タイムトラベルについて

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*タイムトラベルについて ---- **はじめに TVアニメ「STEINS;GATE」は1話や公式CMからも分かるようにタイムマシンを題材にした作品だが 視聴者は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や「時をかける少女」などと同じく、特にSF知識を持っている必要はない。 しかし最初から簡単にタイムトラベルが実現できるのが前提でストーリーが進むそれらの作品と違い タイムトラベルの全容が解明すること自体が、ストーリーの主軸に組み込まれてもいる。 従ってここでは、タイムトラベルについて次の3つに分けて解説する。なお、内容は話数毎に追加する。 -&link_anchor(L1){(1)アニメ中のタイムマシン、最低限のポイント}…これだけは理解しておきたい -&link_anchor(L2){(2)知ってて損はないSF系の基礎知識}………………知らなくても良い雑学 -&link_anchor(L3){(3)ブラックホールとタイムトラベルの詳細}………タイムトラベルに関してのSF知識を知りたい人向け またこのアニメでは「SERN」や「ジョン・タイター」等の現実世界の題材も取り上げられているのも魅力の一つ。 ここではアニメ内と区別して現実世界のものを指す時は「CERN」と「John Titor」と記述する。 ---- #contents() ---- &aname(L1){} **(1)アニメ中のタイムマシン、最低限のポイント(9話まで) ※アニメ公式サイトのStory用語集の内容も含む ***(1)-1.岡部とダルの作った電話レンジ(仮) -なぜか偶然タイムマシンっぽい動作をするようになった -バナナがゲル化(ゼリー状)したり、メールが過去に送られたり(命名:Dメール)した -タイムマシンとしての機能の発揮条件は、昼間の12-18時くらいに使用する事 -Dメールは1時間単位で過去に送れる、一度に送れるのは半角で36文字までの制限あり -過去へのポケベル電話発信もできる ***(1)-2.自称未来人のジョン・タイター -2000年に米国のネットに現れた自称未来人、当時のネット上で話題になった人物。2001年に現代のネットから去った。 -"カー・ブラックホール"や"世界線"などを用いたタイムマシンの理論を一部公開した -2010年(2話)に再度ジョン・タイターが現れたが、岡部以外からは2000年のタイターの記憶が無くなり書籍やネット上の物証も消えている -2010年に現れたタイターは、2036年の未来はSERNによって支配されたディストピアだと警告した ***(1)-3.SERN(セルン)とタイムマシン -SERNは表向きはヨーロッパの研究機関だが、裏では歴史を支配する為にタイムトラベル実験を行なっている -SERNのタイムマシン技術は"カー・ブラックホール"と"リフター"を使うもの -今のところは人体実験段階での失敗続きで人間がゲル化して死亡、原因はブラックホールの失敗 -リフターの詳細はアニメの現時点では不明、電子や重力に関係する装置らしい ***(1)-4.今までのポイントをおさらい #region(【詳しく表示】9話まで) ****(1)-4-1.おさらい……電話レンジ(仮)について -主人公岡部とダルが開発した(2人は大学1年生だが発明サークルのような活動をしている) -もともとはケータイで遠隔操作できる電子レンジという実用性の低いガジェットだった -レンジに接続されているケータイに電話をかけ、#と数字をプッシュするとその秒数あたためる仕様 -しかし偶然#ボタンと数字の入力を間違え逆にすると、レンジの逆回転と同時に奇妙な現象が起きた -レンジのターンテーブルが逆回転した時、レンジ内のバナナがゲル状になったりした -逆回転と同時にレンジのケータイにメールをすると、放電現象が起こり、メールが過去に送られた -現在、電話レンジにはPCが接続され、電話せずともPC操作によってタイマー入力できるようになった -過去に送れるメールは、Dメールと名付けられた -Dメールを送るための条件、放電現象の発生には時間帯が関わっている -レンジのタイマー秒数の調整で、1時間単位で過去へ遡る時間を調整できる -Dメールで送れる文字は半角36文字まで、それ以降の文面は消失 -Dメールを送る相手は自由 -ポケベルに電話発信もできる ****(1)-4-2.おさらい……ジョン・タイター(アニメ内)について -岡部は1話で、中鉢博士が発表したタイムマシン理論は全てタイターのパクリだと指摘 -タイターとは2000年にアメリカのネット上に現れた自称タイムトラベラー -他の参加者も、中鉢の「カー・ブラックホール」などの理論がタイターに似ていると認めた -2話、2010年日本のネット掲示板上にも自分をタイムトラベラーだと名乗るタイターが現れた -タイターは2036年からタイムマシンで来たといい、未来はSERNに支配されていると警告 -タイターはSERNに支配された未来を変えるためにIBN5100を入手しに来た -岡部は2010年のタイターを、2000年のタイターのパクリだと思った -しかし、岡部以外は誰も2010年にタイターが現れたのを覚えていないし、物証も残っていない -タイター自身も、2000年に行った事はないと明言 -しかし、タイターは岡部の言う事に興味を持ちメールで情報交換するようになる ****(1)-4-3.おさらい……SERNのタイムマシンについて -SERNはヨーロッパの世界最大規模の素粒子物理学の研究施設 -ダルがSERNへとハッキングした結果、Zプログラムという国家機密級計画を発見 -ZプログラムとはSERNが歴史を支配するための極秘のタイムトラベル実験計画 -SERNのタイムマシンは「ミニブラックホール」と「リフター」を利用する仕組み -SERNは表向きの研究用として素粒子加速器LHCなどの設備を持っている -表向きの発表と違い、既にLHCを使ったミニブラックホール生成に成功している -タイムトラベル人体実験は何人分も失敗が続いている -失敗の結果、人間はゼリー状になり過去のバラバラの時間と場所に飛んで死んだ -SERNの作り出しているブラックホールは、カー・ブラックホールの技術を使っている -ゼリー化するのは人間が通るには狭すぎるブラックホールを通過している為? -SERNの別サーバーにはIBN5100を使わないと利用できない独自言語のプログラムがある #endregion ---- &aname(L2){} **(2)知ってて損はないSF系の基礎知識 ***(2)-1.ブラックホール きわめて高密度で大質量で、きわめて強い重力のために、物質だけでなく光さえも脱出できない天体の事。 簡単に例えると、地球表面から物を上空に打ち上げた時は重力のために途中で引きかえして落ちてくる。 しかし打ち上げ速度が十分に大きいと地球の重力圏から逃れて宇宙の彼方まで飛んでいく。 この速度を脱出速度といい、地球の場合は空気抵抗を無視すれば11.2km/秒。 脱出速度は密度、質量の大きさで決まり、非常に大きい重力の場合は光速でも脱出不可能になる。 外部世界との境界は、事象の地平面 (イベント・ホライゾン) と呼ばれる。 中心には特異点が存在する、と考えられている。 「ブラック・ホール」(黒い穴)という名は、アメリカの物理学者ジョン・ホイーラーが1967年にこうした天体を呼ぶために編み出した。 光でさえも脱出できないので、ブラックホールを直接視覚的に捉える事は出来ない ▽ブラックホールのシミュレーション画像 天の川を背景として、太陽質量の10倍のブラックホールを600km離れた場所から見たと想定して、理論的に計算し、描画してみた画像。 光がブラックホールに落ちて行くために真っ黒に描かれ、周囲は空間の歪みのために光が曲がって背景の星が集まるように描画されている #image(BlackHole01.jpg) ▽ブラックホール近くにある光源から光が発せられたときのシミュレーション 左が静的で球対称なブラックホール、右が自転している軸対称なブラックホール。 自転しているブラックホールは周囲にエルゴ領域が生じ、慣性系の引きずりによって粒子や光は一点にとどまる事ができない。 しかし、事象の地平面とは異なり外部への脱出は可能だ #image(BlackHole09.png) //http://microcosmos.sci.kagoshima-u.ac.jp/weblab/thesis_file/grad_thesis_2008.pdf ***(2)-2.重力歪み 一般相対性理論によると重力とは、質量を持つ全ての物体の周りの空間が曲がる事による現象だ。 質量が大きくサイズが小さい物の周辺ほど、空間の曲がりは大きくなる。(=重力が強くなる=時間の流れが遅くなる) ただし太陽ほどの質量のそばでさえ、光の曲がりはたった数秒角(1秒角=1/3600度)。 1919年の日食時、太陽付近に見える牡牛座の恒星位置が1.61秒ずれている事により初めて実証された ▽空間の歪みを視覚的にイメージしたもの #image(space01.jpg) 薄いゴム膜にボールを乗せると凹み、重いほど歪みが大きくなるのと同じように、質量により周囲の3次元空間が曲げらるのを2次元平面として理解しやすくした図。質量の大きい星ほど周囲の空間が大きく歪んでいる。 ※実際には人間は3次元空間の住人なので、3次元のどこが曲がっているかを意識する事はできない。 ▽歪んだ空間で光が曲がった図 #image(BlackHole08.jpg) 光は真空中で最短距離を結ぶ性質があるが、星の光がカーブしているのは空間が曲がっているのでその経路が最短距離になるから。 太陽のそばの物質が空間の曲がりによって引き寄せられるのは、くぼみをボールが転がり落ちるのに例えられる。 ※質量が空間を曲げ、空間の曲がりが重力を引き起こす ***(2)-3.事象の地平面(地平線)/イベントホライゾン ブラックホールの周囲には非常に強い重力場が作られるため、ある半径より内側では脱出速度が光速を超え、光ですら外に出てくる事が出来ない、とされる。 この半径をシュヴァルツシルト半径と呼び、この半径を持つ球面を事象の地平面(シュヴァルツシルト面)と呼ぶ。 この内側に入る事は簡単にできる(ただし実際は強力な潮汐力で到達するより前に素粒子レベルで引き裂かれる)が、一点にとどまる事も、脱出する事もできない。 簡単に例えれば、星(重力場)から外へ出る時には脱出速度を計算するが、この脱出速度が光速度になる面が事象の地平面。 質量によってr=2GM/c^2で計算でき、例えば地球を半径約9mm以下にまで潰すと事象の地平面以下の大きさになりブラックホールになる。 陽子のような極小のものも、LHCで衝突させシュヴァルツシルト半径にまで押しこめるほどの高いエネルギーが加えられていれば超極小のブラックホール(ミニブラックホール、ミクロ特異点)になる ▽ブラックホールを2次元の面(格子)で表現し、視覚的にイメージしたもの 膨大な質量がせまい領域に集中して空間の曲がりが極端に大きくなるとブラックホールとなり 時空のくぼみは深い穴となって、そこに落ちた物質は事象の地平面を越えると光速でさえも脱出できなくなる #image(BlackHole05.png) &anchor(tokuiten) ***(2)-4.特異点 ある基準の下で、その基準が適用できない点の総称。 したがって基準があって初めて認識され、「~に於ける特異点」「~に関する特異点」という呼ばれ方をする。 ホーキングとペンローズが、一般相対性理論に従う限りブラックホールの中心では重力が無限大になり、 時空も無限に曲がり、時間や空間の基準が適用できなくなる、時空の特異点とされる事を証明した。 一般相対性理論の方程式の解には、普通の物質を考える限り、必ず特異点が存在する(特異点定理)という証明だ。 特異点が存在すると、その先の予言ができなくなってしまうので物理的には特異点の出現は困る。 そこでペンローズは時空特異点は必ず事象の地平面に覆い隠されているので、ブラックホールの外側の観測者には 特異点の悪さは影響しないという仮説を立て、この考えを「宇宙検閲官仮説」と呼んだ。 しかし、特殊な例では裸の特異点が観測される事も知られている。 量子重力理論が完成すればおそらく無限大が登場しないようになるだろうと言われているが、今のところ完成していない ***(2)-5.ブラックホールに落ちる人間はどう見えるか STEINS;GATEの6話では岡部の夢として宇宙でブラックホールに吸い込まれるシーンがあった。 岡部は夢のなかだから宇宙でも裸で生きていられて移動していられる。 そしてブラックホールの重力に捕まり、その中心に向かっていって落ちていく。 それをブラックホールから十分に離れた距離から紅莉栖が観測している。 岡部はブラックホールに向かって落ちているが、そのうち事象の地平面を超えてしまう。 地平面は特別な構造がある訳ではないので岡部は地平面を超えた事を気づかないかもしれない。 しかしその時はもう光速度で外へ向かっても脱出は不可能な領域になってしまっている。 後は急速に中心に向かい落下するだけだ。 もっとも実際には事象の地平面を通過する前に巨大な潮汐力によって素粒子レベルで引き裂かれると言う。 この事から、例えブラックホールにワームホールがあり戻ってこられたとしても無事ではいられないイメージとして岡部自身がゼリーマン化した夢をみたと思われる。 一方、紅莉栖からみると岡部がブラックホールに近づくのには無限に時間がかかっているように見える。 事象の地平面に近づくに従って岡部のスピードが次第に遅くなって、最後には地平面に貼り付いたまま永遠に動かないように見える (可視光線以外も見える観測機器での場合。肉眼等では重力赤方偏移により可視光線の波長が引き伸ばされだんだん赤く見えていき、赤外線以上で見えなくなってしまう) そして岡部は体感時間はいつも通りだがブラックホールの外側(紅莉栖の方)を見ると、逆に宇宙全体のスピードがどんどん加速していくように見える。 これは一般相対性理論においての岡部と紅莉栖の重力の違いによる現象だ。 別項で一般相対性理論によると質量が空間を曲げると書いたが、時間も空間と同様に曲がる。 この理論から、夢のなかの紅莉栖の「あんたの1秒が、私には永遠となる…」という台詞になったと思われる ***(2)-6.ブラックホールの種類 ブラックホールの性質を決めるものは,質量、回転(自転)、電荷の3つしかない。 この事をホイーラーは「ブラックホールには毛がない」と言い、<ブラックホール無毛定理>とも言う。 自転しているブラックホールは角運動量を持つ。 ブラックホールは自転・電荷の有無によって4種類の基本タイプに分けられる。 最終的にはどんなブラックホールもカー=ニューマン・ブラックホールになると言われている。 |シュヴァルツシルト・ブラックホール| 回転なし | 電荷なし | 点状特異点| |ライスナー=ノルドシュトロム・ブラックホール | 回転なし| 電荷あり| 点状特異点| |カー・ブラックホール| 回転あり| 電荷なし| リング状特異点| |カー=ニューマン・ブラックホール| 回転あり| 電荷あり| リング状特異点 | #image(BlackHole10.png) ***(2)-7.カー・ブラックホール 自転しているブラックホールの事。 カー・ブラックホールの特異点はリング状になっている。(点ではないので、特異領域と呼ばれる事がある) 事象の地平面は自転の影響で内部と外部の2つに分裂している。 自転していない時の外側の半径はシュヴァルツシルト半径と同じだが、自転速度が大きくなると半径は縮小する。一方、内部地平面の半径は大きくなる。 1963年、ロイ・カーが回転するブラックホールを記述するアインシュタイン方程式の解を導き出した。 続いてワーナー・イスラエル、ホーキング、ブランドン・カーター、D・C・ロビンソンらは、もしどんな星が進化して ブラックホールが形成されたとしても、それはカー・ブラックホールに限られる事を示した(電磁場を含めるとカー・ニューマン解になる) ▽最大限に拡張されたカー時空のボイヤー-リンキスト・ブロック (カー・ブラックホールの幾何学) #image(BlackHole-k2.png) ***(2)-8.カー・ブラックホールとタイムトラベル(基礎編) イギリスの物理学者ブランドン・カーターによって、カー・ブラックホールにはタイムマシンの特性を持つ領域が存在する事が明らかにされている。 外側の地平面を超えて内側の地平面に行く間、時間と空間の役割が交換された領域の中を移動する。 内側の地平面を超えるとリング状特異点を囲んだ領域に入り、変換された時間と空間は役割を交換し、正常に戻る。 リング状特異点の内部で回転軸のまわりを周回して時間を調節。ここを通過すると新たに2つの事象の地平面がある。 内側の地平面を超えると、また時間と空間が入れ替わる領域に入る。そして外側の地平面を抜けると、別の宇宙に辿り着く。 ※回転して電荷を持つブラックホールと、裸の特異点については&link_anchor(L3){(3)}を参照。 ▽カー・ブラックホール #image(BlackHole-k3.png) ▽ブランドン・カーターのタイムマシン #image(BlackHole-k4.png) ***(2)-9.STEINS;GATEではブラックホールがなぜタイムマシンになるのか?(基礎編) STEINS;GATEでは、John Titorの語ったタイムマシン理論を参考にアレンジを加えている。 (原作ゲームではSERNにハッキングした際にZプログラムを見た紅莉栖が、タイターの理論と殆ど同じ、と感想を述べている) 電話レンジ(仮)についての細かい解説は今後のエピソードで出てくるはずだが(端折られるかもしれないが)、 ここではブラックホールとタイムマシンの関係を説明する。(※タイムマシンの詳しい理屈については&link_anchor(L3){(3)}を参照。) ・2つの特異点を作りだし電荷を与え回転させ、カー・ブラックホールに似た効果を得る(TITORと同じ) ・特異点を裸の状態にする為には電荷や回転を増やし事象の地平面をなくす(TITORと同じ) ・裸にするのは、事象の地平面は内側から外への脱出ができないので、それを回避する為 ・特異点は一般相対性理論と因果律が破綻させるので、そこへ突入すれば過去に遡れる ・SERNはリフターの調整に苦労して特異点を裸にしきれずゼリーマン化している ・SERNがVGLをどうしているかは未解明 ▽TITORの理論はもう少し詳しい リング状特異をくぐり抜け、別の世界(別の宇宙、別の世界線)に移動すると時間の中を旅する事が出来る。 (なぜリング状特異点の先が別の世界なのかは、アインシュタイン方程式の解によって示されている) そして裸の特異点が露出すると事象の地平面が消える事と、特異点に"触れないような"安全なタイムトラベルが可能になる。 狙った時空に旅する為には、VGLにより目的地をコントロールする事が重要になる。 ブラックホールは巨大な重力により事象の地平面に接近する前から強力な潮汐力が接近するものを引き裂いてしまう。 ゼリーマンはこの影響に因る結果かもしれないが、人工のミニブラックホールの場合は天体のブラックホールと違い質量が小さいのと (CERNの説明では2匹の蚊がぶつかるほど弱々しい)すぐ蒸発するので装置外部の人間が事故にあう心配はない ***(2)-10.ブラックホールの事象の地平面の内外では時間と空間の役割が入れ替わる? 2009年以前のWikipedia「事象の地平面」に、下記のような文面があった。 >事象の地平面の内側と外側では、時間と空間の役割が入れ替わる。地平面の外側(我々が存在している側)では、我々は空間を自由に移動できるが、時間はただ未来へと止まらずに流れる。逆に、地平面の内側では空間を自由に移動する事はできなくなって特異点へと落ちていくだけだが、過去へも未来へも行く事が出来ると考えられている。 これは記述が不正確として2009年12月以降は消されているようだ。 正確にはシュヴァルツシルト計量では事象の地平面の内側で符号rとtが役割を入れ替える事を表す。 外側ではtが時間座標でrが空間座標、内側ではrが時間座標でtが空間座標になり、 「地平面の内側ではrが減る方向にしか行けないが、tが増える方向にも減る方向にも行ける」事になるのを意味する。 つまり、内側ではrは時間座標になるので、未来に進む(rが減る)。また、tは空間座標になるので、tが減っても過去へ移動する訳ではない。 このような誤解が生じたのはシュバルツシルト座標を使って外部と内部の関係を議論したためでクルスカル座標系を使えば「時間と空間の役割が入れ替わる」という誤解はおきない クルスカル座標 http://members3.jcom.home.ne.jp/nososnd/grel/sch2.pdf ***(2)-11.SERN(セルン) [[3話Q&A>http://www45.atwiki.jp/stein_sgate/pages/28.html#id_abbf0d5e]]にも書いてあるが、 SERNはヨーロッパ原子核共同研究機関。ただし『SERN』はその略称ではない。 シュタゲのSERNは『Societe Europen pour la Recherche Nucleaire(研究所設立準備会)』の略称。 実際のCERN『Conseil Europeen pour la Recherche Nucleaire(研究所設立準備理事会)』がモデル。 スイスのジュネーヴ郊外にある世界最大規模の素粒子物理学の研究所。フランスとスイスの国境にまたがる形で存在しており、敷地内には銀行、図書館、郵便局、宿舎なども設けられている。ヨーロッパの19ヵ国を中心に世界中から研究チームが集まり、素粒子物理学に関する様々な実験が行われている。SERNで働く関係者はおよそ数千人に及ぶ。 SERNは素粒子物理学の研究施設で、素粒子加速器LHC(ラージハドロンコライダー)などの設備を持っている。 CERNのLHCは使い方次第でミニブラックホールができるかもしれないという噂もあった。 CERNのLHCがブラックホールを作り出すという噂 …CERNはブラックホールについて否定していたが、SERNは極秘にブラックホール生成を目的に実験をしている  http://wiredvision.jp/news/200809/2008091123.html CERNが2008年にハッキングされた事件(原作ゲーム内では語られている) …スーパーハカーであるダルがハッキングできたのも荒唐無稽ではない?(ゲームでは更に理由があるが)  http://wiredvision.jp/news/200809/2008091622.html ***(2)-12.LHC(ラージハドロンコライダー)/大型ハドロン衝突型加速器 #image(LHC01.jpg) &youtube(http://www.youtube.com/watch?v=qQNpucos9wc){425,350} CERNが建設した世界最大の衝突型円型加速器。 スイス・ジュネーブ郊外にフランスとの国境をまたいで設置され、地下100メートルの深さにある円形の巨大トンネルは全長約27km。 7兆電子ボルトのエネルギーを持つ2つの陽子同士を、光速の99.9999991%まで加速して正面衝突させる。LHCヤバイ。 陽子衝突は1秒間に800万回に達し、陽子同士が衝突するとそこになかった新しい複数の粒子が発生する。 この実験によりおきる高エネルギー反応について観測するのがLHCの目的だが、 ミニブラックホールが生成される可能性があるという理由から、実験中止の訴訟を起こされたりもした。 CERNはLHCによりブラックホールができる可能性は低く、できてもすぐに蒸発して危険性はないと主張。 ※SERN(CERNではなく)は、実はこのブラックホール生成こそをLHCの目的としており既にミニブラックホール生成のプロセスは確立していて、他の研究はすべてその隠れ蓑となっている。 LHCでは10の-24乗kgに相当する質量を10の-19乗mという狭い領域に集中させる事ができる。 従来の重力理論では、10の-24乗kgの質量を10の-51乗mまで圧縮しないとブラックホールにはならなかった。 しかし、超ひも理論のブレーンワールド仮説が正しければ余剰次元理論で、10の-18乗m程度でブラックホールが形成される。 これはLHCで十分到達できるレベルであり、1秒に1個の割合でミニブラックホールを作る事ができるという。 CERNの一部の学者はミニブラックホールができれば、重力が次元と次元とを行き来している事の証明になると期待している ***(2)-13.John Titor(現実のジョン・タイター) ここでは、現実の2000年に現れたJohn Titorについて。 [[2話のQ&A>http://www45.atwiki.jp/stein_sgate/pages/25.html#id_93f19880]]にも書いてあるが、 A:2000年に(現実の)インターネットに現れた自称タイムトラベラー。オカルト話が好きな人には有名 → [[Wikipedia>http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%82%BF%E3%83%BC]] -2000年1月にアメリカの大手ネット掲示板に現れ、2036年からやってきた未来人だと自称した -・&bold(){※STEINS;GATE2話のジョン・タイターは、2000年に行った事はないと明言している} -最初に2036年から1975年に跳びIBM5100を入手した -次に1998年に跳び、2000年からネットに書き込みをして、2001年に未来へと戻った -TITORによると、タイムマシンは乗り物ではなく重力制御装置だという。しかしその装置は車に設置している -その車は、1967年型のシボレー。デロリアンではない。この時代でさらに買い換えられた -タイムマシンはゼネラル・エレクトリック社製。名称は「C204型重力歪曲時間転移装置」 -タイムマシンは2034年に欧州原子核研究機構 (CERN) により試作1号機が実用化された -60年以上の時間移動は、世界線(世界)のズレが大きすぎて全く異なる世界にたどり着いてしまう -Titorのいた未来と当時の2000年とでは、世界線2%のズレにより出来事が違うという。&br()その為、Titorの予言は外れたものもあれば当たったものもある -John Titorは、IBM5100の入手が、過去へ来た目的(2038年問題解決)であると語っている -IBM 5100には、マニュアルにはないコンピュータ言語の翻訳機能がある事が2036年にわかったという -予言…CERNが2001年近辺にタイムマシンの基礎理論を発見する -予言…2005年アメリカで内戦 -予言…2015年第三次世界大戦 ***(2)-14.John Titorのタイムマシン ここでは、現実の2000年に現れたJohn Titorについて。 ▽Titorは1967年のシボレーにタイムマシンを搭載してやってきた #image(Titor05.jpg) 上の写真は1963-1967年代のコルベットC2、タイターの実物ではない。 タイムマシン稼働中は車を止めて静止していなければならない。(デロリアン型のように加速しない) ▽C204型重力歪曲時間転移装置 #image(Titor01.jpg) #image(Titor02.jpg) #image(Titor03.jpg) #image(Titor04.jpg) セシウム時計を4個装備した「C204型」のほか、上位機種としてセシウム時計を6個を装備した「C206型」も存在する。 2036年の米軍はC204型機を約10台、C206型機を約20台所有している ---- &aname(L3){} **(3)ブラックホールとタイムトラベルの詳細 ***(3)-1.John Titorのタイムマシン理論 ここでは2000年に現れたTitor自身の語ったタイムマシン学を紹介する 以下はタイターの発言の引用、要約 #region(close,参考) ジョン・タイター 2036年の未来からやってきたタイムトラベラー http://www5.hp-ez.com/hp/johnTitor777/4 #endregion ****(3)-1-1.人工ミクロ特異点 ビッグバンで作られたミクロ特異点(ミニブラックホール)のサイズは陽子ほどで、熱放射による蒸発効果のために何年か経つと消えてしまう。 Titorが初めて書き込みを始めた頃、もうすぐCERNが大型機を稼動させ高エネルギー粒子の衝突をすると言ったが、 このエネルギー増大から生まれる最も奇妙で潜在的に危険な要素が、電子サイズのミクロ特異点のかけらである。 ****(3)-1-2.カー局所場 ミクロ特異点は極めて大量のエネルギー(300~500メガワット)を放出するものの、帯電性があり、捕獲できる。 また、帯電した特異点にも事象の地平線が2つある。 このようにさまざまな特性を持つミクロ特異点を回転させる事で、カー局所場が作られる ****(3)-1-3.ティプラー重力正弦波 極めて近い位置にある2つのミクロ特異点を用いてカー局所場を作り出し、 それを操作、変化させる事でティプラー重力正弦波を作る事ができる。 この場を調整、回転、移動させれば、物質がリング状特移転を通って別の世界線に移動するときの 質量の動きをしミュレートする事ができる。これによって、安全なタイムトラベルが可能になる ****(3)-1-4.VGL=可変重力ロックシステム タイムトラベルの到着先の重力を厳密に調査し、あらぬ時空にほうり出されないようタイムトマシンをコントロールする。 これによって、常に自転・公転している地球から放り出される事や、ブロック塀などの障害物が置かれた世界線や 元いた世界線とまったくかけ離れている世界線に到着する事はない ****(3)-1-5.タイムマシン原理図 #image(Titor06.jpg) ①カー領域の双対特異点 ②負時間領域の出力 ③無時間領域の出力 ④正時間領域の出力 ⑤X軸出口円錐 ⑥垂直安全距離 ⑦質量オフセット ⑧後方質量分布 ⑨前方質量分布 ⑩負時間事象の地平線 ⑪無時間事象の地平線 ⑫正時間事象の地平線 通常のカー・ブラックホールではリング状特異点が1つなのに対し、この図では特異点が2つになっている。 Titorは2つのミクロ特異点を使い、カー局所場を作り出している。 カー・ブラックホールの質量による重力よりも自転による角運動量が大きくなった裸の特異点と似ているが、 この図では2つの特異点がある点が異なる。また、質量の重心が中心からずれている。 事象の地平線は存在するがドーナッツ状になっており、上下方向からは特異点がむき出しになっている ***(3)-2.Titorのタイムマシン動作 Titorは、「人工の双子ミクロ特異点を取り巻く質量と重力場に電子を注入して荷電させ、 カー局所場ないしティプラー重力正弦波内の事象の地平面を拡大して、 リング状特異点の環内に物質を通過させ、別の世界線へと送り込む動作をシミュレート操作して、 局所場を適合・回転・移動できれば、安全なタイムトラベルが可能となる」と語っている ***(3)-3.Titorのタイムマシン理論の補足 ****(3)-3-1.タイムトラベルと時空の回転 一般相対性理論を使って初めて過去に行けるかもしれない時空構造を発見したのは、ヴァン・ストッカムだった。 彼はアインシュタイン方程式の解として、ランチョスが発見した「無限に長くて回転している円筒時空の解」を考え、観測者がその時空に入った時の事を考察した。 十分早く回転している時空は、光も時空に引きずられて回転する経路を描くようになり、1周して同じところに戻ってくるようにもなる。 光速で動けば時間は進まないため、1周したとき光円錐の内側の領域(過去)にも経過時間ゼロで到達できる。 つまり過去へのタイムトラベルが可能になる ▽回転する時空と光円錐 #image(TT01.png) 光円錐とは、光がある1点から放出されたときに、時間を含めた4次元でどのように進むのかを図にした物。 座標の原点から放出された光は未来の方向に一定の速さで広がりながら進むので図では円錐を描くように伝播していく事になる。 円錐の壁は光速度で辿り着ける距離の限界で、光円錐の外側とは因果関係を持つ事は出来ない。 (左の図)静止している時空では、光円錐は直立している。止まっている人の世界線(運動の軌跡、タイターの世界線とは意味が異なる)も直立している。 (中央図)回転する時空では光円錐は斜めに傾く。止まっている人の世界線も斜めに傾く。(時空の回転と共に移動するため) (右の図)時空が光速で回転する地点では光円錐は横倒しになる。時間ゼロで光円錐の過去の領域に到達できる。 このようにして過去へ到達する方法を&bold(){「閉じた時間的世界線」「時間的閉曲線」(CTC= closed timelike curve)や「閉じた時間の環」(CTL= closed time link)}と呼ぶ。 -ゲーデルによって宇宙全体(時空)が自転する場合の時空モデルが提唱されたが、あくまでも理論モデルで、現実の宇宙は回転していない。 -ティプラーは有限の長さの回転する円筒モデルを提唱したが、高密度の物体が回転し続けるとブラックホールに変わってしまうと思われるなど現実的ではない。 -マレットはレーザー光線が一周するようなモデルのアイデアを米国特許商標局に仮特許申請し出願が認められた ****(3)-3-2.ペンローズ図 Titorは2001年2月に重力井戸の質問に対する回答で、タイムマシンを使用する事で感じる重力が2G程度であると述べ、カーブラックホールの説明をしたペンローズ図を参照するように勧めた。また3月には世界線のズレの質問に対し、ペンローズ図を見れば同じ世界線にたどり着くには光より早く移動しなければならないのが分かったはずだと回答した。 ここでは、そのペンローズ図について解説する。 ペンローズ図は無限の時空と光の四次元要素を有限の二次元の図で示すため実際の距離とは異なるように変形され、光は45度の傾きの直線として描写する(赤い線)。時間的経路は全て垂直に対して0~45度の角度をなす。 ▽ペンローズ図 -[[Wikipedia:ペンローズ図>http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9A%E3%83%B3%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%BA%E5%9B%B3]] -[[ペンローズ図を描くには>http://teenaka.at.webry.info/200701/article_11.html]] #image(TT02.png) ▽太陽を中心に置いたペンローズ図 #image(TT03.png) ブラックホールではない通常の天体として、太陽を例にとったペンローズ図。 この場合、&bold(){太陽の全時空の経歴}は点Pから点Fまでの&bold(){一本の直線}で表されている。 光的過去を示す無限大、線Sは、太陽に向って輝いている全ての光源。 Sを源とする光線は全て、左上45度の傾きの直線として表され、太陽の時間線に向かっている。 光的未来を示す無限大、線Dは、太陽から放射されるすべての光の目的地。 太陽からDへ走る光は全て、太陽の時間線からDへ走る45度の直線で表される。 空間的な&bold(){無限遠点}Eは、光速より遅い信号では太陽から連絡できない、非常に遠くの時空の全領域を表している *****(3)-3-2(1).ブラックホールの存在するペンローズ図 ▽シュヴァルツシルト・ブラックホールのある宇宙のペンローズ図 #image(TT04.png) 時空のゆがみが無限大となる特異点が生ずる。ペンローズ・ダイアグラムでは、慣例として特異点をギザギザの線で表す。 特異点からシュワルツシルト半径だけ離れたところに、事象の地平面(入るだけで出られない一方通行の膜、<印で表す)がある。 点Mから出発した旅行者は、ブラックホールを避け時間的無限大のFで生涯を閉じるか、一方通行の膜を通って特異点に吸い込まれるかだ ▽シュヴァルツシルト・ブラックホールの完全なペンローズ図 #image(TT05.png) アインシュタイン方程式のシュヴァルツシルトの解のすべてをペンローズ図で表現すると上図のようになる。 一方通行の膜をもつ第二の宇宙が出現し、さらに、物質を吐き出すホワイトホール(過去の空間的特異点)が発生する。 しかし第二の宇宙と通信するには、超光速信号を使わなければならない *****(3)-3-2(2).回転するブラックホールのペンローズ図 1963年に物理学者ロイ・カーが、強力な重力を持ち高速で回転する物体のアインシュタイン方程式の解を発見した。 ▽カー・ブラックホールのペンローズ図 #image(TT06.png) シュヴァルツシルト・ブラックホールには別の宇宙が一つあるのに対して、カー・ブラックホールには別の宇宙が無数に現れる。 折りたたんだ紙から切りぬいた紙人形のようなので、ペーパードール・トポロジーという。 また、シュヴァルツシルト・ブラックホールの中心には空間的特異点が存在するが、カー・ブラックホールには時間的特異点が存在する。 通常空間と特異点を隔てる一方通行の膜(地平面)は2つ存在する。 時間的特異点は時間の流れに並行しており、空間的特異点と違い時空を巧妙に航行すれば避ける事ができる。 カーのブラックホールには「リング状の特異点」「負の時空領域」「負のCTL領域」の三つの特徴がある。 #image(BlackHole-k1.png) &bold(){リング状特異点} カーのブラックホールは、特異点が点ではなく、回転軸を取り巻くリング状の形をしている。 このため、無限に湾曲した領域を避けて、安全にブラックホールの中心に到達できる。 ペンローズ図では、先の丸いギザギザで表される &bold(){負の時空領域} ブラックホールのリングの中心を通り抜けると、負の時空領域となっている。 そこでは、G×r(Gは宇宙の重力定数、rは中心からの距離)が負になる。 中心からの距離が負になるというのは考えにくいので、重力が負になると考えられる。 &bold(){負のCTL領域} リング状特異点の内側には、負のCTL(Closed Time Link)領域つまり負の閉じた時間の環が生じる。 リングの中心を通り抜けて、回転軸の周りを回転方向に回ると過去にさかのぼる事ができ、その回った回数によってどれだけ時間をさかのぼるかが決まる。 そして、リングの中心を再び通って戻ると正の時空領域に戻る事はできるが、一方通行の膜があるので元の宇宙に戻る事はできず、別の宇宙へ抜ける。 別の宇宙とは、われわれの宇宙の離れた領域かもしれないし、パラレルワールドになっていて、われわれの宇宙とそっくりの別の宇宙かもしれない。 カー・ブラックホールをタイムトラベルに使おうと思う人は、旅立つ前に別の宇宙につながる正確な道路地図を手に入れておく必要がある。 John Titorは、それにVGL(可変重力ロック)システムを使用する事で問題を解決している。 また、カー・ブラックホールのペンローズ図を見れば、世界線のズレなくタイムトラベルをする事はできない(同じ世界線にたどり着くには光より早く移動しなければならない)と説明している *****(3)-3-2(3).回転して電荷を持つブラックホールのペンローズ図 ロイ・カーが回転するブラックホールの解を発表してから2,3年後、ピッツバーグのエズラ・ニューマンとその同僚が、電荷を持ち回転するブラックホールの解を発表した。 ▽カー=ニューマン・ブラックホールのペンローズ図 #image(TT07.png) カー・ブラックホールに正のCTL領域が追加された形となっている &bold(){正のCTL領域} CTL領域がリング状特異点を越えて広がり、通常の正の領域を汚染している。 リング状特異点を通り抜けて負の時空領域に行かなくてもCTL領域に到達でき、そこで回転軸と反対方向に(カー・ブラックホールの場合と逆)回転すると、その回った回数に応じて過去にさかのぼる事ができる。 ただし、一方通行の膜が存在するので、元の宇宙に戻る事はできず、別の宇宙へ行ってしまうのはカー・ブラックホールの場合と同じ ****(3)-3-3.超極限のカー物体(SEKO) カー・ブラックホールは、質量Mと角運動量Aの値だけでその特性が記述できる。 MがAより大きい場合は、二つの一方通行の膜が存在する。Aが増大するにつれて二つの膜がしだいに接近し、A=Mのときに二つの膜は融合する。 このように、ブラックホールの質量と角運動量が均衡を保っている状態を超極限のカー・ブラックホールという。 角運動量がさらに増大し質量を超えたために崩壊したような物体を、超極限のカー物体(SEKO=super-extra Kerr object)と呼ぶ。 このようにA>Mになると、事象の地平面は消失しリング状特異点が露出し、裸の特異点となる #image(TT09.png) SEKOは裸のリング状特異点を持つ一個の反重力宇宙で、もし我々の宇宙にSEKOが一つでもあれば、時空全体がCTLとなり、全ての場所が過去への旅への出発点となる。 ▽裸の特異点が存在した場合のペンローズ図 #image(TT08.png) SEKOの特異点はリング状特異点の変種であり、時間的でもあるから、旅行者は無限に湾曲した時空(特異点)という致命的な領域に触れずにリングを通って特異点を通過でき、負の空間という別の世界に入る事が出来る。この場合、別の世界は1つしかなく、ペーパードール・トポロジーは無い ****(3)-3-4.裸の特異点を使ったタイムトラベル SEKOのもっとも興味深い特徴は、その特異点の周りを適切な方向に回れば時間を逆行できる事だ。 その上、そういう周回航行をすればブラックホールの膜の内側ばかりでなく、時空の全領域へ到達可能になる。 原則的にはSEKOに近づきその周りを二、三周すれば、特異点をくぐり抜けたりしてよく分からない新しい宇宙へ飛び込む必要はなく、過去のどこにでも行ける ****(3)-3-5.現実世界でのタイムトラベルの難点 -SEKOに欠かせない特徴の一つは時間的特異点だが、量子効果によって空間的特異点と変換され、時空の特徴は安定してしまいタイムマシンに利用できないかもしれない。 -通常のブラックホールを回転させてSEKOを作る事は不可能かもしれない。 --ブラックホールを質量<角運動量にする必要があるが、角運動量が増大するにつれて回転を上げる軌道が減少しゼロに近づくか、注入する回転体の反発により不可能になる。 -John TitorやSTEINS;GATEのタイムマシンは、2つのブラックホールを回転させている事が問題点を解決するかもしれない。 -特異点が2つある場合のブラックホールの解は、まだ誰も解いていない ---- **参考図書 #region(close,参考) カー・ブラックホールの幾何学(バレット・オニール) 時間の不思議 タイムマシンからホーキング(都筑 卓司) タイム・トラベラー タイム・マシンの方程式(ロナルド.L.マレット) タイムマシンと時空の科学(真貝寿明) タイムマシンの作り方(ニック・ハーバート) Newton別冊 時間と空間を軸にえがいた新宇宙図 〃 相対性理論 〃 ブラックホール 〃 量子論改訂版 -その他下記サイトを引用,参考 シュバルツシルト解 外部 http://members3.jcom.home.ne.jp/nososnd/grel/sch.pdf シュバルツシルト解 クルスカル座標 http://members3.jcom.home.ne.jp/nososnd/grel/sch2.pdf ペンローズ過程 http://members3.jcom.home.ne.jp/nososnd/grel/pen.pdf コンピュータシミュレーションの体験 http://www.sp.ous.ac.jp/koho/taiken2004/staff.html カー時空における粒子の軌道 http://microcosmos.sci.kagoshima-u.ac.jp/weblab/thesis_file/grad_thesis_2008.pdf ブラックホールの内部世界 http://www.fintech.co.jp/space/sp-5.html 重力崩壊とブラックホール(2) http://maldoror-ducasse.cocolog-nifty.com/blog/cat40099955/index.html ハードSFのネタ教えます http://homepage3.nifty.com/iromono/hardsf/darwinuniv.html ブラックホールの世界 http://quasar.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/~fukue/POPULAR/99ce/bh/which/which.htm Yahoo!知恵袋 http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1044036495 http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1035562400 新健康と科学と雑学 http://newscience.air-nifty.com/blog/2005/11/2036_26d8.html #endregion
*タイムトラベルについて ---- **はじめに TVアニメ「STEINS;GATE」は1話や公式CMからも分かるようにタイムマシンを題材にした作品だが 視聴者は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や「時をかける少女」などと同じく、特にSF知識を持っている必要はない。 しかし最初から簡単にタイムトラベルが実現できるのが前提でストーリーが進むそれらの作品と違い タイムトラベルの全容が解明すること自体が、ストーリーの主軸に組み込まれてもいる。 従ってここでは、タイムトラベルについて次の3つに分けて解説する。なお、内容は話数毎に追加する。 -&link_anchor(L1){(1)アニメ中のタイムマシン、最低限のポイント}…これだけは理解しておきたい -&link_anchor(L2){(2)知ってて損はないSF系の基礎知識}………………知らなくても良い雑学 -&link_anchor(L3){(3)ブラックホールとタイムトラベルの詳細}………タイムトラベルに関してのSF知識を知りたい人向け またこのアニメでは「SERN」や「ジョン・タイター」等の現実世界の題材も取り上げられているのも魅力の一つ。 ここではアニメ内と区別して現実世界のものを指す時は「CERN」と「John Titor」と記述する。 ---- #contents() ---- &aname(L1){} **(1)アニメ中のタイムマシン、最低限のポイント(9話まで) ※アニメ公式サイトのStory用語集の内容も含む ***(1)-1.岡部とダルの作った電話レンジ(仮) -なぜか偶然タイムマシンっぽい動作をするようになった -バナナがゲル化(ゼリー状)したり、メールが過去に送られたり(命名:Dメール)した -タイムマシンとしての機能の発揮条件は、昼間の12-18時くらいに使用する事 -Dメールは1時間単位で過去に送れる、一度に送れるのは半角で36文字までの制限あり -過去へのポケベル電話発信もできる ***(1)-2.自称未来人のジョン・タイター -2000年に米国のネットに現れた自称未来人、当時のネット上で話題になった人物。2001年に現代のネットから去った。 -"カー・ブラックホール"や"世界線"などを用いたタイムマシンの理論を一部公開した -2010年(2話)に再度ジョン・タイターが現れたが、岡部以外からは2000年のタイターの記憶が無くなり書籍やネット上の物証も消えている -2010年に現れたタイターは、2036年の未来はSERNによって支配されたディストピアだと警告した ***(1)-3.SERN(セルン)とタイムマシン -SERNは表向きはヨーロッパの研究機関だが、裏では歴史を支配する為にタイムトラベル実験を行なっている -SERNのタイムマシン技術は"カー・ブラックホール"と"リフター"を使うもの -今のところは人体実験段階での失敗続きで人間がゲル化して死亡、原因はブラックホールの失敗 -リフターの詳細はアニメの現時点では不明、電子や重力に関係する装置らしい ***(1)-4.今までのポイントをおさらい #region(【詳しく表示】9話まで) ****(1)-4-1.おさらい……電話レンジ(仮)について -主人公岡部とダルが開発した(2人は大学1年生だが発明サークルのような活動をしている) -もともとはケータイで遠隔操作できる電子レンジという実用性の低いガジェットだった -レンジに接続されているケータイに電話をかけ、#と数字をプッシュするとその秒数あたためる仕様 -しかし偶然#ボタンと数字の入力を間違え逆にすると、レンジの逆回転と同時に奇妙な現象が起きた -レンジのターンテーブルが逆回転した時、レンジ内のバナナがゲル状になったりした -逆回転と同時にレンジのケータイにメールをすると、放電現象が起こり、メールが過去に送られた -現在、電話レンジにはPCが接続され、電話せずともPC操作によってタイマー入力できるようになった -過去に送れるメールは、Dメールと名付けられた -Dメールを送るための条件、放電現象の発生には時間帯が関わっている -レンジのタイマー秒数の調整で、1時間単位で過去へ遡る時間を調整できる -Dメールで送れる文字は半角36文字まで、それ以降の文面は消失 -Dメールを送る相手は自由 -ポケベルに電話発信もできる ****(1)-4-2.おさらい……ジョン・タイター(アニメ内)について -岡部は1話で、中鉢博士が発表したタイムマシン理論は全てタイターのパクリだと指摘 -タイターとは2000年にアメリカのネット上に現れた自称タイムトラベラー -他の参加者も、中鉢の「カー・ブラックホール」などの理論がタイターに似ていると認めた -2話、2010年日本のネット掲示板上にも自分をタイムトラベラーだと名乗るタイターが現れた -タイターは2036年からタイムマシンで来たといい、未来はSERNに支配されていると警告 -タイターはSERNに支配された未来を変えるためにIBN5100を入手しに来た -岡部は2010年のタイターを、2000年のタイターのパクリだと思った -しかし、岡部以外は誰も2010年にタイターが現れたのを覚えていないし、物証も残っていない -タイター自身も、2000年に行った事はないと明言 -しかし、タイターは岡部の言う事に興味を持ちメールで情報交換するようになる ****(1)-4-3.おさらい……SERNのタイムマシンについて -SERNはヨーロッパの世界最大規模の素粒子物理学の研究施設 -ダルがSERNへとハッキングした結果、Zプログラムという国家機密級計画を発見 -ZプログラムとはSERNが歴史を支配するための極秘のタイムトラベル実験計画 -SERNのタイムマシンは「ミニブラックホール」と「リフター」を利用する仕組み -SERNは表向きの研究用として素粒子加速器LHCなどの設備を持っている -表向きの発表と違い、既にLHCを使ったミニブラックホール生成に成功している -タイムトラベル人体実験は何人分も失敗が続いている -失敗の結果、人間はゼリー状になり過去のバラバラの時間と場所に飛んで死んだ -SERNの作り出しているブラックホールは、カー・ブラックホールの技術を使っている -ゼリー化するのは人間が通るには狭すぎるブラックホールを通過している為? -SERNの別サーバーにはIBN5100を使わないと利用できない独自言語のプログラムがある #endregion ---- &aname(L2){} **(2)知ってて損はないSF系の基礎知識 ***(2)-1.ブラックホール きわめて高密度で大質量で、きわめて強い重力のために、物質だけでなく光さえも脱出できない天体の事。 簡単に例えると、地球表面から物を上空に打ち上げた時は重力のために途中で引きかえして落ちてくる。 しかし打ち上げ速度が十分に大きいと地球の重力圏から逃れて宇宙の彼方まで飛んでいく。 この速度を脱出速度といい、地球の場合は空気抵抗を無視すれば11.2km/秒。 脱出速度は密度、質量の大きさで決まり、非常に大きい重力の場合は光速でも脱出不可能になる。 外部世界との境界は、事象の地平面 (イベント・ホライゾン) と呼ばれる。 中心には特異点が存在する、と考えられている。 「ブラック・ホール」(黒い穴)という名は、アメリカの物理学者ジョン・ホイーラーが1967年にこうした天体を呼ぶために編み出した。 光でさえも脱出できないので、ブラックホールを直接視覚的に捉える事は出来ない ▽ブラックホールのシミュレーション画像 天の川を背景として、太陽質量の10倍のブラックホールを600km離れた場所から見たと想定して、理論的に計算し、描画してみた画像。 光がブラックホールに落ちて行くために真っ黒に描かれ、周囲は空間の歪みのために光が曲がって背景の星が集まるように描画されている #image(BlackHole01.jpg) ▽ブラックホール近くにある光源から光が発せられたときのシミュレーション 左が静的で球対称なブラックホール、右が自転している軸対称なブラックホール。 自転しているブラックホールは周囲にエルゴ領域が生じ、慣性系の引きずりによって粒子や光は一点にとどまる事ができない。 しかし、事象の地平面とは異なり外部への脱出は可能だ #image(BlackHole09.png) //http://microcosmos.sci.kagoshima-u.ac.jp/weblab/thesis_file/grad_thesis_2008.pdf ***(2)-2.重力歪み 一般相対性理論によると重力とは、質量を持つ全ての物体の周りの空間が曲がる事による現象だ。 質量が大きくサイズが小さい物の周辺ほど、空間の曲がりは大きくなる。(=重力が強くなる=時間の流れが遅くなる) ただし太陽ほどの質量のそばでさえ、光の曲がりはたった数秒角(1秒角=1/3600度)。 1919年の日食時、太陽付近に見える牡牛座の恒星位置が1.61秒ずれている事により初めて実証された ▽空間の歪みを視覚的にイメージしたもの #image(space01.jpg) 薄いゴム膜にボールを乗せると凹み、重いほど歪みが大きくなるのと同じように、質量により周囲の3次元空間が曲げらるのを2次元平面として理解しやすくした図。質量の大きい星ほど周囲の空間が大きく歪んでいる。 ※実際には人間は3次元空間の住人なので、3次元のどこが曲がっているかを意識する事はできない。 ▽歪んだ空間で光が曲がった図 #image(BlackHole08.jpg) 光は真空中で最短距離を結ぶ性質があるが、星の光がカーブしているのは空間が曲がっているのでその経路が最短距離になるから。 太陽のそばの物質が空間の曲がりによって引き寄せられるのは、くぼみをボールが転がり落ちるのに例えられる。 ※質量が空間を曲げ、空間の曲がりが重力を引き起こす ***(2)-3.事象の地平面(地平線)/イベントホライゾン ブラックホールの周囲には非常に強い重力場が作られるため、ある半径より内側では脱出速度が光速を超え、光ですら外に出てくる事が出来ない、とされる。 この半径をシュヴァルツシルト半径と呼び、この半径を持つ球面を事象の地平面(シュヴァルツシルト面)と呼ぶ。 この内側に入る事は簡単にできる(ただし実際は強力な潮汐力で到達するより前に素粒子レベルで引き裂かれる)が、一点にとどまる事も、脱出する事もできない。 簡単に例えれば、星(重力場)から外へ出る時には脱出速度を計算するが、この脱出速度が光速度になる面が事象の地平面。 質量によってr=2GM/c^2で計算でき、例えば地球を半径約9mm以下にまで潰すと事象の地平面以下の大きさになりブラックホールになる。 陽子のような極小のものも、LHCで衝突させシュヴァルツシルト半径にまで押しこめるほどの高いエネルギーが加えられていれば超極小のブラックホール(ミニブラックホール、ミクロ特異点)になる ▽ブラックホールを2次元の面(格子)で表現し、視覚的にイメージしたもの 膨大な質量がせまい領域に集中して空間の曲がりが極端に大きくなるとブラックホールとなり 時空のくぼみは深い穴となって、そこに落ちた物質は事象の地平面を越えると光速でさえも脱出できなくなる #image(BlackHole05.png) &anchor(tokuiten) ***(2)-4.特異点 ある基準の下で、その基準が適用できない点の総称。 したがって基準があって初めて認識され、「~に於ける特異点」「~に関する特異点」という呼ばれ方をする。 ホーキングとペンローズが、一般相対性理論に従う限りブラックホールの中心では重力が無限大になり、 時空も無限に曲がり、時間や空間の基準が適用できなくなる、時空の特異点とされる事を証明した。 一般相対性理論の方程式の解には、普通の物質を考える限り、必ず特異点が存在する(特異点定理)という証明だ。 特異点が存在すると、その先の予言ができなくなってしまうので物理的には特異点の出現は困る。 そこでペンローズは時空特異点は必ず事象の地平面に覆い隠されているので、ブラックホールの外側の観測者には 特異点の悪さは影響しないという仮説を立て、この考えを「宇宙検閲官仮説」と呼んだ。 しかし、特殊な例では裸の特異点が観測される事も知られている。 量子重力理論が完成すればおそらく無限大が登場しないようになるだろうと言われているが、今のところ完成していない ***(2)-5.ブラックホールに落ちる人間はどう見えるか STEINS;GATEの6話では岡部の夢として宇宙でブラックホールに吸い込まれるシーンがあった。 岡部は夢のなかだから宇宙でも裸で生きていられて移動していられる。 そしてブラックホールの重力に捕まり、その中心に向かっていって落ちていく。 それをブラックホールから十分に離れた距離から紅莉栖が観測している。 岡部はブラックホールに向かって落ちているが、そのうち事象の地平面を超えてしまう。 地平面は特別な構造がある訳ではないので岡部は地平面を超えた事を気づかないかもしれない。 しかしその時はもう光速度で外へ向かっても脱出は不可能な領域になってしまっている。 後は急速に中心に向かい落下するだけだ。 もっとも実際には事象の地平面を通過する前に巨大な潮汐力によって素粒子レベルで引き裂かれると言う。 この事から、例えブラックホールにワームホールがあり戻ってこられたとしても無事ではいられないイメージとして岡部自身がゼリーマン化した夢をみたと思われる。 一方、紅莉栖からみると岡部がブラックホールに近づくのには無限に時間がかかっているように見える。 事象の地平面に近づくに従って岡部のスピードが次第に遅くなって、最後には地平面に貼り付いたまま永遠に動かないように見える (可視光線以外も見える観測機器での場合。肉眼等では重力赤方偏移により可視光線の波長が引き伸ばされだんだん赤く見えていき、赤外線以上で見えなくなってしまう) そして岡部は体感時間はいつも通りだがブラックホールの外側(紅莉栖の方)を見ると、逆に宇宙全体のスピードがどんどん加速していくように見える。 これは一般相対性理論においての岡部と紅莉栖の重力の違いによる現象だ。 別項で一般相対性理論によると質量が空間を曲げると書いたが、時間も空間と同様に曲がる。 この理論から、夢のなかの紅莉栖の「あんたの1秒が、私には永遠となる…」という台詞になったと思われる ***(2)-6.ブラックホールの種類 ブラックホールの性質を決めるものは,質量、回転(自転)、電荷の3つしかない。 この事をホイーラーは「ブラックホールには毛がない」と言い、<ブラックホール無毛定理>とも言う。 自転しているブラックホールは角運動量を持つ。 ブラックホールは自転・電荷の有無によって4種類の基本タイプに分けられる。 最終的にはどんなブラックホールもカー=ニューマン・ブラックホールになると言われている。 |シュヴァルツシルト・ブラックホール| 回転なし | 電荷なし | 点状特異点| |ライスナー=ノルドシュトロム・ブラックホール | 回転なし| 電荷あり| 点状特異点| |カー・ブラックホール| 回転あり| 電荷なし| リング状特異点| |カー=ニューマン・ブラックホール| 回転あり| 電荷あり| リング状特異点 | #image(BlackHole10.png) ***(2)-7.カー・ブラックホール 自転しているブラックホールの事。 カー・ブラックホールの特異点はリング状になっている。(点ではないので、特異領域と呼ばれる事がある) 事象の地平面は自転の影響で内部と外部の2つに分裂している。 自転していない時の外側の半径はシュヴァルツシルト半径と同じだが、自転速度が大きくなると半径は縮小する。一方、内部地平面の半径は大きくなる。 1963年、ロイ・カーが回転するブラックホールを記述するアインシュタイン方程式の解を導き出した。 続いてワーナー・イスラエル、ホーキング、ブランドン・カーター、D・C・ロビンソンらは、もしどんな星が進化して ブラックホールが形成されたとしても、それはカー・ブラックホールに限られる事を示した(電磁場を含めるとカー・ニューマン解になる) ▽最大限に拡張されたカー時空のボイヤー-リンキスト・ブロック (カー・ブラックホールの幾何学) #image(BlackHole-k2.png) ***(2)-8.カー・ブラックホールとタイムトラベル(基礎編) イギリスの物理学者ブランドン・カーターによって、カー・ブラックホールにはタイムマシンの特性を持つ領域が存在する事が明らかにされている。 外側の地平面を超えて内側の地平面に行く間、時間と空間の役割が交換された領域の中を移動する。 内側の地平面を超えるとリング状特異点を囲んだ領域に入り、変換された時間と空間は役割を交換し、正常に戻る。 リング状特異点の内部で回転軸のまわりを周回して時間を調節。ここを通過すると新たに2つの事象の地平面がある。 内側の地平面を超えると、また時間と空間が入れ替わる領域に入る。そして外側の地平面を抜けると、別の宇宙に辿り着く。 ※回転して電荷を持つブラックホールと、裸の特異点については&link_anchor(L3){(3)}を参照。 ▽カー・ブラックホール #image(BlackHole-k3.png) ▽ブランドン・カーターのタイムマシン #image(BlackHole-k4.png) ***(2)-9.STEINS;GATEではブラックホールがなぜタイムマシンになるのか?(基礎編) STEINS;GATEでは、John Titorの語ったタイムマシン理論を参考にアレンジを加えている。 (原作ゲームではSERNにハッキングした際にZプログラムを見た紅莉栖が、タイターの理論と殆ど同じ、と感想を述べている) 電話レンジ(仮)についての細かい解説は今後のエピソードで出てくるはずだが(端折られるかもしれないが)、 ここではブラックホールとタイムマシンの関係を説明する。(※タイムマシンの詳しい理屈については&link_anchor(L3){(3)}を参照。) ・2つの特異点を作りだし電荷を与え回転させ、カー・ブラックホールに似た効果を得る(TITORと同じ) ・特異点を裸の状態にする為には電荷や回転を増やし事象の地平面をなくす(TITORと同じ) ・裸にするのは、事象の地平面は内側から外への脱出ができないので、それを回避する為 ・特異点は一般相対性理論と因果律が破綻させるので、そこへ突入すれば過去に遡れる ・SERNはリフターの調整に苦労して特異点を裸にしきれずゼリーマン化している ・SERNがVGLをどうしているかは未解明 ▽TITORの理論はもう少し詳しい リング状特異をくぐり抜け、別の世界(別の宇宙、別の世界線)に移動すると時間の中を旅する事が出来る。 (なぜリング状特異点の先が別の世界なのかは、アインシュタイン方程式の解によって示されている) そして裸の特異点が露出すると事象の地平面が消える事と、特異点に"触れないような"安全なタイムトラベルが可能になる。 狙った時空に旅する為には、VGLにより目的地をコントロールする事が重要になる。 ブラックホールは巨大な重力により事象の地平面に接近する前から強力な潮汐力が接近するものを引き裂いてしまう。 ゼリーマンはこの影響に因る結果かもしれないが、人工のミニブラックホールの場合は天体のブラックホールと違い質量が小さいのと (CERNの説明では2匹の蚊がぶつかるほど弱々しい)すぐ蒸発するので装置外部の人間が事故にあう心配はない ***(2)-10.ブラックホールの事象の地平面の内外では時間と空間の役割が入れ替わる? 2009年以前のWikipedia「事象の地平面」に、下記のような文面があった。 >事象の地平面の内側と外側では、時間と空間の役割が入れ替わる。地平面の外側(我々が存在している側)では、我々は空間を自由に移動できるが、時間はただ未来へと止まらずに流れる。逆に、地平面の内側では空間を自由に移動する事はできなくなって特異点へと落ちていくだけだが、過去へも未来へも行く事が出来ると考えられている。 これは記述が不正確として2009年12月以降は消されているようだ。 正確にはシュヴァルツシルト計量では事象の地平面の内側で符号rとtが役割を入れ替える事を表す。 外側ではtが時間座標でrが空間座標、内側ではrが時間座標でtが空間座標になり、 「地平面の内側ではrが減る方向にしか行けないが、tが増える方向にも減る方向にも行ける」事になるのを意味する。 つまり、内側ではrは時間座標になるので、未来に進む(rが減る)。また、tは空間座標になるので、tが減っても過去へ移動する訳ではない。 このような誤解が生じたのはシュバルツシルト座標を使って外部と内部の関係を議論したためでクルスカル座標系を使えば「時間と空間の役割が入れ替わる」という誤解はおきない クルスカル座標 http://members3.jcom.home.ne.jp/nososnd/grel/sch2.pdf ***(2)-11.SERN(セルン) [[3話Q&A>http://www45.atwiki.jp/stein_sgate/pages/28.html#id_abbf0d5e]]にも書いてあるが、 SERNはヨーロッパ原子核共同研究機関。ただし『SERN』はその略称ではない。 シュタゲのSERNは『Societe Europen pour la Recherche Nucleaire(研究所設立準備会)』の略称。 実際のCERN『Conseil Europeen pour la Recherche Nucleaire(研究所設立準備理事会)』がモデル。 スイスのジュネーヴ郊外にある世界最大規模の素粒子物理学の研究所。フランスとスイスの国境にまたがる形で存在しており、敷地内には銀行、図書館、郵便局、宿舎なども設けられている。ヨーロッパの19ヵ国を中心に世界中から研究チームが集まり、素粒子物理学に関する様々な実験が行われている。SERNで働く関係者はおよそ数千人に及ぶ。 SERNは素粒子物理学の研究施設で、素粒子加速器LHC(ラージハドロンコライダー)などの設備を持っている。 CERNのLHCは使い方次第でミニブラックホールができるかもしれないという噂もあった。 CERNのLHCがブラックホールを作り出すという噂 …CERNはブラックホールについて否定していたが、SERNは極秘にブラックホール生成を目的に実験をしている  http://wiredvision.jp/news/200809/2008091123.html CERNが2008年にハッキングされた事件(原作ゲーム内では語られている) …スーパーハカーであるダルがハッキングできたのも荒唐無稽ではない?(ゲームでは更に理由があるが)  http://wiredvision.jp/news/200809/2008091622.html ***(2)-12.LHC(ラージハドロンコライダー)/大型ハドロン衝突型加速器 #image(LHC01.jpg) &youtube(http://www.youtube.com/watch?v=qQNpucos9wc){425,350} CERNが建設した世界最大の衝突型円型加速器。 スイス・ジュネーブ郊外にフランスとの国境をまたいで設置され、地下100メートルの深さにある円形の巨大トンネルは全長約27km。 7兆電子ボルトのエネルギーを持つ2つの陽子同士を、光速の99.9999991%まで加速して正面衝突させる。LHCヤバイ。 陽子衝突は1秒間に800万回に達し、陽子同士が衝突するとそこになかった新しい複数の粒子が発生する。 この実験によりおきる高エネルギー反応について観測するのがLHCの目的だが、 ミニブラックホールが生成される可能性があるという理由から、実験中止の訴訟を起こされたりもした。 CERNはLHCによりブラックホールができる可能性は低く、できてもすぐに蒸発して危険性はないと主張。 ※SERN(CERNではなく)は、実はこのブラックホール生成こそをLHCの目的としており既にミニブラックホール生成のプロセスは確立していて、他の研究はすべてその隠れ蓑となっている。 LHCでは10の-24乗kgに相当する質量を10の-19乗mという狭い領域に集中させる事ができる。 従来の重力理論では、10の-24乗kgの質量を10の-51乗mまで圧縮しないとブラックホールにはならなかった。 しかし、超ひも理論のブレーンワールド仮説が正しければ余剰次元理論で、10の-18乗m程度でブラックホールが形成される。 これはLHCで十分到達できるレベルであり、1秒に1個の割合でミニブラックホールを作る事ができるという。 CERNの一部の学者はミニブラックホールができれば、重力が次元と次元とを行き来している事の証明になると期待している ***(2)-13.John Titor(現実のジョン・タイター) ここでは、現実の2000年に現れたJohn Titorについて。 [[2話のQ&A>http://www45.atwiki.jp/stein_sgate/pages/25.html#id_93f19880]]にも書いてあるが、 A:2000年に(現実の)インターネットに現れた自称タイムトラベラー。オカルト話が好きな人には有名 → [[Wikipedia>http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%82%BF%E3%83%BC]] -2000年1月にアメリカの大手ネット掲示板に現れ、2036年からやってきた未来人だと自称した -・&bold(){※STEINS;GATE2話のジョン・タイターは、2000年に行った事はないと明言している} -最初に2036年から1975年に跳びIBM5100を入手した -次に1998年に跳び、2000年からネットに書き込みをして、2001年に未来へと戻った -TITORによると、タイムマシンは乗り物ではなく重力制御装置だという。しかしその装置は車に設置している -その車は、1967年型のシボレー。デロリアンではない。この時代でさらに買い換えられた -タイムマシンはゼネラル・エレクトリック社製。名称は「C204型重力歪曲時間転移装置」 -タイムマシンは2034年に欧州原子核研究機構 (CERN) により試作1号機が実用化された -60年以上の時間移動は、世界線(世界)のズレが大きすぎて全く異なる世界にたどり着いてしまう -Titorのいた未来と当時の2000年とでは、世界線2%のズレにより出来事が違うという。&br()その為、Titorの予言は外れたものもあれば当たったものもある -John Titorは、IBM5100の入手が、過去へ来た目的(2038年問題解決)であると語っている -IBM 5100には、マニュアルにはないコンピュータ言語の翻訳機能がある事が2036年にわかったという -予言…CERNが2001年近辺にタイムマシンの基礎理論を発見する -予言…2005年アメリカで内戦 -予言…2015年第三次世界大戦 ***(2)-14.John Titorのタイムマシン ここでは、現実の2000年に現れたJohn Titorについて。 ▽Titorは1967年のシボレーにタイムマシンを搭載してやってきた #image(Titor05.jpg) 上の写真は1963-1967年代のコルベットC2、タイターの実物ではない。 タイムマシン稼働中は車を止めて静止していなければならない。(デロリアン型のように加速しない) ▽C204型重力歪曲時間転移装置 #image(Titor01.jpg) #image(Titor02.jpg) #image(Titor03.jpg) #image(Titor04.jpg) セシウム時計を4個装備した「C204型」のほか、上位機種としてセシウム時計を6個を装備した「C206型」も存在する。 2036年の米軍はC204型機を約10台、C206型機を約20台所有している ---- &aname(L3){} **(3)ブラックホールとタイムトラベルの詳細 ***(3)-1.John Titorのタイムマシン理論 ここでは2000年に現れたTitor自身の語ったタイムマシン学を紹介する 以下はタイターの発言の引用、要約 #region(close,参考) ジョン・タイター 2036年の未来からやってきたタイムトラベラー http://www5.hp-ez.com/hp/johnTitor777/4 #endregion ****(3)-1-1.人工ミクロ特異点 ビッグバンで作られたミクロ特異点(ミニブラックホール)のサイズは陽子ほどで、熱放射による蒸発効果のために何年か経つと消えてしまう。 Titorが初めて書き込みを始めた頃、もうすぐCERNが大型機を稼動させ高エネルギー粒子の衝突をすると言ったが、 このエネルギー増大から生まれる最も奇妙で潜在的に危険な要素が、電子サイズのミクロ特異点のかけらである。 ****(3)-1-2.カー局所場 ミクロ特異点は極めて大量のエネルギー(300~500メガワット)を放出するものの、帯電性があり、捕獲できる。 また、帯電した特異点にも事象の地平線が2つある。 このようにさまざまな特性を持つミクロ特異点を回転させる事で、カー局所場が作られる ****(3)-1-3.ティプラー重力正弦波 極めて近い位置にある2つのミクロ特異点を用いてカー局所場を作り出し、 それを操作、変化させる事でティプラー重力正弦波を作る事ができる。 この場を調整、回転、移動させれば、物質がリング状特移転を通って別の世界線に移動するときの 質量の動きをしミュレートする事ができる。これによって、安全なタイムトラベルが可能になる ****(3)-1-4.VGL=可変重力ロックシステム タイムトラベルの到着先の重力を厳密に調査し、あらぬ時空にほうり出されないようタイムトマシンをコントロールする。 これによって、常に自転・公転している地球から放り出される事や、ブロック塀などの障害物が置かれた世界線や 元いた世界線とまったくかけ離れている世界線に到着する事はない ****(3)-1-5.タイムマシン原理図 #image(Titor06.jpg) ①カー領域の双対特異点 ②負時間領域の出力 ③無時間領域の出力 ④正時間領域の出力 ⑤X軸出口円錐 ⑥垂直安全距離 ⑦質量オフセット ⑧後方質量分布 ⑨前方質量分布 ⑩負時間事象の地平線 ⑪無時間事象の地平線 ⑫正時間事象の地平線 通常のカー・ブラックホールではリング状特異点が1つなのに対し、この図では特異点が2つになっている。 Titorは2つのミクロ特異点を使い、カー局所場を作り出している。 カー・ブラックホールの質量による重力よりも自転による角運動量が大きくなった裸の特異点と似ているが、 この図では2つの特異点がある点が異なる。また、質量の重心が中心からずれている。 事象の地平線は存在するがドーナッツ状になっており、上下方向からは特異点がむき出しになっている ***(3)-2.Titorのタイムマシン動作 Titorは、「人工の双子ミクロ特異点を取り巻く質量と重力場に電子を注入して荷電させ、 カー局所場ないしティプラー重力正弦波内の事象の地平面を拡大して、 リング状特異点の環内に物質を通過させ、別の世界線へと送り込む動作をシミュレート操作して、 局所場を適合・回転・移動できれば、安全なタイムトラベルが可能となる」と語っている ***(3)-3.Titorのタイムマシン理論の補足 ****(3)-3-1.タイムトラベルと時空の回転 一般相対性理論を使って初めて過去に行けるかもしれない時空構造を発見したのは、ヴァン・ストッカムだった。 彼はアインシュタイン方程式の解として、ランチョスが発見した「無限に長くて回転している円筒時空の解」を考え、観測者がその時空に入った時の事を考察した。 十分早く回転している時空は、光も時空に引きずられて回転する経路を描くようになり、1周して同じところに戻ってくるようにもなる。 光速で動けば時間は進まないため、1周したとき光円錐の内側の領域(過去)にも経過時間ゼロで到達できる。 つまり過去へのタイムトラベルが可能になる ▽回転する時空と光円錐 #image(TT01.png) 光円錐とは、光がある1点から放出されたときに、時間を含めた4次元でどのように進むのかを図にした物。 座標の原点から放出された光は未来の方向に一定の速さで広がりながら進むので図では円錐を描くように伝播していく事になる。 円錐の壁は光速度で辿り着ける距離の限界で、光円錐の外側とは因果関係を持つ事は出来ない。 (左の図)静止している時空では、光円錐は直立している。止まっている人の世界線(運動の軌跡、タイターの世界線とは意味が異なる)も直立している。 (中央図)回転する時空では光円錐は斜めに傾く。止まっている人の世界線も斜めに傾く。(時空の回転と共に移動するため) (右の図)時空が光速で回転する地点では光円錐は横倒しになる。時間ゼロで光円錐の過去の領域に到達できる。 このようにして過去へ到達する方法を&bold(){「閉じた時間的世界線」「時間的閉曲線」(CTC= closed timelike curve)や「閉じた時間の環」(CTL= closed time link)}と呼ぶ。 -ゲーデルによって宇宙全体(時空)が自転する場合の時空モデルが提唱されたが、あくまでも理論モデルで、現実の宇宙は回転していない。 -ティプラーは有限の長さの回転する円筒モデルを提唱したが、高密度の物体が回転し続けるとブラックホールに変わってしまうと思われるなど現実的ではない。 -マレットはレーザー光線が一周するようなモデルのアイデアを米国特許商標局に仮特許申請し出願が認められた ****(3)-3-2.ペンローズ図 Titorは2001年2月に重力井戸の質問に対する回答で、タイムマシンを使用する事で感じる重力が2G程度であると述べ、カーブラックホールの説明をしたペンローズ図を参照するように勧めた。また3月には世界線のズレの質問に対し、ペンローズ図を見れば同じ世界線にたどり着くには光より早く移動しなければならないのが分かったはずだと回答した。 ここでは、そのペンローズ図について解説する。 ペンローズ図は無限の時空と光の四次元要素を有限の二次元の図で示すため実際の距離とは異なるように変形され、光は45度の傾きの直線として描写する(赤い線)。時間的経路は全て垂直に対して0~45度の角度をなす。 ▽ペンローズ図 -[[Wikipedia:ペンローズ図>http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9A%E3%83%B3%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%BA%E5%9B%B3]] -[[ペンローズ図を描くには>http://teenaka.at.webry.info/200701/article_11.html]] #image(TT02.png) ▽太陽を中心に置いたペンローズ図 #image(TT03.png) ブラックホールではない通常の天体として、太陽を例にとったペンローズ図。 この場合、&bold(){太陽の全時空の経歴}は点Pから点Fまでの&bold(){一本の直線}で表されている。 光的過去を示す無限大、線Sは、太陽に向って輝いている全ての光源。 Sを源とする光線は全て、左上45度の傾きの直線として表され、太陽の時間線に向かっている。 光的未来を示す無限大、線Dは、太陽から放射されるすべての光の目的地。 太陽からDへ走る光は全て、太陽の時間線からDへ走る45度の直線で表される。 空間的な&bold(){無限遠点}Eは、光速より遅い信号では太陽から連絡できない、非常に遠くの時空の全領域を表している *****(3)-3-2(1).ブラックホールの存在するペンローズ図 ▽シュヴァルツシルト・ブラックホールのある宇宙のペンローズ図 #image(TT04.png) 時空のゆがみが無限大となる特異点が生ずる。ペンローズ・ダイアグラムでは、慣例として特異点をギザギザの線で表す。 特異点からシュワルツシルト半径だけ離れたところに、事象の地平面(入るだけで出られない一方通行の膜、<印で表す)がある。 点Mから出発した旅行者は、ブラックホールを避け時間的無限大のFで生涯を閉じるか、一方通行の膜を通って特異点に吸い込まれるかだ ▽シュヴァルツシルト・ブラックホールの完全なペンローズ図 #image(TT05.png) アインシュタイン方程式のシュヴァルツシルトの解のすべてをペンローズ図で表現すると上図のようになる。 一方通行の膜をもつ第二の宇宙が出現し、さらに、物質を吐き出すホワイトホール(過去の空間的特異点)が発生する。 しかし第二の宇宙と通信するには、超光速信号を使わなければならない *****(3)-3-2(2).回転するブラックホールのペンローズ図 1963年に物理学者ロイ・カーが、強力な重力を持ち高速で回転する物体のアインシュタイン方程式の解を発見した。 ▽カー・ブラックホールのペンローズ図 #image(TT06.png) シュヴァルツシルト・ブラックホールには別の宇宙が一つあるのに対して、カー・ブラックホールには別の宇宙が無数に現れる。 折りたたんだ紙から切りぬいた紙人形のようなので、ペーパードール・トポロジーという。 また、シュヴァルツシルト・ブラックホールの中心には空間的特異点が存在するが、カー・ブラックホールには時間的特異点が存在する。 通常空間と特異点を隔てる一方通行の膜(地平面)は2つ存在する。 時間的特異点は時間の流れに並行しており、空間的特異点と違い時空を巧妙に航行すれば避ける事ができる。 カーのブラックホールには「リング状の特異点」「負の時空領域」「負のCTL領域」の三つの特徴がある。 #image(BlackHole-k1.png) &bold(){リング状特異点} カーのブラックホールは、特異点が点ではなく、回転軸を取り巻くリング状の形をしている。 このため、無限に湾曲した領域を避けて、安全にブラックホールの中心に到達できる。 ペンローズ図では、先の丸いギザギザで表される &bold(){負の時空領域} ブラックホールのリングの中心を通り抜けると、負の時空領域となっている。 そこでは、G×r(Gは宇宙の重力定数、rは中心からの距離)が負になる。 中心からの距離が負になるというのは考えにくいので、重力が負になると考えられる。 &bold(){負のCTL領域} リング状特異点の内側には、負のCTL(Closed Time Link)領域つまり負の閉じた時間の環が生じる。 リングの中心を通り抜けて、回転軸の周りを回転方向に回ると過去にさかのぼる事ができ、その回った回数によってどれだけ時間をさかのぼるかが決まる。 そして、リングの中心を再び通って戻ると正の時空領域に戻る事はできるが、一方通行の膜があるので元の宇宙に戻る事はできず、別の宇宙へ抜ける。 別の宇宙とは、われわれの宇宙の離れた領域かもしれないし、パラレルワールドになっていて、われわれの宇宙とそっくりの別の宇宙かもしれない。 カー・ブラックホールをタイムトラベルに使おうと思う人は、旅立つ前に別の宇宙につながる正確な道路地図を手に入れておく必要がある。 John Titorは、それにVGL(可変重力ロック)システムを使用する事で問題を解決している。 また、カー・ブラックホールのペンローズ図を見れば、世界線のズレなくタイムトラベルをする事はできない(同じ世界線にたどり着くには光より早く移動しなければならない)と説明している *****(3)-3-2(3).回転して電荷を持つブラックホールのペンローズ図 ロイ・カーが回転するブラックホールの解を発表してから2,3年後、ピッツバーグのエズラ・ニューマンとその同僚が、電荷を持ち回転するブラックホールの解を発表した。 ▽カー=ニューマン・ブラックホールのペンローズ図 #image(TT07.png) カー・ブラックホールに正のCTL領域が追加された形となっている &bold(){正のCTL領域} CTL領域がリング状特異点を越えて広がり、通常の正の領域を汚染している。 リング状特異点を通り抜けて負の時空領域に行かなくてもCTL領域に到達でき、そこで回転軸と反対方向に(カー・ブラックホールの場合と逆)回転すると、その回った回数に応じて過去にさかのぼる事ができる。 ただし、一方通行の膜が存在するので、元の宇宙に戻る事はできず、別の宇宙へ行ってしまうのはカー・ブラックホールの場合と同じ ****(3)-3-3.超極限のカー物体(SEKO) カー・ブラックホールは、質量Mと角運動量Aの値だけでその特性が記述できる。 MがAより大きい場合は、二つの一方通行の膜が存在する。Aが増大するにつれて二つの膜がしだいに接近し、A=Mのときに二つの膜は融合する。 このように、ブラックホールの質量と角運動量が均衡を保っている状態を超極限のカー・ブラックホールという。 角運動量がさらに増大し質量を超えたために崩壊したような物体を、超極限のカー物体(SEKO=super-extra Kerr object)と呼ぶ。 このようにA>Mになると、事象の地平面は消失しリング状特異点が露出し、裸の特異点となる #image(TT09.png) SEKOは裸のリング状特異点を持つ一個の反重力宇宙で、もし我々の宇宙にSEKOが一つでもあれば、時空全体がCTLとなり、全ての場所が過去への旅への出発点となる。 ▽裸の特異点が存在した場合のペンローズ図 #image(TT08.png) SEKOの特異点はリング状特異点の変種であり、時間的でもあるから、旅行者は無限に湾曲した時空(特異点)という致命的な領域に触れずにリングを通って特異点を通過でき、負の空間という別の世界に入る事が出来る。この場合、別の世界は1つしかなく、ペーパードール・トポロジーは無い ****(3)-3-4.裸の特異点を使ったタイムトラベル SEKOのもっとも興味深い特徴は、その特異点の周りを適切な方向に回れば時間を逆行できる事だ。 その上、そういう周回航行をすればブラックホールの膜の内側ばかりでなく、時空の全領域へ到達可能になる。 原則的にはSEKOに近づきその周りを二、三周すれば、特異点をくぐり抜けたりしてよく分からない新しい宇宙へ飛び込む必要はなく、過去のどこにでも行ける ****(3)-3-5.現実世界でのタイムトラベルの難点 -SEKOに欠かせない特徴の一つは時間的特異点だが、量子効果によって空間的特異点と変換され、時空の特徴は安定してしまいタイムマシンに利用できないかもしれない。 -通常のブラックホールを回転させてSEKOを作る事は不可能かもしれない。 --ブラックホールを質量<角運動量にする必要があるが、角運動量が増大するにつれて回転を上げる軌道が減少しゼロに近づくか、注入する回転体の反発により不可能になる。 -John TitorやSTEINS;GATEのタイムマシンは、2つのブラックホールを回転させている事が問題点を解決するかもしれない。 -特異点が2つある場合のブラックホールの解は、まだ誰も解いていない ---- **このページの参考図書 #region(close,参考) カー・ブラックホールの幾何学(バレット・オニール) 時間の不思議 タイムマシンからホーキング(都筑 卓司) タイム・トラベラー タイム・マシンの方程式(ロナルド.L.マレット) タイムマシンと時空の科学(真貝寿明) タイムマシンの作り方(ニック・ハーバート) Newton別冊 時間と空間を軸にえがいた新宇宙図 〃 相対性理論 〃 ブラックホール 〃 量子論改訂版 -その他下記サイトを引用,参考 シュバルツシルト解 外部 http://members3.jcom.home.ne.jp/nososnd/grel/sch.pdf シュバルツシルト解 クルスカル座標 http://members3.jcom.home.ne.jp/nososnd/grel/sch2.pdf ペンローズ過程 http://members3.jcom.home.ne.jp/nososnd/grel/pen.pdf コンピュータシミュレーションの体験 http://www.sp.ous.ac.jp/koho/taiken2004/staff.html カー時空における粒子の軌道 http://microcosmos.sci.kagoshima-u.ac.jp/weblab/thesis_file/grad_thesis_2008.pdf ブラックホールの内部世界 http://www.fintech.co.jp/space/sp-5.html 重力崩壊とブラックホール(2) http://maldoror-ducasse.cocolog-nifty.com/blog/cat40099955/index.html ハードSFのネタ教えます http://homepage3.nifty.com/iromono/hardsf/darwinuniv.html ブラックホールの世界 http://quasar.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/~fukue/POPULAR/99ce/bh/which/which.htm Yahoo!知恵袋 http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1044036495 http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1035562400 新健康と科学と雑学 http://newscience.air-nifty.com/blog/2005/11/2036_26d8.html #endregion

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