(16)854 『大切な人を守るために…』



空の高い秋空に
ただ想いを馳せて
人知れず涙流した時に
思い浮かべたあの笑顔が見たい

そう思って今を生きている



  ◇◇



触れた髪の柔らかさも
小さくて温かい手も
鮮明に残って

優しい君の笑顔が
心を惹きつけてやまない


手を差し伸べてくれた君が
光へと連れていってくれた



  ◇◇



荒廃した土地の片隅に
ひっそりと佇む喫茶店で
カフェモカを用意して待っている

そこのカウンター席に座って
両手でカップを包んで飲んでいる君の姿が
目に浮かぶようで

もうすぐ扉が開かれる
そしたら笑顔で君を迎え入れよう


  ◇◇


もう離れられないと思っている
それぐらい君のことが大切だから

君が安らげる場所であってほしい
常に隣で笑いあって 温かい気持ちでいてくれたら
それでいいんだ

もう離れないから 泣かないでよ
流す涙も包み込めるほど 強くなるから

君の笑顔が見たいんだ


  ◇◇


心を抉られた時に
抱きしめてくれたのは君だった
一人で泣いている時に
手を握ってくれたのも君だった

弱さを見せることができるのも 君だから
素直になれるのも 本当の笑顔で笑えるのも
傍にはいつも君がいるから

なんでこんなにも大切に思えるのかな
ありえないくらいに、君のことが大切だ。


  ◇◆


裏切りの上で成り立っていたものが
少しずつズレていった

そこで感じ始めた皆の優しさが
心の奥に届き始めた

初めて知った仲間の大切さが身に染みて
人知れず涙した夜が何度もある


そんな時に
理由も知らずに隣にいてくれたのは
アナタだった


  ◆◆


扉を開けて一番に視界に入るアナタの笑顔が
心の奥に優しく入ってくる

香るカフェモカが置かれているから
待っていてくれたのかと
その好意がとても温かく感じる

最初はくすぐったい感じだったのに
今では当たり前のようになったこの日常が
裏切りの行為も忘れさせてくれる


  ◆◆


涙を見られたときの心情は
とても複雑だった

裏切りの行為と皆の優しさを天秤にかけて
日々を生きている自分に嫌気が差して

そんな理由も知らずに
アナタは隣に座って何も聞かずに傍にいてくれた

その優しさに触れて
涙が止まらなくなって
アナタは肩を抱いてくれた


  ◆◆


この世界から闇が消えるようにと願いを込めて戦う皆の最前線で
仲間を傷つけたくないという優しさと闇を打ち破る強さで
常に立ち向かっていくアナタはかっこよくて

でも 実は泣き虫なアナタが
影で泣いているところを見かけて
傍に駆け寄って 手を握った

そのときのアナタは驚いていたけど
その後すぐに困ったように もっと涙を流し始めて
すがりつくように泣いていた記憶がある


  ◆◆


裏切っていることなど すでに頭から離れていた


ただアナタの傍で この涙が流れないように
アナタを守ると誓ったこの時を 今でも忘れない

アナタの悲しみが流れてくる
それすらも包み込んで アナタを守ろうと誓った

だから傍にいさせて
この裏切りの行為が終わる時まで


  ◆◇


あの時見せてくれた笑顔の裏で
大切だと思ってくれていたことを
今はまだ知らない





















最終更新:2012年11月25日 18:29