(15)564 『Master of Total Memory』



―魂を揺さぶられる闘いがそこにあった


いつからだろうか…自分の持つ不思議な力に気づいたのは…
いつからだろうか…皆の為にそれを使おうと決心したのは…

そう、あの日。
少女たちの消えゆく闘いの記録に触れた始まりの日からだ…

この戦いを、忘れてはならない
この記録を時の彼方に追いやってはならない
心が熱くなり、気づけば指が踊り、言葉を紡いでいた


―それが始まりだった



少女たちが闇と闘っていた 私達はそれを知らなかった
知ることが出来たのはそう、少女たちの煌めきを記した、伝令者の言の葉があったから

彼らには彼女たちの闘いを、時空間を越えて知ることの出来る力があった

それら全てには、彼らの想いが詰まっていた
発信に時間も場所も構ってはいられなかった
断片的に空間を埋める、時系列を無視した命がけの伝令

私達は送った
少女たちへの励まし、伝令官への労い…
しかし皮肉にも、言葉は言葉による千の時を越えられない

絶望が我々を覆うかに見えたその時、彼女の能力が差し出された

  記録に光が射し、切り取られ、真空状態の中、時を留める
  既に死を迎えた言葉は再生され、陽の目を見る

それは彼女の時を力を引き換えにした、いわば自己犠牲
しかし彼女はそれを喜びとし、また良しとした。




自分たちの声が、未来に繋がっていく…
彼女の決心は、伝令者に更なる勇気を与える

 ある者は連なる光を ある者は一瞬の輝きを
 ある者は喜びを ある者は悲しみを
 ある者は微笑みを ある者は恐怖を
 ある者は裏切りを そしてある者は許しを       

 自分の捉えた輝きを、力の限り叫んだ

    それは新たなる共鳴

闘う彼女たちには届かないのかもしれない
もう、それは既に起きたことなのかもしれない
勝敗は決しているのかもしれない
世界は闇に覆われてるのかもしれない

それでも、人々は叫び続けた 
自分の名前を名乗ることも忘れ、蒼き正義に共鳴した





彼女は選び取り、集約する
時に自身もその伝令者となりながら―

少女たちの軌跡は名前を与えられ、また安住の地を得た

そしてそれを後から見た者がまた一人、また一人、と共鳴する

彼女の名は、

  【Master of Total Memory】


人々は彼女を敬意と親しみを込めてこう呼んだ

     『まとめ』ちゃん


共鳴の灯は今日も消えない




















最終更新:2012年11月25日 17:36