(19)335 『氷河の天使』



「雪が見たいの」 そんな気ままな天使のお供でオイラはアイスランドの氷河に来ている。

「大丈夫なのかよ」 
かつて”銀翼の天使”や”絶対共感者”として敵対組織に悪魔のように恐れられた安倍なつみの警護が、オイラ
一人っていうのはどうにも心細くて、仲間の予知能力者に今回の旅の安全を予知してもらいに行ったら彼女は
いつもと変わらずどこかと交信しているような表情でこう言った。

「まあ安全じゃないの。 あんただってダークネスの幹部級以外の人間が相手ならそこそこ戦えるでしょうし」
「冷てえなあ。 仲間の安全の為に気合入れて予知しようっていう気は無いのかよ」
「あんたが私のことをどう思っているか知らないけど、私はあんたのことを仲間と思っていないから」
「へいへい、未来を知ることのできる神様には仲間なんて必要ないんでしょうよ」
「一つだけアドバイスをしてあげるわ」

神様にしては珍しい笑みを浮かべながら、予言者は言った。
「なっちはね、誰の足跡も付いていない雪の原を見たら、駆けずり回って自分の足跡だらけにしなきゃ、
気の済まない人だから…」
「だから…」
「精々振り回されないようにね」

折角のアドバイスは無駄に終わった。
判ってはいたことだけど、オイラは天使様の想像以上の気ままぶりにヘトヘトにされた。
それでもようやくたどり着いたアイスランドの氷河地帯を駆け回る天使の姿を見ていると、この光景をほぼ独占
していることを、幸せに思う自分に戸惑ってた。

「!!」 明らかに能力者だとわかる男達が5、6人ばかり、接近してきている。
オイラはそいつらの前に立ちはだかった。

「ちょっと待った。 なっちの邪魔はさせないよ。
オイラの能力は、アンチサイキックつまり能力の阻害。 キミたちに勝てるかな」
命を奪っていいなら、30秒ぐらいで片付きそうだが、それはやらないことにした。
だって天使の遊び場に、むさ苦しい野郎どもの屍骸は似合わないからね、キャハハハハ。
                                         (銀翼天使にホゼナント)





















最終更新:2012年11月27日 08:21