裏切りの 告白ぜんぶ終わったら
海に行こうよ おべんと持って
その告白は唐突であり、聞いた者全てに深い悲しみをもたらした。
ずっと信頼してきた仲間の裏切り、それは過ごした時間が長ければ長いだけより大きな悲しみを生み出す。
目を伏せて絞り出すように声を出す彼女を一体誰が責められただろうか。
彼女と同じ立場に置かれたら、彼女と同じ行動を選ばない自信などなかった。
感情だけで言うのなら、許せるはずもない行為だった。
事情があったとはいえ彼女がしたことはれっきとした―――仲間への裏切りなのだから。
彼女は許して欲しくて告白したわけではない。
もう、ここに留まることは出来ないという想いに突き動かされるままに真実を口にしただけ。
だからこそ―――彼女をここに留まらせたいと思った。
「なぁ、里沙ちゃん…海行こうよ、皆と一緒におべんと持ってさ」
海でも何処でもよかった。
彼女と共にこれからも一緒に戦っていきたい、その想いが彼女に届くのであれば。
過去は過去であり、最早変えることは出来ない。
だが、未来はこれから幾らでも変えていける。
ならば―――変えていけばいいのだ。
言葉にする程容易なことではなくても、変えていきたいという想い一つあればいい。
彼女と自分とそしてかけがえのない仲間達。
皆を確かに繋ぐ“共鳴”という絆がある限り、幾らだってやり直せる。
涙を流す彼女の肩を抱き寄せて。
今度の定休日辺りにでも早速行こうかと声をかけながら。
―――目を伏せたら波の音が聞こえてくる気がした。
最終更新:2012年11月25日 17:51