2ch黒猫スレまとめwiki

◆LZMIcrC9aKqC

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匿名ユーザー

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         流されてばかりじゃいけないよね


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        『ヒナ祀り』


「うー……」
「何を唸っているの?」

 コタツに突っ伏しているあたしにルリ姉が声をかける。

「だってさ、今日は三月三日だよ? 桃の節句だよ? 五更家は三姉妹なんだからあたし達の日だよ?
 そして名前に“ひな”が付くあたしの日と言っても過言じゃないんだよ?」
「何を言い出すのかと思ったら……菱餅の食べすぎかしら」
「そんなんじゃないよ!? そうじゃなくってさ……あたしの扱いってなんなんだろうって」
「……私の妹だけれど?」
「違くて。漫画とかだとさ、美味しい役が多いんだよね……
 一番人気の生徒会長だったり、無垢なる魔性だったり、
 おいたんに甘える幼女だったり……“ヒナ”ってキャラは可愛いのばかりなのにおかしいよ」
「安心なさい。あなたも充分オバ可愛いわよ」
「バカって言った! 今、バカって言ったよね!?」
「……気の所為よ」

 むー。そーゆーコト言うんだ?

「だいたいさー。あたしがこんな事考えてるのって高坂くんが悪いんだよ?」
「なぜそこで京介が出てくるのかしら?」
「だってさ、ルリ姉は彼女だからってデレデレして。たまちゃんは天使だからってデレデレして。
 なのにあたしには地味猫とか言うんだよ!? 失礼しちゃうよ!」
「……まったく、京介にも困ったものね。
 地味猫とかトラブルメーカーとかツッコミキャラなのにボケもこなすお笑い担当だとか酷い話ね」
「そこまで言われてないよ!」
「……それなら日向をヒロインにしたお話でも考えてみましょうか」
「どーゆーコト?」
「架空の世界でヒロインのあなたがどんな行動をして、そしてどんな結果が得られるのか。
 それを現実に反映すれば日向のヒロイン力もアップするのではないかしら」
「へー、面白そうかも。どんな話?」
「そうね……設定はこんな感じかしら」

 ルリ姉は語り始めた。
       ・
       ・
       ・
「舞台は山奥の小さな村。ヒロインは……そうね。日向と同じ小学生がいいかしらね」
「おー。その方が感情移入しやすいよねー」
「そんな過疎の村の学校は生徒の数も少なくて、低学年、高学年、そして中学生も合わせて1クラスだったの」
「教える先生も大変そうだね」
「ヒロインはちょっとドジっ娘だけれど、持ち前の元気と明るさでクラスのムードメーカーの様な存在だった」
「……ドジっ娘なんだ」

 お話の中なんだからさ、もうちょっとさ、別にイイケド。

「勉強はイマイチだけど、村や山をまるで自分の庭の様に遊び回る活発な子で、毎日部活も頑張っていた」
「ほほー」
「そこにある日、都会から転校生がやって来るの。彼が主人公ね」
「お! ロマンスの予感がw」
「初めは余所者と対立していたヒロインも喧嘩友達の様になり、やがて主人公に惹かれていく気持ちを自覚するのね」
「ねーねー! その主人公さ、名前は高坂くんにしようよ」
「却下。有り得ないわ」

 ルリ姉に拒否された。まったく、お話なのに独占欲強いよねー。

「えーいいじゃん、どうせ作り話なんだしさー」
「残念だけれど、全ての世界線で京介は私のものなのよ。諦めなさい」

 真っ赤だぞルリ姉……照れるなら言わなきゃいいのに。

「じゃあイニシャルならいいでしょ? K君で」
「……仕方ないわね」
「やたーw」
「ヒロインはKへの淡い恋心を伝える事はなかなか出来なかったけれど
 同じ部活で毎日楽しく暮らしていたの」
「まあ小学生だからねー。いきなり恋人とかないか」
「そして村のお祭が近づいてくるの。そのお祭が『ヒナマツリ』なのね。
 ところで、雛人形の歴史は災厄を祓うために人形(ひとがた)を身代にして、川や海に流す習慣から始まったの。
 今では、女の子が生まれたら無事大きく育つことを願い、小さな人形を飾るお祭りになったのだけれど……知ってた?」
「へー。そうなんだ」
「流し雛と言ってね。現在も各地方で行われているそうよ。ここもそんな村の一つね」

 毎年人形流してたらもったいないよね。川、汚れるし。

「ヒロインはそのお祭の夜にKに告白しようと決心するのだけれど……ある事件に巻き込まれてしまうの」
「おお!? なんか急展開だ!」
「でもヒロインはKと、仲間と、知恵と勇気と力を合わせて事件を解決する。
 その過程でKとの仲も進展していくのね」
「よっしゃ! 王道かもだがそれがいい!」
「その後、ハッピーエンドに至るかどうかはヒロインの努力次第……というお話よ」
「いいじゃん、いいじゃん! ルリ姉ってばこんな燃える話も作れるんだね」
「……どういう意味かしら?」

 おっと、この世界の創造主の機嫌を損ねたらいけないよね。

「や、褒めてるんだって。あ、ところでさ、この舞台になってる学校ってなんていう学校なの?」
「学校名までは考えていなかったけれど……そうね。それなら学校名にもあなたの名前を一部使わせてもらいましょう」
「まさか理事長の孫娘とか? いやーメインヒロインは辛いなーw で、なんて学校?」


 ルリ姉は感情の消えた笑顔で言った。



「……ヒナミザワ分校よ」

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