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愛ちゃん、決めたよ私。
もう決めたの。もう迷わないよ。
あのね…
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「ガキさん?何やっとんの?」
「ちょ、ちょっとまだ見ないで!」
「え…あぁ。じゃ向こう行ってるわ」
そう言うと愛はカウンターの方に戻っていった。
里沙は一人部屋に篭って何か作業をしている。朝からずっとこんなかんじだ。
愛が話しかけても、切羽詰っているのか会話にならない。
「あれ、新垣さんどうしたんですか?」
「んー…あたしにもよく分からん」
学校が終わった光井が喫茶店に来て、新垣を見て言った。
分からない、と愛が言うと、光井は目を閉じて深呼吸を何度かした後にゆっくりと目を開けた。
光井はこれから起こるであろう「未来」を視たのだ。
「あぁ…なるほど」
「何?何が視えたん?」
「ちょっとこれは…言わん方が…」
「えー?何よ?気になるやんかぁ!」
「いや、言えないです、愛佳にはムリ!!」
結局何を視たのか言わなかった光井は、そのまま帰って行ってしまった。
愛は、自分に言えない未来などあるのかと、納得出来ないまま仕事をしていた。
里沙は相変わらず部屋から出てこない。
「ヒマやな…」
光井は先ほど帰ったし、他のメンバー達はそれぞれ学校やバイトをしている。
今喫茶店には愛と里沙しかいない。
しかし里沙に部屋を追い出されたので、愛は一人で店番をしている。
あと2時間もすればれいながバイトに来るのだが、それにしても暇だ。
「里沙ちゃん何コソコソしとんのやろ」
何をやっていても里沙の事を考えてしまう。光井の言葉も引っかかってしょうがない。
一体何が視えて、何が自分に起こるのだろうか。
だがいくら考えてもそれは未来の事だから、愛には分からない。
「愛ちゃん」
「…ぁ、里沙ちゃん…」
ようやく部屋から出てきた里沙は、カウンターの方へ向かい愛に声をかけた。
しかし愛はどこか疲れきったような顔をして里沙を見た。
「何?なんか元気ないじゃん」
「…里沙ちゃんが相手にしてくれんで、いじけとった」
「うえぇ?いじけないでよぉ」
里沙は手に持っていた何かを愛の手のひらに乗せると、にっこりと笑った。
「はい。愛ちゃんにあげる」
「え…」
「さっきまでそれ作ってたの。大変だったんだよ?」
「これ…」
「お守り。いつも愛ちゃんに守られてばっかりだったしね」
あたしのもあるんだよ、ほら。
そう言うと里沙は自分のを取り出した。真ん中には「R」と書いてある。
愛は自分が貰ったお守りを見ると、「A」と書いてあった。
「これ、イニシャルかぁ」
「そうだよ。大事にしてよねぇ」
「でも…どうしてお守り?」
「え?それ聞いちゃう?」
「聞いたらダメやの?」
「ダメじゃないけど…」
何か特別な理由でもあるのだろうか。里沙はなかなか言おうとしない。
愛は黙ったまま里沙の顔を見つめた。ただ単純に理由が知りたくて。
何度か里沙と目が合うと、里沙は観念したように口を開いた。
「愛ちゃんが、あたしを守ってくれる分、あたしも愛ちゃんの事守りたいから」
なんてゆーの?お守り作って力を貸して貰おうかなぁ、なんてね。
照れながら言う里沙の顔は真っ赤だったが、それを聞いた後の愛も同じように真っ赤だった。
「今までたくさん助けて貰ったしね」
「そんな…あたしだってそうだよ」
「だから、これからも宜しく。愛ちゃん」
「こちらこそ宜しく。里沙ちゃん」
お互い恥ずかしくて、なかなか目を合わせることが出来なかったが、それでも嬉しかった。
里沙に、そんな風に想われていたことが。
心のどこかで、里沙との距離を感じていたから。
「なるほど。これは恥ずかしいな…」
確かに光井には言えないはずだ。そういえばあの時の光井は少し顔が赤かったかもしれない。
「どーしたの?」
里沙が顔を覗きこんでくる。
さて、どうしたものか。言ってもいいのだろうか。
一瞬、怒られるイメージが頭に浮かんだが、言ってみなければ始まらない。
「あのさ、交換しない?そのお守り」
「え?」
「いや、あの…あたしは里沙ちゃんを守るから「R」のがいいな」
「じゃあ…あたしは「A」を持つってこと?」
「うん。守ってくれるんやろ?」
「ま、守るよ?」
「あたしも、里沙ちゃんのこと守るね」
あのね愛ちゃん。
あたし守りたいモノが見つかったんだよ。
あ、モノじゃないね、人だったね。
あたし、愛ちゃんを守りたいなぁ。守れるかな?
どこまで出来るか分かんないけど頑張るね。
もっともっと強くなったら、みんなの事も守れるかなぁ?
初めてだったの。こんなに素敵な仲間に出会えたのは。
無くしたくないって思ったのは、初めてだったから。
今すぐには全てを話す勇気は無いけど…でも、ちゃんと言うから。
だから…もう少しだけ、待っててね。
最終更新:2012年11月23日 11:04