夢と希望を守る戦士・仮面ライダー555

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夢と希望を守る戦士・仮面ライダー555 ◆Z9iNYeY9a2


俺にとっての夢。
なぜ戦うのか。

確かに持っていたはずで、確かに心の中にあったはずのもの。

だけど失い続ける中で渇いていき、いつしかあいつの言ってたように死に場所を求めるようにもなっていた。

なぜ戦っていたのか。
何を守ろうとしたのか。

何を希望としていたのか。


「お前だったら、なんて答える?もし何のために戦ってるのかって聞かれたら」

不意に口から出ていた問いかけ。




「………何で君は、それを俺に聞くのかな?」

それに、呆れたような声で答える隣にいる男。
嫌そうに顔を顰めているのは、草加雅人。
色々いがみ合いながらも、カイザとして共にオルフェノクと戦ってきた、巧にとって仲間といえる者だった存在。

「…だってお前は、こういうことで迷ったりしなかったじゃねえか」

この男のことは嫌いではあったが、戦いにおいては自分よりも迷いなく己の信念を貫いていた。
ほんの僅かだが、そんな部分に憧れも感じなくもなかった。

だからだろうか、この疑問を問いかけられる存在だと思ったのは。
己の信念の中で自分の罪を隠して迷い続けてきた木場勇治よりも。
背を預けると共に守るべき対象であった巴マミよりも。
その信念の起源にどこか危うさを感じていた衛宮士郎よりも。


「答えてやる義理はない、と言いたいが、今の君があまりにも不甲斐ないからな。
 特別に答えてやってもいいさ」

拒絶されるかもしれないとも思ったが、意外にも草加はすぐ答えてくれた。


「何のために戦っているのか、だったな。
 君も知ってるだろう、真理のためだ」
「それは分かってる。俺が聞きたいのは」
「その先に何を求めてるのか、だろ。
 単純な話だ」

そう言って草加は、顔を近づけた。

「君たちみたいなオルフェノクのいる世界で、俺や真理が平和に暮らせるわけないだろ。
 そんな世界の汚れのような存在がなくなって、俺たちは安心して生きていけるんだよ」
「お前達の生きる世界のため、か」
「じゃあ逆に聞きたいんだけど、君は何を思って戦っていたのかな?
 夢を守ると、罪を背負うと言って本来仲間であるはずのオルフェノクを殺していって、何を求めていたのかな?」

嘲笑する表情を浮かべながら、草加は巧に逆に問いかける。

その言葉を受けて、巧は考える。
何故戦えたのか。
夢を守ることに、何を見たのか。

何を望んだのか。
大それたものを望んだつもりはなかった。
ただ、俺が欲しかったのは。
俺が見たかったもの、それは。

夢を持った人間の持った希望。
そして、その紡いでいく世界。
もしそれが世界を包めば、もしかしたら世界はもっと美しいものになるんじゃないか。


「…そういう、ことか」
「答えは見えたか?」

迷いは晴れた。
自分がなぜ戦っていたのか。何を望んでいたのか。
そして、まだ立ち止まることができないことにも気付くことができた。

「ありがとな。今回は礼を言っておくぞ」
「ふん、礼なんていらないさ。
 こっちはせいぜいその代わりに、君がどんなふうにもがき苦しんで死んでいくのか、じっくりと見させてもらうとするからさ」

草加の姿が遠くなる。
意識が覚醒しようとしているようだ。


「…ありがとな」

もう聞こえないだろう感謝の言葉を、再度口にする巧。
その心の強さは、やはり巧にとって必要なものだったのだと。

あれは本当に草加だったのか。
答え自体は自分の中にあってただそれがただ草加の形を取っただけなのかもしれない。

ともあれ、分かったことは、答えは得られた。
あとは、立ち上がるだけだ。


仮面ライダー4号。

ある世界において、乾巧が持つ仲間の死に対する強い悲しみをきっかけとして生み出された機械兵士。
彼が現界において聖杯から与えられた役割は、『乾巧に終末をもたらす者』
故に乾巧が戦う場合その存在は大きな驚異となる。

しかし、心せよ。

サーヴァントの型に嵌められ呼び出されたこの戦士は、敗北し命を落とした存在。

4号が乾巧にとっての驚異となるのと同じく。
逆に乾巧は、4号を打ち破ったものと同じその称号を持ち得るものであり。
すなわち4号を倒すことができる戦士であるということを。

その事実を忘れているのならば、この悪の機械兵士はいずれ敗れるだろう。




イリヤスフィールの声が聞こえなくなった。
向こうでアヴェンジャーが処理しているのだと判断した4号は、あの叫び声以降動かない乾巧の元に歩み寄る。
あれが万が一にも立ち上がるきっかけになったら厄介だ。

足元で倒れ伏す巧を、踏み潰さんと足を上げ。

振り落とした瞬間、巧の目は開いた。

瞬時に横に転がって、足を回避。

「…、起きたか」

しかしその動きはやはり体には負担だったようで、起き上がる途中、膝をついた状態で息を切らせている。

巧の目を見る4号。
その瞳からは、まだ戦意は消えていなかった。

「―――なあ、知ってるか?」

息を呑み込んで呼吸を落ち着けた巧は、唐突に口を開いた。

「夢ってのはさ、時々すっげえ切なくなるもので、時々すっげえ熱くなるものらしいんだけどよ。
 その夢に向かって走ってるやつってさ、すっげえキラキラしてんだよ」
「何を言っている?」

話の意味が分からず問う4号。
死にかけの男が意識でも混濁させて意味のない言葉でも話し始めたか?と思わず足を止める。

「そういうキラキラってのは確かに俺にはないけどよ。
 今を必死に生きて、夢を叶えようとしてるやつっての見てると、すっげえ守りてえってなるんだよ」

その間にも巧は体を奮い立たせながら立ち上がり、決して手放さなかったファイズフォンを開く。

「だから、それを奪うようなやつは許せねえし、戦うことが罪でも、守らなきゃいけないって思うんだよ」

巧の脳裏によぎる者たち。
イリヤや桜、枢木スザクや鹿目まどか。
彼らの夢は分からないし、今はまだなにもないかもしれなくても。
彼らが生きて夢を、希望を繋ぐことで戦いの証を立てられるなら。
きっと、自分の戦いにも意味があるだろう。

「だから、俺は戦うんだよ」

その時4号の中では、直感的な何かが警告を告げていた。
さっきまでの乾巧ならば問題なかった。
今の乾巧は、”危険”。

「戦う意味があるのか、守る意味があるのかって―――」

咄嗟に駆け出す4号。
しかし数歩踏み出したところで、響き渡る銃撃音。
突然体に衝撃が走りその足を止めさせた。

「当たり前だろうが!!!」

その瞬間で、巧の心は、体は固まった。

大きく上に掲げられ、ベルトに差し込まれたファイズフォン。

「――――変身!」

その体を、赤いフォトンストリームの閃光が覆い。
薄暗がりの闇を照らしながら、ファイズが顕現した。

「ちぃっ!」

変身を許してしまったことに舌打ちしながら、ファイズの傍に視線をずらす4号。
それを追った巧の目に入ってきたのは、巨大な銀色の影。

腕に掲げられたホイールを回して牽制しながらファイズの隣に降りてきた。

オートバジン。
この会場のどこかでまだ残っていたらしいそれが、巧の戦意に反応して飛んできたのだろう。

見なくなって二日も経っていないのに、巧にはその姿がずいぶんと懐かしいものにも感じられた。

思わぬ増援を前に、4号は大声で叫ぶ。

「スカイサイクロン!!」

自身の愛機の名を呼ぶと共に、洞窟の奥から機関銃を放ちながら一機の戦闘機が迫った。
巧に向けて放たれた弾丸をその前に出てくることで庇うオートバシン。

頭上を大きく過ぎ去っていくと同時に、オートバジンも飛び立ちスカイサイクロンへと迫っていく。

同時にファイズに向けて4号が迫る。

拳の連撃がファイズの胸を打つ。
退きそうになる体を堪えながら、前を見据えて追撃に放たれた一撃を脇で受け止める。
身を引こうとする4号の体に、返すように拳を打ち付ける。
動じている様子はなく、攻めに意識を向けたことで弱まった拘束が振りほどかれた。
至近距離から離れようとする4号に向けて中段蹴りを放つファイズ。
咄嗟に腕で受け止め防御。

バチリ、とその防いだ腕から一瞬火花が走った。
そこは先ほどフォトンブレイカーの一撃を受け止めた場所。
巧は気付いた。しかし4号に気付いている様子はない。

4号が距離を取ったところで、上を飛ぶスカイサイクロンからミサイルが放たれる。
同時にスカイサイクロンを迎撃していたオートバジンがその弾頭に機関銃を掃射。
巧の元に到達する前に宙を爆光が照らし、一部の破片が4号とファイズの間に炎を巻き上げた。

その火炎の奥から、ファイズが拳を構えて飛びかかる。
カウンターをファイズの胸に叩き込む4号。しかし同時に4号の体にも強い衝撃が走り膝をつく。
吹き飛ばされ地面を転がるファイズの手元を見ると、そこにはファイズショットが備えられている。

「チ、この程度で…!」

視線の先でゆっくりと起き上がったファイズは、ファイズショットを外してファイズポインターを足に取り付ける。

ならばこちらもライダーキックで、と考える4号だったが態勢を立て直すのが間に合わない。

(たかが通常のファイズ相手に、一体何が違う!)

ブラスターフォーム相手にも押していたというのに、何故こうもただのファイズ相手に手こずるのか。
答えが出るよりも先に目の前にファイズポインターが展開される。

受けきれないものではないはずだが、先ほどのグランインパクトから受けたダメージが判断を迷わせる。

駆け出したファイズが飛び上がったと同時に、4号はそれを迎え撃つように拳を引き絞る。

「らあああああああああぁぁぁぁ!!!」
「ライダーパンチ!!」

フォトンブラッドに包まれたファイズのキックと、4号の渾身のパンチがぶつかり合う。

拮抗する互いの一撃。

その中で、4号は何かに気付いたように拳を反らす。
拳はファイズのキックを受け流し、ファイズの頬を打つ形で突き抜けていった。
キックは体をわずかに反らした4号の腕を掠めるように通り過ぎていき、頬を打たれたファイズの体は4号の背後で地面を転がる。

ファイズの会心の一撃を受け止めた4号。しかし出てきた声には怒りが満ちていた。

「これが狙いか…、やってくれたな!」

キックを受け止めた腕には火花と電流が漏れ出ている。
幾度も放った攻撃と、今しがた受け止めたキック。それらで蓄積されたダメージが腕の機能に障害を与えている。
これではもうライダーパンチが放てない。下手に撃てば自壊する可能性がある。

同時に、巧の攻撃が何故ここまで体に響いているのかも察した。

ライダーキックを受ける以前と比べて、攻撃が正確になっているのだ。
こちらの攻撃がその身を打つとしても、的確にこちらへの一撃を打ち込んでくる。
防御をほぼ捨てて意識をひたすら攻めに向けている。

おそらくだが、迷いがなくなったのだ。
それまで巧を覆っていた後悔、悲しみ。それらによる潜在的な死の渇望。
しかし今の巧はただ自分が戦う理由に向き合った上でその力を振るっている。

腕のこともある。このままの状態が長引けば、乾巧の身が限界を迎えるか自分の身が打ち負けるかのチキンレースになるだろう。

『―――まずいぞ、これ以上加速すると爆発する!』
『構わない、それが――――だ!!』

一瞬脳裏に何かがフラッシュバックする。

(これは…、不味い…!)


咄嗟に4号は、その記憶を振り払うように起き上がった巧に向けて駆け出す。
狙うは今度こそその身を打ち砕く、そのための必殺技を。

巧が起き上がり、こちらへと視線を上げ。

「ライダーキック!!!」

4号の飛び蹴りが、ファイズの体へと迫り。


スカイサイクロンの銃弾を避けながらもホイールの機銃を放つオートバジン。
主であるファイズ、巧の元へ向かわせないためにこの場に縛り付ける必要がある。そのため執拗にスカイサイクロンに食い下がり攻撃を続けていた。

しかし戦闘機に対してスマートブレインの技術を注ぎ込んだ特注品とはいえバイク、その性能差は大きい。
既に銃撃や体当たりを受け止め続けたその体の節々からは火花が散っている。頭部のバイザーも割れ、胴体はひび割れ、機関銃は弾切れになりホイールも大きく歪んでいる。


オートバジンの割れたバイザーに、チリチリと光が点滅する。
その時、両翼の残り2発のミサイルをオートバジンに向けて射出。

飛び回って回避しようとするオートバジンだが、追尾機能によりミサイルはその後ろを追ってくる。

急旋回や高速退避しても食い下がってくるミサイルに対し、オートバジンはその手のホイールをミサイルに向けて投擲。
追いすがる一発に命中し爆発、その爆炎の奥に残りの一発が突っ込み遅れて爆発音が響く。

その奥から、爆風で左腕を損失したオートバジンがスカイサイクロンに向けて肉薄する。

迎撃の機関銃を放つと、既に盾を失ったその機体に命中して体に穴を空けていく。
それでも速度を落とすこともなく突き進み、すれ違いざまにスカイサイクロンの片翼に拳を叩きつけた。

翼がへし折れ、バランスと制御を失い宙を回りながら岩壁に叩きつけられ、スカイサイクロンは爆散する。

モニターが下を向き、4号と戦う主の元へと向かう。


「ライダーキック!!!」

そこは、4号が飛び蹴りを放とうと飛び上がった瞬間だった。

4号はオートバジンの接近に気付かない。
こちらの存在に気付いたのか、ふと一瞬空を見上げたファイズがこちらを見て。

オートバジンはその二人の間に飛び込んだ。




「何?!」

乾巧を仕留めるはずだった一撃。
しかし命中したのはその間に飛び込んできたオートバジン。

スカイサイクロンはどうしたのか。
まさかあの程度のバイクに遅れを取るとは思っていなかった4号は少しの間思考を奪われ。
オートバジンが爆散していく向こうに、ファイズの姿がなかったことに気付くのが遅れてしまった。

Exceed Charge

「はああああああああああ!!!」

巧の叫び声が耳に届き、振り返った4号の視界に入ったのは。
宙から上段にファイズエッジを構え、それをこちらに向けて振り下ろしてくるファイズの姿。

オートバシンが間に割り込んだ姿を見た巧は、咄嗟の判断で4号の視界に入らぬ向こう側でオートバジンを足場に飛び上がっていた。
その背に備えられたファイズエッジを引き抜き、、空中でミッションメモリーを差し替えて。

振り返った時には、既にその距離は目と鼻の先。反応が間に合わず。

向けられた高出力のエネルギーの刃は、4号の体を大きく斬り裂いた。

「がああああああああああああ!!」

胸部の装甲が大きく裂かれ、裂け目からは内部の機械の体が露わになる。

よろけながらも数メートル後ろに後退。
その目の前で、ファイズはファイズエッジを投げ捨て。

Exceed Charge

宙に飛び上がったファイズを視界に収めた瞬間、目の前に赤いポインターが出現した。


「はあああああああああ!!!」

乾巧の叫び声と共に、そのキック、クリムゾンスマッシュが迫る。
ライダーパンチでの迎撃は間に合わない。
腕を前に出して防御の構えを取る。

今この一撃を受けるのはまずい。
万全の状態ならばともかく、装甲が割れている今これを受ければ間違いなくこの体は砕け散る。

「おおおおおおおおおおぉぉぉ!!!!」

負けじと押し返そうと、4号も気合を入れるかのように叫び声を上げる。

拮抗する中、キックの力が僅かに弱まる。
体のダメージを堪え、ずっと防御を捨てて攻撃を受け続けた体が限界を迎えているのだろう。

このまま保てば、押し返すことができる。

「ハハハ!!乾巧、俺の勝ち―――」
「巧さんっっっ!!!!」

勝利を確信した瞬間、空間に少女の叫ぶ声が響き渡る。

振り返ることができないまま、その声が示すものを4号は悟る。

(まさかアヴェンジャーがやられた?!チィ、こんな時に…!!)
「っ!あああああああああっ!!」

再度巧の声が響く。同時に弱まっていた力が再度取り戻される。
いや、その力はより強まっている。
腕の傷から亀裂が広がり、少しずつ砕けていく。こちらの体が保たない。

「な、ぜ、お前なんぞに…!」

乾巧を倒す、それだけのために呼ばれたはずの自分が、何故敗北しようとしているのか。
その事実に納得できぬ4号。

『お前に、仮面ライダーを名乗る資格はない!』

その時、再度フラッシュバックしたかつての光景。
ぼやけていた箇所が明確になった。
このような状況に陥った時に、自分を倒した男に言われた言葉。

「は、ははは、そういう、ことか…」

割れていく腕を、押し込まれていく体を見ながら、4号は何故負けるのかを察する。

乾巧を殺す。その役目のために呼ばれた。つまりは自分は彼に勝ち得る存在だと。
その事実が、乾巧はまだその名を持つに相応しい者になっていないのだと考えていた。

実際、少し前までの乾巧にはその意志が不足していた。
だというのに、あの小娘の言葉が彼の眠っていた意志を目覚めさせてしまった。

今のこの男は。

『それが仮面ライダーだ!!』

かつて自分を倒した、あの男と同じ――――

「やはり、お前も―――仮面ライダーかあああぁぁぁ!!!!」

概念的には自分が持ち得ぬその名を持った、人類の自由のために戦う戦士の一人。


腕が砕け、防ぎきれなくなった乾巧のライダーキックは、4号の胴体を貫き。
巧が地面に足をつけた瞬間、その背後で宙に浮かんだ赤いΦの文字の中で爆炎を上げて消滅した。





乾巧の戦いを見届けたイリヤは、笑みを浮かべてその傍へと駆け寄る。

「巧さんー!!」

大きく手を振りながら、その背中へ向けて走り。

「よかった、無事だったんですね、巧さ、…ん……?」

その表情から笑みが消えていく。

ゆっくりと体を起こしたファイズ、その体から。
青い炎が立ち上り始めた。

燃えていく体、その手のひらを見て。ゆっくりと巧はファイズへの変身を解く。

「わりぃ、俺はここまでみたいだ」

深く息を吸って、イリヤに背を向けたままそう告げる巧。

ライダーキックを受けた時点で、本来ならばもう死んでいるほどのダメージを受けていた。
むしろ何故ここまで戦えたのかが不思議なほどだった。

「そん、な…」

言葉を詰まらせたイリヤに、巧は振り返る。

シャツの胸の部分は真っ赤に染まり、口からは血が流れている。
立っているのが不思議に思える重傷だ。

それでも、巧はイリヤに笑いかけながら言った。

「そんな顔すんじゃねえよ。
 何となくだけど、お前の声があったから戦えたんだってのは分かるんだよ」

と、手元のベルトとファイズフォンに巧は目をやった。

こんなボロボロの体でも、ファイズギアは健在だった。
ふと思った。もしあのキックを受ける時にファイズに変身していたら、あるいは命を落とすことまでは避けられたかもしれない。
だがその場合、きっとファイズギアは破壊されたはず。
根拠があるわけではない。何となくそんな気がしただけだ。

だがそんな考えが浮かんだ巧には、このベルトをこのまま自分と運命を共にさせるのが惜しく感じられた。

体から外したベルト一式を、イリヤに向けて放った。

咄嗟にそれを受け取るイリヤ。

「え…これは…」
「お前が、持っていってくれ。俺と一緒になくなるの、何か惜しい気がするんだよ」

手元に投げ渡されたファイズギアに視線をやる。
何故だろうか。ずっと巧が使っているところを見ていたはずなのに、思っていたよりもずっと大きく、重いものに感じられた。

「使ってくれ、とは言わねえよ。どうせ使えやしねえだろうしな。
 ただ、もしもでいい。もしもそれを使えそうで、使ってくれてもいいって思えるやつがいたら、渡してくれねえか?
 たぶんそれが、そのファイズの力のためになるような気がするんだよ」

願いというほどでもない、ただのワガママに近いものだ。
あるいはこれを手にしたものに、自分のように過酷な運命を背負わせることになるかもしれない。

それでも、自分が、ファイズという戦士がここにいたということを、少しでも残しておきたい。

「…分かりました」

それをバッグにしまうイリヤ。
と同時に、ルビーが口を開く。

『…イリヤさん、門番がいなくなったことで結界が壊れます。
 あとはあの聖杯を模した制御装置を破壊すれば、会場に綻びが生まれるはずです』
「うん。分かってる」

現状で手元で使用可能である、最後のカードを取り出しながらイリヤは巧と向き合う。
既に体は崩壊が進んでいる。

これ以上心配をかけないようにと、涙を堪えるイリヤ。

「巧さん、ありがとうございました!」

最後に一言、礼の言葉を述べるイリヤ。

「私、絶対にあなたのことを忘れたりしない。
 あなたの希望も、託された願いも、きっと紡いでみせるから!」


顔を下げた一瞬、堪えきれず一筋の涙が伝ってしまい。
悟られまいと頭を上げると同時に振り返って飛び去る。


「―――夢幻召喚」

聖杯の目の前に到達すると同時に、カードをその身に宿す。

桃色の魔法少女衣装は、白い百合を思わせるドレス形の鎧へと変わる。
その手には黄金の聖剣。
かつて戦いで最も苦戦した英霊であり、そして別の世界では衛宮士郎のサーヴァントでもあった者の力だ。

その刃に、黄金に輝く魔力が収束する。


「約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!!」

真名の開放された宝具は、巨大な光の柱となって目の前に存在したものを呑み込んでいく。
存在していた疑似大聖杯が消滅した後には、洞窟の奥の空間にはぽっかりと外の夜の夜景が見えるほどの巨大な穴が空いていた。

『イリヤさん、巧さんの生体反応が、たった今消失しました』
「そう…」

もう、振り返っても誰もいない。

だから、今は前に進もう。

託されたもののために、希望を繋ぐために。


一瞬、大気に大きな揺れが走ったかのような感覚を感じ取る。

見上げるイリヤの視線の先には、まるで空間に穴でも空いたかのような鈍く光る円状の空間があった。

『これは、どうやら制御装置を破壊したことで生まれた空間の歪みですね。
 不確定要素がありますが、出口に通じるどこかにつながっている可能性もあります。
 行きますか?』
「行くよ。今は時間が惜しいから」
『分かりました』

そうして、イリヤはその中に飛び込んだ。



【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:疲労(大)、右目の周りに火傷の跡、クロ帰還による魔力総量増大
[装備]:カレイドステッキ(ルビー)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ、クラスカード(セイバー)転身中@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:クラスカード(キャスター、ランサー、アサシン、アーチャー、ライダー、バーサーカー、バーサーカー(転身制限中))@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
    ファイズギア一式@仮面ライダー555
[思考・状況]
基本:皆と共に絶対に帰る
1:他の皆と合流、障害を切り抜ける
2:桜に手を差し伸べる
[備考]



【アイリスフィール・フォン・アインツベルン(黒聖杯)死亡】
【仮面ライダー4号 死亡】

※オートバジン@仮面ライダー555、ファイズブラスター@仮面ライダー555は破壊されました。





イリヤの背中を見送った巧。その燃えゆく体は徐々に崩れ落ちる。

やることはやった。自分にできる限りのことは全部。

だけど。

(やっぱ、死にたくはねえよな)

本音を言えば、やはり生きたいという気持ちは心の中に残っていた。

そのまま視界の先で、一筋の光が走り。
それが空間を覆い尽くしたところで、乾巧の視界もまた完全に消えた。





「もう、早く起きなよ巧」
「あ?」

ふと目を開けた巧。
視界を覆うような、雲ひとつない満天の青空の下。
そこに真理の顔が映り込んだ。

「あれ?真理?」
「どうしたのよ、そんな幽霊でも見たような顔して」
「いくら天気がよくて気持ちいいからって、そんなところで寝てたら変な夢見ちゃうよ」

その後ろから啓太郎が駆け寄ってくる。

どうやら皆で出かけている時に、河川敷に寝転がり、そのまま眠ってしまっていたようだ。

一緒に出かける約束をしていたのだろうか。木場達がこちらに向けて歩きながら手を振っているのが見える。
少し離れた場所では、中学生らしき女子がじゃれながら走り回っている。
後ろの通りを、赤みがかった髪の高校生が、妹らしき子供と一緒に歩いている。
離れたところでは、草加がバイクに腰掛けながら手を拭いている。

静かで平和な光景だった。
何故か、その青空の下で繰り広げられてる日常が、とても尊いものに思えた。

「ああ、悪い、ちょっと夢見てた」
「全く、せっかく皆で出かけたってのに、寝てばっかりじゃ家にいるのと変わらないでしょ」

そう笑いながら、真理と啓太郎は隣に座る。

そんな時、ふと思ったことがあった。

「…夢っていやあさ、ちょっと思ったことがあるんだ」
「何?」
「俺の夢だけどさ、もしかしたら」

こんな、皆が笑っていられるような。
平和な日常を守っていきたい。

それが、俺の願いで、夢だったのかもしれない。

「やっぱ、何でもねえ」
「何よ、話の途中で。気持ち悪いわね」
「うるせえな!起きたばっかで頭働いてねえんだから!」

もう一度、ゆっくりと目を閉じる。

―――俺の夢は、もしかしたら。

こんな、何でもなく当たり前で、だからこそ尊いものだったのかもしれない。





やがてイリヤが立ち去っていった空間。


そこにはもう乾巧の姿はなく。
彼のいた場所には一山の灰だけが残っていた。

空間の振動で生じたものか、そこに一陣の風が吹き。
静かに灰は崩れ、飛んでいった。


【乾巧@仮面ライダー555 死亡】

171:あなたと私は友達じゃないけど 投下順に読む 173:ポケットの中の戦争(前)
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169:I beg you 乾巧 GAME OVER
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン 175:閃光のマリアンヌ
アイリスフィール・フォン・アインツベルン(黒) GAME OVER
仮面ライダー4号 GAME OVER



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