(16)135 『共鳴修学旅行~リゾナンター大移動~』



共鳴修学旅行~リゾナンター大移動~


修学旅行が本格的にスタートする前から激しい精神的ダメージを負った愛佳

「いっその事、ダークネスの襲撃とか来んやろか…
そしたら修学旅行が延期になって…新しい日程は
絶対秘密にしとったらバレへんやろうし…」

思わず不謹慎な事を考えてしまうのだった
しかし、肩に感じる小さな振動にすぐさま現実に引き戻される

「どうしはったんですか?新垣さん…」

隣で出席簿に顔を近づけて見つめる里沙の様子は尋常ではなかった
目は大きく見開かれ、出席簿を握る手は小刻みに震えていた

「ちょっと…愛佳…こっ…これ…」



震える里沙の指が示した箇所には3組出席番号1番の友人の名前

「えと…その人がどうかしましたか?」
「こっ…この名前…」

その名前は先ほど愛佳と仲良くベンチに座っていた女子生徒のものだった
いつまで経っても自身の名前が呼ばれない事を不思議に思っていた出席番号1番の友人が心配そうに声を掛ける

「あの…いいんちょ?安倍ですけど…」
「のわっ!ああああああ安倍さん?!」
「はい、安倍ですけど…出席取らないの?」
「あああ安倍さん!しししし下の名前は?」
「夏子だけど…」
「なななな夏子ぉ?!“あべなつ”まで一緒じゃないのぉぉぉおおお!」
「ちょ…新垣さん…なんやようわかりませんけど、落ち着いて下さい」

驚きのあまりものすごい関節可動ではちゃめちゃなポーズを繰り出す里沙
そんな里沙を戸惑いながらも愛佳はとりあえず抑えつけた




「なぁ愛ちゃん。“あべなつ”ってなん?」
「よぅ知らんけど、たぶん里沙ちゃんが好きなアイドルさんやろ」
「意外とアイドル好きなんですよね、ガキさん」
「小春、“あべなつ”ってアイドル知っとぉ?」
「んー…んー…小春は知らないです」
「小春が知らんって事は…昔のアイドルさんなんかのぉ?」
「ガキさんは趣味趣向まで昭和なの」
「キット、マンガの主人公ですヨ!ワタシもニガキさんもマンガ大好キです!」

里沙の憧れであり目標であり自身の存在意義でもある安倍なつみ
その名前に酷似した名前の持ち主を目の前に、里沙は興奮していた
全身でそののっぴきならない興奮状態を表現する里沙と、
その能力をもってしてでも予測不可能な里沙の動きに翻弄される愛佳を
リゾナンター達はただ遠くから眺めるしかなかった




「よーし!全員揃ったクラスから新幹線に乗り込んで行けー!」

学年主任の声を合図に周りの制服姿がゾロゾロと移動を始め
停車している新幹線の中へと吸い込まれて行く

「リーダー。ワタシたちモ行ク」
「でもあーしらまだ名前呼ばれてへん」
「どうせさゆみ達は揃ってるんだから先に行ってても良いと思うの」
「それもそやの。ほな先に乗っとこか」

やや薄情気質なリゾナンター達はダラダラと動き出した
れいな以外は…

「ふんっ!…ふんっ!!…なん?れなのカバンがばり重いっちゃけど?」

れいなの着替と夢と希望と愛用のきらりちゃん枕が詰め込まれた
キャリーバックが何故だかピクリとも動かない
れいなは眉間に縦線を刻みつけて振り返った



「ちょっ!絵里?!人のカバンの上に座るんやなかと!」
「だってぇ~絵里ちゃん眠かったんだもん~」

れいなのキャリーバックの上に無断で座ってHOTのお茶を飲んでいる絵里

「眠いとかそんなんは関係なかろーが!降りぃ!」
「いいじゃん。座るのにちょうど良いんだよね、れーなのカバン」
「人のカバンに座るのもどうかと思うし、れな達今から移動せんといかんやろ?絵里、降りぃ」
「れーなのカバンコロコロ付いてるんだからさぁ、そのまま運んでよ」
「無理やし」

一向に進まないれいなと絵里の移動
そして3組の出席確認

見かねた愛がホームや新幹線の車内に散らばった
3組全員の出席を精神感応を使って確認して学年主任に報告
新幹線は無事、定刻通りに発車した

どんどん速くなる窓の外の景色をながめながら愛佳はポツリと呟く

「高橋さんは愛佳の心は読めはらへんのやろか…」




















最終更新:2012年11月25日 18:01