(14)622 『ホゼナントは勇気の言葉 』

(622 名無し募集中。。。 2008/08/31(日) 08:50:38.98 0
今や伝説となったリゾナンターの活躍によって、ダークネスが倒されて数年後
突如として勃興した闇の軍勢の攻勢によって、人類は大打撃を受けた
伝説の少女戦士達も、前の戦い以後姿を潜め、人類は抵抗も虚しく滅びの時を待っていた
これはそんな人類の最後の防衛戦を守る名も無き保全戦士達の物語

2人の少女がバリケードの前に立つ
聡明そうな少女と勝気そうな少女
聡明そうな少女の腰にはパステルカラーの手製のお守りが2つ
バリケードを守る3人の男、背丈は高、中、低
中ぐらいの男が責任者らしい

お嬢さんたち、この先は危険だよ
当局の許可証が無ければ通すわけにいかないんだ
早く帰った、帰った
…えっ、お嬢さんたちがあの伝説のリゾナンターの?
確かに年齢的には辻褄が合うけど、2人しかいないんじゃ…
えっ、2人じゃない、他の7人の思いを背負っているか…
といっても、2人は2人だ
いくらあんた達が超能力を持っていたって、敵いっこ…
怖いのかって、それは怖いさ
悪いかい、俺達は普通の人間だ、あんた達みたいに超能力を持っているわけじゃない
…あんた達だって怖いって
じゃあ何で勝ち目の無い戦いをしようというんだ
…未来の為にか
いつが最後だったかな、未来って言葉を使ったのは
あんた達みたいな可愛い子がね
わかったよ、行ってくれ、責任は俺が取るから
でも必ず帰ってきてくれよな、必ず
お嬢さんの為にこの防衛線は絶対守るから、必ず帰って…
…え、小春は?だって
わかったよ、小春ちゃんの為にもここは絶対守る、だから必ず…
ホゼナント



(624 名無し募集中。。。 2008/08/31(日) 10:33:54.48 0

闇の軍勢との絶望的な戦い
その最終防衛線を2人の少女が越えてから1時間後
1人の少女、というには大人な女性がやってきた
どこか顔色が悪く、時折咳き込んでいる

どうされました、ここは危険です
早く自宅に帰られたほうが…
え、あんたも伝説の…
ああ、さっき2人通って行ったよ、頭の良さそうなのと悪そうなのが
あんたも行くって…
こう言っちゃ失礼だが、あんた体調が悪そうだし、戦っても足手まといになるんじゃ
それで先の2人も置いていったんじゃないの…
え、違う
あんたの親友が、あんたの体調を気遣って、戦いのことを隠してたって…
俺もあんたの友だちの意見に賛成だ
帰った方がいいって
…仲間を放っておけないって
でもその様子じゃ…
あんたに秘策があるって…
…ふうん、傷の共有か
確かにそういう能力を使うリゾナンターがいたっていう話だが、それを聞いたんじゃますます通せないな
今のあんたの様子じゃ、自分で自分に傷をつけた時点で、もう助かりそうにないぜ
仮にあんたの親友の治癒能力者がかけつけたとしてもだ
あんたの死と引き換えに勝ったって、仲間は喜びやしないぜ
だから…
なんだ自傷用のナイフを渡すって
死ぬために戦うんじゃなくて、生きるために戦う
さっきとは目の光が違うな、ああ、行けよ
戦って、生きて帰ってきてくれ、それまでここは守っておくから

ホゼナント




(625 名無し募集中。。。 2008/08/31(日) 11:33:27.19 0
顔色の悪い女がバリケードを通って、30分後
泣きながら1人の女がやってきた
長い黒髪に雪のような白い肌

はい、止まって、止まって
え、身体の弱そうな女性…
ああ、さっき通ったぜ
何で止めてくれなかったの、って
俺達だって最初は止めたさ、止めたけど彼女は行くって
行かなくっちゃならないって

ああ、あんたは彼女の親友だね
渡しとくものがある
このナイフとそれに伝言がある
最後は喧嘩になったけど、これまでありがとうって
泣くなよ、こんな所で
こんなの遺言みたいだって…
わかるさ、あんたが止めた気持ち
俺があんただって、そうしたさ
でもどうしたって彼女は行ったさ
そういう顔してたよ
…そうか、あんたも行くのか
行って、連れ戻して、説教だって
そうだな、思いっきり説教してやるんだな
彼女も、先に行った2人も連れ戻してくれよ、あんたの逞しい腕ならできそうさ
はは、ひどいって
泣いてる顔も可愛かったけど怒ってる顔も可愛い、って照れてるよ、おい
うん、今度は仲間を連れてあんたの飛びっきりの笑顔を見せに来てくれよ、約束だぜ

ホゼナント



628 名無し募集中。。。 2008/08/31(日) 12:49:11.65 0
人類最後の防衛線を守る3人の保全戦士
背丈は高、中、低
彼らの前に2人の女がやってきた
背の低い女と高い女
低い女はクリンとした瞳で戦士たちを見つめてる
高い女はリュックを背負い、その中はバナナが詰まってる

はいはい今日は千客万来だなあ、お嬢さんたち、許可証…
許可証より先にパスポートプリーズってそんなもの無い、ああお二人は中国の人だね…
…あんた達も伝説の少女戦士アルか、って日本語上手じゃん
確か前の戦いが終わってから、祖国に帰ったって聞いてたけどな…
中国は国土が広いから、闇の軍勢の侵攻が及んでない地域もたくさんあるし、お国にいた方が
安全じゃな…
うわっ、火は危ないって火は、そっちの娘さんは唸り声を上げてるし…
うーん、それが仲間ってヤツだろって…
水臭いし、許せない…
そうだな、俺があんたらでも怒っただろうな…
でもあんたらに内緒にしていた気持ちもわかるな、何となくだけど…
違うって、そうじゃないって、ああわかるけどあの子らもあんたらには無事でいて欲しかったんだろ

ああ判るって、だから興奮して火をつけるのはやめてくれ、そっちのお嬢さんは服が破れかけ…
行ってくれ、行くんだろ…
…ああ規則を守るのも大事だが、それよりも大事なもんをあんたらは守りに行くんだろ
止める理由は無いね
えっ、このバナナをくれるの、ありがとうよ
中国語じゃこういう時は、何ていうんだっけな…
再見じゃなく、我会看到か
じゃあ我会看到、また会おうぜ
ホゼナント




630 名無し募集中。。。 2008/08/31(日) 13:34:00.47 0
人類最後の防衛線、3人の保全戦士が守っている
背丈は高、中、低
中ぐらいの男が、仕切っているっぽい
今は中ぐらいの男が1人、見張っている

6人の娘が決戦の地に向かった
そしてここにもう一人

はいはい、止まって
姉ちゃんも伝説のリゾナンターの一人かい…
随分息を切らして、どっから走ってきたんだい、え…
そんな長い距離を走ってきたって、あんたバカか…
うわっ、殴りかかってきたよ、おいおい泣いてるし、どうしたんだい
お兄さんに話して…
…ああ悪かったよ、反省するから殴らないでくれ
おじさんに話してみな
人を捜していた…
…そうか前の戦いで裏切ったというサブリーダーを捜していたのか
で、見つけてどうするつもりだったんだい
やっぱり復讐するつも…
…違うたい、ってお姉ちゃんは博多生まれかい
で、何が違うんだい、許せないんだろ…
違うって、許せないのは敵と味方の板ばさみで苦しんでいることに気付いてやれなかった自分…
…ごめんごめん、お兄さん目から汗が、えっ
悪かった反省するから蹴らないでくれ
おじさん目から汗が出てきて止まらないから
だから顔を洗ってくるから、その間ここは無人になるけど、絶対通ったらダメだから…
だから、挨拶なんかしないから…

行っちまったな、頑張れよ

ホゼナント




632 名無し募集中。。。 2008/08/31(日) 14:07:34.91 0
人類最後の防衛線を7人目の娘が越えた
7人目の娘は何か包みを置いていった
1人で監視をしていた中背の男は、休憩からもどってきた背の低い戦士に話しかける

…今の娘も良い子だったな、ちょっと乱暴だったけど、心根は優しかった…
…何、泣いてるんだお前

…さっきの子が話していったよ
前の戦いでサブリーダーが裏切った事を…
…何、ビクッとしてるんだ、おかしい奴だなまったく
あの博多女は言ってたよ、サブリーダーは自分の大事な人の為に裏切ったって…
…自分だってその人の立場だったら、裏切ったかもしれんってな
だから何、泣いてるんだ……目に汗が入ったのか、そうか実はさっき俺も苦労したよ

お前、あの子の話していたサブリーダーだろ…
…違うって、嘘を言わなくていいよ
さっきからゲートを越えていく娘達を見ていたお前の目は、まるで母親みたい…
…違うって、私はそんな人間じゃないって

…どこへ行くつもりだ、サブリーダーさんよ
俺はあんたが裏切った事を責めたりはしないよ
だが今あんたがあの子たちを見捨てたりしたら、絶対許さないぜ
会わせる顔が無いって…
ここを通っていった娘達はだれもあんたの事を恨んだりしちゃいなかったぜ
誰もあんたを責めたりしてなかった
だから行けよ、行ってやれよ
さっきの子がこれを置いていったぜ、開けてみな
…あんたらの戦闘服じゃないか、皆があんたのことを許してて、皆があんたのことを信じてる
だから、さあ…

ホゼナント




(14)636 名無し募集中。。。 2008/08/31(日) 15:28:45.00 0
人類最後の防衛線、守っているのは2人の保全戦士
背の低いほうが仕切っているらしい
2人が話している

…そうだ、8人だったな
お前も前の戦いのことは知ってるだろ
敵の首領にはどんな攻撃も効かないので、あの娘たちのリーダーが瞬間移動で自分ごとどっか
の異空間に封印したって…
そうだな、そこまでして守ってくれた未来を俺達は守る事ができなかった
全く人間って奴は…
…おい判ったようなことを言うなよ、人間なんて滅びてしまえば良いって
じゃああの娘達は何のために戦って…
悪かったすまん、俺もつい興奮して…

…お前家には家族がいるんじゃなかったのか
行って良いぜ…行かないのか、俺か
俺はあの娘たちと約束したんだ、戻ってくるまでここは守るってな
だから行かない
…よし命令だ、お前は自分の家に帰って、家族を守れ
これが俺からの最後の命令だ、だから命令を遂行しろ
…なんだ泣くなよ、バカだなあ
何、もし生まれ変わっても、この保全部隊で俺と一緒に戦いたいって
ははは、そいつは光栄だけど残念だ
俺はもし生まれ変わったら、女の子に生まれ変わって、アイドルグループに入るんだ
肩やおへその出た衣装を着て、歌って、踊るんだ、きっと楽しいぜ…
何だその目は…
ああ俺はただの人間だ…
だが普通の人間だって守りたいと思うものがあればヒーローになれるんだ
だからお前は家族を守れ
俺はここを守る

ホゼナント



638 名無し募集中。。。 2008/08/31(日) 15:30:59.49 0
闇の軍勢との絶望的な戦い
人類最後の防衛線を守る1人の男

男は戦いが防衛線の遥か向こうで戦いが始まったのを知った
撤退命令を知らせる通信機を男は壊した
そして決戦の地の様子が見えるよう詰め所の屋根に移動した
戦闘の流れ弾や何かの破片が飛んでくるが、男はかわそうともしない
闇の気配が広がっている
男の前に三つ首の怪獣が現れた
怪獣は3本の首から毒々しい黒煙を吹き出す
その黒煙に侵された物質は、腐れ落ち、爛れて消える
怪獣は男を見つけて近寄ってきた
不気味な唸り声を上げるが、男はそこを動かない
そこは守るべき場所だから
怪獣が近づいてきた
あと一歩で男は怪獣の牙の餌食になるだろう

その時その人はあらわれた
その人の瞳はこの世の悲しみの果てを見てきたような憂いを帯びていた
その人の瞳はこの世のあらゆるものを慈しむ優しさに満ちていた
その人が光の矢を撃ち出すと、怪獣の姿は木っ端微塵に砕けた
その人が男を見つめた
男はためらわずある方向を指差した
それは8人の娘達が向かった方向
8人の娘が未来を賭けて戦っている決戦の地
その人は男に微笑むと一瞬の内に消えた

…俺は、俺は光を見たんだ

ホゼナント





















最終更新:2012年12月02日 11:46