(18)465 名無し募集中。。。 (れいなとリンリン)



皆さんはリゾナンターの中で超能力抜きのガチンコで一番強いのは誰だか分りますか。
亀井さん、道重さんが問題外なのは誰でも分ります。
当然、愛佳でもありません。新垣さん・・・違います。久住さんは口だけは達者ですが
大したことあらへんでしょう。

やはりリーダーである高橋さん、あるいは暴走族を壊滅させたという田中さんを
思い浮かべるでしょう。体格からしてジュンジュンだと言う人もおるかもしれません。
残念ながら皆さん不正解です。

正解は・・・




喫茶リゾナントの近くに小さな公園がある。
ブランコと砂場ぐらいしかない小さな公園。
午後11時、街頭の光も十分当たらない暗闇の中、そこに田中れいなの姿があった。

真夜中の公園は彼女のトレーニング場。彼女はほぼ毎日ここで汗を流し
今日もいつも通りのメニューを消化した。

普段ならここで帰って眠りにつくのだけだが、今日は特別な日。
彼女の目にはまだ闘志の光があった。

数分後、息もすっかり整った田中の背後から
真夜中の公園にはあまりにも不釣合いな高い声が響いた。



「田中さんお待たせシマシタ」

そこにはお決まりの黒の戦闘服を纏ってニコニコ笑うリンリンが立っていた。

「別に待っていないと、タイミングバッチリっちゃ」

「アヤー、それはヨカったデス」

「れいなは大丈夫やけん、リンリン準備運動は」

「デハ、少しダケ」

そう言うとリンリンは軽く屈伸をして、深呼吸を一つするとニコッと笑い

「さぁ始めまショウ」 と言った。

先手必勝、田中はリンリンが喋り終わるか終らないかの一瞬をついて飛び出した。
一気に距離を詰め、勢いよく右の拳をリンリンの顔面へ一直線に放つ。
慌てる様子もなくそれを少しだけ体を傾け紙一重で避けるリンリン。
まるで避けられるのは初めから分っていたかのよう、田中は
ひるむことなく続けざまに左右の拳を次々に突き出していく。


先程から繰り出されている田中のそれは、一発でも当たれば
必殺のダメージを与える事が出来るものばかりだが、リンリンは
さほど苦でもなく涼しい顔で右へ左へ避けている。

「こんな目の前にいるのにどうして当たらんと」

田中は心の中で叫んだ。いままで多くの敵を倒してきたこの自慢の拳。
それがかすりもしない。
その動揺は体の動きにもしだいに影響を与え、繰り出される攻撃は雑になり
とうとう速度も落ちてきた。
何とか盛り返そうと渾身の蹴りを仕掛けた瞬間、







リンリンの反撃が始まった―。






リンリンはその蹴りをスルリとかわすと田中の体の真ん中に陣取った。
彼女にいつもの笑顔はない真剣そのものだ。
やばい、そう思った瞬間、田中は体の至る所からほぼ同時に激痛を感じた。
リンリンが高速で突きを数発打ちこんだのだ。
田中は「うっ」と声をもらし、堪らず前方に倒れそうになった。

が、リンリンはそれを許さない。前かがみの体に合わせて体当たりを当てると
田中の小さな体ははるか後方に勢いよく吹き飛んだ。

砂場に背中をしこたま打ちつけた田中は呼吸もうまく出来ず、「うぅ、」と声をもらした。
さらに、先ほどうけた突きのダメージも重なり身動きも取れない状態。
決着はついた。


リンリンの圧勝だった―。


「田中さん大丈夫デスカ?ワタシ、ちょっとやり過ぎマシタ」

あわてて駆けよって来たリンリンが不安そうに顔を覗き込む。

「気にせんでいいけん、本気でやってってお願いしたのはれいなのほうやし
 れいなも本気でやったから・・・にしてもリンリン・・強いっちゃね・・・」

大の字で倒れている状態で必死で声をしぼりだしそう言った。
それを聞き再び元のニコニコ笑顔に戻ったリンリンは田中を褒め称えた。

「田中さんもスゴク強いデスタ。まるで動物と戦ってるみたいデスヨ、ワタシ
手加減出来ませんデスタ」

やはり傷が痛むのか田中は少し苦い顔をした。



『リゾナンター』
瞬間移動、念動力、予知、治癒・・・様々な超能力を持った彼女達の中において、
リンリンの存在は異端だった。
彼女は超能力を持っていない。ただし、普通の人間とも明らかに違っていた。

中国の彼女の生まれ故郷に伝わる武術を3才のころから祖父と父によって習い
修練を積んでいた。リンリンの身につけた技術は齢17にして達人のそれに達し
ていた。

ある日、そのことを知った田中はリンリンに手合わせを申し込み過去一度、
今回で二度目の試合を挑みいづれも負けている。

「私にはジュンジュンや皆さんの様な力はアリマセン。ただこの身につけた
技があるだけデス」
最初の手合わせの時に言ったリンリンの言葉が印象に残っている。



「田中さんまだ痛みマスカ」

「ううん、もう大丈夫」

多少、体にけだるさは残るものの先ほどうけた打撃のダメージはもうほとんど
なくなっていた。あぁは言っていたが手加減をしてくれていたらしい。

「念のため明日道重さんにもみてもらいまショウ」

「うん、ありがとう」

「では田中さん、早く帰りまショウもう少しで私の大好きな深夜アニメが始まりマス」

リンリンは田中に肩を貸しながらおどけてそう言った。

「リンリン、直ぐに追いつくけんね」

そしていつか追い抜いてみせる・・・。心の中でそう誓うと同時にリンリンを見た。
彼女は変わらずにこやかな笑みをしている。

田中れいなの闘志の光はまだ消えない。

二人はゆっくりと喫茶リゾナントに向って歩き出した。

 ―完―





















最終更新:2012年11月26日 22:04