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ジブリ映画とオカルティズム 指輪物語編

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 ジブリ映画とオカルティズム ⑧


 ロード・オブザ・リング編



『ロード・オブ・ザ・リング』。
宮崎作品ではないが、宮崎映画の本質を理解する上でわかりやすい好例である。
原作はハリーポッター、ハウルに続き、こちらもイギリス出身の作家
J・R・R・トールキン。
第二次世界大戦中に執筆され、1954年から55年にかけて
3巻本で出された小説を元にしたハリウッド映画である。

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多くの視聴者はこの作品を見て、矮躯で醜く、好色・残忍・野蛮なオークたち、
蟻の如くわらわらと出現し、文明世界を破壊する邪悪な冥王軍の侵略を忌み嫌うだろう。
そして理性的で美しいエルフや賢者、人間の勇士たちが結束し
それらの侵略を跳ね除け、遂には壊滅に追い込む活躍に快哉を叫ぶだろう。

事実日本でも大ヒットした。
しかし宮崎駿はそれについて揶揄するように苦言を述べている。

それもその筈、この作品の本質とは大衆が見る表層とはまったく別のところにあり、
サウロン軍だのオークだのは、劣等人種である黄色人種や黒人の暗喩であり、
それらを“優秀”で“正当”で“選ばれた人種”である白人が駆逐し殲滅する、
言ってしまえば民族浄化、大虐殺物語であるからだ。

大衆に受けるように作られた表層と、一部の者にのみわかる
最も重要な裏面の眞實とを、表裏一体にして作り上げて来た稀代のクリエイターである宮崎は
その程度の事は一目見た程度でとっくに承知だったのだろう。
しかし息子の吾朗は『ゲド戦機』の出来を見る限り、どうやら本質を掴むことすらできず、
『ファンタジー大作マジカッケー』と皮相のみに捉われ、
軽薄に浮かれ騒ぐタイプであると思われる。

それこそハリウッドの手を借りて元々のメタファーをより骨太に作り換えられた、
自分たち黄色人種を虐殺する物語であるにも関わらずだ。

「ロード・オブ・ザ・リング」だってそうです。
 敵だったら、民間人でも兵隊でも区別無しに殺していい。誤爆の範囲なんですよ。
 一体アフガニスタンの爆撃で何人殺してるんですか?
 それを平気でやっている映画が「ロード・オブ・ザ・リング」です。
 原作を読めば分かりますけれども、実は殺されてるのは、
 アジア人だったりアフリカ人だったりする。
 それがわかんないでファンタジーが大好きって言ってるのは、馬鹿なんです」
                                   (宮崎駿 原文ママ)

 ハリウッドが世界中に垂れ流す流行りモノ映画には、原作者の意向とは関係なしに
 視聴者の精神を感化する何からの政治的メッセージが常に隠されている。
 映画業界の第一人者である宮崎ならその程度の事は最前承知であったろう、

 とても信じられない、と、いまやかつての多様な血が単一化された、
 平和な日本に住む者たちは思うであろう。
 しかし海外では一昔前まで、そのような極端な人種差別が当たり前のように横行していたのだ。

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 例えばリンカーンというアメリカ大統領がいる。
 表向きは虐待された黒人奴隷を解放するため、南北戦争を行ってまで戦った
 偉大な解放者ということになっている。

 だが実像はとても偉大とは言えないばかりか、
 稀代の人種差別主義者ともいえる虐殺者であった。

 例えば彼が行った事業で最も有名な奴隷解放だが、南部諸州にのみ限られ、
 北部では解放しなかった。
 これは“敵”である南部諸州の産業をタダ同然で支え、綿花などの
 安い価格をキープしている労働力の奴隷を解放すれば、
 ちゃんと賃金を払って労働させねばならなくなり、南部の産業が壊滅して
 経済力が大きく減衰することが見込めたからであった。
 戦争を繰り広げた裏では軍需産業と手を組んでおり、連中とともに大儲けしている。

 そればかりか、エイブラハム・リンカーンほどいわゆる先住民族=インディアンに対して
 冷酷無比な政策を実行した大統領はいない。
 黒人やネイティブアメリカンに対して、まるっきり「人間扱い」しなかったのがリンカーンである。

 リンカーンは、自分と同じ名前のエイブラハムという祖父がインディアンに殺されたとされる。
 勿論その祖父もインディアンを虐殺し、先祖伝来の土地を奪うなど
 恨まれるようなことをやった結果殺されたのだろう。
 しかしその結果どれほどリンカーンが対インディアン討伐に情熱を燃やし、
 若い頃は実際に戦闘に参加したり、大統領として虐殺命令を出したりしたか、
 その経歴は、wikipediaにも載っている。
 人間を人間扱いせず、「人間狩り」に精を出したのだ。

 有名なホームステッド法もリンカーンが制定した。
 狩猟や遊牧をネイティブアメリカンたちに禁じ、定住させて農業民にすることを強制したのである。
 反抗する部族は殲滅した。 
 「士農工商なんとやら」と言うが、リンカーンにとっては
 白人>>>>>>>>>黒人>>インディアンの順だった。
 ちなみにリンカーンが大統領だった時代(1861~65年)は、日本では
 坂本龍馬や新撰組が活躍していた時代である。

 さて、リンカーンが若かりしころの1840年代は、彼自身もネイティブアメリカン部族の
 討伐に兵隊として参加していた。
 この時代はアメリカ政府そのものが、北米大陸全体でネイティブ部族と「戦争」をしていた。
 ヨーロッパで食い詰めたならず者たちが勝手にアメリカ大陸に移住して来て、
 先住民族を思いつく限りの非道な方法で追い出しにかかっていたのだ。

 当時のネイティブらはバッファロー(バイソン)を生活基盤とする独自の生活、経済を持っていた。
 そこで白人どもはバッファローさえ居なくなれば、ネイティブ部族は食料が尽き、
 暮らしが立ち行かなくなると考えた。
 そこで政府は何千人というハンターを雇って、食べるわけでもないのに
 数千万頭のバッファローを銃殺させた。
 これにより全土に膨大な数が生息していたバッファローは絶滅寸前にまで激減し、
 ネイティブたちはついに白人に降伏せざるを得ないところに追い込まれた。

 やがてアメリカ政府はネイティブに、そこに定住すれば年金は支給してやると言って騙し、
 指定した荒れ地に強制移動させ、挙句その年金さえ払わなかった。
 ために部族の暴動が起きると、徹底した弾圧をやってのけた。
 それを行った人物がリンカーンなのである。
 歴代有数の人種差別意識にこり固まった冷酷な虐殺者であった。

 そのリンカーンをはじめとする虐殺者たちの顔を、
 金(ゴールド)ほしさにやってきた白人たちがダコタ族(スー族)を虐殺して追い払った後
 その先祖伝来の聖地であるサウスダコタのラッシュモア・マウンテンに
 戦勝記念とばかりにデカイデカと刻みつけさせたのだから、
 アメリカ政府の底知れぬ悪辣さが知れるというものである。

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 そうした虐殺者たちはプロバガンダによって汚い部分が覆い隠され、
 正義の体現者としてあらゆるメディアで囃し立てられ、「英雄」として祀られた。
 その洗脳教育は今でも続いており、いまだにリンカーンを弱者の味方、正義の大統領だなとどと
 勘違いしているものが多々見受けられる。

 日本でも同様の大虐殺劇が過去にあり、中央政府の大和王朝はそれを記念するものとして
 虐殺者の坂上の田村麻呂を英雄として祭る「ねぶた祭」を行わせた。
 昔日本では土着民を「根」と呼んで賤民扱いしていたが、
 中でも厄介な連中を東北に追いやって「蓋」をした挙句虐殺したのである。

 国内も国外も、戦前はそういう人種差別、賤民差別と虐殺の時代であった。
 そういう中で著されたのが異なる人種間の侵略戦争と殺戮劇を
 ファンタジー世界というオブラートにくるんで著した「指輪物語」という作品である。

 原作はその辺りが曖昧であるが、映画においては当たって、
 よりその「本質」を強調した形で映像化がなされている。
 何も知らない無邪気な者たちがそれを観て、戦争と虐殺と勝利を追体験して楽しみ、
 これを賞賛しているのである。

 あまり認めたくはない事だが、古今東西を問わず、人を殺す事は「楽しい」事であり、
 大衆にとってこの上ない娯楽なのだ。
 古代はコロッセオの殺戮ショーや公開処刑に多くの民衆が群がって熱狂してこれを鑑賞した。
 現在では人間を射殺するFPS、ゾンビにメタファーした愚かな人間たちを
 大量虐殺する、ゾンビ映画やゲーム、漫画(悪魔にメタファーした作品も同様)などが
 世界中で人気を博しているのも同じ理由からである。



                            ☞ジブリ考察その⑨ その他編




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