人智を超えたものを望むのであれば、己が人であることを忘れねばならない。
得難きものを得るために、人の心を捨てた。
得難きものを得るために、人の温もりを消した。
得難きものを得るために、人を名乗るのを、やめた。
もはや体は抜け殻。
何より強い願望と誰より鋭い眼光だけが凍てついた。
他人にかける“情”なんて、これっぽっちも残っちゃいない。
業火に焼かれてのたうち回る者には、嘲りの声を。
濁流にのまれて手を伸ばす者には、蔑みの視線を。
その女、残忍にして無情。
最終更新:2012年12月02日 07:30