(21)517 『雪の足跡』



少し先を行く彼女の足跡は、ふわふわと踊っているかの様だった。
足を滑らせ踏んでしまわぬように、ゆっくりと隣に足跡を並べていく。

彼女はこれ以上ない程に首を後ろに逸し、真っ暗な空から落ちてくる白い花びらを見つめている。
自分はこれ以上ない程に身を縮めて、真っ白な道に踊る黒い足跡を見つめる。

雪があまり降らない街に産まれた彼女。
雪がたくさん降る街に産まれた自分。
二人がこの街で出会い、こうして歩いていられる事を不思議に思う。

「見て見て!」

いつの間にか自分の横に並んでいた彼女は、二人が歩いてきた方角を指差してみせた。
視線を後ろに動かすと、真っ白な道に点々と足跡が残っていた。


雪にはしゃいで、上ばかり見上げていた彼女の足跡はふわふわと踊っている。
足元を見つめ、滑らぬように歩いてきた自分の足跡はまっすぐに続いている。

光を求めて、闇の中をふらふらと彷徨っていた彼女。
光を信じて、その先を求めて進んできた自分。
今、こうして二人の道は重なり、並んで歩ける事を幸せに思う。

「里沙ちゃん、」
「なぁにー?」
「これからも、よろしくな」
「何よー、改まっちゃって」

照れくさそうに笑う彼女の手を握る。
少し冷たい指先から伝わる気持ちは、二人共に寸分も違わぬものだった。


【真っ白な 道はまっすぐ 未来へと
続く二人の 足跡乗せて】





















最終更新:2012年12月01日 15:35