(13)430 名無し募集中。。。 (暑さのせい)



今年一番の暑さを記録したある夏の日の昼下がり

今日は仕事がお休みなので、いつもより早い時間に喫茶リゾナントを訪れた里沙
しかし、お店の扉には見慣れた文字で“臨時休業”の張り紙
不審に思いながら里沙は扉を開けた

すると、途端に顔に押し寄せて来る熱風

「熱っ!なぁに?なんでこんなに熱いわけ?!」
「ぉお~…里沙ちゃん…」

カウンター席でテーブルに突っ伏してぐったりしている愛が力なく手を振った

「一体どーしたのよ?」
「クーラーが壊れたんやよ」
「うっそぉ~!なんでぇ?」
「全部小春ちゃんが悪いのっ!」
「うぉっ!」

人の気配が感じられなかったソファー席から放たれたいきなりの大声に
里沙はシェーのポーズで驚いた

「さゆみん…居たんだ…」
「絵里も居ますよ?」
「うぉぉっ!!」

普段、人が居るはずのない、レジの横に置かれた観葉植物の後ろから
いきなり現われた絵里に里沙はJOJOポーズで驚いた



「そーんな所でなにしてんのよ!!」
「ここは日陰で涼しいですよ?」

と言う割に、額に薄っすらと汗を滲ませている絵里

「ってか、クーラーが壊れたのは解ったけどさぁ…」

ぐったりした3人の様子を冷ややかな視線で眺めながら里沙は疑問をぶつけてみる

「それと小春がどんな関係があるって言うのよ?」
「久住さんが壊したんですわ…」
「うぉぉぉっ!!!」

里沙が立っている傍のテーブルの下からにゅぅっと現われた愛佳に
里沙は今ではすっかり懐かしい荒川式イナバウアーのポーズで驚いた

「それは昨日の出来事でした…
 今日みたいにあっつい熱い日の出来事でした…」

愛佳は遠い目をしてポツリポツリと語りだした…




─それは暇を持て余した夏休み中の学生達と
 たまたまオフだった現役アイドルが集う喫茶リゾナントで起こった


「暑い暑い暑い暑い暑い暑い暑いーーーーーーっ!」
「もぉ~…小春ちゃん、うるさいの」
「今、冷えたアイスティー出したるから、もうちょっと待つやよー」
「この炎天下の中、駅から走ってくるからそんなに暑いんやないですか」
「だってだって!早く涼しいお店に入りたかったんだもん!」
「汗が引くまでの辛抱ですよ?」
「暑いよーっ!小春、もう我慢でーきーなーいー!」
「うわっ!久住さん!いきなり発電せんといてくださいよ!」
「ちょっと小春ちゃん?!なんで能力、発動してるのっ?!」
「小春のチカラでクーラーパワーレボリューショォォォーーーーン!!!!!!」
「こっ小春!やめるがし!!」
「バッ…バカーーーーーッ!!!!」



 ┣¨┣¨━━━━━━━━━━ン!!!!!!!!!!!!





─・・・

「クーラーが爆発したんやよ…」
「こ…小春…」

里沙は絶句した
残る4人にはもうそれ以上多くを語る気力も体力も残されてはいなかった…

店内に重く暑苦しく湿度高めな沈黙が漂う

そこに軽快な電子音が鳴り響いた

「れいなー携帯鳴っとるでー」
「え?れいなも居るの?」

そう広くはない店内を見回す里沙
しかしれいなの姿は見当たらない
と、その瞬間、誰も居ないカウンター内の冷蔵庫が勢い良く開いた

「うぉぉぉぉっ!!!!」

里沙は驚きのあまり仰け反りすぎて派手に尻餅をついた

「ふぃぃ~」

冷蔵庫の扉を内側から蹴り開けて、ひとり涼しげな顔で出てきたれいな
口の中の氷をガリガリ噛み砕きながら、自分の携帯に手を伸ばす



「入るんだ…冷蔵庫に入れるんだ…」

呆然としながら里沙は呟いた

「ガキさんも入ると?」
「いや、遠慮しとく…」
「あぁっ!田中さんっ!」

ニシシと笑うれいなに、まだ半分テーブルの下に潜ったままの愛佳が叫ぶ

「なん?」
「そのメール、見たらあきません!見る前に削じょ…」

何かが視えたらしい愛佳が慌ててれいなを制する

「なん?もう開いてしまった…と…」

从*´ ヮ`) <……。

从;´ -`) <……。

从;` -´)<……。

「た…田中っち?」

携帯の画面を見つめるれいなの顔色がみるみるうちに変わって行く

「ぁ…アカン…田中さんが…せやから見たらアカンて…」

愛佳が里沙の足元で頭を抱える




「こっ…こはっ…」

声にならない声を漏らすれいなは携帯を持つ手をワナワナと震えさせる

「田中っち…どうしたのよ…」
「れいな?どないしたんや?」

从#` ロ´)ノシ<こはらぅ!シバく!今すぐシバいてやるったい!!

鬼の形相のれいなはそう叫んで持っていた携帯を放り投げた
そしてカウンターをヒラリと飛び越えて、店の入り口に向かって走り出した

「あきません!田中さん!早まったらあきません!!」
「ぇえぃ離せ愛佳!れいなは!れいなはっ!アイツを今すぐシバく!」

愛佳がれいなの右足を掴んで必死に引き止める

「落ち着いてください田中さんっっ!!」
「あんなメール見て落ち着いてられるかっ!離せ!離すったい!!」

ちょっと半泣き入ってる愛佳であったが、ひとますブチ切れているれいなは愛佳に任せて…
里沙は店に真ん中に転がったれいなの携帯を拾い上げた

「田中っちがあんなに切れるメールって…」

一緒に覗き込む愛と絵里とさゆみ




From:ノリo´ゥ`リ
Sub :あっついですかぁ~?
Msg :小春は今テレビ局の楽屋です☆クーラーがきいててキモチぃぃ~☆



「あー…これは田中っちが怒るのも無理ないよ…ね…ってアレ?」
「「「………。」」」
「ちょっ…みんな、どうした…って、まさか…」

「小春…エエ根性しとるやないか…」
「こんなにさゆみ達が苦しい思いをしてるって言うのに…」
「絵里…もぅ…我慢の限界ぃぃぃぃぃ~~~~~っ!」
「れいな!リゾナントカー出動やっ!」
「愛ちゃん?!」
「こはらぅ!首洗って待っとるっちゃよ!」
「田中っち?!物騒だから!」
「さゆみ達が必ずタマ、とっちゃるけぇーのぉ!」
「さゆみん?!それ、ほんとシャレになんないから!」
「直行ぉ!テレビ局直行ぉっ!!」
「カメまで乗っかってんじゃないわよ、このぽけぽけぷーがっ!!」




ブチ切れた4人は店の扉をぶち抜いて出て行ってしまった…

「に…新垣さぁ~ん…」

4人に背中を踏みつけられた愛佳がうつぶせのまま、か弱い声でつぶやいた

「うん…みっつぃーは良くやったよ…」

顔を上げられない愛佳の頭を里沙は優しく優しく撫でてあげた

「新垣さん…愛佳…この先が視えて…グスッ…」
「いいから。みっつぃーは気にしなくていいから…」

愛佳の流した涙のせいで、店内の湿度がちょっと上がった




















最終更新:2012年11月25日 15:29
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