Scarborough Fair

ジブリ映画とオカルティズム ナウシカ編Ⅲ

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 ジブリ映画とオカルティズム ③

  ナウシカ編 番外編: 北欧、聖書、日本の “地母神神話”


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ガイア、レア、ヘラ、アテナ、デメテル、イシス、
ユノ、ミネルヴァ、アスタルテ、キュベレイ、イシュタル、イナンナ……

……

地中海沿岸世界には様々な地母神が存在する。
ここでは番外編として、前章では述べなかった
オリエント以外の地域の地母神神話を取り上げよう。

なお、このページはあくまで神話的考察がメインの番外編であり
ジブリ考察はほとんどない。

……

北欧神話
スカンディナビアやバルト地方に住む北ゲルマン人の間で
語り継がれていた物語である。
この神話に見られる最大の特徴として、ラグナロクという
最終戦争によって神々が世界もろとも滅び去る点がある。

この神話の中にも、女神フレイヤ、そして美しきバルドルを中心とした
地母神神話特有のパターンが見られる。

……

フレイヤ
美と豊穣を司る北欧神話の太母。
女性の美徳と悪徳を全て内包した女神で、非常に美しく、
自由奔放な性格で、欲望のまま行動し、性的に奔放であった。

彼女はデメテルの娘とされるアルテミス、またヘカテーや
エウロパ、ディアナなどと同じく、魔術と死を司る月の女神でもある。

……

フレイヤは最高神オーディンと死者を平等に分け合う権利を持つ。
その性質が酷似している事から、オーディンの妻である女神フリッグとは、
同じ女神の別の時期の名前であり、2柱は同一存在だった可能性があるという。

……

ある意味フレイヤは、日本神話の伊邪那美命とよく似た属性を持つ女神である。
伊邪那美は姿を消した古代神に代わる最高神伊邪那岐の妻であり、
豊穣の女神であり、同時に死の女神でもあるからだ。
日本神話にも地母神のエピソードが見られるが、それについてはまた後に述べる。


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さて、前章で述べたように、ギリシアの最高神ゼウスと
大地の女神デメテルの間に、ペルセフォネという美しい娘がいた。

彼女の死が世界の歯車を狂わせ、大地の荒廃を齎したように、
北欧神話にも最高神オーディンと女神フリッグの間に
死と再生を経験する息子がいる。

……

バルドル
神々の中で最も美しく光り輝く美貌と白い睫毛を持ち、
万人に愛される光の神。
ある意味女性的な存在でもある。

……

彼は不死に近い存在であったが、ある時邪悪な神ロキ
盲目のホズを誑かして彼を殺してしまう。
母なる女神フリッグはこれを悲しみ、死の国の女王ヘルに遣いをやって
バルドルを生き返らせて欲しいと頼む。

……

全世界のあらゆる生物がバルドルの死を嘆き悲しんだが、
邪神ロキの奸計によって彼の蘇生は失敗し、世界は光を失う。
そしてこれを契機として、ありとあらゆるものが死を迎える
大戦争「神々の黄昏(ラグナロク)」を迎える事となる。

……

この辺りはデメテルの娘が死に、生き返らせて欲しいと
遣いをやって冥王に頼むが、冥王の奸計で失敗し、
その結果地上が稔りを失ったくだりとそっくりだ。

……

そしてラグナロックによって神々を含む殆どの生物が死に絶え、
一度世界は滅ぶのだが、新たな大地が創造され、
バルドルは再び蘇る。

……

あたかも、デメテルの娘が冥界から生者の世界に現れるとともに、
大地が稔りを取り戻したように、世界はバルドルと共に蘇るのだ。


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ギリシア、エジプト、北欧の例を挙げたように、
こうした死と復活、それに伴う世界再生の神話は広く見られる。

……

こんにちの世界で最も有名な神話は何か?
と言うと勿論 『聖書』 であろうが、この聖書の
イエス・キリストの伝記もまた、実は地母神神話の一種なのである。

……

福音書によると、イエスは原初の父なる神の子であり、
また「アブラハム以前からわたしはある」と宣言したように、
イスラエルの絶対神であるヤハウェ (=「私はある」の意) が
受肉した姿でもあったという。

……

(また、十字架の罪状版「ユダヤの王ナザレのイエス」の
 頭4文字を並べてもヤハウェになる)

……

そのイエスはサタンに魂を売ったユダの奸計により死亡する。
結果、日蝕でもないのに突如世界が闇に閉ざされ、
悪霊が冥府から黄泉返って跳梁跋扈し
母マリアと、実質上のイエスの妻であるという、
娼婦マグダラのマリアが大きく嘆き悲しむ。

……

なお、ただの人間に過ぎない母マリアが神聖化されたのは、
土着の異教時代の地母神信仰がキリスト教と渾淆した結果で、
“聖母”マリア崇拝とは、形を変えた地母神信仰に他ならない。

……

それから3日後、墓穴を塞ぐ岩戸を二体の天使が開け、
イエスは二人のマリアの前に復活した姿を現し、彼女を悲しみから立ち返らせる。
死と再生という地母神神話の1つ目のモチーフがここに見て取れる。


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イエスは僅かなパンと魚を大量に増やし、
飢えた多くの信徒たちを満足させた豊穣神でもある。

パンは教義、魚は信徒の暗喩であり、
彼は古代世界において地上に“種”を撒く者であった。

……

同時に「ヨハネの黙示録」によると、
末日こと“収穫”の季節に、巨大な鎌で
世界中の人々の魂を刈り取る死神でもあり、
来世においては、死者の裁きを行う冥府の王でもある。

……

地上という「畑」に於いて、人類は時代の最後に
原罪による絶滅と魂の死が義務づけられていた。
いわば“冬”の季節である。

……

しかしイエスの死による犧牲とその復活によって、
人間の魂は審判後の復活と永遠の光の時代の到来が約束されたのだという。

いわば新たな“春”の時代の到来を約束する契約である。
地母神神話の2つ目のモチーフがここに見て取れる。

……

デメテルなどの地母神神話が地上の季節の変遷を示しているのに対し、
聖書の地母神神話は植物の冬の死と春の再生に準えて、
人類の魂の死と復活を説いているのが特徴だ。

……

さて、福音という名の種を撒き終えたイエスは、
その後弟子たちの前に姿を見せたものの、再臨を約束すると、
「収穫の時」が訪れるまで、昇天して地上から消え去ってしまう。
(ある意味2度目の死であるといえる)

……

聖書の最終章である『ヨハネの黙示録』によると、
それから遥かに歳月の過ぎた終末の時代、
サタンの奸計により人々は堕落しきり、大きな戦争を繰り返す。

……

しかし混沌と絶望の中で約束通りイエスが地上に再臨する。
(ある意味2度目の復活とも言える)

……

彼はメギドの丘に於ける第一次最終戦争後、
多くの者たちが死に絶えた世界を新たに生まれ変わらせ、
光と愛と秩序に満ちたものへと再生させ、
新たな王国を築き上げるのだという。

……

あたかも北欧の地母神神話だ。
未曾有の最終戦争ラグナロックが終わり、死したるバルドルが蘇るとともに、
世界が再生される物語。
ここに地母神神話の3つの目のモチーフが見て取れるのである。

この手の地母神神話は世界中にあり、日本人の大部分が何も意識せず見ている
「ナウシカ」もまた、そのパターンを踏襲した現代の「神話」であるのだ。

(なお、クリスマスも地母神神話の一種である)
☞ クリスマスと地母神神話


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ユーラシア大陸の西側、中東や欧州における地母神神話はこれまで見た通りだ。
だが、大陸を挟んだ遠い東の涯に位置する、この日本にも地母神神話が見られる。
記紀』である。

この中には伊邪那美命天照大御神という2柱の地母神が登場する。

……

人間すらまだいない開闢の時代、姿を消したそれまでの神々に代わり、
神世七代の最後に現れた伊邪那岐命と、その妻伊邪那美命。
伊邪那美は豊穣と多産を司る大地の神で、夫と共に日本列島を作り出し、
更に山・海など森羅万象の神々を産んだ。

……

伊邪那美は最後に炎の神である火之迦具土神を産み、
その際の火傷が元で死亡するが、
夫である伊邪那岐命は彼女を生き返らせるため、冥府である黄泉の国に向かう。

……

何とか冥府下りをして伊邪那美と再会したものの、
伊邪那美は既に冥府の食物を口にしており、
生き返る事ができなくなっていた。
それどころか彼女は死を司る冥界の女王となっており、
後世「黄泉津大神」「道敷大神」などと呼ばれるようになる。

……

伊邪那美は地上の人間を一日1000人殺す事を声を大にして宣言した。
つまり大地に稔りを齎す地母神であった彼女は
その死によつて地上の多くの生命を刈り取る惡神へと変貌したわけである。

……

対して伊邪那岐は1日1500人の生命を産む事を宣言し、地上に戻る。
彼は黄泉の穢れを祓うために禊を行っところ、
左目から太陽の神である天照大御神、右目から月の神である月讀命、
鼻から海と冥府の神となる荒神・建速須佐之男命といった三貴子が誕生する。

……

天照大御神は植物を生育させ豊かな稔りを齎す太陽神で、かつ女神である。
これにより大地母神の死と死神化によって荒廃する事となった地上は“蘇った”。

……

なお、伊邪那岐の禊によって生まれた三兄弟は天界、海界、
黄泉の国を統べるようになったが、
この辺りはギリシア神話で、ゼウス、ポセイドン、ハデスの三兄弟が
天界、海界、冥界を統治した話に似ている。
さらにエジプト神話で、冥府に落ちた豊穣神を伴侶が蘇えらせようとした結果、
その子である右目が太陽、左目が月の太陽神・ホルスが
世界を統治したという話にもそっくりである。


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記紀にはまた別の地母神のエピソードがある。

遥かな太古の時代、天照大御神は天界である高天原を統治していた。
しかしそこへ弟の邪神でありトリックスターである
建速須佐之男命がやってきた。
彼は黄泉の国へ行くことを志向していた。

……

これに対し、弟が天界を奪いに来たものとみなした天照は、
武装し軍隊を率いて対峙した。
天照の玉からは5柱の男神が生まれ、須佐之男の剣からは3柱の男神が生まれた。

……

天照の玉からは6柱の神が生まれたという説もあり、
つまり互いの子の比率はだいたい天照2:須佐之男1となる。

……

その後須佐之男は高天原で散々暴れまわり、甚大な被害を出した挙句
髪や髭を毟られ、手足の爪も剥がされ、天界を追放されてしまった。

……

その後彼は地上で夫婦を誑かす大蛇を討ち
黄泉の国の入口に近い場所に住んだという。

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ユダヤ・キリスト教にも似たような伝説がある。

天地が創造されていなかった開闢の時代、
天界に於いて最高の能力と地位を持っていたサマエル(毒の天使の意)という天使長が
その傲慢さゆえに自らが神にならんとして、天界に大戦争を起こした。
サマエルは中世ヨーロッパにおいては「光を運ぶ者」を意味する
ルチフェロと呼ばれるようになり、やがてこれが転訛した
ルシフェル(堕天後はルシファー)という名が人口に膾炙するようになる。

……

ルシフェルは天使の3分の1を籠絡し、
これを率いて神 (御父の子イエス) の軍勢と対峙した。
つまり互いの軍勢の比率は約イエス2:ルシフェル1となる。

その後ルシフェルの軍は天界で散々暴れまわった挙句
ミカエルに討たれ、天界を追放されてしまった。

……

ルシファーはサタンとも呼ばれ、象徴として蛇や竜としても描かれる。
天界にいられなくなったルシファーは楽園に隠れ住んだが、
人間の夫婦を誑かした罪で神によって罰され、手足をもぎ取られて
蛇のように地を這って生きねばならない呪いをかけられたという。

……

ルシファーの物語と須佐之男の物語は非常に似ている。
須佐之男は伊邪那岐から天界を受け継いだ天照の対極の存在であり、
悪神である伊邪那美に同調し、冥府に近い根の国を領地とする。

……

『根の国』とは、北欧神話に於いては宇宙樹ユグドラシルの根にあるという、
魔神ロキの娘が治める死者の国であり、大蛇ニーズヘッドが根を齧っている。

ユダヤの『生命の樹』に於いても根の国は霊的階層の最下位に位置する領域である。
根の国は悪霊の住まいであり、その王であるサタンの領地である。

……

神道は原始的な多神教を基盤に持つ宗教で、
一神教に見られる、いわゆる 『悪魔』 と呼ばれる存在はいない。
しかし最もそれに近い存在と言えばこの須佐之男だろう。

……

その悪神と英雄、二つの顔を持つ性格は、同じく多神教であるインド神話の、
最高神であるブラフマーに叛き、首の3分の1(4:2)を手にしたエピソードを持つ、
トリックスターでありシヴァ神にもよく似ている。


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記紀の話を続けよう。
地母神の神話は死したる神の復活とともに
大地が稔りを取り戻す話であるが、
記紀に於いても、同じエピソードが見られる。

……

須佐之男が天界で暴れている間、
天照は機織りの神殿に籠もっていた。
そこへ須佐之男が皮を剥いだ駒を投げ込み、
驚いた機織女の一人がオサ(機織りの道具)で
陰部を突いて死んでしまう。

……

それを見ていた天照は須佐之男を畏れ、
天の磐屋の中に隠れてしまった。
太陽神が消え去った事で世界は闇に覆われ
怨念のような声が満ち、多くの災いが起こったという。

……

あたかも、悪紙によってペルセフォネが突然冥界に消え
それを女神デメテルが嘆き悲んだ結果、大地が稔りを結ばず
荒廃したという、ギリシア神話のような話である。

……

似たような話は箸墓古墳の主であるとも言われる
倭迹迹日百襲媛命(やまとととひももそひめのみこと)にも見られる。

巫女である彼女は大物主神 (須佐之男の息子)と
結婚したが、夫の正体が蛇であると知ると、
驚きのあまり陰部を突いて死んでしまったという話だ。

……

いずれにせよ、須佐之男(蛇)本人かその眷属によって
高貴な神職の女が死んでしまうという点は同じである。

そしてこの時死んだ機織女は、日本書紀では稚日女尊
(わかひるめのみこと)=太陽神の巫女となっているが、
実は天照本人であるらしい。

……

昔から高貴な身分の方が死ぬ事を「お隠れになる」という。
天照が磐戸に隠れたとは彼女が須佐之男によって殺され、
岩穴に葬られた事の暗喩なのである。

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さて、記紀に於いては天照の死により世界が暗黒に包まれてしまった。
これを嘆き悲しんだ神々は、何とかして天照を磐戸から出そうと──
死の国から生き返らせようとした。

……

多くの神々が集まって見守る中、
常世国の長鳴鳥というニワトリを集めて鳴かせ、
墓穴の前で天細女命(アメノウズメノミコト)に裸踊りをさせた。

……

怪訝に思った天照が墓穴の中から磐戸を僅かに空けて外を覗いたところ、
ウズメは言った。
「貴方に増して尊い神がいらっしゃる。それで皆が笑っているのだ」と。
すかさず天太玉命(あめのふとだまのみこと)が木に架けられた鏡を差し出した。

……

いったい誰の事かと天照が鏡を覗き込んだところ、
そこに映し出されているのは自身の顔だった。
その隙に天手力男神 (アメノタヂカラオ) が磐戸を開いて
天照を墓穴から引きずり出し、世界に光が取り戻されたという。

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この話は先に述べた、聖書に隠された地母神神話とソックリである。
まず蛇であるサタンの奸計によりイエスは捕らえられる。

……

イエスは聖書において「義の太陽」とも称される太陽神であるが
鶏が3度鳴いた後に、彼は多くの人々が見守る中、磔刑に処される。
彼が事切れた際に天地が暗黒に包まれ、死霊が蘇って跳梁跋扈したという。

……

その後彼は巨大な岩で蓋をした洞窟に葬られる。
聖日明けに娼婦であるマグダラのマリアがイエスの墓穴を訪ねたところ、
2人の天使が墓穴を塞ぐ大岩を開けていた。
後にマリアは永遠の命を得た復活したイエスと出会い、
弟子たちはイエスの復活を大いに喜んだ。

……

『記紀』に於いて磐戸の前で淫らな踊りを踊った神の名はウズメ。
「ウズの女」をさす名である。
聖書において岩の墓穴に向かったマグダラのマリアは、娼婦であり、
イシュ(アラム語でイエスの事)のオンナであった。

……

イエスの死の前に鶏が3度も鳴いたが、同様に記紀でも
天照大の墓穴の前で鶏が何度も鳴いている。

……

イエスの墓穴をこじ空けたのは2人の天使であったが、
天照の磐戸をこじ空けたのも、天照の臣下である2柱の神である。

……

天照は木に架けられた鏡に自らの顔を映した。
臣下たちは鏡に映ったそれを「この世で最も尊い神」だと崇拝した。

……

鏡とは日輪=太陽神の象徴でもあり、それが木に架けられたというのは
イエス自身が木に架けられた (磔刑に処された)事のメタファーである。
記紀の神々(=天照の信徒たち)は、磐戸の外側で
磔刑のイエスを拝んでいたのである。

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また、鏡に映された存在は左右が反転して映る。
人々は本物の天照とは別にそれを拝んでいた。

……

本来男神であり、姿を隠した託宣神である天照大御神が、
その巫女であり、表に出て言葉を伝える大日孁貴と習合され
女神として描かれているのは、この左右反転の暗号による。
性別を反転させると男が女になり、従属を反転させると
主神が隠れて代弁者の巫女が神そのものになるからだ。

……

天照が磐戸に隠れた(葬られた)後に地上は暗黒に包まれた。
太陽が出ていなければ草木は育たず、永遠に稔りを結ばぬままであった。
しかしそうした不毛の時期にありながら、死したる女神が復活し、
大地は再び稔りを取り戻した。
天照大御神の岩戸隠れの伝説とは、長い長いシルクロードを渡り
形を変えて伝わった地母神神話なのである。

……

天照大御神の正体とは、ユーラシア大陸の
西の涯に於いて祭られていた蛇の化身である託宣神アポロンであり、
さらにいえば一度死して蘇った絶対神イエス・キリストである。

……

それは『古事記』『日本書紀』という書物が、よく調べれば解る通り
天地創造から天皇家の家系図に至るまで、
各所が聖書と対応して作られており、同じ記述が多々見られる事からもわかる。

……

大秦国(ローマ帝国)からシルクロードを通じて中国に伝わった、
ネストリウス派以前の原始キリスト教やギリシア神話。
それを携わって日本に渡来した、秦氏と呼ばれる集団が
記紀の編纂に深く携わっている。

……

彼らの手によって、様々な神話と歴史が渾淆されて
作り出された書物か『古事記』なのである。

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なお、地母神とは、豊かな恵みを齎すと同時に、
その多くが戦争と死を司る女神でもある。

……

地母神とされたイシュタル、イナンナ、パラス・アテナ、ミネルヴァ、
ディアナ、伊邪那美、果ては“死神”イエス・キリスト。

ナウシカという作品にも、こうした戦争を司る女が登場する。
トルメキアの第三王女にして、稀代の軍人であるクシャナである。

……

クシャナは当初ナウシカの敵として登場し、対立するが、
次第にナウシカの思想とカリスマに惹かれていき、
彼女を認め、共同戦線を張る。

しまいには土鬼の墓所での騒動を経て、ナウシカを
新たな王とすら認めたきらいさえある。

……

王位継承者である三双王子は1人が戦死、2人が行方不明になってしまい、
父であるヴ王も臨終の際に彼女に王位を譲る事を宣言している。

そうした女王になれる身でありながら、クシャナはトルメキアの
王位には即かず、生涯代王に留まった。
心の中に、すでに主君と言える存在を持っているというのである。

……

これは彼女が、一神教の象徴でもある墓所の主が潰えた後、
ナウシカ教こと地母神信仰に染まった事を意味しているものと思われる。

……

地母神は古来より死と破壊、慈悲と豊穣の双つの顔を持っていた。
慈悲と豊穣の顔がナウシカであるのなら、
彼女は死と破壊の顔である。

それを示すように、クシャナ (Cusiana) という名は
ナウシカ (Nausicaa)のアナグラムであり、同一の要素から構成されている。
二人は同一の存在の別の顔でもあるのだ。

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古代世界を支配していた地母神信仰。
しかしある時期強力な一神教が誕生し、旧宗教を排除していった。

……

それにより地母神信仰の時代である古代は終わりを告げるが、
地母神の神話の流れを汲む物語は、その後も脈々と生み出された。

広義では「花咲か爺さん」や「白雪姫」もこの類に入る。

……

そして現在の日本に於いて最大の知名度と人気を誇る
新時代の地母神神話──
それこそが『風の谷のナウシカ』であるのだ。

……

ナウシカをはじめとするジブリ映画とは、表向きは娯楽作品であるのだが
その実復興異教主義者(Neo-Paganism)であろう宮崎駿を“教祖”として、
日本中の児童にスプリンクラー式に幼少からその思想を植え付けるための、
布教映画でもあるのである。


☞ナウシカ編その④ 父なる神と母なる神の対決 (作成中)




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