NPO法人日本アニマシオン協会の会報最新号(会報アニマシオン11号)に管理人による以下の記事が掲載されました。寄稿に際し頂戴した原稿料は募金に加えさせていただきました。ありがとうございました(2011年4月28日・5月11日)



タイトル: 被災地の子どもたちに本を届けよう! http://www45.atwiki.jp/slls

支援サイトをたちあげるまで


 3月11日を境に世界は大きく変わってしまいました。マグニチュード9という激震の影響は、いまや東北や日本に留まらず、地球規模で暮らしや生き方を見つめ直し、政治的な転換を迫るところにまで及んでいます。一方で震災から一カ月たっても未だ被害の全貌がわからず、水や電気の供給が止まっている現地の状況もグローバル化と同時に起きている厳しい現実です。大局に立ってものを見ることと、目の前の日々を生きることの間で、かつてない混乱にさらされているのが現在の私たちの姿でしょう。
 震災当日、会議出席のため都心にいた私は、多くの人と同様に帰宅難民となり、翌日千葉県内の実家に6時間かけて辿り着きました。その日のメールで、東京郊外にある勤務先大学の私の研究室は、壁にビスで固定してあった書架3連がすべて倒壊し、部屋に入れない惨状であることが判明。校舎は安全確認のため立ち入り禁止となり、政府の通勤自粛勧告や計画停電などの影響で出勤できない日々が続きました。今思うと不思議なことですが、半日程度の外出にはノートパソコンを持ち歩かない私が、地震当日はなぜか持参していました。地震直後からPHS経由でインターネットに接続できたため、パソコン上で出来る仕事を再開継続しました。3月14日に「被災地の子どもたちに届けたい本@ウィキ」をインターネット上に開設しました。次々に明らかになる被災地の惨状に居ても立ってもいられず、そのとき自分ができる範囲で考えたことでした。不特定多数の人に向けて呼びかけることは勇気の要ることでしたが、幸いサイトを閲覧し賛同してくださる方が日を追って増えています。
 「ウィキ」というのは、インターネット上に情報を掲載するホームページの一種ですが、無料で制作でき、開設した人間だけではなく、そこを訪れる誰でも書き込みが出来、共同制作ができることが最大の特徴です。ウィキサイトでは「被災地の子どもたちに届けたい本」として、「自分だったらこの本を子どもたちと読みたい・共有したい」という1冊を参加者の方々に登録してもらう仕組みをまず作りました。筆者が主宰するSLLS(学びの場としての学校図書館)研究会有志の協力も得ています。

学校図書館復興支援ということ


 私は新潟中越地震の際に、慶應義塾普通部司書教諭の庭井史絵さんが率いた学校図書館支援活動に参加させていただいた経験があります。そのときに痛感したことは、学校図書館という社会的認知度の低い施設が災害に見舞われたとき、復興への手立てを見つけることが非常に難しいということでした。このとき既存の図書館団体が被災地支援に動かないことにも憤りと失望を感じました。それが今回のウィキ開設の動機にもなっています。最終的には、学校図書館の復興支援に貢献することを目指しています。
 今回、図書館や美術館などの関係者による活動も活発ですが、公共図書館や大学図書館とは異なり、学校図書館は学校行政の影響を直接受けるために、往々にして図書館の枠組みから外されてしまいます。かといって学校行政の枠組みにおいても学校図書館の存在は中核的とは言えません。
 学校図書館の復興は、本来的には学校の復興計画の中に位置づけられ、公的な予算配分の中で行われるべきものですが、日本の学校図書館には「人」がいません。全国約40,000校の小・中・高校の半数には、学校図書館法で定められた「司書教諭」という専門の教員は配置されていません。現場のニーズを吸い上げる人的システムがそもそも整備されていないのです。実際に今回も東北の学校図書館関係者の声はほとんど聞かれません。まだその時期には至っていないこともあるのでしょうが(ご存知のように公務員でもある先生方は現在避難所運営要員として活動されています)、専門の教職員がいない学校図書館では支援を求める声を上げることすら覚束ないのではないかと危惧しています。
 新潟中越地震時に学校図書館復興支援にうかがった先は避難所として使われていた小学校でした。図書館は診療所として使われていたために、書架や本はすべて図書館から持ちだされ、そのままでは図書館としての使用が出来ない状態にありました。大型バス1台に図書館関係・大学生・一般市民など50名ほどのボランティアが同乗し、日帰りで図書館復旧のお手伝いをしました。このときに仲介をしてくださったのは小学校の教員ではなく地元高校の専任司書の方でした。学校図書館専任の教職員がいない小学校が直接声をあげにくい状況はそのときも同じだったのです。今回、被災あるいは避難所になっている学校数の多さから見て、ボランティアのニーズはさらに大きいはずですが、被害地域が広範囲におよび、支援活動をどう展開していくのか、今後の大きな課題です。
 今後はウィキサイトの構成自体を変えて、被災地の学校図書館のニーズと、SLLS研究会を含む専門的な集団が提供できる支援を結び付けていくことも検討しています。現時点でどなたにもご協力していただけることとしては以下の内容があります。

  • ウィキに登録して本を推薦する
  • 支援活動のための募金に参加する(募金は本の購入などに充てられます)

 学校図書館を含めた子どもの読書環境の復興・整備は、ライフラインといった一次的な支援よりも優先順位が低いため、開始までに時間がかかる作業だと思います。その時までに支援熱が冷めてしまうことがないよう、息長い支援が継続できるよう尽力したいと思っています。支援についてのご意見・ご提案がありましたらお寄せください。
 皆さまのご協力をお願い申し上げます。(了)

 2011年3月14日開設時のページは 3月14日開設時トップページ こちら。
 2011年3月14日以降の経緯につきましては、 管理人より をご参照ください。

 このサイトの管理は、河西由美子とSLLS(学びの場としての学校図書館)研究会有志が担当しています。

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最終更新:2013年04月02日 00:04