(13)511 『かしましいとは女が三人』



「はい、はい、2日の夜ですね。大丈夫です。えぇ――失礼します」
「・・・どうしたん?愛ちゃん」

長い電話の後、受話器を元ある場所に落ち着けた愛。
そして、事もなげにこう言ってのけた。

「取材されるんやって。喫茶リゾナントが」

その日、リゾナントは雷が落ちたような騒ぎになった。


「れーなその撮影の前の日、美容院予約するっちゃ!」
「さゆみも取材されたーい!」
「絵里ちゃんもー!おめかしするぅ」


「えーーーい、うっさぁーーーーい!!」




結論から言うと里沙の落とす雷はれいな・さゆみ・絵里の作り出す騒音には勝てなかった。
諦めた里沙は耳を塞ぎ、大音量で騒ぎ立てる3人の被害から一人逃れる愛のもとに速やかに移動するしかない。

「愛ちゃん、アレどうにかして」
「うぅっ、まさかこんなに浮かれるなんて思ってもなかったんよー……」

里沙にかかればもう既にアレ呼ばわりである。
事の流れはこうだ。

地域密着型のタウン誌編集部から連絡があり、連載企画でリゾナントが取材されることになった。

以上。たった一行。これだけである。
それなのにどうしてここまで盛り上がれるのであろうか。

「あのー、盛り上がってるところ悪いんやけど人物の撮影はないと思う……んやけど……」
「思う、じゃ駄目なんですよ!さゆみの可愛さをアピールするには絶好の機会なんです!まさにチャンスなんです!」
「絵里はぁー、巻き髪とストレートとどっちがいいですかねぇ?」
「れーなだって店員っちゃよ!ということで取材には同席したいけん、よろしく~!」

駄目だこいつら、早く何とかしないと―――愛と里沙の本心がそう告げる。



  *  *  *

さて、あの混乱から数日。
喫茶リゾナントでは愛が約束した日、取材は無事、滞りなく収録された。
れいな達は言い合いをしていたことすら忘れ、遊びに行ってしまっていた。

あまりの五月蝿さに心の中のなにかがぷちっと切れてしまった里沙が洗脳によって
3人の記憶・・・数時間分を綺麗さっぱり抜き去り改変したからである。
能力の無駄遣いと言うなかれ。
問題解決のための最善手だったのだ。合掌。


但し、その平穏も長く続かなかったことを付け加えておこう。
そう、今日は発売日である。

再びリゾナントは雷と台風が同時にやってきたような騒ぎになった。

























最終更新:2012年11月25日 15:42
添付ファイル