(23)748 『冷酷無情』



人智を超えたものを望むのであれば、己が人であることを忘れねばならない。


得難きものを得るために、人の心を捨てた。
得難きものを得るために、人の温もりを消した。
得難きものを得るために、人を名乗るのを、やめた。

もはや体は抜け殻。
何より強い願望と誰より鋭い眼光だけが凍てついた。
他人にかける“情”なんて、これっぽっちも残っちゃいない。


業火に焼かれてのたうち回る者には、嘲りの声を。
濁流にのまれて手を伸ばす者には、蔑みの視線を。



その女、残忍にして無情。




















最終更新:2012年12月02日 07:30