(17)838 『Change the World 』



『この世界ももう終わったな』 天空を覆う漆黒の闇が呟いた。

地上には破壊と殺戮が蔓延し、生命の灯も途絶えようとしていた。

『ちょっと待てや』 私は精一杯大きな声を上げた。
ちょっと裏返ってオカマ声になったけどかまへん、言う時は言ったる。

『勝手に終わらすなや、うちの世界を』

『お前は…、そうか共鳴する娘。達の最後の生き残りか。 見ての通り終わった、ジ・エンドだ。
この世界は私が創造し、私が消費し、私が退屈して、私が終わらせる。 
言わば製造者責任というやつだな。
今度創る世界は、…二本足のヒトでなく別の種族に任せてみるか』

『あぁ、お前が神様って奴か。 ほんなら聞けや。
確かに世界なんて終わらすんは簡単や。 何と言っても世界なんて全て、あんたの、私の、
そして世界中の人間の脳味噌の中で出来てるんや。
あんたやわたしが今こうして存在して視ている世界の姿、それは世界の発している光や
光が反射した情報を目の網膜で感知して、その情報を脳で処理、再構築した上で「これは世界や」って
認識してるだけや』

『……』

『それがあんたにとっての世界であり、あんたにとってはその世界が全てや。
あんたの視てる世界の夜明けが例え闇色をしてても、それは別に構わへん。
夜と朝の違いさえ解ってれば
色んな人が色んな違いを認め合って一緒に生きていけるなら』

『それでもあんたにとって、世界が絶望に満ちたもんなら、変えたらええ。
終わらせたらええんや、あんたの世界を。 でもあたしは世界に失望してない、絶望してない。
そやから守る、守ってみせる、あたしの世界を』

『愚かな、脆弱な人間がたった一人で何が出来るというのだ。』

『大したことは出来んなあ、確かに。 でもあんたの目を覚ましてやることは出来る。
あんたを悪い夢から引きずり出す事はできるやろ。 ええか、あんたが感じてる世界は
あんたそのもの。
あんたが世界が終わったと感じてるということは、あんた自身が終わってるという事や
見てみい、自分の体を。
綺麗な闇色がボケてきて、向こう側から光が透けてきたわ。
光に照らされたあたしの世界はちっぽけで、薄汚くてうんざりするわ。
でもあたしはあたしの世界が好きやから、明日も明後日もここで生きていく
心臓が止まって、脳が死んで、灰になって、土に還っても』

『グワァーーーッ
馬鹿な、こんな小娘に、こんなガキにーッ』


……
アラームで目が覚めた。
携帯のディスプレイを見たら、午前5時を越えた辺り。
カーテン越しに見える外は、昇り始めた日の光で仄かに明るい。
肌寒さを感じるのは、もう11月になったから。

この頃嫌な夢を見るのは、嫌なニュースをよく見るからだろうか。
食品は汚染され、子供は命を奪われ、老人は冷遇され、貧困は増大し
政局は混迷を極め、未来予測には明るさを感じず

私の見た夢が、未来のこの世界に起こる出来事なのか、それとも下向きな潜在意識の
具象化したものかは、はっきりしない。
唯一つだけいえるのは、世界は変えられる。
今「私」が存在している「世界」とは、「世界」を感じている「私」そのものだから。
「私」が変わることで、「世界」も変わっていく。
そのためにも、変わらなくては。
今日の私は昨日の私よりも強く、明日の私は今日の私よりも強く

もう一度夢の中に戻りたいという誘惑を振り切って、走りに行こう。
まだ辺りは暗いけれど、段々と日の光が差してくるだろう。
そこは薄汚くて、悪意に満ちたちっぽけな世界。
でも私はこの世界に絶望していない。
何たってまだ15歳の女の子やから。




















最終更新:2012年11月25日 22:00