(03)327 『鎌鼬が泣いている』



ぶぉぉぉー と髪が舞い踊る。
ある戦いで目覚めた風を操る能力。

絵里は人目につかないところでこの能力をさらに発展させるために努力していた。
愛佳が言う光学迷彩とかいうのは理論すらまだ理解できないが。

それから、空気も操れるようになればさらに能力の幅が広がるだろうと彼女の弁。
例えば、敵の周りと上空の空気をぎゅっと固めて、補強して、
体感重力を変えてやれば動きを抑制、うまくいけば拘束にだって使える。
 ・・・愛佳の発する言葉は絵里にとって宇宙語に等しかった。

とにかく、まずは風を味方につけることだ。

(だってこれも特訓だもんね)

風が止むとばたばたとはためいていたパジャマと髪がすとんとその身体に馴染む。
髪を手櫛でとかすといつも通りサラサラと指の隙間から零れ落ちていく。
鏡に映る天使の輪は今日も光り輝いており、思わず満足げな笑みを浮かべた。

「うへへへ、おやすみなさーい」




















最終更新:2012年11月23日 11:17