――その日、もう一つのたたかいの記録が、少女の脳裏に飛来した。
夕闇に染まる廃ビルに、二人の能力者が対峙する。
リゾナンター高橋愛と粛清人R。
「服従か死か、二つに一つよ」
黒衣の粛清人は欠片程の憐憫も込めずに、そう言い放った。
「どっちもごめんや、あたしは」
高橋愛の言葉に、一切の逡巡はない。
二つの宿命は決して互いに交わる事はなく、互いに貫き通すのみ。
―黄昏の次に来たるのは、闇か、光か。
「何で、あたしをそこまで付け狙う?」
「決まってるじゃない。―あなたが必要だからよ」
粛清人R―新垣里沙―の袖口から伸びた鋼線が、
空気を、思いを、かなしみを、あらゆる思いを切り裂いて愛に襲い掛かる。
異聞、『AとR』
――それは、訪れることのなかった未来の記憶。
最終更新:2012年12月01日 17:02