(21)104 名無しじゃないやい (雪景色)



リゾナントに絵里と小春が着いた時には、他の仲間達も全員集合していた。
絵里と小春が揃って現れたことに皆驚いたような顔をしたものの、すぐさま笑顔へと変わる。

離れた席に座ろうとした小春を、絵里は逃がさない。
いつも座っているテーブル席へと、小春の手を引いて連れて行く。

戸惑ったような顔の小春にふわりと一つ笑いかけ、絵里は先に座った。
そうなると、小春も座らないわけにはいかなくなる。
席に着き、愛に食べたいものを注文した二人は、先程までと同じようにぎこちない会話を交わす。

その様子を、皆温かい目で見ていた。

ご飯を食べながら、時には他の仲間達を交えながら会話をする二人。
小春の口調は相変わらず素っ気なく、抑揚が乏しかったものの、以前のような棘が少しなくなったような気がする。
あの雪が、小春と絵里…そして仲間達との距離をほんの少しだけど、確実に縮めたのだろう。

外の寒さとは裏腹に、暖かさも温かさも溢れる喫茶リゾナント。
ふと、絵里は窓の方に視線を向ける。


「あ…雪だ、雪だー!」


思わず声をあげてはしゃぐ絵里。
その声に皆も窓の外を見て、一様にはしゃぎだす。

視線を感じて、その方向を見たら小春が小さく微笑んでいてくれていて。
そのことがまた、絵里の心を温かくしていく。

明日は皆で雪合戦しようというれいなの言葉に、やっぱり小春はうんとは頷かなかったけれど。
でもきっと、小春はリゾナントに来てくれるはず。


独りぼっちだった頃は、明日なんてこなくてもいい、なんて思っていた。
だけど、今は早く明日がくればいい、本当にそう思う。


「嘘の雪が、本当になっちゃったね」

「そうですね、まさか降るとは思いませんでした」

「今降ってる雪も好きだけど、小春が見せてくれた雪も絵里は好きだよ」


だから、また見せてねという言葉の代わりに、ふにゃりとした微笑みを浮かべる絵里。
一瞬だけ目を見開いた小春は、やや遅れてコクンと首を縦に振る。


「えー、何の話しとーと、絵里と小春は-?」

「内緒だもん、ね、小春」

「…はい」

「えー、何かそれずるい。
れいなも混ぜるっちゃ」


れいなの声に続くように、皆が身を乗り出してくる。
その様子がおかしくて、思わず笑い出す絵里。
視線を小春に向けたら、予想通り、照れくさそうな顔をしてそっぽを向く小春。

今夜はわくわくして眠れないだろうなと、小春の横顔を眺めながら絵里は柔らかく微笑んだ。




















最終更新:2012年12月02日 12:26