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暑さで、頭がやられちまったかな。
俺はトラクターの上で、麦わら帽子のひさしを上げ、目を細めた。
烈日に焼かれた水田の向こう。
陽炎ゆれる田舎道。
白いワンピースを着た少女がひとり。
稲穂が、ワンピースが、風に揺れていた。
トラクターの上で思わず、自分の周りを見回す。「あそこだけ風が吹いてる?」
俺は“まぼろし”を見ているのだろうか?
それとも……いや、考えるのは止そう。どうせ頭が回らない。
少女が“まぼろし”で無いとしたら、きっとあの風はここまで来る。
最終更新:2012年12月02日 07:16