(04)769 『蒼の共鳴-その共鳴は偽りの共鳴なのか-』



「駄目かぁ」


己の手のひらを見つめて、小春は小さく溜息をついた。
黒いドレスに身を包んだ女性に、大切な存在を奪われてから一ヶ月が経過していた。

女性の手により、まだ歩けるようになったばかりの小さな子猫―――ミーは氷漬けにされて粉々に砕かれた。
その残酷な行為を目の当たりにした小春は、激しい怒りと深い悲しみを解き放ち、新たな能力に目覚める。
“発電-エレクトロキネシス-”に目覚めた小春による、空を切り裂くような雷によって女性は息絶えた。

ミーを失ったその事件以来、小春は時間を見つけては一人で電気を操る練習をしていた。
もう、誰も何も傷つけさせない為に強くなりたかった。
その為には、覚醒したこの攻撃系能力を自由自在に行使できるようになることが必要不可欠だった。

元々、小春は練習や特訓といった努力を強いられる行為が嫌いだった。
天才肌と芸能界関係者に言われるように、小春はさほどの努力もなしに元々の潜在能力のままのし上がってきた。
努力なんて、そうしないと人並みの結果しか残せない人間がすればいい。
それが、以前の小春の考え方だった。

ミーの一件で、小春の考え方は180度方向転換した。
一体何の為に自分が戦っているのか改めて考えるようになった小春にとって、練習も特訓も苦痛を感じる行為ではなくなった。

だが、一人練習に励み誰も何も傷つけさせない為に強くなりたいという小春の想いは、なかなか想い描くような形にはならない。
幾ら電撃を放とうとしても、電撃と呼ぶには程遠い電流を手のひらに生み出すことしか出来なかった。

この程度の電流では、接近戦で揉み合った際にスタンガン代わりに相手に押しつけるくらいしか出来ない。
しかも、それで相手を行動不能に陥れられるかと言うと、微妙としか言いようがない程度の電流だった。


(あの時みたいな大きな力を使いこなすのって、やっぱり1人じゃ無理なのかな)


意識を手放した愛佳を抱き締める小春の元に、次々と駆け付けた仲間達。
その際に、愛は小春にこう説明した。

小春と愛佳の想いが“共鳴”して、通常ではありえないレベルの力を行使することが出来たのだと。

“発電-エレクトロキネシス-”は、念動力系に属する攻撃能力である。
本人の精神力の強さがそのまま、能力の強さと同義となる。

ミーを粉々に砕かれた瞬間、小春の中で強い感情が弾けた。
それによって、一時的にではあるが自身の元々持つ精神力のリミッターを強制的にぶち壊すことが出来たのであった。
結果、電撃や雷を撃ち出せるだけの精神力を一時的に得ることが出来たものの、あれだけの圧倒的な力で女性を打ち倒すことが出来たのは、
けして自分だけの力ではないと小春はこの一ヶ月で何となく悟り始めていた。

例えるならば、小春が弓に矢を番えた状態で立っていたとすれば。
愛佳がその背後から手を添え、的を正確に撃ち抜くように狙いを定めて共に矢を放ったとでも言うべきか。
自分1人だけでは、おそらく女性にしっかりとあの攻撃を当てることが出来たとは言い難い。


『しかし、まぁ、よく精神崩壊せんかったな…。
 元々使える分が限られている精神力のリミッターを無理矢理ぶっ壊すなんてしたら、
 まず人としての心が無くなりそうなもんやけどの。』


愛の言葉に、軽く震えが走ったことを思い出した。
確かに、あの時の小春は暴走寸前であった。

強すぎる感情に翻弄され、自分の心が音を立てて壊れていこうとしているのを感じたその時だった。
隣に立った愛佳が小春の手を取って、壊れていこうとする小春の心を支えてくれたのだ。
愛佳がいてくれたから強すぎる感情に心を壊すことなく、手にした強大な力をぶつけるべき相手に正確にぶつけることが出来た。


『言っておくけど、今回小春が使ったのは火事場の馬鹿力みたいなもんやから、
 電撃を放つのはともかくとして雷落とすなんて規格外の攻撃は、
 多分みっつぃーと共鳴せんと無理やと思う。しかも、相当強い想いやないとな』


“共鳴”とは一体何なのか。
愛の言葉を思い返す度に考えずにはいられない、自分では答えの出せない疑問。
“共鳴”について詳しい説明を求めた小春に、愛はこう言ったのだった。

―――考えて分かるもんやない、感じ取るんや、と。

抽象的な言葉に、小春はその場で頭を抱えたくなったものだ。
直感の強さには自信があるが、感受性はどちらかというと乏しいと自覚している小春にとって、その言葉は無茶な要求でしかなかった。


「あーもう、わっかんないよー。
何なんだよ、共鳴って」


思わず愚痴を言わずにはいられなかった。
愚痴っている暇があるなら、少しでも電気を操れるように練習を再開しなければとも思うのだが。

だが、小骨が喉に引っかかっているようなもどかしさを抱えたままでは、いつまで経っても自分の思い通りに電気を扱える気がしなかった。
このままでは、また何かが起きた時に大切なモノを失ってしまうのではないかという焦燥感が小春の心を支配する。
唇を噛みしめ、目に浮かんでくる涙に視界が滲んだその時だった。


「小春ー、あんた何やってんのこんな時間まで」

「新垣さん、新垣さんこそ…ていうか、何であたしのいる場所が分かったんですか?
ここ、誰にも言ってない秘密の場所だったのに」

「小春の後、尾けてたって言ったらどうする?
ってのは冗談だけど、小春、リゾナントから徒歩5分も離れてないビルの屋上の、
どの辺が秘密の場所なのよ…近くを通りかかっただけで能力使ってるのバレバレだから」

「新垣さん…?」


里沙は綺麗に、穏やかに笑っていた。
だが、笑っているのに何故か辛そうな顔にも見える。
里沙は小春の傍へと、その笑顔を浮かべたまま歩み寄ってくる。

その余りにも切なさを感じさせる笑顔に小春が声をかけようとした時には、里沙はもう普通の顔になっていた。


「何か悩んでるみたいだね。よかったら、話聞いたげよっか?」


その言葉に、小春の思考は瞬時に“共鳴”のことに切り替わった。
拙い言葉で小春は里沙へと、今まで抱えていた想いの全てをぶつける。

もう、誰も何も失わない為に強くなりたい。
その為に今まで一人で特訓をしていたが、思ったようにはいかなかったこと。
そして“共鳴”とは一体何なのだろうと思い悩んでいたことを、一気に話した。

拙い言葉だった。
だが、それでも里沙は真摯な眼差しを浮かべながら頷いてくれた。
その眼差しに宿る光に、さっき見た切なげな笑顔は見間違いだったのかもしれないと小春は思った。

―――否、見間違いだったと思いたかった。
小春の記憶の中では、里沙はいつだって明るい笑顔で皆を見守っていた。
あんな風に、見る者の心を締め付けるような笑い方をするような人じゃないと、そう思いたかったのだった。
話し終えた小春は、里沙の返答を待つ。


「小春、ちょっといいかな。
試したいことがあるんだけど」

「試したいこと、ですか」

「何も変なことしないから、小春の体、少しだけ貸してくれる?
出来れば、目を閉じて普通に立っててくれると助かるけど」

「分かりました」


里沙の言葉に従い、小春は目を閉じた。
頬に少しひんやりとした感触を感じると同時に、小春の意識は薄れていく。
眠りに落ちていくような感覚を覚えながら、これが里沙の能力“精神干渉”かと小春は感心した。


まるで夢を見ているような感覚だった。
里沙に体を貸した小春の意識は、“干渉”してきた里沙の意識下にあった。

普通の人間ならば、夢を見るような感覚を覚えるどころか、里沙に完全に心身を支配され。
全てが終わった時には全く何も覚えていない状態になるのだが。
まだまだ未熟とはいえ、小春は一応、能力者の端くれである。
無意識のうちに、己の意識に干渉してくる里沙を追い出せるように警戒態勢を取っていた。

深い海底から遙か彼方の空を仰ぐが如く、小春の意識は里沙を見つめていた。
否、里沙の意識のようなものを見ていると言う方が正しいか。

霞が掛かっているようにぼんやりとしていて、どんな形をしているのかは分からない。
だが、離れているのに優しく抱き締められているような温かさを感じた。
その温もりをもう少し感じていたい気がしながら―――徐々に、小春の意識は浮上していく。

里沙の意識が、小春の体から完全に離脱しようとしたその時だった。


(新垣さん、泣いて…る?)


浮上していく意識が捕らえたのは。
暗い場所で一人佇む里沙の後ろ姿だった。
見慣れている背中なのに、その背中は小春が今まで見ていた背中とは違っていたようだった。



「…少しずつ成長してるんだね、やっぱり」

「いや、あたしもそれなりに色々頑張ってますから。
ってか、何でこんなことしたのか説明してくださいよー」


一人でふんふんと何もかも分かったかのように頷く里沙に、意識の戻った小春は早速ツッコミを入れた。
体を貸していた間、転た寝をしていたようなものである。
里沙が小春の体に入り込んで何をしていたのか、小春には分かるわけがなかった。

里沙は答えを待つ小春の手をそっと取り、優しく包む。
冷たい手の感触が心地よかった。


「説明より、小春は実践した方が分かりやすいよね、多分。
あのね、いつもやってるように電流を出そうとしてほしいんだけど、
その時に心の中でさっき話してくれたことを強く思って。」

「心の中でいいんですか、声に出したりしないで?」

「うん、心の中でいいの。
心の中で、強く強く、思って。
それだけで、きっと分かると思うから。」


いつもとは違う、真剣なのにとても穏やかな里沙の声が小春の耳を心地よく揺らす。
里沙に包まれた手とは逆の手に意識を集中させながら、小春は心の中でもう誰も何も傷つけさせはしないと強く強く思った。
その心の声に、里沙の心の声が同調したような気がしたその瞬間だった。

小春の手に、今までとは明らかに違う強い電流が生み出される。
これなら、相手を行動不能に陥れることが可能だ。
今までどうやっても出来なかった、強い電流が生み出されたことに驚く小春の顔を見つめながら里沙は口を開く。


「これが、共鳴するってことだよ。
感情とか、思ってることとか、 そういう目に見えないモノが同じような形で重なると、
強い力を生み出すことが出来るの。
 あたしの心の声、何となく聞こえたでしょ?」

「はい、はっきりとは言い難いですけど…何か、分かりました。
 温かくって優しくって、でもすごく強い感じが小春の中に流れてきたっていうか」

「じゃ、これで共鳴が何なのかっていう疑問は解消できたよね」

「ちょっと待ってください、それなら何でさっきわざわざ小春の体借りたんですか?
 最初からこうすればよかったんじゃ?」

「さっき小春の体を借りたのは、共鳴するのに小春のことを知る必要があったからなの。
 共鳴って、相手のことをよく知らないと出来ないことだから。
 あたしと小春ってあんまり深い話したりしないから、上手く共鳴が出来ないんじゃないかって思ったんだよね。
 だから、少し体を借りることで小春の意識に触れて…
 あ、心配しなくても、小春の心の中とかを見たとかそういうことじゃないから」


焦ったように言葉を紡ぐ里沙に、小春は思わず微笑んでしまった。
里沙のこういう姿を見るのが初めてだった小春には、こんな些細なことですら新鮮に感じた。
小春の中の里沙は、いつもしっかりしていて頼れる人だったから。

新垣さん可愛い、なんて言ったら頭を叩かれるんだろうなと思いながら小春は口を開いた。


「そんな慌てなくても、新垣さんはそんなことする人じゃないってあたし知ってますから。
 あ、もう一つ質問してもいいですか?」

「何、小春」

「あたしとみっつぃーだって、そんな仲いいってわけじゃないですか。
 それなのに、何であんなことが出来たんですかね?」


あの時は無我夢中で分からなかった“共鳴”するという感覚を、里沙のおかげで掴むことは出来た。
何となくではあったが、里沙の説明も分かったつもりである。

だが、それだけでは愛佳と共に放った雷のことは説明が付かない。
釈然としない表情を浮かべる小春に、里沙は柔らかい微笑みを見せた。


「共鳴ってね、誰とでも出来るわけじゃないの。
 さっきも言ったけど、感情とか思ってることが“同じように”重ならないといけない。
 だから、理論的にはリゾナンターのメンバーは、誰が誰と組んでも共鳴することは出来るはずなんだけど。
より強い共鳴っていうのは、今言った条件に相性っていう要素が重要になってくるのね」

「あたしとみっつぃーは相性がいいってことなんですね。
だから、あれだけの攻撃が出来たんだ」


小春の解答に、里沙は満足げに頷いた。
その頷き方はまるで母親のようだなと思いながら、不意に自分を育てた母親の姿が浮かんできたのを慌ててかき消す。
自分を捨てた母親と、今ここで優しく微笑む里沙を重ね合わせようとするなんて、馬鹿げたことだった。

最も、里沙はリゾナンターのサブリーダーであり、小春よりも年齢も戦ってきた年数も先輩である。
母親のような頼もしさを感じるのは無理もないことだった。


「そういうこと。
 じゃ、帰る前にもう一つ。
 小春、今よりも強くなりたいなら…リゾナンターの皆のこと、大事にしなさい。
 思うように新しい能力使えなくって焦る気持ちも分かるんだけど、
 一杯色んなこと話して、色んなこと経験して…
 皆と絆を深めていくことで小春自身の心が成長していけば、今よりももっと強くなれるから、絶対」

「新垣さん、本当にありがとうございます。
 あの、これからもあたしに色々と教えてくださいね」


小春の言葉に、里沙は小春次第かなぁーなんて言いながら、繋いでいた手を離すと。
そのまま、小春に背を向けて歩き出した。

見慣れている背中を見送る小春は、不意に言いようのない不安に駆られる。
そんなことあるわけがないのに、何故かこのまま里沙が何処かに消えていなくなってしまうような気がした。

理屈や根拠はない、ただの直感だった。
それに突き動かされるがまま、小春は里沙の元に駆け寄るとそのまま背後から里沙を抱き締めた。


「小春、どうしたの?」

「いや、その、えっと」


小春の突然の行動に、里沙は戸惑いを隠せなかった。
抱き締めた小春はというと、自分でもよく分からない衝動に従って抱き締めただけだった。
里沙をしっかりと抱き締めながら、自分でも自分の咄嗟の行動に戸惑っていた。

自分より背の低い人を抱き締める経験が殆どない小春は、抱き締めた里沙の小ささに密かに驚いた。
同じ性でも、こんなにも違うものなのかと思う。
抱き締めた里沙の小ささと温もりに、何故か泣きたくなってくるのは気のせいだろうか。

里沙は、小春が次の言葉を言い出すまで静かに待っていた。
小春を振り解くことはなく、だからといって受け入れるわけでもない。
そのままの姿勢で、黙って立っていた。

少し落ち着いてきた小春は、ようやく口を開く。


「新垣さんは、ずっとリゾナンターの皆と一緒ですよね?
何処にも行ったりしないですよね?」

「何よ、急に。あたしはいなくなったりしないから、ね。
 大丈夫だから、そんな泣きそうな声出さないでよ」

「すいません、変なこと言っちゃって。
あの、その…おやすみなさい、新垣さん」

「おやすみ、小春。
また明日、リゾナントでね」


里沙はそう言って、小春の腕からスルリと抜け出すと。
けして小春の方を振り返ることなく階下へと消えていった。

言いようのない不安に、胸が締め付けられた。
やはり、あの切なげな笑顔は見間違いではなかったのだ。
いつもの里沙とは何処か違う雰囲気だったが、一体里沙に何があったのだろうか。
それとも、これはただの考えすぎなのかと小春は答えの出ぬ自問自答を繰り返す。

何故こんな気持ちになるのだろうか。
考えた末に小春が出した結論は、その違和感に無理矢理蓋をすることだった。

里沙はまた明日と言ってくれた、それで十分だ。
だが、小春の頬を伝うのは―――涙であった。

小春は服の袖でゴシゴシと涙を拭い、軽く息をつくと。
再び、電気を操る練習を始めた。

里沙が来るまで感じていた焦燥感は消えた。
その代わりに、言いようのない不安が小春の心を締め付ける。

その不安をかき消すかのように、小春の練習は静電気すら起こせぬ程に疲弊するまで続けられたのだった。


* *



(何というか、小春は鋭い子だな)


小春の元から立ち去った里沙は、夜の街を肩で風を切って歩いていた。
いつもよりも早足に、一刻も早くリゾナントや小春から離れるかの如く、里沙はけしてその速度を落とそうとはしなかった。


今日の夕方のことであった。
里沙の携帯に着信を告げるランプが点った。
誰からの着信であるか分かるように設定してあるランプの色を確認した里沙は、皆が寛ぐリゾナントから一旦抜け出してかけ直す。


「…はい、分かりました。
早速本日にでも確認して、報告します。
それでは、失礼します」


通話を終了した里沙は、冷たい光を瞳に浮かべながらリゾナントの方向を振り返る。
電話の相手は―――ダークネスの幹部の一人であった。

リゾナンターのサブリーダーである里沙の、もう一つの顔、それは。
―――ダークネスがリゾナンターへと放った、スパイ。

久住小春の現状を報告するようにという命令が下された。
それに従い、里沙は一足先にリゾナントを後にした小春を尾行していたのだった。

小春には、たまたま近くを通りかかったように言った。
だが、スタンガン未満の電流しか放てぬ微弱な力を感じ取ることは、感覚系能力に優れている能力者でもない限り無理な話だった。

小春が言っていたことを無理矢理誤魔化したことを思い出し、里沙は自嘲する。
共鳴するのに、わざわざ体を借りる必要なんて何処にもないのだ。
想いが同じように重なればいいだけで、肉体の何処かに接触していなければならないなどと言うことはないのだから。

ならば、何故里沙は小春の体を借りたのか。
それは―――先日の戦いを経て、小春の精神がどの程度成長したのかを直に確認するためであった。

精神面の成長はそのまま、能力の強さへと繋がる。
何か考えるような間を与えずに小春の体へと入り込み、小春の精神面がどの程度成長したのか確認したのだが。
以前と比べると、かなり成長していた。

それなのに上手く新しい能力を扱いきれないのは、小春が不器用だからだろう。
だが、いずれはその扱いに慣れるに違いない。
元々有していた能力と合わせて皆を守る、その時、きっと、自分は―――。


「いなくなったりしないよ…今はね」


リゾナンターに真に属することの出来ぬ悲しき里沙の頬を伝う一筋の涙は、誰にも見られることなく夜の風に流れて消えていく。
心の中を吹き荒れる叫びが誰にも聞こえぬように、里沙はキツく唇を噛みしめると。
自分の心に湧き上がってくる感情へと、迷うことなくナイフを振り下ろした。

表情を消し、街を歩く里沙。

その全てを見ていたのは―――紅く輝く月だけであった。




















最終更新:2012年11月24日 07:35