(03)277 名無し募集中。。。 (共鳴の色)



「じゃあ、もういいよっ!!」

―バタンッ―


普段は絶対と言えるほどふにゃふにゃ笑っている絵里が、眉間にグッと皺を寄せて目つきも鋭くさせて、大きな声を出して喫茶店を飛び出して行った。
絵里が睨んでいた相手はさゆみだったのだ。どうやら2人は喧嘩をしてしまったらしい。
カウンターの中にいた愛も少々ビックリしたようだ。

「なん?・・・あんたら何したんよ?」
愛は2人の会話を全て聞いていたわけじゃないので話が分からないのだ。

「いえ、なんでもないです」
ちょっと不貞腐れた顔をしてさゆみが言う。
でもなんでもないわけないのでしつこく責めると、さゆみは1つため息をして話し始めた。



「愛ちゃんは心が読めるのに、ずるい。・・・でもそこが愛ちゃんらしいかも。あの、さっき絵里と話してたことなんですけどね」
「・・・うん」
「絵里の能力はさゆみがいないとただの危険じゃないですか」
「そう、やね・・・」
2人の間に変な空気が生まれる。愛は心を読んだつもりはないのに、これから先が見えそうな気がしたのだ。

「だから絵里にさゆみがいないときは戦っちゃダメって言ったんです。そしたら絵里は『みんなは1人でも立ち向かってるってのに絵里だけ1人じゃ何もできないみたい』って言ったんです」

黙って聞いている愛の眉間にも、さっき飛び出していった絵里と同じ皺ができているとさゆみは気付いた。
そこから視線を外し、目の前のオレンジジュースを見つめて話した。


絵里の傷は転移できるけど、自分では治せない。だからさゆみとリゾナントして初めて戦いができるのだ。
「・・・そう言ったら絵里は『絵里はさゆがいないとダメだけど、さゆは誰と一緒に戦っても力になれるじゃん』って言った。そこらへんから絵里の様子が変だなーとは思っていたんですけど・・・」


黙ってさゆみの話を聞いていた愛は、アイスコーヒーを一気に飲み干してさゆみと目を合わせる。
「やから絵里は『1人でも戦えるーっ!』ってでかい声出したんやな」
「えっ!?・・・あぁ、心の声」
「そう、いきなりでビックリしたわ」
「説得できなくてすいませんでした」



謝るさゆみの顔はとっても悲しげで、目にはうっすら涙が光る。
愛は絵里がどこにいるのか全く見当も付かない。だって自分にはそんな能力がないのだから。
だったらその能力を持っている人間に聞けばいいじゃないか。
どうせ絵里には誰が電話してもきっと出ないだろうから。


「もしもし。あのさ、絵里の未来、見て欲しい」
「いいですよー」






一時間後、絵里以外のリゾナンダー達が街中を走り回っている。
愛佳が見えたものは真っ暗な倉庫で1人、血を流して倒れている絵里の姿が見えたのだった。
その倉庫らしき場所をみんなで探しているのだが、どうしても絵里が見つからない。
心臓病を患っている彼女のことだ、戦闘になるだけで身体に負担がかかる。その上絵里の能力を使うには自分の身体に傷を付けることだってしてしまうのだ。
1人で戦うことの危険性は戦闘向きでない愛やさゆみ、小春や愛佳と同じくらいなのだ。
きっとそのことが絵里を苦しめてしまったのだろう。さゆみと喧嘩をするずっと前から絵里は気付いていたのだろう。
でも立派な能力で、誰も絵里をお荷物だなんて思っちゃいない。


早く絵里を探し出さないと――
その先を考えて止めたさゆみは心の中で強く絵里と叫んだ。


「え、なん?あれ・・・」
れいなが指差す方向にオレンジ色の光が天に届きそうなほど高く昇り詰めている。
周りにいる一般人の様子から、リゾナンダーにしか見えていないようだ。
じゃあ、絵里はきっとそこにいる。




「みんなリゾナンカーに乗って!」
「「「「「了解っ!!」」」」」


愛がオレンジ色の光に向かって運転していると、助手席の里沙がふと呟いた。
「ねぇ、光が小さくなってない?」
「あ・・・本当だ。ヤ、ヤバい絵里!もうちょっとだから!」


着いた先の倉庫は愛佳が予知した倉庫そのもので間違いはなさそうだった。
扉を開けるとそこには、やはりぐったりとうつ伏せで倒れている絵里の姿が。


「絵里っ!!」



さゆみは誰よりも早く絵里の傍に駆け寄り、力を使ったのだった。
何者かに切られたような大きな切り傷もあっという間になくなり、呼吸も安定しているが目を覚まさない絵里。


「多分、出血が酷いようだからこのまま病院に連れていきましょう」
「そうだね。絵里には病気もあるし」
「敵はもういないみたいっちゃけん。早よ行こう」




病院のベッドではすやすや眠っている絵里。それを8人で見守っていると、さゆみが口を開いた。




「さっき、絵里って強く叫んだんです、心の中で。そしたらいきなり・・・あれって一体?」
「あれこそが共鳴そのものだよ、さゆ」

愛の言葉に優しさが篭っている。愛にはもしかしたら全部聞こえていたのかもしれない。
絵里を探しているときの不安や助けたいと思う気持ちが。愛が心を読もうとしてではなく、さゆみの気持ちが大きくなりすぎて愛に聞こえていたのかもしれない。


9人全員で共鳴できたら、きっとそれは虹色よりも綺麗な光が現れるのだろう。
愛佳にはまだ、その未来が見えていないのだけれど。




















最終更新:2012年11月23日 11:10