(24)756 『絶対解ける問題 X=A+KSa(1)』



「さゆ!方針が決まったとね!一緒にダークネスの連中を探すとよ!」
「あの・・・ゴメンれいな、今日は大事な用事があるの・・・」

携帯を握りしめ、一瞬、絶句する田中れいな
だがすぐに険しい顔になり電話の相手、道重さゆみに食ってかかる

「大事な用事ってなんね!リゾナントにも来ないで!ジュンジュンやリンリンの命より大事な用事ってなんね!」

涙目になり、声を荒げて捲くし立てるれいな

「ごっ、ゴメン!、ホントゴメンっ!」

ブツッ、ツー、ツー・・・
無常にも切られる電話

「なんね・・・なんね・・・こんなときにえりもリゾナントに来ないし・・・一体これなんね!!!」

地面にしゃがみ込み、絶叫するれいな

(ゴメンれいな・・・みんな・・・だって言えないよ・・・こんなこと・・・)

電話を切ったさゆみの目にも、涙が光っていた。


敗北し、ダークネスに囚われたジュンジュン、リンリン
しかし、生命の危機に晒されているメンバーは彼女達だけではなかった。

『ICU』

B区にある総合病院の集中治療室。当然、中に居る患者は面会謝絶の重篤患者である。

「遅くなりました・・・」

治療室の前で祈るように座っていた女性に挨拶をするさゆみ

「さゆみちゃん・・・今日も来てくれたのね・・・」

さゆみに頭を下げ、挨拶をする女性。白髪混じりの頭で、憔悴しきった様子だ。
充血した目が、今の彼女の状況を物語っていた。

「お母さん、えりの容態はどうなんですか?」
「今は少し落ち着いているみたい・・・でも先生はまだ予断を許さない状況だって・・・」

憔悴した女性、絵里の母が絞り出すような声で言う

「そうですか・・・」

力なく、さゆみが返す


亀井絵里の容態が急変したのは、粛清人『R』との闘いの翌日昼のことだった。
暴走した『R』の念動力による周辺への被害を抑える為、絵里が生み出した真空のフィールド。
そのフィールドによって、被害を最小限に留めリゾナンターは『R』を撃退することに成功した。
しかし、『風』を操る絵里にしてもあの真空を生み出す力は己の限界を超えたものだった。

「えり、顔青いよ?」

勝利の喜びに沸く仲間たちの中で、絵里の僅かな異変に気付いていたのはさゆみだけだった。

「ううん、ちょっと疲れただけ。大丈夫だから」

いつもの、ふにゃっ、とした絵里の笑顔だった。
あぁ、これは大丈夫かな、と思ってしまった自分が悔しい。
翌日、絵里の母からの電話を受けたとき、さゆみは思わずその場にへなへなと膝をついて崩れ落ちてしまった。

(えりはかなり無理して笑ってたんだね)

胸から込み上げてくるものを、さゆみは抑え切れなくなりそうになる。

(ジュンジュンやリンリンのことで大変なのに、えりまでこんなことになってるなんてみんなに言えないよ・・・)

自責の念、とでも言うのだろうか。さゆみはこの事を誰にも話さず一人で抱え込んでいた。

(お姉ちゃん・・・さゆみはどうすればいいの?ねぇ、教えてよ)

姉の返事は、ない


バタンっ!突然ICUの扉が開いた。
中から看護士がなにやら早口で喋る声や、医師の声が聞こえる。

「どんどん心拍数が下がって・・・」
「今日は神田先生は学会の発表で・・・」
「心臓外科の先生じゃないとこのオペは・・・」
「バカっ、ご家族が居るんだぞ・・・」
「非番の長谷川先生は・・・」

青ざめた顔をして早足で飛び出して来た医師に、絵里の母が半狂乱ですがりつく

「先生!絵里は!絵里は!」
「緊急オペが必要な状態です。しかしお嬢さんの心臓はかなりのレアケースでして心臓外科の専門医でないと・・・」
「絵里を、絵里を助けて下さい!」
「私は循環器科でしてオペは・・・」
「そんな!」

ぼーっと立ち尽くすことしかできないさゆみ
嫌だよ、えりとお別れなんて嫌だよ・・・

そして、立ち尽くすさゆみの横をスッ、と通る人影

 >目標、確認




















最終更新:2012年12月02日 09:20