(16)522 名無しじゃないやい (かなしみの炎)



「…あナたのことヲ尊敬してイましタ、ずっト目標にしテきましタ。
だかラこソ…あなタのしたコとを私ハ許せなイ」

「…ありがと。
許してくれなくてもいい、許して欲しいなんて思ってなんかいない」


対峙した彼女は自嘲していた。
本当に許して欲しいなどとは思っていない、自分のしてきたことを悔いるような微笑み。
その微笑みに、自分の中にある想いが揺らぎそうになるのを感じて歯噛みする。

彼女を許すわけにはいかない。
仲間を裏切り、敵に情報を流し続けた彼女をけして、許すことは出来ない。

彼女と付き合いの長い人間は当てには出来なかった。
付き合いの長さはそのまま、情の重さに比例する。

付き合いが短い自分だからこそ、彼女を―――この手にかけることが出来る。


「…何か、伝言があレば聞きマすヨ。
最も、そノ伝言が彼女達に伝え難い内容でアれバ、伝えズに終わらセますガが」

「…今までありがとう、それでいいよ。
それ以外に彼女達に伝えることはないし、これからは―――敵同士だから」


その言葉が合図だった。
彼女からゆらゆらと立ち上るオーラは、以前見てきた黄緑色のオーラではない。
あの眩いような色から、闇に侵蝕され濁りきった汚い色。

―――その手に触れたもの全てを焼き尽くす力を纏わせ、リンリンは一つ息を吸い込んだ。




















最終更新:2012年12月02日 12:01