低炭水化物ダイエット(Wikipedia)



低炭水化物ダイエット



低炭水化物ダイエット(ていたんすいかぶつ-、ローカーボダイエット、low-carbohydrate diets)とは、
肥満や糖尿病の治療を目的として炭水化物の摂取比率を制限する食餌療法である。
糖質制限食、糖質制限ダイエットとも呼ばれる。

概要




人類が、稲作や麦作りにより、定住生活をするようになったのは、最近の2000年~3000年だけである。
炭水化物を多量に摂取し、エネルギーの半分以上を炭水化物で摂取するようになったのは、最近だけの特殊事情である。
人類の数百万年の歴史を通じて、ほとんどは、狩猟採集生活をしていた。
現在でも、エスキモーの一部の人などは狩猟生活をしているが、メタボリックシンドロームの人や糖尿病の人は、ほとんどいない。

糖尿病の人や肥満の人の食生活では、甘い物の摂取は制限される。しかし、炭水化物は、分解されてブドウ糖に変わる。
同じブドウ糖であるが、体にゆっくり吸収されるという違いがあるだけである。
炭水化物の摂取により、多量のブドウ糖が血液中に流入すると、インシュリンが分泌されて、
ブドウ糖は細胞内へ取り込まれて、血糖値は元の値に戻る。
ところが、糖尿病の人では、インシュリンの量が少なかったり、インシュリンの働きが低下していたりするために、
血液内に流入した大量のブドウ糖の処理が追いつかなくなり、高血糖が出現するのである。そうして臓器障害が生じる。
ならば、農耕生活以前の元の食生活に戻して、大量のブドウ糖の流入を止めることが考えられる。
実際に、炭水化物を減らした食事を開始すると、糖尿病患者の血糖値は、数日以内に低下する。
また、コレステロール値や尿酸値や体重などの指標も、多かれ少なかれ、改善する。

ただし、血糖値を下げる薬を飲んでいる人が、炭水化物制限食を実施すると、食事だけで血糖値が改善するので、
血糖値が下がりすぎてしまう危険がある。低血糖も、生命への危険が大きい。
また、肝硬変など、肝機能が低下している人は、脂肪から糖を作る糖新生を行うことができないので、低血糖が生じる。
また、炭水化物を減らすと蛋白質の摂取が増えるが、腎機能の悪い人では、蛋白質の摂りすぎにより、悪影響が生じる。
小児で行われるケトン食も、低炭水化物ダイエットの一つである。


流行




1990年代にロバート・アトキンスが提唱したアトキンスダイエットが流行する。
アトキンスダイエットは痩身が目的とされたが賛否両論があった。
詳細は「アトキンスダイエット」を参照
2000年2月24日には、アメリカ合衆国農務省が討論会を開催し批判が集まった。
アトキンスへの批判は心臓や腎臓に負担をかけるのではないかということであった

低炭水化物ダイエットのゾーンダイエット(en:Zone diet)は、
モリソン・ベセアが提唱し、砂糖ではなく極力精製されていない食品を摂取し
炭水化物はカロリー比40%にするというものである。


短期




2003年、低脂肪食と低炭水化物食をランダムに割り振ったランダム化比較試験では、
最初の6ヶ月間は低炭水化物のほうが体重を減少させたが、
1年間では優位な差が見られなかった。
2004年『ランセット』は6ヶ月の短期間に限り安全であるようだとしている。
ただし6ヶ月以内であっても、低炭水化物ダイエットでは頻繁に便秘や頭痛が起こる。
6ヶ月間の比較で、低脂肪食のダイエットと比較して低炭水化物ダイエットは
口臭、筋けいれん、下痢、脱力感、発疹がより頻繁に見られた。
糖尿病患者に対しての2年間の比較では低炭水化物ダイエットと
高炭水化物ダイエットでの体重減少、HbA1cに差がなかった。


長期的な影響




低脂肪ダイエット、低GIダイエット、低炭水化物ダイエットの比較で、
低炭水化物ダイエットでは血清中に増えるタンパク質CRP値と尿中コルチゾールが最も高い。
これらは心血管疾患のリスクを表す。
2004年、女性を対象とし炭水化物からではなく脂肪からの
高いカロリー摂取量は乳がんのリスクを増加させていた。


死亡率に関する10年以上の長期追跡調査




2007年、ギリシャで1993年から2003年にかけて22,944名のコホート研究で、
低炭水化物で高タンパクの食事はより高い総死亡率に関連付けられていた。
2007年、スウェーデンにおける42,237人の女性での12年間におよぶコホート研究では、
低炭水化物で高タンパク食は総死亡率が高くなり、特に心血管における死亡率が増加していた。
2010年、ハーバード大学による44,548人の男性と85,168人の女性による
20年から26年間におよぶコホート調査では、動物食をベースとした低炭水化物ダイエットは
男女とも全原因の死亡率を増加させ、植物をベースとした低炭水化物ダイエットは
死亡率を低下させていた。


高たんぱく質の影響




低炭水化物ダイエットでは、炭水化物の比率を減らすことから
たんぱく質の摂取量が多くなる。 2007年の世界保健機関によるたんぱく質に関する報告書では、
タンパク質の多い食事は腎臓疾患患者の腎機能を悪化させる明らかな証拠があり、
糖尿病、高血圧、多嚢胞性腎疾患によって腎不全の可能性があれば
正しくたんぱく質制限が行われるのが正しいとしている。
また、高たんぱく質の食事は尿中カルシウムを増加させることが十分に立証されており、
たんぱく質摂取量が結石生成に影響することや、
特に動物性たんぱく質が腎結石のリスクを増加させる可能性が考えられるので、
リスクのある患者では安全な量でかつ植物性たんぱく質が望ましいとされる。
高たんぱく質の食事は、半年間で高炭水化物の食事と比較してインスリン抵抗性が高くなった。
最終更新:2013年12月22日 16:08
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。