(14)158 『喫茶リゾナントの夕間暮れ。』



喫茶リゾナントの夕間暮れ。
窓の外からは、昼間よりはいくらか控えめになったセミの鳴き声。
厨房の奥からは、カチャカチャと食器を洗う音と、時折聞こえる楽しげな笑い声。

団体客が帰ったばかりで、このあとはお客さんもそうそう来ないだろうと、愛とれいなは
ふたりして洗い場に引っ込んでしまった。
広すぎず、狭すぎないリゾナントのフロアには、さゆみとジュンジュンがふたりきり。
とっくに話題は尽きて、特にやることもなくて、さゆみは黙々とバナナを食べるジュンジュンの
顔をぼーっと眺めていた。

「ジュンジュンってさぁ、ほんとにバナナよく食べるよね」
「ジュンジュンの獣化、たくさんエネルギー使いマス。いつダークネスが襲ってキテもいいヨウニ、
普段からエネルギー補給してるデス」
「ふ~ん。でもさぁ、ダークネスが襲ってこなくて獣化する必要がなかったら、
補給したエネルギーはどうなっちゃうの?」

答えの知れた問いに、ジュンジュンの口の動きが一瞬止まる。
が、すぐにまた何事もなかったようにはむはむとバナナを食べはじめた。

「ジュンジュンの血となり肉となりマス」
「ジュンジュン、そういうの日本語で“太る”って言うんだよ」
「ソレ、道重サンが言いマスカ?」
「うん、言うべきじゃなかったね。反省してる」

そう言って、さゆみはテーブルの上に散乱するデザートの空き皿に目を落とし、
……大仰にため息をついた。

窓の外からは、昼間よりはいくらか控えめになったセミの鳴き声。
厨房の奥からは、カチャカチャと食器を洗う音と、時折聞こえる楽しげな笑い声。
そんな、喫茶リゾナントの夕間暮れ。




















最終更新:2012年11月25日 15:57