(12)710 名無し携帯屋。。。 (切ない愛美貴)



月明りが照らす夜道
高橋愛は一人空を見上げていた


愛は夜空が綺麗な時こういった事がたまにある


今日も喫茶リゾナントの閉店後の後片付けが終わり集まっていたリゾナンターのメンバーに一言告げて外に出て来た


10分程度で帰って来るし毎度の事な為、メンバーも付いて行ったりはしない



しかし休む事なくダークネスと戦い、喫茶リゾナントで働いて愛の疲労は極限まで達していた





「………」


ふと空を見上げ愛は想う

自分のさだめられた運命
i914という人間兵器
これからの未来
この綺麗な夜空を
いつまで自分は見ていられるのだろうか


考えれば考える程
答えなど出るはずない



未来が視える愛佳ですら
見えないのに


「…戻るかの」


空を見上げるのをやめ身体を反転させた




そしてハッとする

「やっと気付いたか」

「……美貴ちゃん」

疲れているせいか
ミティが後ろにいるのに全く気付く事が出来なかった

「……ッ」

いつから後ろにいたのか
ミティの目的が何か…
戦闘の構えを取りながら必死に考えた


「別にそんな警戒しなくても良いじゃん」

「敵に警戒せんでどうするんよ」

「まぁその割にはミティじゃなくて美貴ちゃんって呼んでるけどね」

「あ…」

「ったく…相変わらず抜けてるんだから愛ちゃんは」


小さく笑うミティ
その心に秘めている
ものは一体なんなのだ
愛は少し焦った




「安心しな。今日は戦うつもりないから」

「……」

「ホントだって」


たしかにミティからは何の殺気も感じとれない

しかしそれだとある一つの疑問が生まれる


「…じゃあ何しにきたんよ?」


当然だろう
敵である彼女が
一体どうして?


「ちょっとね」

「?」


一息ついて…
ミティは愛があまり聞きたくない単語を口にした





「i914の事」

「ッ…」

「リゾナンターのメンバーは知らないんでしょ?」

「……」

「やっぱり」


答えは聞かなくても愛の表情から理解出来る


「別に言おうが言いまいが美貴には関係ないけどね。でもそんだけ一人で悩む位ならみんなに言えば楽になるのに」


他人事といえば
他人事に聞こえるだろう


「美貴ちゃん…」


だが愛にはその言葉にひどく優しさを感じた


しかし





――トン!


「ッ…カッ」

ミティの手が愛へとのび
手刀が首にキレイに入り愛はその場に倒れ意識を失った


普段ならこんな攻撃で愛は意識を手放さないのだが疲労とミティに対する油断が重なったのだろう


「…そうやって敵である美貴にスキを見るのが…愛ちゃんの甘い所」


ミティは淋しそうに微笑み愛を抱え、後ろを振り返る


「…やっと来たか」


振り向いた先から帰りの遅い愛を心配して探しに来たれいなとさゆみがいた





「愛ちゃん!」

「愛ちゃッ…ミティ!愛ちゃんを返せ!」

「ほら」

「へ?」


呆気なく愛を差し出されマヌケな声をあげるれいな

そしてそんなミティに警戒しながら静かに愛を受け取り一応治癒能力を与えるさゆみ


「キツそうだったから寝かせてあげた」

「寝かせてあげたって…」

「れいな、重さん」

「な、なん…?」


れいなはミティが藤本美貴と呼ばれていた時の雰囲気と似ている事に戸惑いを覚えた

そして恐る恐る
ミティの言葉を待った




「愛ちゃんは最強の能力者かもしれない。だけど"普通の人間"なんだよ」

「ッ!!」

「だから傷つく。悩む。疲れる。泣く」

「……」

「しっかり見てあげて」

そのまま踵を返し
姿を消そうとしたミティ

「藤本さん!」

「あ?」

「貴方は…敵じゃないんですか?」

「敵だよ」

「ならどうして…愛ちゃんを…」

振り返らず
ミティは答えた

「別に。ただ…」

―愛ちゃんの悲しみが美貴にこだましただけ

そして闇へと姿を消したミティ。れいなとさゆみはただ…黙る事しか出来なかった






















最終更新:2012年11月24日 21:15