管理人からのメッセージ


2013年4月1日(月)


日本アニマシオン協会会報19号巻頭に掲載された拙稿を許可を得て転載します。

東日本大震災から3年目を迎えて-子ども読書支援のその後


震災から丸2年

 2011年3月11日から2年が経過しました。今年の、その当日をめぐるメディアの報道ラッシュは凄まじいものでしたが、あの日に立ち戻り、震災がもたらした多くの災厄がいまだ過ぎ去ってはおらず、今もなお生活のすべての面に及んでいることに向き合う機会があらためて与えられていると感じています。
 NPO法人日本アニマシオン協会には、震災後間もない時期から「会報アニマシオン」に筆者を中心とした、ささやかな支援活動の情報を掲載いただきました。今回震災から2年という時期に、再び執筆の機会を頂戴し、この1年間の活動や経緯について報告をさせて頂くことになりました。あらためて御礼申し上げます。
 インターネット上の「ウィキ」を拠点とした私共の活動(被災地の子どもたちに贈りたい本@ウィキ)のうち、図書を選定し贈る活動は、2011年の後半には募金活動を含めほぼ終息しました。その頃には既存団体が組織的な支援活動を開始していましたし、私自身も、学会からの助成を得て調査を行うなど、一研究者としての活動に移行したという状況の変化もありました。

被災地を訪れて

 私が初めて被災地に足を運んだのは、2011年の7月でした。アニマシオン協会の遠田理事のご紹介で、まず宮城県岩沼市の小学校に、そこからお隣の名取市図書館をご紹介いただきました。それがその後の名取市図書館絆まつり(2011年11月)や、2回にわたる名取市学校図書館研修会(2011年12月/2012年2月)への参加につながりました。アニマシオン協会の方々にはこの2つの行事両方にもご参加をいただきました。感謝申し上げます。
 名取市の図書館絆まつりで図書の展示を行ったときには、展示の「店番」をしながら現地の方々と交流する貴重な機会が得られました。
 今でも忘れられないのは、ひとりの女性が話すともなく「ウチは津波の被害を受けていないので、津波で家が流されたり、家族を亡くされた方に対して、申し訳ないように思い、どのように接していいのかわからない」とおっしゃったことでした。私もなんと言ってよいかわからず、聞き役に徹しておりましたところ、その方は、はっと我に返られ、「思わずこんなことを話してしまった。周りがみんな被災しており、辛いのは自分だけではないと思うと、身近な人にはこんな話はできない」とおっしゃり、「外の人だと思うと、思わずしゃべってしまった」と微笑まれました。

震災で傷ついていない人はいない

 実はその翌日に、図書館絆まつりで名取市民の方々に向けた講演をさせていただくことになっており、被災の度合いが違う様々な参加者の方々に向かって、どのようなスタンスでお話をすればよいのか、大きな不安を抱えていたのですが、その方のお話から「被災の度合いは違えど、今回の震災によって傷ついていない人はいない」ということに気づかされました。
もちろん肉親や家を失われた方々の苦しみ哀しみは、体験していない者には計り知れません。しかし、たまたまその隣で無事であった人が、まったく災厄から逃れて無傷であると言えるものでしょうか?それを敷衍すれば、広く「東日本」の人々はこの震災によってなべて大きく傷つきました。それはまた「日本」という国全体、日本人全員にとっても大きなショック、痛手でありました。では海外の国々はどうでしょうか?多くのお見舞いのメッセージや義捐金、たくさんの支援プロジェクトが贈られたことは、日本の、東日本の、被災地の苦しみを、ただ他者のものとして切り捨てることができない多くの人々が存在することを私たちに教えてくれたように思います。
この地上のどこかに起こった大きな苦しみや哀しみは、たちまち全世界に影響を及ぼさずにはいません。自分の立場がどうであれ、苦しむ他者のために何ができるか、という、人間の基本的な徳性が試されている時であると感じます。

津波被害のあった場所で

 私が初めて津波の跡地である名取市閖上(ゆりあげ)海岸を訪れたのはさらに遅く、震災から1年がたった昨春でした。ところどころに移動できない船の残骸を残してガレキは撤去され、一面の更地となった海岸線を、日和山に立てられた手づくりの碑が見下ろしていました。津波被害を受けた閖上中学校の体育館は、遺留品の整理場所となっていましたが、泥だらけの衣類が床に並べられ、名前が書いてあるにもかかわらず引き取り手の無い様々な品々、写真、赤ちゃんの所在を尋ねる貼り紙など、思わず目をそむけたくなる悲惨な現実がそこにありました。
 津波被害の地に立って最も強く感じたのが、お腹の底から突き上げるような原初的な怒りの感情であったことに自分でも驚きました。自然の脅威に対する怒り、1年経ってもなんら救いが無いように見える現状への、誰に対するのかわからない怒り、何もできない自分に対する怒りなど、今でもその中身がうまく分析できていません。
 その後被災地を訪れる回数が増すほどに、情報発信することが難しくなりました。その理由はわかりません。ただ現地に立つことで、今回の災害が、いかに甚大かつ広範なものであるかは、しっかりと理解することができたように思います。機会と意思がある方は、出来る限り被災地を訪れていただきたいと思う所以です。

長期的な支援に向けて

 実は、震災から2年が経った今も、私が震災直後から目指していた学校図書館の復旧・復興に関わる支援活動には手が届いていません。それ以前に学校図書館の被災状況の悉皆調査ができていないという厳しい現状もあります。この1年は、調査の報告や、ささやかな支援活動の総括などの活動にシフトしてきた観がありますが、いろいろな機会に情報発信や交流をさせていただくことを通して、東北各地の方々と接点を持ち、長期的な視点で、研究者として、また一個人として課題に取り組んでいけるよう努めたいと思っています。
 ウィキ上では、震災直後のような直接の支援の呼びかけはしておりませんが、管理人として細々と情報発信を続けています。今後とも末長いご関心をいただけますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。

被災地の子どもたちに届けたい本@ウィキ http://www45.atwiki.jp/slls
震災と子ども読書・学校図書館支援(国際子ども図書館の窓 第12号)

(了)

2013年3月13日(水)


 震災から丸2年が経過しました。メディアでの映像の氾濫は、哀しみを増幅させる負の側面もありますが、多くの被災地外の者(私も含めて)に対しては、震災を風化させない効果があると思います。時の経過を重く受け止め、自分にできることについて引き続き考え、行動していきたいと思っています。
 震災直後の活動が一段落し、2011年後半以降は、本ウィキでの報告も間遠になっていました。ただ、本ウィキでの活動を支えてくださっていたメンバーと共にしてきた組織的な活動が一段落したというだけのことで、管理人を含むメンバーは各地での支援活動にそれぞれシフトしていったということだと思います。
 管理人の活動も、研究者個人としての支援活動や調査活動に収束していきましたので、いちいちウィキでの報告は行いませんでしたが、今後少しずつ整理し、報告していきたいと思います。
 宮城県名取市図書館の皆さんとの交流は、2011年から2012年を通じて断続的にではありますが、つながっています。震災から1年たった昨春、初めて名取市閖上地区の津波被災地を訪れました。津波被害の甚大さ、深刻さを痛感するとともに、その場所の悲惨さに触れた時もっとも強く感じたのが、「怒り」の感情であったことは自分でも意外でした。それは「このままにしてはいけない!」という、誰にともいえない原初的な怒りの感情、何もできない自分への怒りでもあったように思います。訪問時には、2012年1月にユニセフ・東海大学等の支援により、名取市図書館の敷地内に建設された「どんぐり子ども図書室」を拝見することもできました。2012年の秋には横浜で開催された「図書館総合展」に参加されていた名取市図書館のスタッフの皆さんと名取市長さんと東京で再会する機会を得、交流をさせていただきました。2013年1月には、カナダ政府の支援により「どんぐり・アンみんなの図書室」が旧名取市図書館の跡地に開設されたという嬉しいニュースにも接しました。
 しかしながら、管理人が当初から目的としていた学校図書館の復旧・復興に関わる支援活動には、震災から2年経過した今も手が届いていません。それ以前に学校図書館の被災状況の悉皆調査ができていないという厳しい現状もあります。いろいろな機会に情報発信や交流をすることで、被災地の方々と接点を持ち、長期的な視点で、研究者として、一個人としてこの課題に着手していけるよう努めたいと思っています。


2011年8月11日(木)


 震災からまたひと月を数えました。お盆や夏祭りを通して、過去と向き合い、精霊を迎える作業をしている方も多いと思います。すべての人が季節のうつろいを心安らかに迎えられるようにと祈ります。
 私たちの活動には、この1カ月大きな動きはありませんでした。ひとつの区切りとして、これまでに各地にお送りした本の支払い手続きが済み、募金口座がほとんど空になりました。世間には大口の募金もあり、本を贈る活動も各地で組織的に行われていますので、本ウィキでの募金と図書寄贈の活動はひとまず休止としたいと思います。これまでの募金・寄贈活動に関わってくださった皆様、ご協力ありがとうございました。
 今後は、他の組織とネットワークを組みながら、本や学校図書館に関わるボランティア活動のほうにシフトしていきたいと考えています。皆さんの動きやすい夏休み期間にボランティア活動が企画できることを希望していましたが、相手のあることで、なかなか話が進みません。決まり次第、本サイトで告知をさせていただきます。


2011年7月11日(月)


 震災から4ヶ月が経過しました。7月11日午後2時46分は、山形県から仙台に向かうバスの中で迎えました。日本図書館情報学会の助成を受けて、初めて東北入りしての調査の中日でした。ちょうど作並温泉に差し掛かったところで手を合わせました。
 その後、夕方に宮城県岩沼市の岩沼小学校に到着し、ちょうどその日に着いたばかりの、ウィキ寄贈図書の開封に立ちあいました。発注と発送作業は沼津市の有志の皆さんにお願いしているため、パッケージ全体を見るのは私も初めてのことでした。中には初めて見る本も多かったのですが、ウィキ有志の皆さんの思いがこもった本たちだけに、どの本も美しく、楽しい外観と内容を備えていました。このたびの震災では、日本各地から多くの本が被災地に送られましたが、寄贈図書の中には受け取った側が首をかしげる内容のものも多いと聞いています(今回の調査でもそうした声をお聞きしました)。私たちの支援はささやかなものですが、その質の高さには胸を張れます。書き込んでくださった皆さんの思いの深さとお志の高さによるものと思います。感謝申し上げます。その思いは本を通して子どもたちや先生方に伝わっています。
 今回の被災地調査の中間報告はおいおいウィキにアップしていきますのでご覧ください。


2011年6月10日(金)


 明日で震災から3ヶ月になります。長い長い3ヶ月でした。被災地外の私たちでさえ、震災後の生活に心と身体を合わせるのにエネルギーと時間を要した気がしています。ましてや被災地でまだ不自由な生活が続く皆さんの生活はいかばかりでしょうか。季節は変わり、雨や暑さといった新たな課題も容赦なく押し寄せています。
 図書をお送りした先から切れ切れに情報が入ります。幼稚園や小学校の子どもたちがとても本を喜んでくれているそうです。きれいなステッカーが貼ってあるので「これは何?」と聞いてくれる子も多く、そのたびに先生が、本ウィキによって、いろいろな人の気持ちや手を経て送られた本であることを説明してくださっているようです。しおりも大好評で、同じ年頃の子どもたちが作ってくれたことがわかるので、興味しんしんで喜んで触ってくれているようです。そうですよね。本を読むときにしおりを使う幼稚園児や小学生はあまり見たことがないので(笑)、きっと本についてくる「おまけ」だと思っているのかもしれません。
 いわき市にも、読み聞かせやお話会の出前の申し出は、全国各地からあるそうですが、新学期の開始も遅れ、さまざまな学校行事のやりくりもあり、受け入れのほうが伴わないそうです。福島は3月に予定していた教員の人事異動が8月に実施されるそうで、先生方のやりくりもあり、引き続き不安定な学校運営のご様子です。夏休みに現地に行ければ、と思っていましたが、まだまだ読書活動や学校図書館復旧の出番は回ってこないようです。


2011年5月28日(土)


 いろいろな方々のリレーでとうとう26日、最初の図書が現地の子どもたちのもとへ届きました。本ウィキの趣旨にご賛同いただいた皆さま、ありがとうございました。3月14日に活動を始めてから2カ月以上かかってしまいました。これからもささやかですが息長く支援を続けて行きたいと思います。 
 宮城県の岩沼市立岩沼小学校からも図書寄贈の要請がありました。現在準備をしています。
 日本は梅雨の季節を迎えています。被災地に大雨による二次被害が出ませんように祈っています。


2011年5月16日(月)


 ここへきて支援の動きが活発化しています。
(1)福島県4カ所への寄贈図書が納入されました。1週間以内には被災地に届くかと思います。
(2)東京の高校生が寄贈図書に貼付するステッカーを製作してくれました。さっそく福島行き図書に貼付されます。
(3)宮城県内2カ所からの図書要請がありました。現在連絡調整中です。
(4)管理人が応募した日本図書館情報学会特別研究助成が採択され、助成金がいただけることになりました。これは東日本大震災に特化した研究助成で、被災地の学校図書館調査などに充てられます。研究テーマは「東日本大震災被災学校における図書および図書館ニーズに関する調査研究」です。7月には現地調査を開始したいと思っています。その過程で現地のニーズに併せたボランティア活動についても細かい情報収集ができればと思っています。


2011年5月11日(水)


 ゴールデンウィークも終わりました。私事ですが連休中に身内の法事があり、その準備や応接のため、自宅と実家を何度か往復し、あまり休んだ気のしない落ち着かない休日になりました。連休を利用してボランティアに参加している方々の様子をニュースで横目で見ている日々でした。個人的には本務との兼ね合いで7月の現地入りを目指しています。
 連休前に発行された「会報 アニマシオン」の読者の方々なのか、新たにいろいろな方々から声を御寄せいただいています。会報の発行と本の登録の4月末締め切り時期が重なってしまったため、登録締め切りをひとまず5月末まで延ばしました。あまりブックリストが分厚くなると、今度は本が多すぎて1パッケージの予算が高くついてしまいますので、きりのいいところでストップしたいという思いもあります。難しいところです。


2011年4月27日(水)


 トップページにも書きましたが、本日現在で4ヶ所の図書寄贈先が決定しました。管理人として、募金をいただいている立場でもあり、ようやく具体的な支援に取り掛かることができほっとしています。同時にこれからが本番!と身がひきしまる思いです。
 支援先が決まったきっかけは「口コミ」でした。連絡手段は携帯電話とFAXです。インターネットでいくら呼びかけても、まだまだ切迫している被災地の通信状況では、インターネットは有効な手段ではないことがあらためて痛感されました。被災地とつながりを持っているどなたかが人を介して結びつけてくださることが必要なのです。
 一つの小学校は、津波被害はまぬがれたものの、隣の中学校は津波で被災したため、小学校に中学生も受け入れての新学期です。特別教室は中学生がいるため、小学生は図書室を使うことができません。校舎の窓から見えるところに津波の惨状が広がっており、自宅の前に津波で流された乗用車が引っ掛かったままの風景の中を子どもたちは自宅から、避難所から通学しているそうです。パニック障害と診断されたお子さん、健康な6年生でも授業中に突然泣き叫んだりと、先生方はいまだ余震の恐怖とも闘う中で、子どもたちを安心させることで手一杯というお話でした。お話を聞きながら電話を持つ手が震えました。
 他の二校もまた被災地の小学校が避難してきた小学校を支えているという状態だそうです。被災地外にいる私たちにはやりきれない、心の痛む現状です。
 「心のケア」と言っても、毎日変わり果てた故郷の景色を目の当たりにする子どもたちの苦しみや悲しみはいかばかりでしょうか。ひととき本の中に別の世界を見せてあげたいと思う私たちの気持ちが早く届いて欲しいと作業を進めながらも祈っています。 
 FAXで、ウィキに登録された本のリストを送信しましたところ、対象校の先生から「本のリストにある、それぞれの推薦者の方々が書かれたコメントを読むと、その方の思いや願いが伝わってきます」とお返事をいただきました。書き込んでくださった皆さんのお気持ちは確実に被災地に届き始めています。今後とも引き続き息長いご支援をお願い申し上げます。


2011年4月25日(月)


 数日前のNHKのニュースだったと思いますが、釜石だか石巻の図書館が再開したという報道がありました。年配の男性が嬉しそうに「私くらいの年になると本はご飯と同じ」とインタビューに答えていました。「滋養になる」と。本が、読書が「滋養になる」って、なんて素敵な表現だろうと思いました。読んだ言葉が身体の中に沁みわたるという感じがとてもよく伝わってきました。みなさん、「滋養になる」本を読んでいますか?


2011年4月22日(金)


 福島県いわき市の幼稚園と小学校から図書の希望がありました。支援第一号として鋭意発送準備をしていきます。

東京の幼稚園の園長先生からのおたよりです 「子供たちは、礼拝の献金をいろいろな紙に包んだり、小さな袋に入れたりして持ってきます。4月中の礼拝献金は東日本大震災義援金とする話をしていました。今日の礼拝献金を整理していたところ、こんな包み紙が出てきました。親子で献金を包みながら、祈りも込めているのでしょう。『きょうすけくん』は年長です」


2011年4月21日(木)


 昨日、文部科学省の子どもの学び支援ポータルサイトに支援情報を登録しました。同時にNIERの被災地学校運営支援サイトにも情報を上げました。
 これまでこのウィキでは本を登録してブックリストを作ることを掲げてきましたが、最終的には、それを誰かが仲介しながら、たとえば読み聞かせやお話会などをしたり、荒れてしまった図書館を復旧整理したり、というボランティアと一緒に届けたいという思いがありましたので、ボランティアの支援という形で登録をしました。それに合わせてメニューの構成も変えています。
 実はこのウィキの運営協力者のなかには、新潟中越地震の際に学校および学校図書館でボランティアを体験したことのあるメンバーが複数おり、このほどその際の体験記事も公開されました。新たに追加した支援内容のページ下部にリンクを置きましたので、ご興味のある方はご覧ください。記事にもありますが、一度に最大50名程度で図書館復旧作業をしたこともありますので、規模としてその程度のことは出来るかな、と見込んでいます。もちろん東北は新潟よりさらに遠いので、日帰りは無理かと思いますが、ぜひお手伝いをさせていただきたいと思っています。
 一方で本の登録が4月に入ってほとんど動いていませんので、4月末でこれまでのブックリスト作りは締め切る予定です。個人でご登録を考えている方はお急ぎください。5月以降は、学校図書館向けの選定図書リスト各種(たとえば「辞典・事典類10万円コース」とか、「娯楽読み物20万円コース」とか、ニーズに合わせて選択できるような推薦図書リスト)を作成したり、各分野の専門家集団が作られたブックリストなどを順次掲載していきたいと思っています。これらのリストは個人ではなく団体単位での情報提供を対象にする予定です。 


2011年4月18日(月)


 今年の一月、大学の年度最後の読書の授業で学生と共に読んだ、詩人・長田弘氏の詩「カシコイモノヨ、教えてください」を、最近になって読み返してみました。
 この詩は、長田氏が日本語で書かれた世界最古の聖書「覆刻ギュツラフ訳聖書」(詩によれば「北ドイツ生まれの、宣教の人ギュツラフが、日本人の、三人の遭難漂流民の助けを借りて」シンガポールで刷った聖書)に想を得て書かれたものです。
 長田氏は、詩の終わりで、神(おそらく確固とした信仰)を持たない現代日本人の悲哀をうたっている(と思われる)のですが、震災後の今日その詩を読むと別の感慨に胸を打たれます。長田氏が詩の後半で引いているのはヨハネの福音書の一節です。

ヒトノナカニ イノチアル、
コノイノチワ ニンゲンノヒカリ。
コノヒカリワ クラサノナカニカガヤク。

 私たち日本人にとっての信仰の姿は、既存の宗教・宗派・教義の中にではなく、未曾有の大災害の中にあって、喪失の悲しみと衝撃を耐え忍んでおられる東北の人々の姿の中にこそ存すると感じられてなりません。そうでなければ、世界中の様々な国の数多くの人々が、被災地の方々の振る舞いにあれほどの感動を覚える理由はないでしょう。
 辛さの中を生きる被災者の方々の姿に、私たちは クラサノナカニカガヤクヒカリ を見ます。被災地の外にいる私たちも、そのヒカリに支えられて今日を生きていると思うのです。



2011年4月12日(火)


 新学期が始まりました。管理人の勤務校は4月上旬からの予定どおりの授業開始となったため、先週から教壇に立っています。教職員にも学生にも東北を郷里とする人がおり、様々な被災体験を聞く日々です。大学生の若い顔には苦労は刻まれていませんが、家族が被災、教育実習先としていた母校が被災など、多くの辛さや困難を背負っての年度初めであることが切実に伝わってきます。
 さて、本やおもちゃを送る活動をしている団体はいろいろありますが、現地のニーズと集まった本のマッチングがうまく行っていないという話も伝わってきます。本ウィキの活動でも、どこに送るかということが現在の検討課題です。基本的には、受け入れ側のニーズがはっきりしているところ、出来れば仲介役として本を届けて読み聞かせなどの活動を現地(被災地あるいは避難所など)でしてくださる人がいるところに届けたいと思っています。
 一方で、学校復興・復旧のための予算措置はどうなっているのか?学校図書館復興のための支援策について要望は出されているか、などが気になってきました。公的な予算で行われるべき措置と、現在の応急的なボランティア支援が重複しないように、十分配慮したいと思うからです。学校図書館復興時のための本格的な図書選定も始めたいと思っています。本ウィキは今のところ投稿式で選書をしていますが、各団体や有志が独自に制作したブックリストを共有する場にしてもいいと思っています。また被災地ニーズと支援側ニーズをマッチングさせる場としても使えないか、と考えているところです。先週から今週にかけてしたことは以下の点です。

 ・3月中に登録されたブックリスト1&2BL1&2 Excel版3月登録分をエクセルで表形式にしました。個人で本を購入して送りたい方はこちらのリストをお使いください。
 ・身近な書店に、支援図書購入時の割引率を問い合わせています。
 ・募金口座開設しましたに本日時点の残高を記入しました。これから毎日更新していきます。

 どうぞ引き続き募金へのご協力をお願い申し上げます。


2011年4月7日(木)


 4月6日の読売新聞「くらし」欄(朝刊多摩版12版17面)に「ボランティア支援の募金を」という記事がありました。「義捐金」が被災者に直接配分されるのに比べ、「活動支援金」というのは、ボランティア団体の支援活動に使われるものを指すのだそうです。大手の募金団体でも、すべてを義捐金に充てるのではなく、活動支援金として、選考したボランティア団体に募金額の一部を配分することを行っているそうです。本ウィキでの募金はまさしく後者の「活動支援金」にあたります。
 どうぞ引き続き募金へのご協力をお願い申し上げます。


2011年4月4日(月)


 ようやく本ウィキ支援活動のための 募金口座開設しました。世の中には大手大口の募金がたくさんありますが、学校図書館のような平生から社会的認知度の低い施設に、そうした大口の義捐金から果たして配分されているのだろうか?という疑問がいつもありました。私たちのような草の根ボランティアの出来ることはわずかかもしれませんが、たくさんの支援のチャンネルがあることはけして悪いことではないと思います。子ども読書の必要性、学校の復興、学校図書館の復興、ということが被災地の具体的なニーズになってきたときのために準備をしていきたいと思っています。 
 どうぞ募金のご協力をお願い申し上げます。


2011年4月1日(金)


 新しい年度が始まりました。学校は新学期ですが、東京にあっても震災の影響がそこここに感じられる始業となります。それぞれの生活の中で出来ることを少しずつ積み上げていきましょう。
 国際子ども図書館のウェブサイトが、本ウィキへのリンクを貼ってくださいました。左側のメニューの下の部分にリンク 国際子ども図書館 東北地方太平洋沖地震と子どもの読書についての情報を貼っておきました。
 募金口座の開設は週明けになりますが、少しずつ本を送る体制が整いつつあります。送る本に貼るステッカー作りは高校生に、本にはさみこむしおり作りは小学生に、と身近な方にお願いをしているところです。 


2011年3月29日(火)


 先週土曜日のミーティングを受けて、本を届けるための具体案が固まりつつありますので少しだけ予告を。

   1.近日中に募金のための口座を開設します。

   2.本の取りまとめと発送を引き受けてくれる有志が見つかりました!

   3.支援の第一歩として、関東に一時避難をしている東北の被災者の方々向けの支援を考えています。

 登録された本をリスト BL1: 安らぎを求めてBL2: 楽しく元気にBL3: 乗り越えるために に分類したら、ピタリと書き込みが止まってしまいました。登録手順は今までと変わりませんので、引き続き 本を登録 のほうに書き込みをお願いします。


2011年3月26日(土)


 今日管理人が主催するSLLS(学びの場としての学校図書館)研究会でミーティングを開催しました。冒頭の議題は、本ウィキサイトに基づいた支援を今後どのように展開するか、ということでした。
 一日も早く子どもたちに心の拠り所となる本を提供したい、という思いはすべての出席者に強かったのですが、一方で、学校や行政機関にお勤めの方々からは、公的な支援との切り分けをどうするか、どこに支援することが最適なのか、という問題も提起されました。
 行政機関や、名のある団体は、公的な支援や組織的な支援を行うことができるでしょう。このウィキでは、公的な支援から見過ごされがちな声を拾い上げて、顔の見えるきめ細かな支援を行うことを目指しています。管理人はじめ今日の会議の参加者のうち数名は、新潟の地震の際の学校図書館復旧支援を体験していますが、そのとき支援活動を始めるきっかけとなったのは、あるメーリングリストを通じてもたらされた被災地の図書館関係者からの声でした。
 あえて学校図書館支援にこだわるのは、平時であってさえ整備不十分な日本の学校図書館に、災害後に十分な公的支援が回るとはとても考えられないからです。日本の約40,000校ある学校(小・中・高および各特別支援学校)の半数は、学校図書館に人がいません。残る半分もほとんどが兼任で、学校図書館の業務に専任する教職員のいる恵まれた学校は極めて少数です。専門家がいなくてすべきことがわからない、という学校・学校図書館にこそ、本を届けるきめ細かい支援が必要だと思われます。
 一方で、被災地が本格的な学校および学校図書館の復興・復旧支援にとりかかるにはまだまだ時間を要することでしょう。その間、手をこまねいているのではなく、身近な被災者の方々になんとか本を届けられないかと考えています。
 繰り返しますが、本ウィキから発する支援は、組織的・網羅的には出来ないかもしれません。ただ声のあるところには
本を届けたいと思っています。そのための仕組み作りにもう少し時間をいただければと思っています。


2011年3月23日(水)


 登録メニューのリストが長くなったのと、登録するべき本の内容について複数のお問い合わせがありましたので、これまでにご登録いただいた本を3つに分類してみました。これから登録していただく方にブックリストの趣旨が伝わる分類になっていればと思います。既にご自分の登録された本の分類についてご意見等ありましたら(違う仲間に入れてほしいなど)遠慮なくお知らせください。修正いたします。当面この分類でやってみたいと思っています。


2011年3月21日(月・祝)


 2011年3月11日(金)に発生した東北関東大地震で被災した皆さまにお見舞いを申し上げます。

 地震から3日後の14日にサイトを開設し1週間が経ちました。
 この間少しずつ趣旨に賛同してくださる方が増え、ブックリストもようやく20冊ほどになり、海外からのメッセージに日本語訳もつけていただきました。皆さまのご支援とご協力に御礼申し上げます。

 まだまだこれからすべきことがたくさんあると思いますが、運営体制が整っていません。また、せっかくメンバー登録をしていただいた方々と、個別のメールのやりとりは出来るものの、交流のスペースが無く、もどかしく思っております。

 とりいそぎ日々の経過を受けて管理人からご報告をさせていただく場所として、このページを設けました。日々考えていること、今後の展開についてのアイディアなどを、皆さんに問いかける場とさせていただければ幸いです。 

 引き続きどうぞご協力のほどお願い申し上げます。

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最終更新:2013年04月01日 23:05