「俺はNAV3,6の語呂合わせでミロクって呼ばれてる。でも、お前達が呼びたい名前で呼んでいいぞ」
 そう言ってこちらをじっとみつめてくるナビ君に、私はどうしようか……と仲間達を見る。
「俺は別にどうでもいい……っつっちまったら変だけど、今までの名前があるんならそれでもいい。……まあ、語呂合わせでつけられてるとは思わなかったけどな」
 意外に考えなしなんだな、ムラクモは…と続けたのは、やっぱりアカツキ。
「あ…あはは。私はずっとナビ君ナビちゃんって呼んでた……」
 私――ユヅキは乾いた笑い声を上げながら頭をかく。
 ……流石にナビ君ってのは考えなしだったなぁ……ムラクモの人達を笑えないわ……。
 そこでふとキリハを見ると――彼女はうんうんと唸りながら必死に名前を考えている。
 ……ああ、キリハごめんね、ムラクモも私達も考えなしで……。
 そんなキリハの様子にナビ君――ミロク君は苦笑する。
「別にそんなに深く考え込まなくてもいいって」
 俺はミロクのままでも……と彼が言いかけた時、キリハはぽんっと手を打った。
「そだ。『ヤコウ』っていうのはどうですか?」
 いい名前を思いついた、といった感じでにこにこと笑顔で私達に提案してくるキリハ。
「……ヤコウ? まあ、呼びやすいっちゃー呼びやすいが……」
「どういう字を書くの?」
 私達3人は一旦顔を見合わせてから、キリハに再度向き直って訊いてみた。
 するとキリハはよくぞ聞いてくれました! と言わんばかりの満足げな顔をしてから教えてくれた。
「えっとね……夜の光って書いて『夜光』。お月様の別名なんですよ♪ 夜の闇を照らし、人々を導いてくれる月のように、私たちを導いて欲しい……そんな願いからつけてみました!」
 おお、きちんと考えられてる……!
 キリハの説明を聞き、ミロク君は何度もその名前を繰り返し呟いて……。
「……『ヤコウ』……か。それいいな。その名前もらった。俺は今日からヤコウだ」
 にっこりと笑って快諾した。
 その笑顔にキリハは頬をぽっと紅くして……おお!? これはもしかしたらもしかするかも……?
 私の視線に気づいたのか、キリハは慌てたように付け加える。
「あ、あと……お月様の名前にしたのはそれだけじゃなくて……夜の闇は月の光を守るものでもあるので……ほら、昼間だとお月様って光る事が出来ないじゃないですか。だ、だから……」
 そこまで言われると私にもわかる。
「私達が人類の希望である都庁を守る決意を、ミロク君の名前に込めた、って事でしょう?」
 こくん、とキリハが頷いたのを見て、解釈は間違ってなかった事にほっとする。
「うわ、じゃあ俺の存在って結構責任重大!?」
 私とキリハの会話を聞いて、ミロク君――今はヤコウ君は慌てたように言ってきた。
 アカツキはそんなヤコウ君の頭をがしっと掴んでから乱暴に撫でる、
「元から責任重大じゃねーか! ナビなんだからしっかりナビゲートしろよ、ヤコウ!!」
 怒鳴られたヤコウ君が首を上下に何度も動かすのを見て、私達は一斉に噴き出した。
最終更新:2012年05月29日 23:03