パパの車がぶつかっちゃった。
愛佳、ウソをついちゃだめでしょ?
――― 愛佳が怖い。
・ Resonant Night ・
「アカン、またや」
目が覚めると、涙で首筋が濡れていた。
「もぉええやん、マジで」
繰り返し見る夢にうんざりしていた。
そしてその度に、泣いてしまう自分にも。
愛佳ちゃんが…
光井!おまえの仕業が!?
お前が飛行機を落としたのか!
「もぉあんたらに何も迷惑かけてへんやん。
愛佳の夢にまで出てこんといて…」
光井と話すと事故が起こる
「嫌やぁ…」
枕に顔を埋めて大声で泣いた。
シーツを掴んだ指先が震えている。
「嫌や!こんなん、嫌やぁっ!!!!」
リゾナントの仲間と過ごす日々中で
どんどん好きになっていたはずの能力が
憎くて憎くて堪らなかった。
夢の中で蘇る記憶は何一つ色褪せておらず
そして何一つの仲間を愛佳に与えなかった。
頭を掻き毟って
喉が切れるほど叫んで
耳を引きちぎって
目を痛めつけて
なにも見えなくていい、何も聞こえなくていい。何も感じられなくてもいい
だから。
――― 助けて 誰か…
◇
…か……あ、…い……あ、…か………あいか…あいか、愛佳…あいか!
自分を呼ぶ声で目が覚めた。
あ、愛佳また寝とったんや…
なにか温かいものに包まれながらぼんやりとそんなことを思う。
「…疲れたなぁ」
半ば自嘲気味な愛佳の声に、鋭い声が続いた。
「愛佳!」
「へぇっ!?」
「やっと目ぇさめたかこのすっとこどっこい!」
「…ちょっと愛ちゃん、すっとこどっこいはないでしょ」
「絵里そんな言葉初めてききましたよぉ?」
「嘘ついちゃだめなの、絵里が発信源なの」
「絵里はいつも適当やけんね、覚えとらんのよ」
「ほんっと亀井さんってダメですよねー」
「クスミ、ソンナことイッタらシツレイダ!」
「オォーゥ、ジュンジュンさん。ジュンジュンさんもじゅうぶんシツレイデスよー!」
「ってみんなうるさぁーい!」
そしてその後に、聞きなれた焦がれた仲間の声が続く。
「なんで愛佳…」
のそり、と体を起こした。
れいながいつも愛用している紫色の毛布が方から落ちる。
それから、ジュンジュンの腕に包まれていることが分かる。
「…なんでみんな」
ジュンジュンが愛佳の頭を撫でた。
「ジュンジュンみんなヨリちょとオッキイから、」
「誰かと触れ合ってた方が安心するんじゃないか、って小春ちゃんが」
続いてさゆみが、泣き顔の愛佳の頬を包んだ。
ピンク色の光が溢れる。
やがてそれは愛佳の全身を包み、涙を拭い去った。
「なんで…?」
状況が読み込めていない愛佳は周りを囲む仲間を呆然と見つめていた。
「呼ばれたんよ、愛佳に」
愛が優しく微笑む。
「助けてーって、何回も叫びよった」
「ほっとくわけにはいかないでしょ」
「だからねぇ、急いで来たんだよ?」
「仕事もちょうどなかったし」
「ジュンジュンもヒマダッタだ」
「リンリンもー」
「――― そういうわけ。だからみっつぃー」
怖がらなくていい、泣かなくていい。憎いだなんて思わないで。
愛はこの夢の内容を分かっていた。
だからこうして、自分の能力を使い、愛佳をリゾナントへ連れてきた。
愛佳に欲しているものがここにはある。
「連れて来たのはあーしやけど、みんなを呼んだんは愛佳やからの」
「え?」
「共鳴したんだ。みんな仲間ってこと。」
「仲間…」
「乗り越えられないときはさ、頼ればいいんだよ。」
誰かが助けてくれればさ、もしかするとちっちゃな壁になったり、するかもしれないでしょ?
「傷ついたらあたし達が癒すから」
「いつでも、助けに来るから」
「ダカラ光井も、タマにはタスケルだよ?」
「…もぉー、ジュンジュン。呼び捨てするんやったら名前にしてぇ」
愛佳がやっと笑った。
それがリゾナントして、みんなに繋がる。
負けない、と思った。
そして強くなろう、とも。
それから。
思う存分に甘えて、助けてもらおう。
こうやってジュンジュンの腕の中に居るのも悪くない。
「なぁジュンジュン、今度はパンダの時にぎゅーってしてぇや」
「ミツイ!!!甘エルじゃないダぁぁぁぁ!!!!」
それからしばらく、あの夢は見なかった。
最終更新:2012年11月24日 10:26