(24)532 名無し募集中。。。 (甘い未来)



ドクン、ドクン、ドクン
高鳴る鼓動が愛佳にも伝わってくる

愛佳“にも”って?
今日は私の友達のめっちゃ大事な場面に付き添うてあげてるんです
友達っていうても、久住さんでも他のリゾナンターのメンバーでもなく、学校での友達なんです
リゾナンターになって自分に自信が持てたことで、愛佳も愛佳の周りも雰囲気が変わってきて、今は友達がいっぱいいてます

その中でよく図書館で一緒に勉強しよる子がおるんやけど、先月のある日、何かその子の様子が変やったんです
勉強になかなか集中できへんみたいやったんですけど、何かあったんか聞いてみても言葉を濁すんです
それで次の日、登校中にいつもみたいに声は掛けんと、少し後ろからそっとついてってみたんです

あるところで、近くの別の高校に通うてる男の人達が歩いてくるのが見えてきて
そしたらその子が段々と耳まで赤くなってきてて
男の人達とすれ違って振り向いたその顔はもう真っ赤っか
な~んや、そういう事やったんかぁ。

愛佳がいてるのに気付いたその子は、恥ずかしそうに小走りで学校へ向かって行きました
教室でようやく話を聞き出してみると、やっぱり“恋”をしちゃいましたかぁ~
大きなスポーツバッグをいつも持ってる人なんやって。そっかあの人かぁ。確かに愛佳もほれぼれするくらいかっこいい人やった

その日からは、もう直前に迫っていたバレンタインに向けて突貫工事の告白計画を進めたんです
リゾナントでガレットを作っているこの腕を生かして、愛を込めたチョコ作りをサポート。


で、肝心のバレンタイン当日はどうやったかっていうと、
あの人にダッシュでチョコを渡して、逃げるようにまたダッシュで戻ってきました。やっぱりまた真っ赤な顔で。

「来月お返事待ってます!!!」

その時、そう言うたんやって。


来月。即ち3月14日。所謂ホワイトデー。
恋の背中を押してあげた以上は、愛佳にも恋の・末を見届ける義務があります

それで今日の放課後、あの人がこの道を通るのをこうして一緒に待ってるんです
あぁ、なんだか愛佳も緊張してきたぁ~

やがて、あの人が何人か連れでこっちに歩いてくるのが見えました
ドクン、ドクン、ドクン
鼓動も一層速くなっているのが感じ取れます

近づいてくるにつれて、会話が聞こえてきました
連れのお一人があの人に質問をしていました

「A子とB子と二股かけてんだって?」
「ひとりおまえにやろうか?付き合える女なんかくさるほどいるぜ」

その時、すれ違ったおばあさんに大きなスポーツバッグがぶつかって、おばあさんが転んでしもうたんです
愛佳たちは駆け寄って、友達が体をおこしてあげて、私は落とした巾着袋を渡してあげました

その次の瞬間――

バシィッ

乾いた音が辺りに鳴り響きました

「お年寄りは大切にしな」

友達がそう言ってるそばでは、あの人が顔を押さえてうずくまっていました
愛佳も周りの人達も呆気にとられている中、友達は愛佳の手を引いて駅に向かって歩き出しました


駅に着いてその子を見ると、涙がとめどなく溢れていて
ごめんね、ごめんね、せっかくここまで手伝ってくれたのにって、泣きながら愛佳に謝ってきました
なんだか私も泣けてきてしもうて、愛佳に謝ることないよ、今回は縁がなかったんだよって泣きながらなぐさめていました

そうや、明日の日曜、二人で遊びに行こう。教えてあげたい喫茶店があるんや

遠くない未来、リゾナントにその子が幸せそうにまだ見たこと無い男の人と二人でやってくるのが見えました
その子が嬉しそうに後ろをチョロチョロしてる。そして二人は寄り添い、手と手をつなぎ、輝いてる。




















最終更新:2012年12月02日 08:37