二人(二匹?)の鴉は現在、森を彷徨っていた。
唄方朱里、と言う赤い鴉は宙に浮かんだまま屈伸をし、
謳方悟、と言う青い鴉は辺りを見回した。

「…ふあぁ~あ…何だったんだろうかしら、あの青髪桃女…」

「さぁ?殺し合いー、とか言ってたし、悪いヤツなんじゃねぇ?」

青髪桃女、とは自分達をこんな所に転移させた比那名居天子のことだろう。
朱里はその人物を思い出すと、忌々しげに舌打ちをした。
それを悟が「まあまあ」と嗜めると、朱里は更に舌打ちをした。
悟はそれに苦笑いをしているだけで、言葉は放たなかった。

幸いなことに、二人はほぼ同じ地点から行動がスタートしたのだった。
両者共に森の中でパチリと目が覚め、相棒を探しに羽を広げたところ、ものの5分で見つかったのだ。
二人して大爆笑したことを…鳥頭の二人が覚えているかどうかは定かではない。

森を彷徨い始めて数分たったころ、
朱里はそういえば、といった表情で意味も無く手に持っているカバンを見た。

「っていうかさー、これなに?」

「支給品的なヤツかそれとも罠的なヤツじゃね?
 俺的には早く開けた方が良いと思う」

「奇遇ね、あたしもそう思っていた頃よ」

「じゃ、開けますか? …躊躇いなど…?」

「いるものかっ!!」

朱里のその言葉を合図とし、二人は同時にカバンを開けた。
「躊躇いなどいるものか」
二人は潔いがそれが原因となりトラブルを起こすことも少なくはないと記述しておこう。

「……………えーっと…何これ?ペンギン?」

「俺のは……剣?だよな…これ…?」

朱里のデイパック内に入っていたもの…

ペンギン…のぬいぐるみのようなもの。
黒いボールペン1本。

悟のデイパック内に入っていたもの…

剣。
フランスパン。

朱里はペンギンらしきものを凝視し、「どうやって入ってたんだこんなの…」と呟いていて、
悟はフランスパンと剣を片手に「どうやってフランスパンで戦うんだ…」と呟いている。

数分くらいそうしていただろうか、突然朱里が鷲掴みにしていたペンギンらしきものに変化が見られた。
瞳をカッと見開き、そのくちばしの様な口で…

「プリニーっス!」

喋ったのだった。

「っぎゃあ!!コイツ喋った!!」

「スクープだ!!『怪奇!!喋る怨霊入りぬいぐるみ!!?』で一面書けるぞ!!」

「写真撮れ!!全てはそこから…ってカメラがなーい!!」

「それじゃ撮るもんも撮れるかーい!!ってガチでねぇんだけど!!」

二人は完全にパニックに陥っていた。
人目というか、人にバレる心配よりもカメラがないことが優先的なようだ。
あわあわと慌てる二人を見て、ペンギンのぬいぐるみのようなものはまた口を開いた。

「騒がしい人たちッスね…
 説明書を読んでないんスか?」

「説明書…!?」

「…あ!!底!袋の底にありやがる!!」

「マジ!?」

「えーっと何々…」


プリニー
  • 投げるな危険

ボールペン
  • 何かに落書きを書けばいいじゃない

  • 何の変哲もない剣です

フランスパン
  • 食え


「…なんか投げやりじゃね? ていうか、俺…剣じゃ戦えない…」

「投げるな危険といわれると…投げたくなるわね…」

その説明文に軽いツッコミを入れる悟はどんよりとしたオーラを放ち、
朱里はペンギン…プリニーをギロリと睨んだ。
その眼光にプリニーは冷や汗をダラダラと流し必死に自分を守る言葉を放つ。

「イヤイヤイヤイヤ!!オレ、投げるとマジで爆発するッス!!」

「あ、爆発するんだ。 …手榴弾程度の威力は持ってるかしら」

「持ってないッス!!」

立場が逆転しプリニーが慌てふためく。
しかし一応朱里よりは人間の心を持っている悟が「そのくらいにしといてやれよ」と朱里に声を掛ける。
その言葉に朱里が「…まあ、悟が言うんなら…」とプリニーを睨むのをやめた。
その時、プリニーが「何でオレ、この人のカバンに入っていたんだろう…ッス」と小さく小さく呟いたのを朱里は聞いていなかった。

「…とにかく!オレは、最弱と呼ばれているッスが、 不慮の事故で爆発するまで、よろしくお願いしますッス!!」

「…不慮の事故じゃなくて、故意の事故じゃないことを祈ることねー」

「うヒィっス!!」

「だから…それくらいにしておけって」

「はーい…」

渋々、と言った感じの朱里に悟は苦笑いをし、カバンの中からある物を取り出した。
「…地図?」と朱里が問うと、「そうそう」と悟が返す。

「目的地を決めるってコトっスか?」

「ああ、今は…この森だな…、多分」

「森から一番近いのは…塔?」

朱里の問いは誰かに聞いたものじゃないが、プリニーは「そうッスねー」と答える。
それに朱里が、「…あんた、ナビとかできんの?」と聞くと、
「ズバリ、無理ッス!!」とプリニーが答えた。
この役立たずめ、と朱里が心の中で舌打ちをした。

「…とりあえず、この塔に向かうか」

「そうね、それが無難でしょ」

「好戦的な人がいないことを望むッス…」

「その時はあんたが囮ね」

「ムゴすぎるッス!!」

―――――
【場所・時間帯】E3・森の真ん中あたり・朝

【名前・出展者】唄方朱里@魔王武器職人専門学校
【状態】健康
【装備】黒いボールペン
【所持品】プリニー・黒いボールペン
【思考】
基本:殺し合いとか今ンとこはその他だその他
1:カメラはどこに行った
2:こいつ(プリニー)使えねー…

【名前・出展者】謳方悟@魔王武器職人専門学校
【状態】健康
【装備】剣
【所持品】剣・フランスパン
【思考】
基本:殺し合いとか今ンとこはその他だその他
1:カメラはどこに行った
2:フランスパンをどうしろと

【名前・出展者】プリニー@魔界戦記ディスガイア
【状態】健康?
【装備】なし
【所持品】なし
【思考】
基本:プリニーっス!
1:朱里さんは怖いッス…
2:悟さんは優しいけどやっぱり怖いッス…
3:行くッスよ!


【プリニー@魔界戦記ディスガイア】
魔界最弱と呼ばれるペンギンのようなもの。
中には前世で罪を犯した人間の魂が入っている…がぶっちゃけ関係ない。
専ら奴隷・憂さ晴らしとして扱われる。
投げると爆発する。故に投げるな危険。

―――

次の話
011 小さな願いとかなうはずがない願い

次の話
013 天才中学生 参戦

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2011年04月10日 18:47