雨----
雨が降っている----
なつみは呟いた。
その呟きを聞く者は誰もいなかった。
けれど、なつみは湧き上がる笑みをこぼさずにはいられなかった。
「どうした、なっち?」
裕子が問う。
目には不安が宿っている。
ここにいる全員の目に不安が宿っている。
なつみはそれを知りながら、意にも介さずに答えた。
まるで盲目の少女が見えぬ恋人に語るように。
「ねぇ裕ちゃん、雨だよ」
その声はとても穏やかで、まさか今から死にに行くなんて誰もが感じなかった。
みんなの心に少しだけ優しい光がさした。
絶えず、雨は窓を強く叩きつけているのにも関わらず、状況も決して変わってもいないのに。
なつみは目を閉じ、息を大きく吸い込み吐き出す。
たっぷりの時間をかけて。
目が見開かれたときなつみの目に迷いはなく、曇りもなかった。
それを見たみんなの目にも迷いは浮かばなかった。
最悪の想定をしながらも、恐怖はない。
思えば以前は恐怖が体をまとわりついて離れなかった。
そう、なつみが現場に出なくなってからは。
そんなに強い敵がいたわけでもなく、なにもかもが順風満帆に行っていたのに、
いつ失脚するかどうかもわからず、見通しさえ明るくはない。
言いようのない「恐怖」。
それは幼少の頃からの習性かもしれなかった。
「わくわくしてきた」
グループ内のムードメーカー真里が言うと、あちこちで賛同の頷きがあがる。
そう、わくわくする。
全身の血液が沸騰しかけているようだ。
なのに、なぜか心臓だけは驚くくらい平常で。
騒がしくてもおかしくはない、この時。
あたりはただ「静か」だった。
「行くで」
裕子の掛け声と共にその場にいるみんなが一瞬にして消えた。
463 名無し募集中。。。 2009/02/20(金) 21:29:49.71 0
テレポートしたのは無人島。
誰もいない、なにもない。
「来るよ」
圭織が口にした直後、姿を現したのはリゾナンターだった。
横一列に並び、5mほど離れたところで互いに睨みあっている。
口には出さないが、みんなが思っていた。
次はない。
「未来は決まっているのよ。死に急ぐなんてあんまりだわ」
圭織が口火を切る。
「違います。未来はうちらの手の中にあるんです。うちらがいくらでも変えられるんです」
愛佳が確固たる思いを込め、返した。
雨が止んだ。
変わらず雲は厚く、風も吹いているが雨は止んだ。
まるで、神がこの戦いのために雨を止めさせたみたいに。
風が落ち葉を舞い上がらせた。
それが落ちる瞬間、両者は4つの塊になって方々へと飛び散る。
今、最後の戦いが始まる------
最終更新:2012年12月02日 07:09