数日後
「あれえ、ガキさん凄く眠そうですよぉ。やっぱり春ですもんねえ」
亀が嬉しそうに近づいてくる。
わたしが欠伸してるところを最悪なやつに見られてしまった。
「うるさい、わたしは亀みたいにポケポケして眠い訳じゃないの! ちょっと眠れないだけよ」
わたしはシッシッと手で亀を追っ払っているのに、亀は構わずわたしの横に座った。
「眠れないんですかぁ? ちゃんと眠らないとダメですよぉ。
絵里なんか病院のベッドで一日中寝てても寝足りないんですからぁ。
そうだ、ちゃんと眠れるように絵里が・・・」
亀の言葉が子守歌のように聞こえてくる。
決して眠れないわけではないのだ。ただ・・・
「うおっ!」
びっくりして思わず立ち上がってしまう。
椅子とテーブルが激しく音を立て、テーブルの上にあった紅茶が零れた。
ただ夢を見るのだ。
少しでも居眠りをするとあのときの幻覚がいつまで経っても悪夢になって現れる。
現実感を伴った悪夢はわたしの睡眠を酷く妨害するので慢性的な睡眠不足に陥っていた。
ふと横を見ると、ものすごい形相で驚いている亀ちゃんがいた。
最終更新:2012年11月23日 11:47