(21)337 名無し募集中。。。 (傷だらけの野良猫)



私の膝の上にのっかってきた、大きな“子猫”。
毎度毎度、怪我らしい怪我もしないのに他のメンバーの目を盗んではこうして私の家に来る。


「で、今日はどこ怪我したの?」

「いっぱい」


そう言ったきり、黙り込む“子猫”を見て苦笑せずにはいられない。
私は知っている、“子猫”はいつだって治癒する程の怪我を敵に負わされることなどないということを。
それなのに、いつも“子猫”は私の家にやってくる。
多分、誰にも知られてないつもりなんだろうけど…皆、知ってるんだよ?


「早く回復してほしいと、さゆ」

「はいはい、れーなは本当痛がりなんだから」


私は“子猫”―――田中れいなの髪を一撫ですると、治癒能力を解き放つ。
柔らかい桜色の光がそっとれいなを包みこむ。
満足げに目を閉じているれいなの顔を見つめながら、私は目を伏せた。

れいながいつも、怪我をしていなくてもここに来る理由。
それは、私の治癒能力が―――れいなにとっては、もう亡くした家族を思わせる温かさを持っているから。
仲間達に囲まれていても、不意に寂しさがこみ上げてくる時があるのだろう。
そういう時は必ず、れいなは私の家にやってくる、怪我をしていてもしていなくても、温もりに触れるために。

気がつけば、寝息を立てているれいな。

この子の“目に見えない傷”を癒してあげたい、そう想いながら私は今日もれいなを抱き締めた。




















最終更新:2012年12月01日 14:58