西暦2020年のある日、高校生の少女ユヅキは政府からの招集に応じ、東京都庁前にやってきた。
 そしてそこで日本を護る為の機関であるムラクモ機関に入る試験――都庁の中にいるマモノを狩り、3階まで行くというもの――を受ける事になった。
 ――まあ、適性があったみたいだし。今のうちに就職先が見つかったと思えばいいでしょ。
 そんな事を考えながら、都庁前にあるターミナルを開き、同じくムラクモ機関の候補生の中から2名を選出する――試験はなるべく3名で行うように、と言われていたから。
 そうして呼び出した2名が、ゆっくりとユヅキの許に姿を現した。

「お、画像で見るより美人だな」
 軽口を叩きながら現れたのは20歳くらいで白髪に紫の瞳の、背の高い青年。
「あ、あの…よ、よろしくお願いします…」
 そう言ってぺこりと頭を下げたのはまだ14、5歳くらいで長い金髪をツインテールに編んだ少し気の弱そうな少女。
 そんな2人を真っ直ぐに見返し、ユヅキはぺこりと頭を下げる。長い黒髪がふわりと広がった。
「私はユヅキ。呼び出しに応じてくれてありがとう。これからよろしくお願いします」
 ユヅキが頭を下げたのを見て、
「んな、堅っ苦しい挨拶すんなよな。もっと気楽にいこうぜ、気楽によ」
 わしゃわしゃと、青年はユヅキの頭をかき乱すように撫でる。
「ちょっ!? いきなり何すんのよっ!」
 初対面の、しかも男性から唐突に頭を撫でられたユヅキは、思わずその手を払いのける――気安過ぎる態度に苛立ちながら。
「そーそー、若いモンはそれくらい元気がなきゃな。俺はアカツキだ、よろしくな」
 そう言って青年――アカツキはユヅキに手を差し出し、半ば強引に握手をする。
「……よ、よろしく」
 ユヅキはアカツキに少々押され気味だ。
 アカツキは今度はそんな2人のやりとりをきょとんとした顔で見ている少女の方に歩み寄る。
「お、こっちの嬢ちゃんも可愛いな。後2~3年したら美人に……ぐはっ!?」
 ごいんっ。
 調子に乗ってベラベラと喋り続けているアカツキに拳骨を1発食らわしてから、ユヅキは少女に向き直る。
「こいつの事は置いといて。貴女、名前は?」
「キ……キリハ……」
 どうも2人に気圧されているらしく、おずおずと名乗るキリハ。
 そんなキリハにユヅキはにっこりと笑いかける。
「キリハ、ね。これからよろしくね」
「……は、はいっ!」
 キリハは緊張気味ながら、元気に返事をし……アカツキの方を向いて、
「アカツキさんもよろしくお願いしますね」
 ぺこりと一礼する。
「おう、よろしくな。……しかし、ユヅキは思ったより暴りょ……いやいやいやいやいやいや、なんでもありませんっ!」
 その台詞に軽く返した後に小声でぼやこうとして……ユヅキに睨まれて慌てるアカツキ。
 動揺するアカツキを見て噴き出すユヅキとキリハ、そしてそれにつられるようにアカツキまで笑い出す。
 ひとしきり笑った後、ユヅキは宣言する。
「まあ、ともかく……これからは一緒のチームになるんだから一緒に頑張りましょうね」
「おうっ!」
「はいっ!」
 アカツキとキリハは大きく頷いた。
最終更新:2012年05月29日 23:02