ユーザー

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『はじめてのデュエット』

京介と黒猫のデュエットネタです。
リクエストにお答えして――――お答えできてるかなぁコレ……

それは、とある秋の日の事だった。

いつものように部屋で勉強に精を出していると、電話が鳴った。
画面を見ると、黒猫からだ。

俺の心臓がトクンと跳ね上がる。
あの夏の終わり――黒猫と別れた後も。
俺達はこうして度々電話をしている。

……ちょっとセンチメンタルな言い方になっちまったな。
まぁ気にしないでくれ。

俺は電話を取った。


『京介、今大丈夫?』
「あぁ」
『何をしていたの?』
「ん? 何って俺は受験生だぞ。 勉強だ勉強」
『そう……ごめんなさい。 邪魔をしてしまったわね』
「いや、いいって。 ちょうど休憩しようと思ってたところだ」
『な、ならいいけれど』


黒猫からの電話は、けっこうタイミングよくかかってきたりする。
ちょっと休憩しようと思っていた時、とかな。

べ、別に黒猫の電話に出るのを正当化しようとか、そんなんじゃねーからな。


『あの……ね、京介。 ちょっと相談が……あって』
「ん? なんだ?」
『その。 受験生を誘うのも心苦しいのだけれど』
「……ま、言うだけ言ってみろよ。」
『今度の土曜日、空いているかしら?』
「あぁ。 土曜日なら空いてるぞ。 マスケラのイベントか?」
『そう……言えば、そうなのだけど……』


なんだか歯切れが悪いな。
ちょっと恥ずかしがっているというか、躊躇している様子だ。


「一日くらい、いい気晴らしだよ。 ここんとこずっと缶詰だからな」
『そう……よかった』
「で、どーゆーイベントなんだ?」
『……コスプレ大会』
「ん?」
『……こ、コスプレ大会。 一緒に出場して欲しいの』


そ、そりゃあ……
また、無理難題が来やがったな。



◇ ◇ ◇



土曜日。

秋葉原の駅前で待っていると、荷物を抱えた黒猫が現れた。
ってか――


「その服装……」
「へ、変かしら……」
「いや、か、可愛い……ぞ。 黒猫」
「ば、莫迦」


白猫・秋バージョンってところか。
薄手の白いタートルネックにカーキのスカート。
黒猫がブーツを履くのなんてあまり想像していなかったが……

くそっ こりゃ桐乃の仕業だな。
やばい、見てるだけで頭がボーっとしてくる。

ん? 胸には……


「それ」
「……えぇ」


夏コミで俺が買ったやつ……だよな。


「黒猫……その……」
「何かしら」


ダメだ、クラクラしてきた。
お前それは反則過ぎるだろう!


「す、少しだけ、手、つないでみないか……?」
「な……」
「……あ、す、すまん。 ダメ……だよな」
「いえ、その……ダメではないわ」


ダメ元で言ってみた、というより口が勝手に動いてたんだが。
――言ってみるもんだな。


「ほら、荷物。 持つよ」
「え、えぇ、お願いするわ」


俺達は二人で真っ赤になりながら、手をつないで会場に向かった。



◇ ◇ ◇



コスプレ大会が始まった。

黒猫はいつものクイーンのコスプレ姿に。
俺は漆黒の姿になっていた。

っていうかなんだ、私服よりコスプレ姿の方が見慣れてるってのも変な話だが。
こいつの場合、逆にさっきの私服の方がコスプレなんじゃないだろうか。


ちなみにこの大会は、どうやらマスケラの大会というわけではないようだ。
色々なアニメキャラに扮したコスプレイヤー達が、そこかしこで出番を待っている。

人数を見ても、結構規模の大きな大会らしい。


「おい黒猫……」

ビクッ

「な、ななな何かしら京介」
「いやお前緊張しすぎだろう……」
「き、緊張なんてするわけないじゃない。 たかが、人間、風情の、前で――」
「わ、分かった分かった。 で、そういやまだ聞いてなかったんだが」
「?」
「ステージ上で、何すんの?」
「歌よ……」
「は?」


え、えぇっと……黒猫……さん?


「今、なんと……」
「う、歌、と言ったのよ!」
「くぁwせdrftgyふじこlp!?」


な!?
……ちょ、ちょっと待ってくれ。
俺そんなこと一言も聞いてないよ!?


「べ、別にあなたが歌う必要はないわ」
「へ?」
「私が歌うから、あなたは後ろで薔薇でも持ってポーズを決めていなさい」


……いや、それはそれでどうかと。


「お前、歌なんて歌えたのか?」
「ひ……人前で歌うのは、初めて、よ……」
「……そ、そうか」


まじか。
なんというか、たまに思うんだけどさ。
お前って『行動力のあるヘタレ』だよな。

……はぁ、仕方ねぇ。


「俺も一緒に歌ってやるよ」
「えっ?」
「だから、俺も一緒にさ、歌ってやるから」
「あ、あなた……」
「曲は?」
「……」


黒猫は、心底驚いたという顔で俺の顔を覗き込む。
顔がほんのり赤くなって、少しボーっとしている感じだ。


「……『贖罪のセレナーデ』よ」
「あぁ、二期のエンディングか」
「そう……」
「じゃあ普通に、漆黒の歌うパートに入る形でいいか?」
「え、えぇ……いいわ」


俺は携帯で歌詞を検索し、頭の中で練習し始める。
ま、何度も聴いてるからな、メロディーはすぐに浮かんでくる。
加奈子ほどの記憶力がなくても、なんとかなるだろ。


「あ、あの……」
「ん? なんだ?」
「ありがとう……」
「別に、礼を言われる筋合いはねーよ」


お前にだけ、恥ずかしい想いをさせるわけにもいかねーしな。
どーせ後でのたうち回るなら、俺も道連れにしろってこった。



◇ ◇ ◇



「エントリーナンバー16番、『チバの堕天聖黒猫とその下僕』さん、どうぞー」


えらい名前でエントリーしたんだな、お前。
直前までの緊張が一気に吹っ飛んだぞ。


ステージ上に上がる俺と黒猫。


あれ?
こいつもすげー緊張してたハズなのに……

いつもなら固まって動けなくなるようなところで、
黒猫はスタスタとマイクのところまで歩いていく。

意外と加奈子みたいに肝が据わってんのかなぁ、こいつ。


「 “ せ ん よ う ” の堕天聖黒猫です」


……違った、堕天聖様は単純に怒ってらしたようだ。

ま、いい感じに緊張がほぐれてよかったんじゃないか?
結果論だけどな。


「歌います。 『贖罪のセレナーデ』」



◇ ◇ ◇



「得点は~? ……69点!! なかなかの得点ですよ~」


……俺達は歌い終わった。

得点は、ほどほどの得点だったが――
今の俺達には、どうでもいいことだった。


「おやおや、歌い終わって見つめ合ったまま固まってしまいましたー」


はっ!?
お、俺は何を――

黒猫はまだ、赤い顔で俺を見つめて固まっている。
俺は黒猫に駆け寄ると、ポンッと肩を叩いた。

我に返った黒猫は、マイクに向かって挨拶をする。


「ありがとうございました」


そしてそのまま、ふわふわした足取りで、俺達は舞台裏に下がっていった。



――――数分後。



控え室で、俺と黒猫は並んで座っていた。
お互いを見つめ合ってボーっとしている。
特に何を話したわけではないが――

今は、お互いの気持ちが手に取るように分かっている。


「京介」
「ん?」
「大会が終わった後、時間ある?」
「あぁ……カラオケってこの近くにあったよな」
「えぇ。 とりあえず2時間くらいでいいかしら」
「そうだな」


これが、以心伝心というものなのだろうか。



◇ ◇ ◇



「闇に落ちる~~~~~♪」


俺達は2時間歌い、さらに1時間延長した。


「もうこんな時間……すっかり遅くなってしまったわね」
「そうだな……さすがに喉もちょっと痛くなってきたしな」


プルプルプル……

カラオケルームの電話が鳴り響く。
俺は受話器を取った。


『お時間10分前になりますが……』


俺は黒猫の方を向き、指を三本立てて首をかしげる。
黒猫は何も言わず頷く。


「30分延長でお願いします」


俺が電話をしている横で、黒猫は曲を登録する。
ほどなくして前奏が始まった。


「歌います。 『贖罪のセレナーデ』」



◇ ◇ ◇



あーあ、すっかり夜も遅くなっちまったな。

黒猫の家は駅から少し離れてるし、
ちょっと前に物騒な事件があったみたいだし。

てか秋限定版の白猫をこんな夜中に一人で歩かせたら、
なにがあるか分かったもんじゃねーし。

まーなんかあると心配だから、
俺は黒猫を家まで送ることにしたよ。


「あなたの家の門限はすっかり過ぎているけれど」
「いや、今日みたいな場合は送らないほうが親父に怒られるさ」
「そう……」


結局あの後、さらに1時間延長して歌っている途中で――
桐乃から電話がかかってきたのだ。


『あんた今どこで何してんの!? 黒いのは!?』


これはただの言い訳に過ぎないんだが、
俺達はどうやら『此方の世界』とは違う場所に行っていたらしい。

だから、それまで親からの電話にも、メールにも、俺は気付かなかったし。
黒猫も黒猫で、家族からの電話にもメールにも気付かなかった。


電話越しに、いつもは温厚な黒猫の親父さんが怒鳴ってきたしな。


『貴様まさか瑠璃を――』


いや、さ。
例えば桐乃が男友達と行方不明になったら、
そりゃ俺だって同じようなこと思うだろうよ。


だから、黒猫の親父さんにちゃんと弁解するってのも、
黒猫を家まで送っていく理由の一つだ。


「ねぇ京介……」
「ん? なんだ?」
「明日はその、勉強しないとダメよね……」
「そ……そうだな。 さすがに2日は休めないな」
「そうね……」
「でも、さ」
「?」
「半日くらいなら、大丈夫だと思う」
「そう……」


きっと、俺と黒猫は今、同じ事を考えている。


「今日、お前の家、泊まってもいいか?」
「えぇ……明日に向けて喉を休めておきましょう」
「そうだな。 松戸駅前のは何時からやってるんだ?」
「後でネットで調べてみるわ」


俺はボーっとした頭で、黒猫の顔を見つめる。
黒猫も、赤い顔をして俺の事を見つめ返す。



俺達の頭の中には、同じ曲が延々と繰り返していた。

◇ ◇ ◇

追記『五更日向の日記』

○10月3日
今日のルリ姉はすごく変だった。
というか、昨日から変だ。

昨日、高坂くんとルリ姉が帰ってきたのは夜遅くだった。
誰も連絡が取れなかったらしい。
ってことは、そーゆーことでしょ~!?
ひやぁぁ~ん♪

『カラオケにいた』って言ってるけど、誰も信じてない。
お父さんの落ち込みようったらなかったな。

しかも今朝は早くから高坂くんとデート。
帰ってきたのは夕方。
声がガラガラに嗄れてたけど、まさかそんなに激しく――
いやぁ~ん♪ ルリ姉ってばハァハァ

夕飯作りながら鼻歌歌ってるルリ姉なんて初めて見た。

何を言っても上の空だったから、
ルリ姉に「破廉恥な雌ね」って言ってみた。
コロッケが消えた。

とりあえず、高坂くんのコスプレ大会動画が
ネタ動画扱いされてる件は伏せておいた。

今日はもう寝よう。

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