(23)093 『喜色満面』



彼女は笑顔を絶やさない。

たとえ、どんな光も届かぬ新月の夜であろうと。
たとえ、吐息も凍てつく極寒の地にいようと。
たとえ、自らの命が危険に晒されようと。

いつでもどこでも何があっても、彼女は笑っていた。
素面とも仮面ともとれる完璧な笑顔だった。

彼女の笑顔。
それは、心満たされている者には天使の微笑と映るだろう。
だけど、絶望で満たされている者には悪魔の嘲笑と映るかもしれない。


その笑みにどんな意味が込められているかはわからない。
彼女は顔をほころばせるだけで、何も言おうとしないから。





















最終更新:2012年12月01日 21:05