(21)585 『共鳴修学旅行~仁義なき戦い・リゾナンター死闘編~』



「アッヒャ~…今日も楽しかったがし!」
「アタシは疲れたよ…」

ダークネス関西の面々を見事あっさりと打ち滅ぼした後、
大阪観光を満喫したリゾナンターご一行は2日目の宿でマターリ過ごしています
部屋の中央に置かれたテーブルの傍で足を投げ出して座る愛
幸せそうな笑顔を浮かべる愛の隣には疲れきった表情の里沙
この二人の座り位置はこの旅ですっかり定着したようだ
そして、やけに落ち着いた二人の周りを取り囲むように、他のメンバー達が今日の戦利品を見せ合いっこしていた

「道重サン!見テくだサイ!コノTシャツカワイイデスヨ!」

リンリンは嬉しそうに、胸元にデカデカと“なんでやねん”とプリントされたTシャツを広げて見せた

「えぇ~…ダサいってば…」
「!!ダサイデスカ?!ヤバイ!ダサイのヤバイ!」
「田中さん田中さん田中さぁん!タコ焼きせんべい食べましょーよー!」
「なんそれ?おいしいと?」
「いや、わかんないっす!」
「んじゃ、小春が一番に食べれよ」
「えー!やだやだやだ!あ。みっつぃー!みっつぃーが一番に食べ……あれ?」


タコ焼きせんべいを振りかざしながら部屋をぐるりと見渡す小春
しかし愛佳の姿はなかった

「あれれれれ?みっつぃーは?新垣さぁーん!みっつぃーがいませーん!!」
「っ…もぉ…そーんな大きな声、出さなくたって聞こえてるから!」
「みっつぃーは今晩、クラスの子らと同じ部屋で寝るって言うとったやよ」
「ナンダ…光井ガいナイ寂しいナ…」
「デモ昨日ワタシ達ヤクソクしまシタ!」
「みっつぃーはお友達との思い出もつくらないといけないの」
「ウヘ…絵里ちゃん、もう寝ますね?」

    「早っ!!」

その場に居た全員が息ぴったりにツッコミを入れたその隣の部屋では…

━…

壁を隔ててかすかに聞こえる自分を呼ぶ声に愛佳は若干動揺しつつも、
夏子ちゃんをはじめとしたクラスメート達とお喋りに花を咲かせていた

「隣のグループは相変わらず元気が良いよねー」
「ホントー!あのハイテンションまじウケるー」
「愛佳、ずっとツッコミっぱなしだもんね」
「あは…あははは…ホンマ、勘弁してほしいねんけどな…ははは…」


壁が薄いのか、声がデカいのか…隣から聞こえる声は途切れる事なく、
さらにはドスンドスンという激しい物音まで伝わって来る

(めっちゃウルサイんやけど…あの人ら、なにやってはるんやろ…)

愛佳はリゾナンター達の動向に底知れぬ不安を抱きながら、
同室の友人達と寝床の用意を始めた

  ドスン…ドッスーン…

「ちょw隣の部屋wスゴいウルサイんですけどwww」
「枕投げとかしてんじゃないの!?」
「あはは…せやなぁ…あの人らならやりかねんなぁ…」

愛佳は軽い頭痛を感じながら、振動を伝える壁に掌を当てる
その瞬間、愛佳の頭痛が大きく鋭くなった

「ぁっ…ッ!?」
「愛佳?どうしたの?」

急に頭を抱えた愛佳の肩に手を回して心配顔で覗き込む夏子ちゃん
愛佳の顔は真っ青で、目は大きく見開かれていた

「アカン…それはアカンでぇ…ガクブル…」
「愛佳?!」

愛佳を襲った頭痛に伴ってもたらされた驚愕の未来
愛佳の予知能力が告げた未曾有の未来


愛佳が触れている部分を中心に亀裂が広がり、壁が弾け散る
その向こうから飛び出して来るのは白と黒の大きな獣
そして、ぽっかりと開いた穴からゾロゾロとリゾナンターが這い出てくる

「あの人ら…一体何するつもりやねん…破壊はアカンでぇ…」
「愛佳?顔色悪いけど大丈夫?」
「ナツ!みんなも!できるだけこっちの壁から離れといてな!」

そう言い残して愛佳は部屋を飛び出して行った
“未来は変えられる”そう言い聞かせて…

一方、その問題の隣室では…━

「久住!ワタシのバナナ食ベタダロ!」
「いいじゃん!一本ぐらいいいじゃん!」
「小春、人の物は勝手に食べたらアカンがし」
「ってか、あれだけの量のバナナが一本減ってる事に気付くジュンジュンもスゴいの…」
「えーりぃー…もう寝ると?夜はこれからやろーが」

寝支度を始めた絵里の浴衣の裾を引っ張って引き留めるれいな

「亀井サン?ドコで寝るデスカ?」
「みんなうるさいから押し入れの中で寝るぅ~」
「!!亀井サン!ドラ○もんみたいデス!」
「もぉぉおおお~っ!アンタ達、ウルサイ!!」


「バナナ返セ!久住の大阪バナナ寄越セ!」
「ダメだよ!それはマネージャーさんへのお土産だもん!」

  バシッ!

小春のカバンから大阪銘菓(?!)を抜き取ろうとするジュンジュンに向かって、
小春は近くにあった枕を掴んで投げつけた

「痛イ。何スル久住」
「こはらぅぅぅぅっ!!!!」
「ふぁぁっ?!たっ…田中さん?」
「田中…ナンデ田中ガ怒ル?」
「こっ…こはらぅ…その枕は…その枕は…」

ワナワナと震えるれいなの指先が差し示すのは…わざわざれいな城から持ち出してきた
れいな愛用きらりちゃん☆エボリューションオリジナル枕だった…

「あぁっ!ススススイマセン!」
「れいなはホンマにきらりちゃんが好きなんやのぉ」
「愛ちゃん…のんびり感想を述べてる場合じゃないってば」
「バカァッ!ナァさんが許しても、このれなが許さんったい!」

れいなが勢い良く立ち上がり、その弾みで絵里の浴衣が少しはだける

「あぁ~れぇ~。イヤン、れーなのエッチ」
「絵里、悪ノリしすぎなの。そしてれいなは簡単にキレすぎなの!」
「田中っち!落ち着いて!」
「田中サンがキレタ!」
「こはらぅ!喰らえっ!」


れいなは掴んでいた絵里の浴衣を更に引っ張って、絵里ごと小春に投げつけた

「ウヘヘ~あぁ~れぇ~」

絵里はれいなにされるがまま、笑顔のまま、小春とジュンジュンの方へ一直線に飛んで行く

「うわぁぁ!ジュンジュン!」

小春はジュンジュンの背後に素早くその身を隠す
その辺に転がる枕の様に飛ばされた絵里を受け止めるべく、ジュンジュンは素早く獣化する

「バウッ!」
「ウヘ…ナイスキャッチ、ジュンジュン」

パンダ(中の人ジュンジュン)の腕の中で逆さまに収まった絵里は
何事もなかったかのように笑い、グッと親指を立てた

「絵里!パンツ、パンツ!」

浴衣が派手に捲れて、かわゆい下着丸見えな絵里にさゆみが慌てて告げる

「イヤ~ン、さゆのエッチ」

あくまでもマイペースな絵里をよそに、ジュンジュンの肩口から
ひょっこり顔を出した小春はれいなを指差しながらジュンジュンに指令を下した

「ジュンジュン!田中さんに反撃開始っ!」
「バウッ!」


さっきまでいがみ合っていたのをすーっかり忘れたのか、
ジュンジュンは小春に言われた通りにあっさり絵里をれいなへ投げ返した

「コラーッ!カメで枕投げしなーい!」

里沙の怒声も空しく、絵里の体はまた宙を舞う

「あぁ~れぇ~」
「うおっ!」
「キャァ!」

  ドッスーン!

絵里の体はれいなに直撃
れいなの傍にいたさゆみも巻き込んで、
3人は積み上げられていた布団の山に倒れ込んだ

「ちょっ!コラァー!ジュンジュン!」
「ナイス!ジュンジュン、ナイス!」
「バウッ!」
「ナイスじゃないわよ!ナイスじゃっ!」

小春とジュンジュンはハイタッチで喜んでいる

「イタタタタ…こっ…こはらぅ…」

横たわる絵里の下からやっとの思いで這い出てきたれいなの目は蒼白かった


「アイヤー…田中サンの邪眼ガ目覚めマシタ…」
「リンリン違うから!ってか田中っち!落ち着いて!愛ちゃんも止めてよ!」
「えらいハードな枕投げやのぉ…ズズズ…」
「愛ちゃん!お茶飲んでる場合じゃないからっ!」
「もぉ~ジュンジュン…絵里ちゃんを投げ返すなんて酷いですよ?」

ゆらりと立ち上がって、れいなの隣に並んだ絵里
アヒル口をふにゃりとさせて笑ってはいるが、その目は笑っていなかった

「おおうっ!亀井サン!目ガイツモと違ウデスヨ!」
「もぉ、れな、本気出すけんね!止めても無駄やけんね!」

普段は可愛い印象を与える八重歯を剥き出しにして威嚇する猫

「ちょっと待つの…」

れいなの背後にゆっくりと現れてれいなの肩を掴んだもうひとつの人影は一緒に倒れていたさゆみ

「さゆ…いくら止めてもれなはきらりちゃんと絵里の仇を討つまでは止まらんよ」
「カメを最初に投げたのは田中っちじゃないの…」
「誰も止めてないの…それに私はさゆみではないから…」
「あぁっ!あれはっ!」


小春がジュンジュンの背中に張り付きながら驚きの声を上げた

「バッ…バゥゥ…」

うろたえる小春とジュンジュンの姿を視界に捉え、ニヤリと冷たく笑うその人は…さえみだった…

「さゆみが受けた痛みは…私が倍にして返してあげる…」
「ヤバいってばジュンジュン!さえみさんだよ!」
「グルル…」
「ちょーっと愛ちゃん!これはマズイ事になったのだっ!」
「おぉ~さえみさん、久しぶりやのぉ…ズズズ…」
「愛ちゃん!」
「目ガ違ウ!さえみサンのアノ目は人を殺メタ事ガある目デス!」
「ちょっ…リンリン!怖いから!そして殺めてないから!」

睨み合うこはジュンとさゆれなえり…
そしてその間で焦りまくる里沙
何故かワクワクしているリンリンとマターリしたままお茶をすする愛
誰もが迂濶に最初の一手を繰り出せない、ビリビリとした緊迫感が部屋を包み込む

「何してはるんですかっ!って、ぅゎぁぁ…」

ちょうど隣の部屋から駆け込んで来た愛佳は、部屋に漂う異様な空気に弱々しい声を上げた


「なっ…何がどうしてこぉなってるんですか?!」
「愛佳、良い所に来たわねっ!この子達を止めてよ、もぉ…」

里沙は加勢してもらおうと、愛佳に向かって手招きをする
愛佳は仕方なく恐る恐る、部屋に一歩踏み入った

その瞬間!

「ジュンジュン!チャチャチャーンス!」
「バウッ!」

ジュンジュンはその太く長い腕を伸ばし、愛佳の体を豪快に鷲掴みにして
そのままれいな達の方へ投げつけた

「うっ?わぁぁぁあああっ!」
「あーいーかぁぁぁあああ!」

里沙の伸ばした手は空を切り、愛佳はその辺に転がる枕の様に飛ばされた

「イクサシブ・ヒーリング!」

さえみの掌から放たれた光が布団やら枕やらを粉々にし、部屋一面に真っ白な綿が舞い上がる

「ウィンド・マニピュレート!」

絵里の声に呼応して、狭い部屋の中に激しい風が巻き起こる
竜巻は宙で真っ白い綿の壁を成し、飛ばされた愛佳の体を受け止めた

「リゾナント・アンプリファイヤ!」

一層強くなった竜巻は愛佳の体を丸ごと飲み込んだ後、愛佳を小春とジュンジュンの方へと跳ね返した

そこからの惨状はまるでスローモションかの様にはっきりと、
その場に居た者の脳裏に未来永劫焼き付くような惨状だった

「うわぁぁあああっ!」

回転が加わった、綿まみれの愛佳の体が一直線に小春とジュンジュンに襲いかかる

「うわぁっ!みっつぃーがこっち来るぅっ!!」

小春は素早く横に飛び退き、その身を愛の前にあるテーブルの陰に滑り込ませる

「バッ!バウゥゥッ!」

愛佳の体を受け止めるべく、ジュンジュンは体の重心を落として歯をくいしばる

「あぁーいぃーかぁぁぁあああ!」

里沙が叫びながら手を伸ばすも、風に乗った愛佳の体には届かない


「危ナイ!ブツカッチャウダ!」

リンリンは思わず両手で顔を覆う

「アッヒャー!」

高速移動する愛佳のせいで顔面に綿混じりの暴風を受けた愛は
驚いてちょっぴりお茶を溢してしまう

「グハッ!」

見事、ど真ん中ストライクの愛佳を真っ正面から受け止めたジュンジュン
しかし、その勢いを殺せずにジュンジュンの爪先が畳から剥がれ、バランスを崩される

「ガゥッ?!」

黒い毛の向こうにあるつぶらな瞳に焦りの色が見えた時、すでにジュンジュンの体は浮き上がっていた
そのまま後方へフッ飛ばされた巨大な獣といたいけな一人の少女

   ドッゴ───ン


ジュンジュンは愛佳を抱えたまま背後の壁を突き破って、
舞い上がった瓦礫と土煙との向こう側へと消えて行った…

「ちょっ…こっ…コラァァァーーーッ!!!」
「絵里ぃ…アレはいくらなんでもやり過ぎちゃろ…」
「うぇ~…れーなが共鳴し過ぎなんだよぅ」
「アンタ達!これどうするつもりなのよ?!これっ!」
「カベ…穴アイチャッタダ…」
「ちょっと、さゆみん!壁、癒して!早く癒して!」
「ハッハッハッ!ガキさん慌てとーよ!」
「ガキさぁん、そこは“癒して”じゃなくて“直して”ですよ?」
「だから、私はさゆみじゃないって…」
「じゃかましわぃ!!!ゴルァ!!!」

女子しかいなかったはずの室内に、いかついオッサンの怒声が響く
驚きで肩をビクつかせたれいな達が辺りを見回すも、そこに見えるのはやはりメンバーと舞い上がった埃だけ…

「…なん?」
「お前等ええかげんやり過ぎやろが…」
「ウヘェ…ぁ…愛ちゃん…」

絵里が真っ青な顔で向ける視線の先には、仁王立ちのリーダー高橋愛

「愛ちゃん…」

愛の恐ろしい形相とオーラに里沙もキレていた事を忘れてしまった


「アンタら…ええかげんにせんかい…」
「小春は悪くなっ!ヒィッ!」

小春は真っ青な顔で言葉を詰まらせた
愛が静かに、そして冷たく小春を見下ろす

「………」
「フェェェ…ごっ…ごめんなさい!!」

小春は目を潤ませてただただ愛に向かって必死に謝った
小春の反省の弁を微動だにせず聞いている愛の背中を見つめながら
この惨状の張本人、絵里とれいなは小声で打ち合わせる

「もしかして…愛ちゃん怒っとーと?」
「たぶん…ねぇ、れーな…」
「とりあえず、逃げといた方が良かっちゃんね」
「…うん」

そぉ~っと…そぉ~っと…忍び足で二人はぽっかりと開いた壁の穴に向かう

「そこの二人…どこ行くんや」
「…ウヘ…見つかりましたよ」
「いや、あのー…ちょっとトイレに…」
「ふざけるんやないで!!」
「ウヒャァ!」
「ぬわぁっ!」


愛の怒声と表情に二人は恐怖の声を上げた

「アンタら!なんてことしとんのや!!」
「愛ちゃん…叱るの遅いから…」
「絵里!さゆ!逃げると!」
「だから、私はさゆみじゃなくてさえみだから…」

れいなは驚きと恐怖で放心状態の絵里と冷静にれいなの間違いを訂正するさえみの手を取って
ポッカリと開いた壁の穴に向かって走り出した
その様子を見ていた小春も我に返り、スクッと立ち上がってれいな達の後を追う
れいなは穴のすぐ向こうに気を失って横たわるパンダと愛佳を跨ぎ、突然の出来事に怯えた様子の
夏子ちゃん達へ苦笑いを向けでその場を取り繕いながら隣室の出口のドアノブに手をかけた
しかし、扉はれいなが力を加える前に自ら開かれる

「ぬわぁっ!あ!」
「どこ行くんやって聞いとるやろがっ!」

そこには瞬間移動で先廻りした愛が立っていた
その姿は先日闘った鬼神の仏像よりも怒りに満ちていた

「あわわわわわ…」

慌てるれいなの顔にグイッと自身の顔を近づけた愛の目がギラリと光った

「アンタら全員、廊下に正座しとれっ!!!!」



━…


「…お前ら…何してるんだ?」

リゾナンター達と愛佳の部屋の前を通りかかった学年主任が怪訝な顔を向ける
部屋の前にはズラリと並んだリゾナンター達の正座姿

「あ、ちょっと高橋さんに怒られちゃいました…ウヘ」
「ふむ…学級委員長の新垣もか?」
「アタシは完全にとばっちりです!」
「さゆみは何もしてないの…って言うか記憶がないの…」
「ワタシも悪いコト、ゼンゼンやってナイ!」
「ジュンジュンが原因じゃん!小春はジュンジュンと違って悪くないもん!」
「いや、小春も十分悪いやろーが!」

「ウルサイッ!!」

   シーン…

部屋の中から愛の怒声が飛んで来る
ピタッと止まるリゾナンター達の言い訳

「むぅ…まぁ、詳細はわからんが…たっぷり反省しておいた方がよさそうだな…」

学年主任は苦しまぎれの言葉を置いて、ゆっくりと立ち去った


「…なぁ…愛佳思ったんやけど…愛佳こそなんも悪い事してへんやんな…」

愛佳の暗~い呟きに、隣に座っていたリンリンが明るく返す

「ダイジョブデス!ワタシも悪い事ナイだ!光井サンとイッショ!」
「そーゆー意味やないんやけどなぁ…」

がっくりうなだれる愛佳の背後、部屋の中では…━

「もー…あの子らが暴れるもんやから、水さんの写真にお茶を溢してしもーたがし…」

机の上に置かれた写真を丁寧に丁寧に拭う愛の姿があった

「よし!綺麗になったやよ!」

愛はニヤリと笑った後、カバンの中から音楽プレーヤーを取り出し、
46,800円のヘッドホンで『宝塚歌劇・華麗なる名曲集』の鑑賞を始めたのだった…


共鳴修学旅行 おわり





共鳴修学旅行~エピローグ~

この3連休、久しぶりにゆっくりと休みが取れたので
最近すっかりご無沙汰だった行きつけの喫茶店に立ち寄った
こんな寒い日はあったかいココアでも頼もうか…
そんな事を考えながら、少し懐かしく感じてしまうアンティーク調の扉に手をかけた

「いらっしゃいませ」
「こんにちは。ホットココアお願いしていいかな」
「もちろんです、少々お待ち下さい」

カウンターの向こうには久しぶりのホッとする笑顔

「あれ?今日はマスター一人?」
「あの子は今、出前に行ってます」
「そっか…相変わらず忙しそうだね」
「そう言うお客さまも忙しいんじゃないんですか?お久しぶりですよね、ご来店されるの…」
「あぁ、いろいろとバタバタしてたもんで…あ、でも2ヶ月前ぐらいかなぁ…
 一度ここに来たら店が休みでさ…マスター、体調とか崩してたの?」
「それは失礼しました。ちょっと皆で旅行に行っていたんですよ」
「へぇ、良いね。どこに行ってたの?」

マスターは嬉しそうに目を細めて1枚の写真を見せてくれた
その写真には、今のマスターの笑顔に負けない位の笑顔が九つ仲良く並んでいた






     共鳴修学旅行 ホントにおわり






最終更新:2012年12月01日 15:43
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